10月31日のレッスンをしてつらつら思った事など・・・

ある程度の発声の技術を会得すると、歌声が良く響くので、調子に乗って何を歌うのでもビンビンと響く声で歌ってしまいます。
しかし音楽の全体を客観的に味わってみると、ビンビン響く声がその音楽の有りように呼応しているわけではないことに気づくはずです。
あるいは、気づいても響かせる技術しかないのかもしれません。

問題なのは、音楽全体を客観的に聞いても、声の抑制の必要性に気づかないことかもしれません・・・
もう一点、技術的にこの良く響かせるという技術が、表現全体を固着化してしまうことです。
つまり、常に声を良く響かせないといられない、という状態になってしまうことです。

これは単なる習慣による癖に過ぎないのですが、小さい声は聞こえないのではないか?という精神的な要素によるのだと思います。

しかし、実はよく聞こえるのです。

考えても見てください!
1000人収容のホールでも、演奏中は驚くほど静かなものです。
そしてホールは反響の長短に関わらず、音が響くように出来ているのです。

発声の基礎が確立していない初心者の場合は、声を抑制することが悪いフォームを作ってしまうことになる場合もあるので、注意が必要ですが、
支えのある歌声でフレーズを歌いまわす技術がある人は、怖がらずにPやPPというダイナミクスに忠実に歌ってみてください。

まず本番でも怖がらずにトライしてみる事です。
誰も失敗だとは思わないでしょう。
下手な音が良く響くより、響かないほうが良いではないか!?というくらいに開き直ってみましょう。

さて、練習時は、PやPPで歌おうとする時に身体の何に集中するのか?ということです。
基本は呼吸でしょう。
呼気を抑制することと、呼気の出方を音程の跳躍に関わらず、滑らかに平らに歌おうとするはずです。

今日のレッスンの方、バッハの「マタイ受難曲」からAus liebeを歌いましたが、正にこの曲は良い声の抑制が必要な音楽表現です。

音楽の全体像が表現しているものに忠実に声を扱えるように、声を良く響かせられるようになった人は、今度は抑制することを覚えてください。