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「夢の後」にの続きです。今回引用している楽譜は、中声用です。
この曲は、とても甘い旋律ですから、ただ歌うだけでも充分に美しいですが、それだけではフランス語の美しさとフランス語によらずしては出せない、音楽が本来持つ美しさを表現できません。
たとえば、一つの単語がいくつかの母音で構成されている訳です。それがメロディーに乗っている場合、どの母音が良く響いて、どの母音が押さえられるべきなのか?あるいは、色が変わるのか?というポイントをつかまなければなりません。
→楽譜1

楽譜1の図に赤で記したような母音の出し方の工夫は、枚挙にいとまがありませんが一例として挙げました。
しかし、これらの母音の変化といっても、レガートな唱法の中で、と但し書きがつくことは言うまでもありません。
Nu-esの語尾のeは、e muet...といって、歌の時だけに発音されものです。このようなあいまい母音のEは、筆をそっと離すように最新の注意をはらって、発声されなければなりません。
→楽譜2

楽譜2の図の赤が示す意味は、この曲の最高音であり、曲の頂点である部分の出し方の問題です。
ここで、オペラのようにアウフタクトに重点を置いて、次のFの音を重々しく出してはいけません。
詩の意味を必要以上に強調し過ぎることになり、フランス的な中庸な表現から遠ざかり、悪趣味になってしまいます。そのような音楽はむしろ冗談、笑われてしまう材料でしかないでしょう。

さっさと、発音すること。早めにアタックすることが、大事です。そのことが、高音を出し易くすることを導きます。

下の意味、これは最後の長大なフレーズの前の表現でReviens..戻ってこい!の意味を強く印象づけるために
その前の繰り返しているReviensからの続きでブレスをしないで、軽く区切ること。そして苦しい息を逆手に取ることにより、Reviens…戻ってこいの意味が強調される…という一石二鳥を狙っているのです!

→楽譜3

ここで、ピアニストの皆さんへ・・・・楽譜3曲の最後にかけてMysterieuseを歌手が一息で歌いきりますから歌手がリタルダンドをよほど望む場合以外は、決してリタルダンドをしないで下さい。
ここの部分に限らず、この曲の伴奏部はすべて八分音符の同一リズム形ですね。このような場合は、歌手のフレーズを良く観察して、特に長い音、付点の長く歌う音の時に八分音符の動かしかたをどうするか、細心の注意を払って欲しいと思います。
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