TNAさん

ヘンデルのLascia ch’io pianga そしてベッリーニのVaga luna共に、音楽的に良い集中のある歌声。
発声のレベルは、まだ課題は多くあるが、良い集中で歌えていることの美点を評価したい。
本番が終わってから、声のディテールは再び開発すれば良いと考える。

発声においての喫緊の課題は、ジャンニ・スキッキである。
出だしのフレーズで出てくる、2点Asの高音が決まらない。
これの練習で、何度も何度も挑戦してくれた。
最終的には、安定したポイントがつかめたが、まだ確率は7割くらいか。
本番前、伴奏合わせで、9割くらいの確率を目指したい。

練習方法は、喉頭よりも更に下のくぼみを狙って喉を開けるようにして当てる方法。
スタッカートで練習を始め、音程が決まればレガートで練習。
最初は多少切れ目が出ても、良い音程で一気に決められるかどうか?が基準。

ある程度は、何度も確実になるまで練習する必要はあるが、喉を傷めないよう、やり過ぎないように注意が必要である。

TSSさん

ドナウディのAmorosi miei giorni から。
下の声区の声がうまく使えるようになってきた。
課題はこの境目の1点Fを中心とした前後の声の扱い。

上から下りる場合は、よほどの事がない限りは、声区を変えないで上の声のままで出すこと。
下からの場合は、更に低音であれば、声区は意識して変えたほうが良いだろう。

今日のレッスンのトピックは、支えがない声を充実した声の響きに換えることについて、となった。
音域で言うと、大体2点Cくらいから始まるフレーズの出だしになる。

声帯をあえて開いて、息を通してファルセット的な響きで出だすため、特に中音域で支えのない声になる点を指摘、修正した。

これには、口の開け方がかなり影響をしている。
下顎を少し前に出すようにして発声するため、いわゆる「当らない声」になり「白い声」になる。
下顎を前に出す癖は、とても感覚的なことなので、本人がかなり意識して、練習に当たってほしい。
このことだけで、かなり改善されだろう。

ヘンデルのPiangero la sorte mia は全体的に声の響きがまとまって来た。
細かい音符のメリスマは、これも声帯が開きやすいので、練習を重ねた。

この声の開きで特訓になったのが「ドレッタの夢」
出だしの2点Cは、息を当てて出すのではなく、声帯を閉じて響かせる、という逆のイメージになると思う。
恐らく、下顎を前に出すのは、喉を使わないで息を出そう出そうとするためになった結果だと思う。

この場合、下顎を前に出すのではなく、むしろ後ろに少し引きいれるように開ける、という方法を練習してみてほしい。
要するにChi’ilと発音する場合に、子音発音時から、下顎を後ろに引くようにして発音し始める、ということになる。

後半の2点A以上の高音は、逆に喉奥を良く開いて喉の更に下の鎖骨のくぼみに当てる方式を練習してみた。
当てる強さと軟口蓋の上がり具合で音程が決まるので、最初は単純なスタッカートで、当てる練習をしてみると良いだろう。
適度な当て具合で、安定して音程が綺麗に出せるフォームを見つけることになる。

MTさん

水車小屋の娘から4番~7番まで。伴奏合わせだった。
ソルフェージュも問題なし、メロディラインの音程も確実、ということで、アマチュアレベルで言えば特に文句のない出来であったが、
ドイツ語の発音のディテールと声質について指摘した。
声質は、声の通りや聞こえ方にも影響があるので、単なる嗜好ということだけではない重要性がある。

大きく言えば、声が高く前に響くが細いため、ドイツ語的な深さと柔らかさに欠ける印象があった。
発音については、特にOウムラウトの発音が、ほとんどEになることと、深いUが時々前に出て浅くなることを指摘。

しかし、根本的には発声と関係があると思われる。
SagenとかWie、Derなど特にZ,W,Dなどの子音は、喉を下げる働きがある。
この子音の働きを利用した深みのある声を指摘。
発声全体としても胸に楽に響かせるくらいに、声のフォームを良い意味で落とすことで、喉の楽なリラックスした声が聞かれるようになる。
あとは、伴奏とのアンサンブルでテンポの調整が主になった。

HKHさん

体験後1回目。
今日は、やや喉が疲れていたようで、前回よりも気息的な声の響きだった。
それは前回同様、彼女の固有の姿勢で歌うことの意味がより鮮明になったという意味では良かったと思える。
というのも、やはり顔を上げて歌う姿勢が、喉の状態にに依存しているということが判るからである。

結論からいえば、やはり顔を真っすぐ前に向けた姿勢を大事にすること。
そして、ブレスを早く覚えることである。

大別すれば、顔の位置を決める姿勢は、喉の状態を決めるということ。
そして、ブレスは喉の使い方を決める大事な要素であるということ。

喉の使い方が決まらないと、ソルフェージュ的に言うリズムが決まらないことと、音程も決まらない。

歌声を器楽的なものとする結論は、たとえば、伴奏がなくても音程がしっかり決まっていること。
たとえば、アカペラで1曲歌ったとすると、最後まで音程の崩れなく歌えるかどうか?
同様に、アカペラで歌っても、リズムを正確に刻めるかどうか?ということ。

ブレス方法を含めた、発声を覚える意味は、単に良い声や高音を出すことが目的である以前に、
このような基本的な音楽性を身体に覚えこませることが、とても重要である。

Le violette
Batti batti

いずれも、ほとんどの時間をリズムを正確に歌うことに費やした。
声も時々修正したが、もっとも効果があるのがハミングをしてピッチを合わせてから、母音に変換する方法だった。