2007年12月8日アコスタジオムジカCコンサート講評

12月8日のムジカC発表会終わりました。
これで、2007年のコンサート終了です。
出演者の皆様、お疲れ様でした。
また、お客様の皆様も、熱演に拍手を送って頂き、ありがとうございました。
客席はほぼ埋まるくらいのお客さんだったし、最後まで帰らないで聞いてくれる方が多く、ありがたいことでした。

さて、肝心の歌の方は?といえば、どなたも綺麗にまとめ、破綻のない安心できる演奏をしてくれました。
あった、としても想定内のことだったので、教える身としては安心して聞けたのです。
細かいことは下の講評をどうぞ。

ところでこのホールのピアノは、何ともいえずソフトで音が良いですね。
弾いてみると、まるでソフトペダルがかかっているみたいなタッチで、クリアな音を出すためには結構指の力が要りそうな気がします。
ホールの響きとの関係で出来上がっている面もあるでしょう。
やはり柔らく静かな音が特徴のホールだと思います。

このホールは、自分の先生の所の発表会では、随分とお世話になったところです。
当たり前ですがそれに呼応するように、オーナーさんも年を召されました。何か持病もあってか、、店じまいも考えた、とのこと。
結局、まだ元気なうちは続ける、とのことで、ほっといたしましたが、何だか寂しいような時代を感じてしまいました。

ともあれ、出演者の皆さんお疲れ様、そしておめでとうございます。
更なる精進を地道に重ねられますように。。。。って、もう来年の2月にまたありますよ!正月休みでのんびりしないように!笑

プログラム

Ⅰ  モーツァルト 歌曲「寂しい森で」(ド・ラ・モット詩) グノー オペラ「ファウスト」よりマルグリートのアリア「宝石の歌」

Ⅱ・イタリア古典歌曲集より 「アマリッリ」 「愛しい人のまわりに」  プレヴェールとコスマによるシャンソン集から 「大きく赤く」

Ⅲ・ドナウディ   「ああ愛する人の」イタリア古典歌曲集より   「眠っているのか、美しい女よ」映画『ニュー・シネマ・パラダイス』より   「シネマ・パラディーゾ」

Ⅳ・フォーレ  「あさやけ」  「愛の夢」  「イスパハンの薔薇」

Ⅴ・山田耕筰  「からたちの花」 フォーレ 「リディア」 イタリア古典歌曲集より 「みそさざい」

Ⅵ・トスティ 「理想の女(ひと)」 「薔薇」 ガスタルドン 「禁じられた歌」

Ⅶ・ダウランド  「流れよ、わが涙」 ヴェーベルン 「岸辺にて」 「入り口」 ダウランド 「時が立ち止まり」

Ⅷ・パーセル  「夕べの賛歌」」  モーツアルトのオペラ「フィガロの結婚」より  伯爵夫人のアリア「愛の神よ、照覧あれ」 ドニゼッティ「シャモニーのリンダ」よりリンダのアリア「この心の光」


CN

彼女、GPでは少し緊張が出ていた、逆に緊張が出せたせいか、本番は安心して聞ける演奏であった。
モーツアルトの歌曲はフランス語の発音が声とあいまってとてもリアル。要するにフランス人の歌手の声っぽさが垣間見られた。
声自体は明るくとても綺麗だ。強いて言えばもう少し声の響きが深くなると、モーツアルトらしさが出る。
これはアリアも同じ面はある。アリアは、緩急の緩を教えたら、こちらが勝ってしまった。やや粘り過ぎたか?
最後の高音は、レッスン時よりも良く伸びて歌えたと思うが、後一歩の技術的安定を!
課題は首の姿勢だろうか。顎が出ない姿勢は基本的に大切だから。
まずはおめでとうございます。


KM

急な出演決定もあって、暗譜に至らず厳しかったが、思い切ってしっかり表現する彼女の美点は充分出せたと思う。
ピアノを弾いていても実に楽しかった。声は良く出せていたし、かなり情熱的に歌えて好感が持てた。
声としてクラシック、声楽、のスタイルではなかったが、これはあえてそういう風に教えていないので、良いと思う。
要するに彼女の一所懸命が声になった時に、音楽のつぼにはまる、その点を評価したい。
これからも機会があったら、ぜひ声楽にもトライして頂きたい。
おめでとうございました。


KH

3曲とも、丁寧に美しく歌えていた。微妙に緊張があったように思ったが、それがあまり表に出ないところが強みなのであろう。
強いて云えば、ニュー・シネマ・パラダイスが一番良かった。
元々の歌の作りもあるが、歌詞が旋律になっている実感が感じられた。他の曲も同じことだと思う。
課題としては、声帯そのもの、喉頭そのもの、の使い方の訓練だろうと歌を聞きながら思った。
声帯のエッジとでも言おうか?が少し弱い感じがした。いわゆる筋力不足みたいなものだろうか。
喉を痛めないよう注意しつつ、その部分に特化した練習をして、声帯のしっかりした、良い意味で喉をしっかり使えるようになって欲しい。
おめでとうございました。


SA

本番直前の合わせが、もう一つだったので心配したが、本番に間に合わせてくれて、結果的に良かった。
歌は声が前に集まって、しっかりしていたのが印象的。
ピアノは、フォーレらしさがとても良く出ているものだった。
歌声は強いて云えば、もう少し喉がリラックスするためには、下顎が逆に使える発声になれば良かった。
そのことで、発声がもっと柔軟にリラックスした喉になると思う。
声を前に集めすぎるために、少し喉が締まってしまうようである。
その辺りを課題に次回に繋げたい。
おめでとうございました。


HA

どの曲も楽しそうに、明るく華やかな歌声で観客を魅了してくれた。
このところ、発声を憶えつつあるが、後もう少し練習して確実にして欲しいと思った。
課題は、ブレスと高音の発声。
ブレスかもしれないし、あるいはフレーズを歌う時のお腹や身体の使い方の問題かもしれない。
すべて教えたことなので、後はどれだけ自分のものにするか?であろう。
お腹で踏ん張らないで息をもっと声にして高く吐き出そう。
発声はとても大切であり、それで表現力が倍加するから今後も良く研究すると良いと思う。
おめでとうございました。


FT

トスティは安定していたし、時として歌詞の内容を伝えようとする、何か意志みたいなものが、声に現れる時があって
はっとさせられたのには、驚いた。
お客様には些細なことでも意外と伝わるものなのである。
声だけに任せないで、内容を伝えようとする意志や知性を大切にしよう。そのことが声に反映されるのだから。
最後のカンツォーネは、発声の課題が見えたと思う。
1曲の中にあるブレス一つ一つ、母音発声の一つ一つを、綿密に検証して勉強していく緻密さも大切にしよう。
そこからこそ、本当に良い声が見つかるし、高音もものになると思う。
そしてそのことで本当に長続きするものである。
おめでとうございました。


FA

声は良く出ていた。当初声が聞こえないのでは?と最後まで心配だったが杞憂に終わってよかった。
その分、ピアノを弾く行為と歌う力とが、上手く噛み合わず、特に1曲目は声が震えてしまったのが惜しかった。
ただ、これも力まないと、逆にスカスカで聞こえないということになったと思う。
そういう意味で今回は弾き語りの第一歩ということに意義を感じて欲しい。
最初の一歩がなければ、後も続かないのである。
それでもヴェーベルンから最後のダウランドまでは声の問題はほぼ解決していた。ヴェーベルンのIntimeな表現があの会場とピアノにピッタリであった。
今回のようないわゆるロマン派ではない、現代ものやルネサンスものが弾き語りに合っているが
逆にロマン派、シューベルト、シューマンやフランス歌曲などにもどんどん挑戦して頂きたいと切に願っている。
おめでごうとざいました。


WH

彼女は頑張るから、きっと良い結果になるだろうと信じていたがその通りになって、良かった。
一番バランスが良かったのはモーツアルトのコンテッサのアリアだろうか。
パーセルも良かった。声が息と共に良くジラーレしていて良い中音域の響きであった。
シャモニーのリンダのアリアは、レシタティーヴォの語り口が上手くなったのには驚いた。
後は歌う表情。GPで言いそびれて心配していたが、本番では、歌っている間中、発声の顔ではなく演技の顔になっていた点は高評価を付けたい。
ただ、イメージだけに頼ってしまったのが惜しまれる。
ただ、このアリア、声は技巧的に難しいから、やはりどちらを先にとるか?といえば、発声であろう。
しかし、これも時間がかかるので、これから積み重ねて欲しい。
課題はブレスと高音域の発声だろうか。両者は一対なので、喉だけで考えないでブレスから考えて欲しいと思う。
おめでとうございました。