レッスンノート目次

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8月31日

今日は澤田さん。曲はグルックのオペラ「オルフェ」から「エウリディーチェなしに・・」そして、モーツアルトの「フィガロの結婚」伯爵夫人「どこへ…」彼女は喉が開くのだが、軟口蓋がもう一つあがらない。前に当てる発声が分かるのだがそのまま息を止めてしまう。発声のなかでも声を当てる行為は、いわば曲線のなかの一点を見るに等しいことになる。

曲線はフレージングだ。この両者は不可分でどちらかが欠けることは出来ない。そのために発声練習はスケールでやったり、アルペジオになったりするのだ。ピアノの練習も同じだがハノンを単なる指の練習だと思っているとまったく駄目である。5度のスケールには5度のスケールを導き出す作法があってそれを分からなければ、教えなければ意味がない。

フレージングの基本型山形を教える。もし、平坦な道と山坂道と総合的に平均的な速度を出すためには上りで早くならなければならない。自動車で高速道を走る時同じ速度で走っていても坂になると何時の間にかアクセルを踏む足に力がはいっているのが分かるだろう。
上がる時はエネルギーが要る、エネルギーを出すということは平坦な道を歩くよりも感覚的に早くなるはずだ。それを調節するのが簡単に言えば腹筋だ。オルフェは明らかにメゾの曲で音域が低い。全体に低いのでなかなか気が入らないみたいだ。
モーツアルトは一転して高いが、ポジションさえ掴めばかなり行ける。
少し高めの曲で練習することにした。ケルビーノにも挑戦してもらうことにした。

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8月30日

高橋さん。今日は2度の上向音程で徹底的に発声練習。その後5度のやはり上向、そして1オクターブのアルペジオ、そしてソーソードーソーミードでAVE-MARIA。2点Bまで、30分かけた。チェンジの繋ぎに難点が残るが、どうにか・・
喉の開きはまだまだという感じ。ただ、自意識があるので、大分マシだ。
あとは、呼吸のコントロールが出来ていない。地声の領域になると少し声が押し気味だ。
全てを一遍に教えるのは混乱の元なので、そこには言及しなかった。

フランスのロマンス曲集を持ってきた。譜読みは早い。彼女は語学に興味があるし英語は元々仕事で少し使っていた人なので、フランス語はすぐ読めるようになったし、言葉の意味を拾っていた。
最初母音で歌い、すぐに歌詞をつけた。ポジションが高く、喉声になるので少しポジションを低く意識させたが、今度は声が鳴らなくなり、前に出なくなる。
暗いぼ〜っとした声になるのだ。

特にイの母音が下唇から全部落ちてしまう。最初の音が1点Fの音でイの母音で始ると、地声は出ないし、チェンジしてすかすかになってしまうのだ。一旦今まで教えたことを全部捨てて、軽く前に声をあてさせた。むしろ平べったく。悪い影響は早めに捨てないと駄目だ。
難しいな・・・

ところで、歌における「歌詞」というものは喋り言葉とはまったく違う世界を持つ。
音や音色、動律・・という限定した枠組みの中で言葉を生かす作業である。
意味は調べる必要があるが、その前に音楽(旋律の形)から類推した声の使い方を組み立てなければならないと思う。
熟練してくると意味(訳した)がわからなくても、かなり正確に意味に沿った音楽に仕立て上げることが出来る・・・

我々の仕事(声楽)は、響きの中に魂を込めること。これは、人が住めるような家を建てる手順と同じだろう。熟練した大工は設計図だけで、依頼人の心の中にあるイメージ(言葉で説明できる)を作り上げることが出来るだろう。

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8月27日

典子さんが来た。彼女は熱心だ。最初いつまで続くかな・・と正直思ったがこういうことをやるエネルギーは彼女のどこから湧いて来るのだろう・・?自分が教えていながら不思議な気がする。

発声を難しくは教えたくないのだが、そこそこ声が出るようになったし、本人の積極性が見えているのでついつい時間をかけてしまう。声を出す瞬間、アタックの際にあごを前に突き出す癖がある。これは概して誰でも大きな声を出そうとするとあるのだが、いわゆる喉声になってしまう。

声帯に圧がかかるので、あごを前に出して見かけ上の喉を開こうとするのだろう。これは、やればやるほど喉を詰めてしまう。我慢して顎を出さないこと、その分腹筋を使う意識を養うことを教える。腹筋を使うこととあごを縦に開くことがドッキングすればいいのだが、これは時間がかかるだろう。
とにかく、相当下腹部を使うことをして欲しい。

歌は、アマリッリ。高い声はチェンジしているにしても、腹筋が伴ってないと声量が出ないし、かといって、高い方にチェンジした声のまま低音を歌うとこれまた色気のない、かさかさ声になってしまう。

彼女は、低い声で思わぬ色気のある声が出るので、その辺から開発したい。
本人が気づいてないところが残念だが、声の美質というものは奥が深くてなかなか分からないものだ。それだけに面白いのだが・・・

あとは、Nel cor piu non mi sento,Caro mio benを新しく追加した。譜読みだけした。将来が楽しみだ。

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8月24日

辛島君。音大受験のためにソルフェージュの必要があったのだが、結局、発声に50分費やしてしまった。それは、一番大事な喉の開きが思ったより足りないことが判ったからだ。

モラーヌの時に良く言われたのだが俗に言う「のどぼとけ」を下げること。これが、喉を開かせるための一つの鍵となる。彼の場合、喉がまったくさがらずにあごを下げることによって固定して、声帯を鳴らしていたのだ。

ア、の母音の場合は、比較的問題のある響きにはならないのだが、今日はフランス語の歌い方をやるためイの母音をやったのがいけない!喉が詰まってしまってどうにもならなくなる。

イの母音というのは、舌の位置の関係上どうしても口蓋を開くことが難しい母音である。そのために、喉が開いてないと絶対的にきちんとした響かせ方が出来ないのだ。というのは、喉が開いていれば口蓋や口、を開かなくても声帯を鳴らすことが問題なく出来るし、むしろその方が美しいイやウの母音が発声出来る。高音に至っても口蓋を開ける必要がないのだ。

喉の開き方、下げ方というものは、一朝一夕では行かない。
やはり、基礎訓練が大事だと痛感した次第・・・
曲は、フォーレの「リディア」例によってエの母音とイの母音に難点がある。
取りあえずエの母音の声を作る。明るくしかも浅くならないように・・そして語尾のあいまい母音の処理。フランス語特有の単語語尾のあいまい母音の処理はまさに、墨で書く習字の筆の上げ方の処理に似ている。同様に声のアタック=声の出し始めの処理は筆の下ろし方にとても似ている。

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8月23日


今日は高橋さん。発声に40分くらい費やす。彼女は今が一番大事な時だ。
声のポジション、特に出し始めで普通の喉声になってしまう。

今回気づいたことは、声を出す瞬間に舌が引っ込んでしまうこと。
舌は力が変に入るといけないが、喉を狭くしてしまう原因にもなり兼ねない。
それは、舌根が奥に垂れ下がってしまうことによって声帯を張ることも出来ないし、咽喉も狭くなってしまうことがあるだろう。ブレスをする前に舌の位置を意識させることによって、かなりよくなった。ほんの少し舌先を顎側の前歯につけるようにしてやるだけで、声帯周辺の広がりや、声帯の準備が出来るようだ。大成功、大成功!

曲は、イタリア歌曲集の"Sebben crudele"かなり声量も出るし、音程も良くなった。イタリア語は、比較的母音が広めなので発声練習の成果が表れ易いのだ。

曲の最後が息が持たない。本人曰く、音が下がって声のチェンジをしてからの母音がうまく響かないとのこと。うまく響かないのはその前の音処理に問題がある場合が多い。しかし、直しても息が持たない。やはりブレスに問題がある。

ブレスの際に体の芯が動いてしまうのだ。あとは、ブレスの一瞬前に勢いをつけるために首でためを作るために動いてしまうのが一番大きな原因だ。
苦しくても、身体、顔など動かないことがポイントだ。
椅子の背もたれに両手をつかませてやってみる。比較的うまく行った。
どこかによりかかることによって、筋肉のバランスが取り易いのだろう。

さて、フランス語の歌をまた歌いたい…というので、ロマンス集「ベルジュレット」から2曲与えた。
しかし、フランス語は一般に狭い母音が多い、母音の種類が多いし二重子音が多くその音楽的処理は、初心者の手にあまるのだ。

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8月19日

今日はのりこさん。発声を中心にした。とにかく喉でもなんでも声が出るようにしているが、喉が詰まることを避けるために喉を開くこと、声のポジションを低く意識させることを教える。曲は、イタリア歌曲集の「アマリッリ」
低い声が時々とても良い声が出ている。
ただ、音域が高くなって来ると、ひっくり返すか喉を詰まらせて地声で頑張るかしかないのが、難しい。
声を出す方向性とあごのひき、首の後ろの張りを意識させたが、まだ無理のようだ。こういう問題点を持っている場合は、声量の調節と声の方向を口から出すのではなく、鼻梁の方に声を持って行く感じ。
そうすると必然的に口が少し閉じてあごが楽になるのではないかと思う。

ところで、声というものは文化だ。歌を歌う前に言葉がある。言葉の出し方が歌声の出し方に影響を与えるということはあると思う。日本人の女性には、元来しっかり声を出す、という文化がないのかもしれない。これは本人に聞いてみないと分からないが、多分、あごを引いて声をきちんと響かそうとすること自体が、なんとなく「恥ずかしい」行為のように思っているのではないか?

これは女性に関わらず男性でも、声だけでなにかをすることは、芝居などと同様に、かなり自意識を高く持って、身体のエネルギーを使うことだから、そういう行為をすること自体が、なんとなくこっぱずかしい・・ということはあるかもしれない。マイクで歌うだけなら、軽くささやくような声でも出来るから、むしろその方がカッコ良いのかもしれない。マイク片手に小指なんか立てたりして・・笑

カッコをつける・・という行為の中には、額に汗してなにかをやる・・というよりはむしろ、クールなスタイルがイメージとしてはあるのかもしれない。

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8月17日

今日は澤田さん。彼女は11月から始めたが、いろいろ紆余曲折あり再開したのが7月くらいからである。初めてお会いし、一声聞いた時に良い声だなと思った。メゾの声だと思ったが、練習する内にメゾというよりも幅広く声域を訓練してソプラノできちんとアリアを歌えるようにしてあげたいものだ、と思うようになった。声のある人である。基本的にブレスも非常に長いのでその点はあまり苦労はない。また、子供の頃からピアノを学んでいたこと、大学時代に合唱部のピアノ伴奏をやっていたこと、などなど条件は良いのだ。
ただ、低い声からチェンジしてからの声へのつなぎがまずい。低い声はカスカスで鳴らないのだ。これは、地声を訓練してまず鳴らすことを覚えてもらう。
今日は、前回の高橋さんと同じ発声練習で低い声から中音域、そして高音にかけての喉の開きを教えることによって、音色のつながりをよくする訓練をした。
曲は、グルックの「オルフェ」とモーツアルトの伯爵夫人を持ってきた。
「オルフェ」は、低音の始まりの声のポジションが決まらないのを、押さえる。
高い声の喉を開けること。
伯爵夫人は、Dove sonoだ。いつものことながらやはりモーツアルトは良い!
ピアノ伴奏を弾きながらつくづく思う。
まだ、歌詞は付けられない。初心者こそ、譜読みの時から発声に留意して行わなければならない。

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8月16日 今日は、高橋さん。彼女は元来シャンソン、それもフランス語でバルバラを歌いたい…ということでやってきた人である。昨年の12月くらいから来ている。
彼女は知性派であり、熟慮派である。言葉を使って教える基礎が最も難しい。
言葉だけでは出来ないし、言葉をなおざりすると何も出来なくなる・・・

さて、バルバラは、なんぼなんでも初心者には難しいので、シャンソンとはいってもプレヴェール-コスマの簡単なシャンソンをフランス語で教え出した。同時に発声もかなり矯正する必要があると思い、イタリア古典歌曲集を使って発声の基礎を教え出した。

彼女の欠点は、歌うための声帯の筋肉がかなり弱った状態にあったこと。
女性には良くあるが話声ではきちんと声を出すのだが、歌うと途端にひっくり返った、か細い声しか出なくなるのである。
当初、低い声の地声を訓練したが、1点Gくらいから上になると、すぐに声がひっくりかえり、まったく声量と音色に欠けた声しか出なかった。そして下の地声のまま上に上がらせると喉が詰まってどうにもならない状態がつい最近まで続いた。

今回は、上から降りる5度の発声練習で最低音に到達すると同時に口を開けて喉の開きを体感させることをやった。結果はとてもうまく行き、喉の中を開く感覚を覚えてくれた。下降音形というのは、喉をリラックスさせる良い効果がある。まず感覚をつけてから、上向音形に代えて同様に最高音に達してから
喉を開けさせる。少なくとも声がひっくり返り、喉が詰まる悪い癖はかなり取れた。ただ、腹筋がついてないので、まだ声量は出てこない。
彼女の声はむずかしいが、素材としては良いと思う。地声では最低音が男性の音域まで行けるくらい低い声が出せるのだ・・・教え方によっては素晴らしく良い声になる可能性があると思う。

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8月15日

今日は辛島君だ。バリトンでフランス歌曲を志す唯一の弟子。楽しみだ。
彼は、確か4月くらいから来ている。まったく声楽をやったことはないが、大学のサークルでオケのクラリネットをやっていたという。

そのために楽譜を読むことが出来るのと、最低限の音感を持っている。
だから、声楽に関しては発声を重点的に教えられる。きちんと声を出して歌う経験がないのに、数ヶ月で声帯をある程度鳴らすことが出来るようになったのは長足の進歩だ。
ただ、体の使い方すべてが固いのと、呼吸が早すぎる。
呼吸が早いというのは、しなやかさに欠けているということだ。
例えば胃の前部あたりの筋肉を骨のように固くしている。

これでは、繊細な呼吸筋を使うことが出来なくなってしまうのではないか・・
腹を突き出して固くするのは、良くないと思う。この部分は声のニュアンスを微妙に変えるための筋肉を動かすので、柔らかくしていないといけないのだ。

また、声帯を鳴らことを覚えてきたが、鳴らすあまりに声のポジションがやや高くなってしまうこと。テノールであれば良いのだがバリトンの場合はこれがなかなか難しい。私もそうだが日本人の男は、元来それほど太く低い発声をしないものだ。こういった男がバリトンになる場合一番むずかしいのが、声質を作ることなのだ。そう!作らなければならない。ナチュラルにやった場合は、テノールを目指さなければならない。

さて、彼は今フォーレの歌曲作品で初期のものである、「リディア」をさらっている。発声練習ではそこそこ良い声を出すようになったが、言葉(フランス語)を付けると途端に舌が固くなってしまうらしい。非常に詰まったような声になってしまう。また舌がやや長いような気もする。
もう一点は、フレーズの中で音が上がる時に、レガートが判らないために、声のポジションが動いてしまうこと。
このあたりが、これから克服していく課題だと思う。

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8月13日

今日は、のりこさんが来た。
彼女は譜面の読み方からやらなければならない。発声、歌唱、そ して理論をやった。発声は、様々な理論と身体の使い方がある。

しかし、理屈ばかりだと訳が分からなくなる。彼女の場合は理屈が苦手のようなので、理論を語らずにとにかく声を出すことに集中させることが先決だ。我々はともすると音楽は 気持ちの良いことである・・という聞く側の論理で演奏も捉えがちだが、両者の間には遠い 溝がある。最終的にはその溝は埋まるのだが、そこまで行く道のりは遠い。

身体を使って声を出すことに慣れてない人は、まず大きな声でしっかり歌を歌うこと自体 が出来ない。
このやりかただと、喉に負担がかかるリスクは避けられないが、それは私が責任を持って 観察していれば良いことだ。
息を入れた時の肋骨の開きを維持すること、声を伸ばす時、あるいは音程を上げた時の 腹筋の意識、あごの開きなどを教える。
これは、一朝一夕には行かないので繰り返し教えないと駄目だろう。

彼女の美点は、首が意外としっかりしていることである、ただその使い方がまだ分からな いので、やや猫背気味に首を前に出してしまうことだ。それから、いわゆるあごが出てしま うこと。
声帯自体は意外と大きそうなので訓練すると深みのある声が出るようになるだろう。今日 もその片鱗が少しだけだが見えた。楽しみである。

教えている場合大事なことは、うまく行った時に必ず本人にどういう意識があったかを確認 することが大事だ。
自分の身体に起きていることを言葉にして確認すること、脳みそに言葉でも刻んでおくの だ。そのことにより、身体が忘れ掛けていても言葉をきっかけに思い出すことが出来るだろう。

きょうは、コールユーブンゲンを使わずに調性の初歩を教えた。
いわゆる、CDEFGABやハニホヘトイロハなどの音名の使い方だ。
教えながらあらためて思うことは、ドレミファ〜という固定的な調性を理論で教えることの 難しさだ。
なぜかというと、ドレミファだけで完全にくくれる音楽は意外と少ないからだ。

彼女のように、あるいは多くの音楽愛好家にとって、それも大人になってから学ぶ者達、それも歌を学ぶ者にとって、その曲が何調であるか?ということは意外とどうでも良いことな のである。楽譜だけとってみれば、例えばいわゆる変ロ長調という場合に分かれば良いことは、シとミが♭になるという約束事だけだ。

極言すれば楽譜から音にすることが出来れば良いわけだ・・
ただ、楽器を補助的に使うために世間に広く広まっているキーボード(ピアノ)で音を拾うこ とが出来る能力は大事だろう。

プロ、それも瞬時に完璧な譜読みが必要なスタディオミュージシャンになるならともかく、 普通に歌を歌うものにとって楽器の助けなしに瞬時に譜読みが出来る必要などない。それに歌手のスタディオミュージシャンなどは昨今あまり必要とはされていないだろう。
勿論出来て悪いことはないが、それが出来るからといって、声の使い方が悪いとどうにも ならないことも事実である。

声楽というものは声の音色と音程感が微妙にからみあう複雑な楽器の使い方を必要とするものである。
キーボードでドレミファ〜〜と単純に出すようなわけには行かないのである。
だからキーボードで子供の頃から培わないと出来ない「絶対音感」は声楽にはむしろ悪い影響が有り得るのだ。
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7月30日

今日は、3人のレッスン。
一人目は、初めてで遠く島根からいらっしゃったKさん。彼女は地元でコーラスに所属してソプラノパートとのこと。ふだんから、自分の声に不満をもっているとのこと。歌っていても喉が苦しい、楽しくないとのこと。で、お会いして声を聞くと、さにあらず!美声なのだ!ご自分でも親に声が良いと言われたというのだ。
がいして、こういう方が不満をもっていることは経験上よくあった。実際に歌というものは不 思議なもので声が良くても音楽を どうイメージ出来るか?という面で行為自体に面白さが出るか出ないか?という差が出るのではないだろうか?

彼女の美点はあごが比較的楽に力が入ってないこと。そして、顔への共鳴が非常にバランス良く行われている。少なくとも5線の中の音域は喉に無理な負担はかかっていない。発声練習をすると、一音一音はとてもきれいに処理できているがレガートが今少しわかっていない。それから、高音の弱声が苦手らしい。取りあえず、腹筋の使い方によって声(息)をコントロール(抑制)することと、あごを使って喉の開きを促すことを中心に教える。曲は、ディズニーの「星に願いを」とフォスターの曲。
一回だけで彼女がどれだけ理解できたかが心配だ。
声楽に限らずプレイヤーというものは非常にデリケートである。自分自身をうまくマインドコントロールすることも大事な要素である。

2人目は、ゆうこさん。
もう半年通っている。元来が良い声をもっていること。そして、美点はキャラクターだ。何よりも音楽をすることを楽しもうとすることである。そして比較的若い頃から鍵盤楽器をやっているので、譜読みが早く、外国語も割と楽にこなせること。毎回レッスンは楽しい雰囲気である。

彼女の弱点は腹筋の使い方がまだ理解できていないこと。歌うことは楽しいのだが、むずかしい理論は苦手なのだろう。ただ、安定した演奏を望むのなら身体の使い方を理論的に理解し身体に叩き込まないと本番で結局上がってしまい何も出来なくなる。五線以上の声になると、喉しか頼りに出来ないので怖がって声が出せなくなるのだ。

3人目は、7月から始めたばかりの、のりこさん。彼女は最年少。まだ大学生。彼女の場合は譜の読み方、声の出し方の第一歩からだ。音感は良い。今回から和音の簡単な聴音をやったがなかなか勘が良い。楽しみだ。声も前回のレッスンから積極性が出て、はずかしそうに出していた
声が、比較的コンスタントに出るようになった。

やや猫背なので、その矯正と腰から腹部の筋肉の使い方を教える。リズム読みがまだ理解できず、教材にコールユーブンゲンを使っている。付点音符を頭と身体両方で理解して欲しいのだが
手でリズムをとりながら、付点音符の歌を歌わせるとリズムが手のリズムが狂ったり、歌のリズムが狂うことしばしば。
レッスンというものは難しい。楽しみも必要だし苦しみも必要だ。

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