HA

発声練習では、久しぶりにハミングを練習し、母音に変換する方法を試みた。
変換時の舌の返し方を工夫して、明快なA母音になるように。
これを練習すると、中低音の声がもごもごとこもらずに明快になる。
恐らく、舌の状態の問題が大きいと思う。

中低音発声で、特に大事なのはこの点。

それにしても、彼女の発声はこのところ伸びていると感じる。
発声練習よりも、実際の歌になった時に良さが発揮されるのは良いことだ。

それは発声の基本もあるが、経験と本人の表現意欲が大きいだろう。
元々彼女は表現をしようとする意図が明快なタイプであったが、発声の技術的な問題とリンクしていない部分があった。

つまり表現先行だったのが、このところ急速に両者が合致してきたと思う。

ドナウディのAmrosi miei giorniでは、特に中低音のピッチと響きが高くなり、音楽的になったし、この曲特有のMezza voceが細くきれいに出せている。
ベッリーニ「清教徒」のQui la voceも、前半のゆったりした声の扱い、後半の若々しいコロラトゥーラの歌声共に、オペラらしい華やかな歌声が発揮されている。
最後に、以前に取り上げたことのある、フランクのPanis angelicusを。
ボーイソプラノの声というイメージで、高い倍音を意識した、いわゆる喉の高い発声と、逆に喉の低い発声で歌い比べてもらった。

私の感想は、後者の方がピアノ伴奏との和音感がよいアンサンブルになることと、
宗教的な静けさという意味でも、喉の低い声の方が落ち着いた声質という意味で良いと感じた。

ただ、実際のホールではまた別の印象になる可能性もあり得ると思う。