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発声練習で感じることは、全音域でバランスが取れた印象があること。
出来れば、低音の声質ももう少し密になることと、その声質の柔らかさがあること、
まだ舌が固くなる傾向が、A母音に残ること。

頭の中にある日本語のアという意識を消して、IからAに響きを変えないで変化させる方向をいつも思い出してほしい。
具体的には胸声を使うが、鼻腔の響きを利用する感じ。

一方、高音への換声点直前でもう少し喉を下げる力が働くことを弱めるべき。
4点Dくらいから、息を詰めて出している感じが強いのである。
喉に飲み込まない、という点を、くれぐれも徹底してほしい。

飲み込んだ感じになるのは、もっと上の4点G以上からなら良いと思う。
A以上でもよいくらい。
4点Gはアペルトで強弱のコントローラブルになれば理想的。

4点C~Fくらいまでは、フランス風のVoix mixteという技法を覚えると、フォーレやドビュッシーなどのフランス歌曲に非常には有効な武器となる。
声帯が微妙に開いた息が混ざった声だが、ファルセットではない。
強弱をつけるのが自由な出し方という点が特徴である。
ただし、弱声の際にくぐもった霧のような感じだが明るい声質である。

カミーユ・モラーヌがこの声を多用してフランス歌曲を歌っている。
彼はこの音域から高音まで、スピンとな声も使えるのだが、それはよほどドラマティックな音楽に限られる。
声色の幅が非常に広いのである。

フォーレの「ひそやかに」では、冒頭の3点Gで始まる声質について練習。
軟口蓋を上げないようにしないと、どっちつかずで薄い声になるだけで口先の声になるだろう。

口先の声ということでいえば、しばしば声の響きが抜けるのがA母音。
これを注意してほしい。

短いカンニングブレスなども、響きが抜ける原因になっている。
特に3点G以下に降りるフレーズなどでその傾向が顕著。

改めてブレス時のお腹を観察していると、腹筋と背筋があまり使われていない感じであった。
良く言えば力まないブレスで良いといえば良いのだが、自分も経験があるが、軽いテノール的な声になりやすいだろう。

このあたり、彼の本質がテノール志向なのか?バリトンの声に魅力を感じているのか?という部分も大きい気はする。
本人の自覚が明快にならないと、肉体改造ともいえる発声の開発に至らないからである。

En priereでは、出だしのSiのI母音の響きから修正した。
口を横に引かないで響きを集めることと、喉が開いているおなかのついた声であること。
それは、声の強弱と関係なく必要なことであること。

それから語尾のあいまい母音が狭く暗くなる点を修正。
基本的には、語尾のあいまい母音になる前の母音の口の形のまま舌だけを動かしてあいまいにすると上手くいくはず。