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プーランクの「偽りの婚約」4曲目を抜いて全曲を練習した。
基本的に彼女の歌声にピタリと合った選曲と感じた。

声の良さは、高い喉から低い喉へ、という音域に応じた素直な声質の変化が器楽的で、
この曲の伴奏の和音感にしっくりくる歌声を実現していること、あるいはその可能性が高い音楽性を持っていることだと感じた。

1曲目は強弱のニュアンスの違いを、語る感情の強さと感じて歌うこと。
ピアノ伴奏は、その声のニュアンスを先回りして用意して弾くこと。

2曲目は良く歌えて曲の音楽を良く表現できていた。
それは和音の変化に、声のピッチがぴたりと寄り添っていたからである。
これも音楽の理解力の賜物だろう。
声楽家は、ややもすると、こういう素直なメロディラインの歌い方が出来なくなっている人が多いのは、響きを出すことにばかり意識が行くからだと思う。

3曲目、テンポが遅めだったが、音楽が堅実で好感が持てた。
なんでも早く歌えばよいというものではない、という素直な彼女らしい音楽性の発露ではないか。
とはいえ、歌いこみが進んだら、もう少し歯切れのよい語り口になり、必然的にテンポが速くなることを期待したい。

5曲目。
伴奏の付点音符と32分音符の歯切れの良いリズム感を希望したい。
どちらかというと、楽譜指示通りの強弱は、この曲の雰囲気からすると強すぎると思っている。
ダイナミクスはピアノも歌も1個分減らして丁度良いのではないか?
例えば、前奏の伴奏はメゾフォルテではなくメゾピアノくらいという具合に。

ただ歌の語り口は、強くはきはきとした方が良いだろう。
それは、最後の歌に対する伏線になっていることもある。

最後の曲「花」
これは全体に声のトーンとピアノのトーンが強すぎる印象だった。
良い意味で、少しくぐもった声の響きと、それに呼応したピアノの響きが全体のトーンを作り上げている方がふさわしいと思う。
そして、中間部でメゾフォルテの指示があるところで、輝きのある厚みのある声が表現すること。その力強さが象徴的なイメージになると素晴らしい。

この少しくぐもった響きは、口を開けて喉奥を広げた感じで軟口蓋に息を充てるイメージで歌うと良いだろう。
ピアノ伴奏もソフトペダルを十分使ってほしい。

冒頭のFleurの二重子音は、子音発語時に軟口蓋にD♭の音程を出す意識を持たせると良い。