レッスンノート目次
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9月30 日

ゆうこさん。
彼女の発声は難しい。ある程度の声帯の使い方と、音程感があるのだがそこから先に進むには、相当細かい部分の直しとそのための忍耐がいるからだ。そのためには本人の自覚と、興味、などがないとまず嫌になるだろう・・と思うからだ。当面の問題としては、ブレスが続かないこと。2点F以上の高い声が抜けてしまいがちであることだろう。後者の問題は、彼女自身の集中力と気力で簡単に成し遂げられるレベルだ。
今日は、腰を支えにして、あごを開けて声を前に出す意識で2点G以上の声を出す訓練をやった。割とうまく行っている。

モーツアルトの、スザンナのアリア最後の2点Aの響きが少し集中が抜けると声もへなへな〜と出なくなってしまうことと、その続きのコーダ部分で、同じ音形で2点Fを一小節伸ばすところが、ブレスが持たないのだ。
一曲歌う場合に、最初は息が上がらないのだが、歌っている内に身体が硬くなったり疲れてしまって、息が上がりブレスがきちんとできなくなるようだ。
ロマンス4曲は特に難はないが、疲れていて高い音が全部抜けてしまう。あと発音は、鼻母音が全部Nが入って東北弁化してしまう。短い八分音符でこれらの問題を処理するのは、難しいだろう。これも時間と忍耐が必要な作業である。


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9月27日

ともこ女史。

今回は、前回の反省を踏まえて比較的高いところから、声を出すことをやってみる。低いところから始めるとどうしても身体が緩み、ポジションが低くなってしまうのだ。そして、徹底的にあごを開き、口蓋弓を高くすることをやる。
発声で今日やったことは、これだけ。最初は下降5度で1点シから始めて降りる。何度か同じことを繰り返し、もっと高いところ、2点レくらいまで行く。
その後低いシくらいから、上向5度をやると。またポジションが低くなり、5度上まで行く前に、喉が詰まってしまう。ここで、あごの開きを促し、低い声でも十分に口蓋を上げること、そこに響かすことをやる。駄目な場合は、1オクターブ上を最初に出し、オクターブ下げて、低い声のポジションを覚えさせる。

今日は、曲はフランスのロマンス集。これも遅いゆっくりのテンポで、徹底的に母音を開ける訓練をする。狭い母音と広い母音を区別させない。初心者にフランス語のEの狭い母音や、あいまい母音、などを、そのまま発音させるのは無理だ。特に、Coeur,Soeur、heureuxなどは、広めを意識させる方が間違いない。元来日本人はあごが開かなくなっているからだ。

新しい、バルバラのシャンソンのSi la photo est bonneと、L'aigle noirをやることに決める。良い曲だが、難しい。シャンソンに良くある、フランス語の譜割りを端折る(音符の数以上ににシラブルをあてるやりかた)はとても難しい。
前途多難だが、なんとかやってくれるだろう・・・

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9月25日

辛島君。母音の練習を長めにする。アの母音で口蓋を上げて響きを高くする練習。下降5度。上向5度。同度でアからイへ変化させるとイが悪いことが分かるが、イの時の口蓋の上げ方と声帯の状態が悪い。しかし、力が変に入ると良くないので、良しとする。OAEの母音ではEの際に口蓋が上げにくいのも定石通りだった。これは、直る。アタックの際の横隔膜の上がりを少し意識させるが、そのせいか、曲に入っても息が足りずに苦労する。
曲はフォーレの「リディア」「漁夫の唄」
気をつけないと小手先で歌ってしまいがち。小手先とは、口先のこと。
きちんとブレスを使って身体で声を出すことから無意識の内に逃げてしまうのだ。全体にあごが固まって、口先で小さな響きになってしまうので、母音すべてを広げることを教える。
声を出す瞬間にものすごく声帯が上がるが、自分では出来ないのでその状態がどのようなものか?が分からない。研究の余地あり。

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9月24日

典子さん。最初からまぶたが腫れて調子が悪そうだった。案の定身体のエネルギーが全然ない。しばらく発声をやり、歌を歌い出したがいけない。
そのため、一緒になって身体を柔らかくする運動をする。
前屈と後屈、背中に乗せてゆすってやる。前屈の際にかかとを浮かしてやるのだ。ちょうど、象さん♪をやるようなカッコ。笑
筋肉を柔らかくする目的もあるが、上半身への血液の循環が悪いのだ。こういう場合は。自分が経験のあることなので、すぐに出来るのが声楽教師のいいところだ。笑

その後は、大分良くなった。もともとあまり胸を大きく脹らませて呼吸をする悪い癖はないのだが、腹部の筋肉を使ったことがないので、声を出す際の腹筋の調節が利かない。むしろ、腹部をかたくしてしまっている。ゆうこさんと同様に声のアタックの練習と、腹筋の練習をしてみる。
腹部の筋肉を柔軟に使って声のアタックを助けるためにはまず、腹部の筋肉が柔らかい状態であることと、それを支えるための背骨と腰の支えがしっかりしていないと駄目だ。

腹筋と言うと、良く寝転んで足をあげたり、上半身を起こして鍛えることをよくやるみたいだが、これの効果は疑わしい。むしろ腹部の筋肉を固くしてしまう原因ではないだろうか?効果があるとしたら忍耐力をつけることくらいだろう。大体、合唱系ではこのような体育会系の練習をするのが好きだが、他にやることがないのだろう。精神鍛練が好きな国民性だ。

今日金メダルを取った高橋選手をみたまえ!
あの明るさと楽しさぶりはどうだ!
日本の体育会が変わりつつあることを感じた。

曲は、アマリッリ、ネル・コール・ピウ・ノン・ミ・セント、カロ・ミオ・ベン。
いずれも、なるべく高いところまで地声でやる訓練をする。

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9月23日

ゆうこさん。何よりも好きであること、あるいは好きになろうとする積極性が評価に値する。

ブレスが足りないがこれも腹式呼吸の問題だ。呼吸を良く観察すると、胸を風船のように脹らませて呼吸をしている。吸気を意識するあまりにたくさん吸おうとして胸式呼吸に陥っている。静かに、胸の筋肉をゆるめて腹部と腰を意識して軽く吸気を行ってみる。これでも声は充分に出るが、たくさん息を入れて歌う時にたくさん吐くやりかたが身についているのでなかなか一朝一夕では直らない。

他の人たち特に女性の初心者は、一様に腹式呼吸が難しい。
吸気の問題と共に声のアタック(出し始め)が大きな問題である。
ブレスが足りない場合この時にかなりの呼気が出てしまうのだ。

同時に声帯の扱い方、特に音楽的に重要なピッチ(音程)がここで決まるのだ。息をして一瞬止める、そして息を声帯を少し開けることによって出す。その際に呼気音が出る。この練習をする。その際に自分が出す音のピッチを意識して出すと呼気音が微妙に違うのが分かる。これが出来たらこのやり方に沿って実際に声にしてみる。本当に軽く出す。出したら腹筋で声をクレシェンドする。この練習をやってみた。

曲では、モーツアルトのスザンナのアリア。最後の2点Aの声を怖がってちゃんと出せない。そこで、首の後ろを手で支えて本人がそれに反発するようにしてもらう。同時に声を出す時にあごをもっと開けることをやってみた。
本人が納得していたのでこれからうまく行くだろう。
事ほどさように声楽にはスポーツ的要素が大きい。


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9月21日

澤田さん。モーツアルトの伯爵夫人「どこへ?」のイタリア語の読みとリズム割りがうまく処理できないので、ゆっくりとリズム読みをする。彼女は発声の問題としては比較的初期的な問題がない(声質とブレスの問題)ので、発声はあまりやらない。むしろリズムとフレージングが画一的なのでその辺りと身体の使い方を教える。
例えば、楽譜に何も書いてなくても音楽的には声のアタックや声量をどうするか?とか、ピアノとの掛け合いの問題。アンサンブルの問題だ。音楽的な全体像をもとにしてディテールを積み上げていくこと。

声としては、譜読みをしっかりやらないと、いい加減に声を出してしまうこと。
案外大雑把かもしれない。その代わり、乗ってくると信じられないくらい良い音楽になるし、びんびんと来るものを持っている。
何事も性格や育ちと言うものが出てくる。それが、習い事の面白さでもあり怖さでもある。あとは、本番でどれだけ出せるか?

本番と言うのは、尋常な精神ではないので、普段の練習方法やその人なりのマニュアルを確立しないと、とんでもないことになる。
声楽的にいえば、情緒的な解釈だけに偏ると駄目だ。やはり発声の基礎を
がっちりと確立しないと、上がった時に処理できなくなる。
レッスンでうまくいって本番でうまくいかないのは、練習方法もあるが
先生と弟子と言う閉じられた関係で、信頼関係が出来ているのだが、本番は
孤独だ。誰も助けてくれないからね・・・

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9月20日

今日は高橋女史。典子さんと一緒だが声域のチェンジの問題が難しい。
地声でなるべく上まで持って行く練習もするが声帯の保持がまず出来ていないのだ。したがって一点Gくらいから喉が詰まり出す。このことと呼吸が持たない。声帯の使い方と呼吸のコントロールの問題なのだが、きっかけがつかめるまでは、焦りは禁物だろう。かなり声帯が疲れているみたいなので発声練習は早めに切り上げる。
しばらくイタリア歌曲で発声ばかりやっていたし、発表会があるので原点
に戻り、彼女の好きなバルバラに挑戦してもらうことにした。


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9月17日

きょうは、2人。最初がゆうこさん。
彼女のポイントのブレスの短さについて。例によって息を入れ過ぎるのであまりブレスを入れることを意識しないでやってみる。彼女はブレスして声を出す時にまったく気持ち良く息を声に変えていくのだが、アタックで息漏れがやや多いのだ。
アタックで声帯を少し意識して合せることをやってみた。後は前歯を少し合わせ気味にしてス〜と息を出す。その際に息の出す量を一定にして息を吐く練習をする。これだと、充分な長さ息を吐いていることが出来る。
極端に言えば息を出すことと声帯を合わせて声を出すことを別に考えてみること。声を響かせるポイントをある程度決めることが大切だろう。

曲はモーツアルトのスザンナ。最後のAはどうにか怖がらずにいつでも出せるようになったが、最後のFisの音を1小節伸ばすことが出来ない。息を保持して伸ばすことが出来ない。これは次回の課題。
フランス語のロマンスの新しい曲の譜読み。何度も書くがこの曲は彼女にはピッタリだな・・

次は典子さん。
アマリッリの出来がとても良かった。その前に真剣に課題を克服しようとしているその態度がとても嬉しかった。
そんなに練習したわけではないというが、多分ここに来た時に自分をとても大事にしているのだと思う。

技術から離れることだが、ぼくたちがこういうことを一生懸命やることの意味として、何かに集中すること。そのために練習したり、考えたりする時間を持つこと。このことだけでも、やる意味があるのだと思う。
単に歌が巧くなることだけが目的ではないのだ。

人間と言うものは、行動によってそれまで持っていた習慣や考え方の癖から抜け出ることが出来るのだ。そのことが思考や精神を変えていく。
思考と行動は対になっている。だから、思考だけを変えようとしても無理だし行動だけ変えようとしても駄目だ。
多分こういうことでDNAに刻まれて行く情報が変わっていくのだと信じている。
決して倫理的なことを言いいたのではない。

ただ、ぼくが教えることが出来る「歌のレッスン」というものを通して肉体と精神のバランスを整え、よりよく生きて欲しいと思っているだけだ。

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9月13日

高橋さん。声帯を鳴らすことはわかるようになった。
今日は良い喉の開け方を教えた。例えば風船の口を押さえて口を開けるイメージ。口を開けることと腹筋を連動させること。ただし口は開けすぎないようにすること。

舌は人にもよるが概して奥に引っ込んでしまうが、これだと喉を開けることが出来ない。このことをレッスンした。気づいたことは腹式呼吸がいかに難しいか。一番大事なことは吸気をあまりしないこと。むしろほとんど意識せずに吸気を入れることが腹式呼吸の最初だと思う。たくさん息を入れようとすると上半身ががくがくになり、声帯の筋肉や周囲が硬くなるし、準備の状態に入れなくなる。

鼻から軽く吸ってほんの少しお腹が脹らむように、ほんの一呼吸でよい。そして、声のアタックの際に口を開けることとお腹を少しいれることを連動させる。
しかし、このやり方だとゆっくりした運動のために呼吸→アタック→発声の流れがぎくしゃくして必要な運動が出来なくなるようだ。
そこで、思い切ってスピード感で処理する。

Dolce-mio-benを高い方からドーソーミードで発声する。その際にDoで思い切り胸に向けて打音する。胸に声をぶつけるのだ。そして口も開く。同時に腹を思い切り中に入れ込む。最後のbenでもう一息腹を入れ込む。
これを思い切ってやることによって考える暇を与えない。運動に集中させるのだ。

歌は、ロマンスの「ベルジュレット」最初声のポジションが浮ついてどうにもならないので、良く観察すると、口がぱくぱくしている。そこで口を固定して前に声を出させる。これでポジションが安定し、ピッチがおさまってくる。
彼女はブレスの時に首が前に倒れる癖がある事が分かった。これも側に近寄り、そして実際に触ってみないとわからなかった。
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9月11日

辛島君。
今日は少し方向転換した。やはり身体前面が固い。特に腹部をこちこちにして歌っている。また、喉からあごも固い。
イの母音の時に特にどうにもならない。これは、CDの聞き過ぎで発声の基礎が出来てないのに妙に耳だけに頼ってしまったせいもあるだろう。
良い発声教師が必要な所以である。あえて自分とは言わない。笑

腹部も喉もまったく何もしない楽な状態で、まずイの母音をやりなおす。
音程が良くなった。案外平べったいひどい声にもならないのは、これまでの蓄積があるからだ。そして、歌に入る。フォーレの「リディア」
ここで問題になったのは、フレーズ感と母音の膨らみ感がまったくないこと。
発声のアタックでも問題があるが、それは腹部の筋肉と声帯の開きが連動していないことにある。声は上に向かうということ。声帯の部分だけでジャリ!っと合せて声をあたっくする悪い癖がついている。
非常に単純に・・・ブレス→腹部の引っ込み→あごの開き、声帯の開きとアタック。その基本を踏まえてフレーズのアタックから次の母音に息の流れを通して響きが連動していくことを教えた。
一つ一つやるのは時間がかかるが、仕方がない。最初が肝心だ。
あとは、フォーレ「漁夫の唄」をやる。譜読みだけで終わるが次回が楽しみである。
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9月10日

典子さんが来た。発声練習は低い方から上向でやってみた。少しずつやるがやはり1点Gくらいから、声が浮ついて喉をつまらせるようになる。前に注意していたがやはり声を出す余りに下あごと喉に力をためていた。これもピアノのところに座っているとなかなか分からないものだ。1対1でレッスンする場合、ピアノを使う必要はあまりないのだが、つい座ったままでレッスンすると詳しい観察を怠る原因になる。
そして、声のアタック。ブレスをしてから声を出すまでの微妙な間の取り方をきちんと考えること。雑になっては駄目だ。
我々は日常生活の中で、声を出すことに慣れきっててしまい、雑に声を出してしまう。簡単に声を出してしまう。楽器と同じだから、まず声のアタックをていねいに意識すること。習字で言えば筆を降ろす時の意識。
しかし、彼女は胸の高さも含め随分姿勢が良くなった。

曲はアマリッリをやるが、これだけで1時間近く。どうしても、2点Cから上の音域でチェンジ前の声が出せなくなる。出せても怒鳴り声になってしまう。かといってチェンジした声のままだと、高い声はまあ良いとしても低い声になるとまったく鳴らなくなる。響きがつかないのだ。結局首の使い方そして声をどこに当てるか?というイメージを作ることになる。
あごを絶対に浮かさないこと、鳴らした声は、口から前に出そうとしないで脳天か後頭部に当ててやるイメージが良いと思う。
あごが上がらないように後頭部を支えてやると、それだけで声に響きを持たせることが出来るようになった。後は自分で意識してやれば大分良いだろう。
それから、腹筋を徹底的に使うこと。普段使わない筋肉だから、最初は徹底的に使って覚えないと駄目なのだ。

若いだけあって暗譜は自然に出来ていた。若い内は意識しなくても何度もやれば覚えるものだ。だから、若い内は発声も大事だが曲数をたくさん当たっておいた方が良いのだ。
最後にNel cor piu non mis ento。音も言葉もとれているから次回は声を重点的にやろう。もちろんアマリッリも更に洗練しなくてはならないだろう。


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ゆうこさん。フランスのロマンス。タイトルはベルジュレット。「可愛い羊飼いの歌」見たいなタイトルかな??
彼女は自分の歌のスタイルを持ってるから、そこから先に行くのがしんどいところがある。何もしてないようだけど、それなりのポジションを持っている。実はそれが障害になっている。子供のころから歌が好きで歌っていたようだ。まずブレスをする時に胸で一杯に吸うので呼吸を調節することが出来ない。呼吸をしても声の出し始めでかなりの息を使ってしまうのだ。
胸で吸うよりも腰の上部から腹部のみぞおちにかけて息を入れるのだ。そこに入れた息をへその少し下辺りの筋肉で調節するのだ。
今日は、調子を見るために発声練習をしただけで特に何もしなかった。

モーツアルトのスザンナ。これはブレスのポイントを決める。呼吸が足りないのでなるべく呼吸をまめに取るように指定した。最後に2点Aが出るのだがここで失敗する確率が高い。つまらない忠告だが、極端な話、声が出ないよりは声を出した方が良い。多少音程がフラットになっても、まず勇気を持って声を出すこと。そこから始る。出ないものは何もしようがないのだ。本番になったら何が起きるか分からない。
ロマンスは、今日はかなり良く出来た。彼女はノリが良い。こちらが弾く通りに調子を合わせて歌ってくる。集中力が良かった。
譜読みをもう一曲追加して、全部で4曲。それにモーツアルトのアリア入れて5曲。演奏会に向かう。

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9月7日

澤田さん。御主人と来た。仲の良いおしどり夫婦だ。
曲は、モーツアルト伯爵夫人とケルビーノを譜読み。
伯爵夫人は、良い曲だ。Dove sono?
どうにか、言葉をつけて歌う。
発声練習は、イの母音から広い母音に移る練習、彼女はイの母音が得意。
ポジションが良いのだ。ポジションとは、声の出るポイントが良いということ。
簡単に言えば、弦楽器で良い音が出るところ。例えば、弓の合わさりとかフレットを押さえる指の力加減が良いと、良い音が出るのと同じような感じ。
これがうまく行かないと、平べったかったりこもったり、詰まったような声になってしまうのだ。
だから、その人その人で得意な母音を見つけるのは大事なことだ。
さて、イからアに移ると、声の鳴りが悪くなる。で、色々な感じ方があるのだが彼女の場合はアになるときに声を下唇で導いて、前に持っていくことをやるとうまく行く。良いアの母音になる。
今日はこれが収穫だが、二週間後にこれが出来るか?
こういうお稽古事は、レッスンで掴んだことをその次も自分の力で出来るようになるかどうか?分かれ目になる。
モーツアルトの伯爵夫人は、時間がなく声のことまで行かなかった。テンポ感と、息継ぎのタイミング、言葉の処理で終わる。イタリア語でもフランス語でも言葉だけで読んでそれらしい音になるように朗読できることは、大事なことだけど、読みだけをやるとがいして音が低くなる。
モラーヌに良く言われたのはParlez tres haut(声高に話す)ということだ。
だけど、このことだけでもなかなか意味が分かるまでに行かないものだ。

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9月3日

ゆうこさん・・・・
一ヶ月ぶりでしたね。相変わらず元気で明るい彼女を見ていると歌というのは基本はこれだよね・・・と思ってしまう。彼女は地声のままきれいに上の方まで引っ張っていける。厳密に言えば響きは足りないのだが声帯が強いというのか、それほど詰まらせずに歌えるのだ。音程も悪くない。言葉をつけても破綻がない。結論から言うと教えるのが難しい。どんな曲でもそれなりに彼女流になってしまうのだ。

一番気になるのが、ブレスをして声を出瞬間に胸が開いてすぐさましぼんでしまうこと。胸が降りてしまうこと。その代わりにブレスがしっかりしていて、声を吐くことはしっかりしているのだ。
フランスのロマンスは独特のコケットがあるのだが、彼女は何もせずにそれが出せる。貴重なキャラクターだ。これなら行けるだろう・・・
ただ、ポルタメントが下手糞だ!意外なことを発見した。
モーツアルトのスザンナのアリアは2点Aの音がまだまだ弱い。中音部の声は良く出ている。あとは言葉がきになるので、これからまだまだ教え込まないと駄目だろう。

のりこさん・・・
今日は集中力が欠けていた。声を出す良い状態に持っていくのに時間がかかった。声を出すということ、歌い出しの微妙な間合いが大事なのだ。ここであるゆる準備をして声が出る。心がざわざわしていたり、息がゼイゼイしていたりするととてもうまく行かない。
あるいは、1点Aから下降の5度で始めたのが悪かったかもしれない。やはり低いところからの上向音形でやるのが、彼女には良いのだろう・・

何度も何度も発声練習をする。同じパターンで声を出すが、声を出す瞬間の場所やタイミングを教える。教えたが、まだまだ足りない。一回のレッスンで同じ事をしつこくやらないと駄目だろう。声帯の場所が喉仏にあることを忘れて胸の中、あるいはみぞおちくらいにある感覚で出来ると良いのだが・・
また、腹部、特に下腹部の入れ方が全然足りない。これも相当しつこく教えたがまだまだ足りない。腹筋を使って息を吐くということが、どうも日常から少ないようだ。多分運動不足かもしれない。まだ、彼女は若いし身体を鍛えないと駄目だろう。

歌は、「アマリッリ」やはり、高い音から低い音に変わるところに難がある。ここは難しい・・相当本人が意識してくれないと駄目だ。レッスン後半になってやっと身体が音楽的になった。低い声も響くようになった。問題は彼女がそれを意識してないことだろう。もう一曲、「カロ・ミオ・ベン」これはそつなく歌えたが意外とポルタメントがかかって、うまいこと行く。

教えるということは根気のいることだ。
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