6年ほど通ってくれた方が、この半年余りの間にとても成長しました。
指導する身としてはとてもうれしかった。

彼女の場合は、情報量が多すぎなかったことが逆に良かったと思ってます。
ひたすら愚直に言ったとおりのことを実行しようとしてくれました。

ただ、愚直なあまりにこちら立てればあちらが立たず、という状態が5年続きました。
でも無駄ではなかった、ということが証明されたからでもあります。

マンツーマンのレッスンは、先生が責任を以て教え、生徒が先生を信頼して学ぶという信頼関係が確実に成り立つことが必須です。
そのことによって先生が教えたことを教えた通りに実行でき、指導内容を確実に理解し自身で実行できるようになれば、レッスンに通った目標はほぼ達成したと言えるのです。

どういう方法を取ると短期間で上達するのか?ということには皆さん興味があると思います。
私なりの結論は、信頼できる相性の良い先生を見つけて、しっかり長く付き合う事です。
従って信頼できる先生を見つけることに、注力すべきです。

先生は信頼されているな、と思うと持っている以上の力を発揮します。
発声法とか呼吸法とかのマニュアルの選択以上のものがあるのです。

これは単なる精神論ではありません。

例えば。
先生が、ある生徒を教えていても、どこか信頼されていないな?とか、重く受け止めてくれていないな、と思うと、
自分の持てる力を発揮できないことは想像できると思います。

生徒から信頼されているな、と思えばこそ、思う存分自分の持っている限りのことを注力するものです。
それは、人として当然のことではないでしょうか?

こういうレッスンという仕事は、人間の持つ能力を生身の人間に伝える仕事ですから、お互いの人間関係がものを言います。
生徒としてはお金を払って指導を受けるわけですが、お金を払って時間と情報を買う、という単純な話ではないのです。

学んだり教えたりということを端的に言い表した言葉を、フランスの詩人ルイ・アラゴンが簡潔に述べています。

Enseigner, C’est dire espèrance étudier fidélité
「教えるとは希望を語ることであり、学ぶとは誠実を胸に刻むこと」