夜の部 夜の部は初出場組が健闘しました。その分長くやっている人はちょっと足踏み状態という印象でした。
また日本語の歌は、当然ですが大切だし素晴らしい、という思いを強くしました。
逆に、そう思うなら何語であれ同じように大切に扱って歌わなければいけないのだな、と改めて考えさせられました。
まあ生徒の皆さんが終わって楽しかったまたやりたい、と思えたのであれば、コンサートとしては成功なのでしょう。
ホールは夜になると、ぐっとシックで落ち着いて音楽に集中できる雰囲気で良かったです。
それにしても生徒たちを見ていると人それぞれ様々で、こちらの教えることの意味を深く考えさせられます。
一番思ったのは、こちらの教えると思うことに考え違いはないか?という反省です。
人を見てその人に合った、あるいはその人の望むことは何なのか? よく見極めたいと思いました。
あまり力まずに、肩の力を抜いてやらないといけないな、と思いました。

きとうさん 恵まれた容姿に素敵な衣装で実に華やかな雰囲気に包まれたステージでした。大輪の百合のようでした。冷静沈着な方で、声の力を出しつつ加減することも既に心得ている。 まだ発声は緒に就いたばかりで、これから更に勉強して欲しいです。声はあまり加減しないで歌う方が、彼女の場合は声の開発に良いかもしれません。加減するから力みが逆に出るのかもしれません。 ともあれ、語学の才能は抜群なわけだし、恐らく詩の読み込みやイメージも良い人でしょう。発声の方法と肉体的な開発に当面は勤しんで精進されると、素晴らしい声楽家を目指せると思います。また、良いレパートリーを得て欲しいです。自分の好みは何か?どんな声が好きなのか?趣味嗜好もはっきりすると上達の早道だと思います。

はなむらさん 彼女は声楽の訓練は短いのですが、既にして何か自分なりの世界があって、その良い面が上手く演奏に生かされていたと思いました。例えば姿勢が良いのは、発声に良い場合もあるし、実際見た目も美しいですね。形から入る、ということは大事なことです。 これは、発声とかそういうことよりも、彼女自身が持つ強いイメージのせいではないか?と思います。これからは、イメージも大切にしつつ確実な方法論を覚えれば、更に伸びるでしょう。譜面の読み方や、外国語の発音、語感、文法、知識など、訓練を自身に課することで、彼女のイメージは磨かれて、更に本物になっていくのではないでしょうか?

ふじいさん ステージは衣装イメージもあってかオードリー・ヘプバーンもかくや(@@)という雰囲気で、楚々とした風情をかもし出していました。歌う表情が、実は上がっていて不安だったのだとしても、それが絵になってしまうところが得な人だと思います。今回ムジカCのステージは2回目だけど、今回のプログラム、特にベッリーニのアリアはやや荷が重かったかな、という印象。レッスンではとても良くなり、安定して歌えていましたが、本番はブレスが浅くなってしまいました。それなりに歌いきったし、高音も出せたし、それといった破綻もないのだけど、ブレスが浅い声なので、やや不安でした。シューマンはそのために後少し線が細かった。 もう少ししっかりブレスを入れて身体を使えるように、これから鍛えていかなければいけない!と思いました。彼女も音楽経験は豊富、譜読みも早いし知識は豊富、と3拍子揃っているから、後は肉体的な開発が肝ではないかな。肉体的には筋力は充分あると思うので、もう少し身体が柔らかくなると良いかもしれないです。

ふかやさん リハーサルはやや不安要素が出たけど、本番は開き直って男性の歌の良さが出ました。 まずは良かったと言いたい出来です。 彼の良さは気取らない男らしさ、純情さでしょう。 これからは、人柄+テノール声楽家として発声を開発しながらレパートリーも増やして欲しいです。 男らしさと歌の持つナイーブさの両立ですね。 トスティはぴったりなのですが、違う面も開発したいですね。 歌はその気にならなければ駄目だから、レパートリー選びが難しいですが、カンツォーネは数多あるのでその路線を堅持しつつ アリアなどにも挑戦出来るように、発声の基本は今後も徹底して勉強してください。

たつとみさん リハーサルは彼女も不安要素がありましたが、本番の方が良かったです。声を気にしないで思い切って、という部分は実行できたのではないでしょうか。結果的にそれが上手く行かない場合があったとしても、それが出来ただけでも良かった。発声の課題は残っているし、その不安定要素が本番も出たけど、私としては想定内です。レッスンで分かったことが、すぐに確実に出来るようになるのはとても時間がかかります。その点は充分分かった上で、これからも課題を克服すべく地道に積み上げてください。色々歌いたい歌もあるでしょうが、音域に拘らず狭い音域でも音程の良さと、安定した声質を目指しましょう。それから、あまり真面目に勉強しすぎないでリラックスして歌うことも大切ですね。

みねむらさん 彼女には今回とても期待していたのだけど、どうもレッスン時の力が発揮出来ないステージになってしまいました。見た目は上がっているように見えないのだけど、心臓がバクバクしていたのでしょうか?ただ、音響がかなり変わったことやステージの具合などで上がったことも否定できないでしょう。本番はいかに難しいか?良く分かったと思います。 それ以上に彼女が悔しがっているのが良く分かったし、アリアでは表現したいという意志の表れがはっきり見て取れました。あめくさんもそうなんだけど、私が一番心配する、あるいは誤解だと困ると思うのは、もしかすると本人の無意識の歌声に対するイメージが、私が教えようとしていることや求めたいことと、実はずれがあるのではないか?ということです。これは、本人に意識があれば問題ないのですが、あるのだとしたら無意識のイメージみたいなものですね。ともあれ、上がってしまった理由は自分なりに良く分析して明快にしておいてください。そして次回に必ず繋げてリヴェンジして欲しいです。

よださん 彼も自分の世界を作って確固たるものがありますね。 前回のムジカーザに続き、非常に好演だったと思います。 日本語の歌、日本歌曲、それも自分の感性に合ったものをきちんと見つけてきて、発表する姿勢は立派です。 その上で作品の内容を充分咀嚼しているのも立派。 後はもう少し高音が楽に出せるようになれば、素晴らしいですね。 その辺りの発声の方法論は確実に見つけた方が良いと思います。 表現の幅が広がりますから。 これからもよださんワールドを見せてください。 期待しています。

あめくさん 今回のステージも少し上がり気味でしたが、以前のドキドキがすっかり陰を潜めて、落ち着きがありましたね。不安定要素がなくなって、音楽を保持して形を良く見せてくれた演奏でした。発声は直前に直したことが、実行出来なかったな~と思いましたが、そのままの雰囲気で全部歌いきりましたね。私のひいき目なのか、貫禄もついてきて、落ち着いてきましたね。大人の女性になってきた。あれでも良かったと思いますが、やはり本当の意味でのお腹からの声、そして声量に一歩足りないと思います。これからもしつこく発声を注意して、歌ってください。 フランス語の歌も始めたのだし、独学でも少しずつ勉強して自分のものにして欲しい、と切に願っています。

にしむらさん 彼女は風邪をこじらせて、直前のレッスンまで調子を崩していましたが、見事に乗り切りました。調子が良ければもっと声が出ていたと思います。 でも、安心してフォーレの歌曲の美点を味わうことが出来ました。調子もあったので、一概に断言できませんが、彼女はもっと声量が出るのではないかな。それも喉に負担にならずにです。 彼女の歌を聞きながらのイメージですが、もっと声帯を太く使うことも覚えていくと良いな、と思いました。今でも安定して良い歌を歌えるのですが、少し線が細い感じ。 彼女の声は、日本歌曲やフランス歌曲を、今回くらいのホールでしんみり、しっとり聞くにはこれで丁度良い気もしますがそれで終わりという感じもしないな~。 もう少し声を開発できる気がします。

さわださん ようやく発声も安定してきました。後はニュアンスが付いてくると素晴らしいな。 声の、というよりも言葉からニュアンスを作っていけるようになれば素晴らしいのです。 それは言葉の喋る形をフレーズに生かしていくようなことです。 それが出来ると歌曲はぐっと深みが出てくるでしょう。 今のところ、ようやく声を安定して不安なく、また過不足のない声量で歌を聞かせるまでになったと思います。 基本的な声質はとても良いと思います。 このところ彼女のペースに無理なく勉強してきたことが、良かったのでしょう。 これからまたのんびり、でも確実にやっていけば良い歌曲を歌えるようになると思います。 レパートリーなんてほんの少しでも、1曲の価値の高さはとてつもないものですよ。 そういう曲の価値の高さを分かってもらえるような歌手になって欲しいし、なれると思います。

いわさきさん 今回のプログラムはこのホールにお似合いだったし、彼女の声も丁度良い感じでした。アーンは良かった。声の使い方もニュアンスをなくして、イメージどおり。 惜しむらくはブレスがもう少し長いと、もっと凄い演奏が出来ると思いました。グノーもブレスがやや短かった。特に出だしのフレーズはレッスン時と同じく4小節一息だったら花丸だったのですが。上がったのか?調子が乗り切らなかったか? 最後のDites moi のくだりは、練習どおりに行けたけど、ホールで聞くとやはりもう一歩の前への強さが欲しかった。ビゼーは言葉も良く分かり、その言葉のニュアンスが生かされた演奏になりました。これもブレスに余裕があれば、Ritを含めてもう少し間合いが調節しやすかったでしょう。やはり声のキャパシティはブレスと共にもう少し開発してほしいと思いました。今持っている表現力が、それによって倍加されると思います。 彼女に限らず皆さんがそうだけど、楽譜のPというダイナミック表示の意識は、声量のスタンダードをもう少しかさ上げしても良いのではないか?と思います。声量の大小と捉えるよりも、歌い方や歌詞の扱い方でPを表せば良いでしょう。例えばレガートを強くする、とか、声が出ていても言葉の扱いを優しい言い方にする、とかです。