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ラヴェルの「2つのヘブライの唄」から。
メロディラインは、ほぼ民謡を採譜した形と思われるスタイルなので、音楽が頭にある程度記憶されたら、細かい16分音符や3連符はこぶしと思って歌うべき。
クラシックも本当はそうですが、小節線とか拍節を意識しないで線をいかに息で陰影をつけて歌えるか?ということが、声楽の美点なのですから。

それから音程感の問題。
これも民謡に良くありますが、ピアノの平均律的な音程感で歌っても、このメロディの良さが伝わりません。

低めに取るところ、高めに取るところは、ラヴェルが上手く伴奏和音で表現していますので、音律を良く感じて音程感の微妙な違いを歌声で表現できるようになってください。
この曲の良さは以上です。

2曲目の最後の高音は、ドラマティックに!
しっかり吐き出すように歌うべきです。

プーランクの「偽りの婚約」1,2,6を練習しました。
この歌曲集で大切なことは、Mezza voceです。

彼女の歌声が換声点の直前辺り、5点D~Eあたりで、音程感が悪いのは声を押してしまうからでしょう。
つまり声帯の当たりが太すぎるか、声門を閉じすぎという感じです。
声門を少し開いた、息成分が少し混ざった声の出し方が判ると、非常にきれいな音程感による表現で歌える曲なのです。

この点が、一般的な声楽家の方にとって難しい作品です。
声楽家は息をなるべく漏らさない発声、そして声量重視の発声をするためきれいですが、曇りがないため陰影が感じられない声になります。

息を混ぜる、という発声のありかたも、表現の一つとして覚えられるようになってください。
特に近代のフランス歌曲の表現には重要な点です。

もう一点、この曲はとても若い女性が自身の恋愛観を詩に託したものですから、若さとかギスギスしたようなナイーブさが大切です。
安定してしっかりした声量は似つかわしくないのです。
キラキラした部分と弱弱しい部分の対比、光と影というような陰影のある歌声を研究してください。

モーツアルトのオペラ「ポンとの王ミトリダーテ」のアリア「私の胸を締めつける」
1回通しただけですが、彼女の6点Cの声はとても素晴らしいものがありました。
コロラトゥーラの高い資質を感じさせられました。

これにプラスして5線の中の声の扱いに習熟すれば、なかなかなものになる素質がありますので、中高音のレガートが歌唱と換声点で喉が上がる点を克服してください。