EK

発声の声はとても調子が良く、中高音の5点Aくらいまでは太くしっかりした歌声だった。
実際は、Bachのカンタータ78番のデュオを練習したのだが、これも調子が良かった。
元気が良く活発な歌声になっていた。
何かバッハの音楽そのものが、彼女の歌声をバックアップしていたかのようであった。
彼女の歌声にはつくづくバッハが合っている、と思わされたのである。

彼女はソプラノを歌うので、低声側の声としてはいかにきれいにハモれるか?という低声の発声の問題が課題となるだろう。
その点を、良く考えておきたいと思った。

グノーのミレイユのアリアも大変良く歌えているが、やはり最高音周辺で喉が閉まり気味である。5点b~6点C辺り。

この曲は子細に見ればPの指示が多いので、まず必要な弱声で歌う箇所と強く歌う箇所の区別をまずはっきりつけること。

その上で高音発声に向かうフレーズでは、高音に上るほど呼気で歌声が出てくる意識を明快に持つこと。
声の響き、特に中高音の当たった響きのまま最高音に上るから、締まってしまうのだろう。

喉の低いポイントで声が当たっているという状態で、軟口蓋を高くして呼気の力で高く歌いあげる、というイメージである。
ただ喉を開けるといっても、声が当たらなければ開けた喉の意味がない。

このことを理解してもらうために、次回のレッスンではもう一度スタッカートでの最高音域の練習をしてみたいと思う。

MR

今回は発声練習で徹底して頭声発声の練習をした。
高音の正確な音程と良く転がる柔軟な喉を訓練するためには必須の練習である。
換声点から上の領域では多少苦労しているが、対処は出来ている。
5点Aからさらに上になると、少し喉を合わせる発声を意識しないと、よりかすれてしまう。

だが、問題はむしろ高音よりも換声点の直前辺りの下の声区との融合にある。
彼女の声は
その意味で、ハミングが必要なのだが、口先を開けないで歯をかみしめてやるハミングが有効。
それは、喉の使い方の問題が絡んでいるからだ。

完全な裏声と胸声の中間の振動の仕方を覚えないと、本当の意味での頭声発声のメリットが得られないのである。
その意味では、なるべく高音まで、少なくとも5点Aまでは、歯を噛み締めたハミングで音程がきっちり合った芯の感じられる発声が出来ることが一つの指針だろう。

この練習を経て、ドニゼッティのRegnava nel silenzioを練習した。
高音発声の細かい音符の動きを徹底練習したが、大分進展したことは感じられたのだが、苦しい感じがまだ残るし、基本的にとても難しい音程である。
これを綺麗に対処するには、発声云々以前に、厳しい練習の積み重ねが必須であることは論を俟たないだろう。
とにかくピッチを確認してゆっくり練習することを積み重ねるのみである。

次にベッリーニのOh quante volteを練習。
個人的に思うのは、音楽から何とはなしに感じられる歌声の重さを考え、
頭声発声優位の方法をやめて、喉の低いフォーム、つまり中低音の喉を基準にして
換声点の発声を意識した練習に切り替えてみた。

これがぐっと調子が良く、息の通りが滑らかでしっかりした歌声になった。
ポジションが低いので高音発声は楽に聞こえる。

ただこの発声でそのままドニゼッティのアリアが対処できるか?
未知数なので、次回この方法でトライしてみたい。

AC

発声練習の声は、彼女らしく息の強いフォルテの歌声である。
ただ換声点の対処が上手くなって高音5点Aまで楽々と出している印象だった。
低音も4点Gまで歌唱可能な発声になっている。
安定した健康的な歌声だ。

プーランク=アポリネールの歌曲から Le pont
これも、最初は声がフォルテで強すぎた。
かなりPを意識すること。
あるいはPPも。

具体的な発声方法は後回しで、とにかく小さく歌うことを徹底。
小さく歌おうとすることで、音程感やリズム感への気配りが回るはずである。

歌ってみると判るのだが、意外なほど音程を取るのが難しい面がある曲だ。
正確に音を取って抑制した歌声と、しっかりした声とのメリハリを良くつけて歌うと良い。
歌詞の意味を教えたが大事なことを言い忘れた。

平和な風景の中に潜む戦争の傷ということを言ってる。

Un dieux! C’est pour toi seul que le sang,coule
Tu reviendras hi!oh!la-bas
Tous les enfants savent pourquoi
Passe,mais passe donc ne te retourne pas

優しい目線と反戦への強い意思の違いを歌声で表現できるだろう。
フォルテとピアノという歌声の違いで。

一方、Montparnasseも歌詞の解説をした。

基本的にアポリネールが自身のことを歌っている、いわば肖像画とみて良い詩であろう。
詩の内容は、芝居の脚本で言えばト書き(背景描写)の部分と、本人の語りの部分。
ト書きように感じるのだが、いつのまにかそれは本人の内面の述懐になっているわけである。
特に中間部のVous conaissez de son paveの件は出色の出来であるから、歌声には充分に注意してほしい。