2005年5月29日カフェアンサンブル発表会講評


今日は五月晴れ、さわやかな陽気となりました。
その中駒場東大前のカフェ・アンサンブルにでアトリエムジカCの試演会を行いました。
発表会、というほど晴れやかな場ではないが、中間的に発表する場を設けて発表会で更に良い演奏をしてほし、そんな気持ちでこの試演会を開きました。学校の試験で言えば中間試験みたいなものでしょうか。
ということで、少し堅苦しいけど講評じみたものを書かせてもらいました。
各人それぞれの評価なので、比較ではありません。
改めてお断りしておきます。


くらのさん。

くらのさんは、ピアノ科出身だけど声楽は本当に初めての体験に近いわけですね。
人前で歌を歌うことなんか普段の生活にはすっかりないのに、たくさんの人の前で良く3曲を歌いきりました。
今回はそれだけで大成功です。
後は、難しい理屈は抜きで、もっとしっかり声を出すための「度胸」怖さを跳ね返す「強さ」をイメージしてください。
音楽的なこととは関係なく、です。
リハーサルや家でのレッスンでの良いときはもっと身体がリラックスしてもっと無理なく最低限の声が出ていたと思います。
彼女にとっての課題は、扱っているものは音楽に違いはないのだけど、もっと肉体的な面でしっかりすることでしょうか。
これが始まりですから、これから一歩一歩無駄にしないで少しずつ歩んでください。


なかのさん

フォーレ4曲。とても良かったです。
歌への集中力は優秀なものを見せてくれました。
声もテノール路線にして良かったと思いました。
というのも音程の良い声が平均的に綺麗に出せるようになったからです。
そのために音程も難がなかったし、何より彼の歌う勢い、意気込みが伝わる好演でした。
こういうことが理屈ぬきでまず大切だと思います。
後は、少しずつで良いですから、喉や首、顎を力まなくても同じくらい声が出るようになることを知って欲しいです。
ピアノとのアンサンブルもさらっと無理なく軽快で良かったです。


いそがいさん

リハーサルは曲の中の入りの間違いやテンポの悪さが目立ったけど、本番は立派に歌いきりました。
声もリズムも今までの練習、本番を含めて一番良かったです。合格です。
後は残りの曲を前曲歌えれば、凄いですね。
声は良い声質だし、声量も充分です。
怖がらないで、逃げずに、これからも積極的にやっていく癖を付けてください。


たつとみさん

発声を直したいということで来られて、3ヶ月弱でしょうか。数回のレッスンで試演会に出たのを聴いて
改めて思ったのは、発声だけ練習すれば良い、ということだけではなく基本的な上がり性を克服することだと思います。
とはいっても、多分彼女自身が一番上がる理由を知っているのでしょう。
そのためのレッスンだと思います。
根気良く、今までの癖をなくすための方法を積み重ねることと、要領もあると思います。
それも勉強のうちでしょう。
根気良く続けて行きましょう。


さいとうさん

彼女は通い出してそろそろ1年になるところでしょうか。
合唱出身者にしばしば見られる抑圧した声という印象がすっかり変わって、堂々としかも芯の強い伸びやかな歌を歌ってくれました。
今まで勉強してきたことが見事に結実した、という印象です。
もちろん、こちらに来て勉強したことが全てではなく、それまでの彼女の合唱を含めた音楽経験が良いところに集中して、開花したということでしょう。知性と官能性のバランスが良いと思います。
これから色々なジャンルの歌に挑戦してください。声そのものがそのことで開発されていくでしょう。
ご主人のピアノも楽しさが出ていて、好感が持てるものでした。


にしむらさん

リハーサルも本番も安定して歌えました。
歌の集中力はとても良いものがあり、密度の濃い安定した演奏を安心して楽しめました。
発声あるいは見た目と言う両面から、顔を動かさないで首をしっかり座らせて歌えるようになると更に良くなると思いますよ。
中音域はやはりもう少し揺れのない声を目指したいところです。
やはり声の響きのポイントを高く持っていくこと、をこれから積み重ねて欲しいです。
やや喉に依存した中音域かもしれません。顔がやや斜めを向いてるのも、
そのことで、既に持っている明るい高音に加え更に明るく若々しい中音域の声も得られると思います。