今回、昼夜合わせて出演者のレベルが高くなったことを実感しました。
音楽を集中して聞けることが何度もありましたね。

これは、レッスン時から予想はしていましたが、本番でそれが最高潮になった。
その原因は勿論生徒達の精進の賜物ですが、ピアニストの努力もとても大きかった。
昼の部、特にふくまさんは、非力な体を駆使して、本番で最高潮の状態に持ってきてくれたのが何より嬉しかった。
ドビュッシーの伴奏は、シュタインウェーが喜んで響いていました。

 

おおぜきさん

リハーサルで聞いた時に、選曲と彼女の声の一致が特に感じられて好印象でした。
本番もその好印象は変わりませんでした。
音楽と声の持っている雰囲気が合っていましたね。
一番良かったのがIntorno all’idol mio
音楽と声のバランスが良かった。
Malinconiaも、そつなく綺麗に歌えました。
ホールの響きのせいで、声の芯がちょっとなくても、聞けるというメリットもありましたが、
これから、発声に注意して中音域もある程度、響きの芯をきちっとさせて欲しいです。

Son pochi fioriは高音が最後のレッスンで聞かせてくれた声が出せなかったのが残念。
高音の発声が未解決で残っています。
でも、声域的に限られても、良い雰囲気を持っていることは大事にすべきでしょう。
技術的に伸ばしたい、声域を伸ばすことは大いに結構だと思いますが、それだけで良い歌が歌えるわけではないです。
自分の長所を良く見極め大切にして、自分の芸風を大切に伸ばして欲しいです。

 

たつとみさん

綺麗に伸び伸びと歌える良さが出たので好印象を残しました。
響きがあるし歌いやすかったと思います。
声帯が合った時にピ~ンと張った高音が出る、その響きに彼女の高音の美点があります。
それが出せていた。特に「スミレ」そういう意味でホールが歌手を育てるということもあるでしょう。惜しむらくはフレーズの終わり、支えが取れてしまうことでした。
それは、ブレスから声を出すまでの体の状態がまだ未解決なのだと思います。
ブレスそのものと支えです。このことで、声を出し始めるアタック時の雑音の問題や、フレージング最後の支えの取れてしまう声も解決出来ると思います。
ということで、彼女の場合音楽的なセンスよりも徹底して体の使い方、肉体的な意味での発声に関与する部分が課題だと思います。
大変だと思いますが、地道に精進してください。きっと良い結果を手に入れることが出来ると思います。

 


ふかやさん

今回、本番は無難にこなしました。
声も気持ち良く出せたのではないでしょうか。当初、バリトンのアリアはどうか?と思ったけれども、彼の重い声の性質からバリトンのアリアに変更して結果的に良かったと思いました。声の基本を学ぶには、恐らく今は高音よりも中低音できっちり身に付けておくことで、自然に高い声の出し方も
分かってくるのではないか?と彼の今日の歌を聴きながら思いました。今後は発声の最も基礎的なことをもう一度徹底しましょう。
またCDなども色々聞いてみることですね。最初は分からなくても、闇雲でも聞いてみてください。それからコンサートに行って聞くことも大切ですね。
好きでやるのでも、貪欲にならないとなかなか上達に至らないのは難しいことだけど、それが本当の意味で趣味を確立するものです。
これからもいつまでこちらでレッスン出来るか分からないけど、何処に行ってもある程度応用が効くようになってほしいです。

 


すぎたさん

彼女は優しい細い声を駆使した、リリックな音楽を表現してくれました。
彼女の歌は優しいです。それが彼女の歌の最大の美点だと思いました。
選曲も成功でした。ブレスのせいでテンポが速くなりがちのところを、しっかり持ちこたえて安定して歌えた1曲目。
とても良いテンポ感と歌声でしたね。しんみりと聞けてとてもありがたい演奏になりました。2曲目も低音が厳しいけども、我慢して最後まで綺麗に歌いきれました。
最後の高音も厳しいけれども、良く歌いきりました。ブラボーでした!モーツアルトは歌に表情がついて、安心して楽しく聞けるものでした。
モーツアルトの良さが現れていたから、充分に評価できるレベルだと思います。これからも声の方向性はこれで良いと思います。
たくさんの好きな曲をトライして、歌い続けてください。

 


さいとうさん

モーツアルト「老婆」は説得力のある歌になりました。
テンポ感がしっかり出て、安心して退屈することなく4番まで聞きとおせました。
また「クロエに寄せて」も、テンポ感が良かったし、工夫があって表現の妙が出て良かったです。
安心して聞けました。一年くらいだけど、声がずいぶんと出るようになりましたね。強いて言えばドイツ語の発音。
ドイツ語の発音はお手の物だと思いますが、口の使い方のせいでやや内にこもってしまい、単語が聞き取り難かった。
もう少し前に出る発声が必要だと思います。一見浅くても、丁度良いポイントが見付かると思います。これからの課題にしたいと思います。

ご主人のピアノは朗々と大らかで、良いものですね。欲を言えば奥様との共同作業、ほのぼのとするような部分がもう少しあっても良いのではないですか。
彼女の音楽を、更に更に受け入れて上げてください。

 


はらさん

彼女はレパートリーとして宗教音楽も良いだろな、と歌を聴きながら、思っていました。
それはヘンデルというせいもあるけど、バッハのカンターターやオラトリオのアリアも良いだろうな、とイメージしました。

ホールの響きが良いのでリラックス出来たのか自然なステージングで嫌味がなく、ヘンデルの趣味の良いアンサンブルが心地よいアンサンブルで、あっという間に時間が過ぎました。
ドイツ語の発音がとても綺麗ですね。発音、その処理の上手さが光っています。発声のことを言うとすると、どちらかというと、メゾ的な響きキャラクターを感じるものでした。
舌根の力みが抜けないのだと思うけど、声に対する嗜好、あるいはイメージの問題もあるので、一概に悪いとも言えないし、難しいところです。色々なことが出来ることも大切だけど、これからある程度的を絞って勉強していくことも大切ではないのかなと思いました。それも彼女自身が好きな古楽とは別のジャンルです。そうして彼女自身がそれをどう思うか?とは別にお似合いのものが見付かると、色々なことが一気に解決するような気がします。とにかく勉強家で熱心なので、細かいことはあまり心配はないのです。選曲というところに、今後の鍵があるような気がした今回の演奏でした。

 


まなべさん

本来持っている軽くてしなやかな喉と、ドビュッシーのある種の作品との相性がとても良かった。
これは私が教えたというよりも、彼自身が持ったモチベーションの勝利でしょう。
その上で私が関与できたのは、彼のモチベーションにはしごをかけてそれに昇る手伝いをして上げたということだと思っています。

声楽演奏というのは発声だけで成り立っているのではなく、作品とその作品を表現するぞ!という強い意志と向上心があって成り立つものだと思います。
確実に作品を分析し自分なりの解釈と練習を積み重ねている。作品に対する強い愛着を演奏から感じることが出来ました。それでも発声について言えば、中音部は鼻腔共鳴を覚えてほしい。
ピッチが薄皮一枚良くなって、響きがもっと通るようになるでしょう。そうすると、大きなホールに行っても、力まないで音楽が確実に表現されると思います。
ともあれ素晴らしいドビュッシーを聞かせてもらいました。

 


たかはしさん

本番のパーセルはとてもよかった。レッスンから良い歌を聞かせてもらったですが、本番もほぼその通りになったのでこちらは嬉しかったです。重めのテンポを尊重してくれて、パーセル独特の、いや私個人が好きだ、と思い込んでいるパーセルの神秘的な世界を表現できていました。
ラモーのアリアは、比較的最近歌い始めたのだけど、かなり近いところまで行けたな、という印象。彼女の声のキャラクターにとても合っていると思います。
フランスバロックもたくさんありますので、今後も勉強してみてください。きっと将来の役に立つでしょう。
ドニゼッティは、彼女の声の良い部分が生かされていて、とても綺麗でした。欲を言えばもう少し重い声が出して欲しいな、と思うところもありました。
最後の高音も伸ばしが後一歩、というかレッスンで出来たクレッシェンドがあったら言うことがなかったです。今回は上がり性の面が出ないで安心して聞けました。

 


にしむらさん

彼女も発声に未解決の問題が残りますが、歌手としての自然な嫌味のない雰囲気があってとても良いです。
これは真似出来ない彼女の持っているキャラクターでしょう。良い財産を持っている。
実はモーツアルトのドンナ・アンナは勉強のために、彼女に課題として与えました。彼女のキャラクターそのものではないと思いましたが、色々な意味で高いハードルを乗り越えて欲しい。未だ間に合いますから、身体を使うこと、発声のことはこれからもとても大切にしてください。そして一音一音の響きの洗練に拘りを持って欲しいです。

「霧と話した」は本番が一番良かった。ちょうど間に合った。持ち歌になるから大切にこれからも歌い続けてほしいです。
日本歌曲はこれからもたくさんトライしてください。きっと持っている自身を更に良く表現する核になると思います。