前回のブログで、歌の本質が語りであることを書きました。
必然的に呼吸は語ることから生まれるというようなお話でした。

そうはいっても、素人の方がいきなり自然な呼吸法で、声楽に必要な発声や歌唱が出来るわけではありません。
前回のブログで言いたかったことは、何か「特殊な技法」が存在してその技法を訓練によって会得すれば「魔法のように素晴らしい声や声量になる」という考え方は幻想に過ぎないと思ったのです。

もちろん、訓練すれば声質が艶やかで声量がある歌声は誰でも得られるでしょう。
しかし、それだけで音楽性の高い歌声になるのか?と問われればそれは単純には行かないのです。

声楽に限らず、歌手を目指す者が最初に知っておくべきことは発声法や呼吸法を訓練することと共に、良い音楽表現を目指すための知性を身に着けることです。
かつての自分もそうでしたが、名歌手たちの録音や録画あるいはコンサートやオペラを聴いて、憧れて声楽家になり訓練すれば憧れた存在になれるかもしれないと言うことは考えない方が良いでしょう。
そのような幻想からはなるべく早く目覚めてください。

いや、一つのきっかけとしては良いでしょう。

しかし、あなたが頑張るのは目の前の楽譜にある音楽に対してなのです。

歌うのはあなたなのです。

そのためには、なるべく楽譜と付き合う時間を長く取ること。楽譜の分析です。
同時に、一人の作曲家の時代背景やその文化、歴史などを勉強してください。
もちろん、外国であれば歌詞の詩の翻訳のための外国語の習得なども重要です。

つまり発声と呼吸と言う肉体の鍛錬と同じかそれ以上に、知性と教養を身に着けることがとても大事なのです。
あなたが憧れるその音楽作品の中には、常人では計り知れない知性と人間性が詰まっているのですから。