レッスンノート目次

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10月29日

今日は午後から3人だった。きつかったが、充実した時間だった。自分を鼓舞しないときつくなった時は際限なく駄目になるので、こういう時こそが勝負なのだ!
例えば・・・最初は裕子さんだった。彼女は楽しく時間を過ごす美徳を持っている。そんな雰囲気を大事にして、かつ集中した時間を作ることを心がける。
発声は、腹筋の痙攣を使って鼻梁に声を当てる訓練を少し。Hのはいったイの母音で同度で発声をする。
歌に入ると、中高音域で4度以上音が飛ぶ際に上の音が抜けてしまう癖が相変わらず。モーツアルトのスザンナのアリアでは最後に2点Aの音が出るが、この際にも前に声をしっかり当てるように訓練をする。まだ音程がしっかりいかないが大分声は出るようになった。
フランスのロマンス4曲もみな同じ点を注意してやる。

次は3ヶ月ぶりに慶子さんが来た。彼女はシャンソンのプロで活躍されている方だ。フランス語の読みと歌を見る。歌は「枯葉」この有名な曲のフランス語は比較的平明な言葉が並ぶが、初心者で一番難しいのが、Tu、Su、Zuなどのユの発音の発音だ。舌の形はイだが、唇を突き出して発音すると、自然にユになることが基本であること。カタカナで書くとスィやズィの発音が日本人には難しいものだ。どうしても…ジュやシュになってしまう。子音の軟口蓋化といって近代の日本人はこの傾向が著しい。フランス語だと、CHEやJeなのだがこれとて逆にジュではくて、ヂュ…と発音してしまいがちだ。我々の間で良く言うのが濁音は一つくらい・・・などと言うこと。
後大事なのが、鼻母音。終わりに、ンを絶対に発音しないこと。
今回、枯葉の楽譜はピアノ譜がなくてコード譜だけだったが、どうにかこうにか弾いた。コードネームは理解しておくに限る!
一緒に金子ゆかりのテープを聞く。彼女のフランス語は比較的自然できれいなものだった。しかし、真骨頂は語りである。彼女の詩の朗読は絶品である。
彼女の読んだアポリネールの「ミラボー橋」は涙が出る程よかった。

最後が、典子さん。
発声練習の際に、何度か注意していることが忘れ勝ちであった。何度も注意するのは嫌なものだが、めげずに注意する。あごがやや固く、あごを開けることを怠りがちなのだ。これは、実際に歌になった場合にとても生きてくるので忍耐強くわかってもらうことが大事である。分かってもらうというよりも、癖にしてもらうこと。
歌の暗譜は大分進んでいる。録音をして聞かせてみる。本人曰く「思ったより良いと思った!」声楽家、というかプレイヤーにはこれくらいの楽天性が大事なことなのだ。始まりは、ここからだ。ナルシズムなくしてプレイヤーはありえない!彼女に少しでもクラシックの歌唱の面白さを分かってもらいたいからでもある。
チェンジした声でも大分芯が出てくるようになった。あと、もう少しだ。。
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10月26日

辛島君。きょうは、前回とレッスンが近かったせいかまた一段と向上していたようだ。一つは、あごに力が入っていたのが、うそのように抜けていたこと。
ぼくが言ったことを忠実に守り再現してくれたことは、教えるものにとって何より嬉しいことだ。教えるものとしては、教えたことをすっからかんに忘れられてしまうことが何よりも悲しいものだ。偉そうに物を言ってるだけだ、と思われているなら人に物など教えたくない。どれだけ、エネルギーを注いでいるかを考えて欲しいと思う。

さて、歌はフランス歌曲から。リディアでも最低限のレベル、ピッチ、発音、リズム感それらは、合格点の域に達している。しかし息を節約するためなのか身体の前側、特に顔から胸にかけて力をためていることが災いし、鼻声になって変なレガート唱法になる悪い癖がある。
いわゆる、えせテノールにありがちの歌い方だ。

力が入っている割りには、声が前に飛んでこないし、声が薄くひらべったい。
今日は、これを直した。実に単純な方法で直る。声を口から前にば〜〜んと放り出すようにしてやれば良いのだ。その代わり、息は節約できない。
できないが、息をコントロールするように出来る前に、声質を定めないと、後々悪いくせになって、どうにもならなくなるので今が大事なのだ。
明るくて、男らしい爽快なバリトンになって欲しい。
この方法は、基本的な胸声を作るためには有効な方法だ。

漁夫の唄も、同様に男らしい良い声になってきた。たとえば、強迫の母音をなるべく放り投げる。投げつけるのではなく、前にぽ〜〜んと球を放るようになげてやること。スナップをきかせること。効果的であった。
イタリア古典歌曲のOmbra mai fuでは、例えば最初のO~~mbaraとオの母音で伸ばすところを、おもいっきり放り投げてやる。これを出来もしないのに変な声で、クレッシェンドをつけると、とても出来なくなるし、声がおかしくなる。Gia il sole dal gangeも同様にやってみたが、うまく行った。

分かったことは、声楽家はまず声質、次にアゴーギグ、次にアルティキュラシオンということ。声質を作るために、色々なアタックの仕方があるが、これも人夫々で考えなくてはならない点が、教える側の課題である。

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10月25日

ひさしぶりに、智子さんが来た。きょうは伴奏付きだ。そろそろ伴奏をつけて練習しないと発表会に間に合わなくなる。
発声もほどほどに・・と言いたいところだが、一様に皆気になるのは、あごに力が入ることだ。口を開ければ良いと言うものではない。口を開けてもあごに無理な力が入っていると台無しだ。そのためには、低音であまり開けずにアタックし、発声をしながら、あごを少しずつ使うように、準備体操のつもりで発声練習をやってもらいたい。

曲は、バルバラのシャンソン2曲。どれもこれもアルティキュラシオンが出来ていなかった。練習時間がなかったのだろう。とにかく練習あるのみである。
口をしっかり使ってゆっくり正しく発音すること、それが出来たらメトロノームでリズムをきざみながら、言葉を音楽のリズムで発音すること。この練習だけで今は充分だ。
ロマンス2曲は、テンポの設定と、自分で自分の首を絞めるようにテンポがのろくなって行くこと。理由は分かる。発音しにくかったり、音が高くなると発声のことに気を取られてテンポが間延びするのだ。

ぼくのやり方は、残された時間に応じて最低限必要な取捨選択をしていくものだ。音楽、言葉、発声。この中でもっとも時間がかかるのが発声。難しいのが発音。音楽は、その枠組みさえ決まれば良い・・・と思っている。
すべてに、100点満点を望むわけには行かない・・・

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10月22日

きょうは、みむらさん。彼女は本当に合唱ソプラノとしては、言うことがない。
きれいな音程感。邪魔にならない声量。こういう声は他の人たちの声にきれいに溶けて、乱さない。アンサンブルには絶好の逸材である。
しかし、ソロとなるとこれは別だ。まず声の活力に乏しい。俗に言うヴォーチェ・ビアンカ(白い声)に近い。どういうことかというと、声のクレッシェンド・デクレッシェンドがしにくいのだ。それは、声帯を使って声を出す原形がきちんと作られていないということである。
喉を使わない、力を抜いて、ということは良く言われるが、これをやり過ぎると声帯をコントロールする術を学べない。声帯は、非常に複雑な動きをして振動して音が鳴る。息が出ることによって、振動するのではない。したがって、本人が声帯を鳴らす・・という意識が生まれないと、本当の声帯の使い方が分からないものだ。
彼女は顔がすぐに上向きになる。これも本人は無意識だが、喉の負担を軽くしようという現われである。声帯の周囲は楽だが筋肉が弛緩してしまうのだ。行為を生じさせるには、適度の緊張感を筋肉にあたえなければならない。
本人の強い意志と、忍耐ある練習で本当の輝かしい声が生まれるだろう、生まれると信じて教えたい。

のりこさん。
地声の発声練習も大分なめらかになってきた。発声練習の集中も良くなってきた。ただ、身体、特に下半身がやはり全然使えていない。下腹部も、ガチガチに固い。
紙切れを口の前に持ってフッフッフ・・・と30秒間やる。紙が息のせいで動くように続けるのだ。これは、下腹部の筋肉を使えないと絶対に出来ない。この運動は、相当毎日やらないと身に付かないだろう。本人の自覚を待つばかりである。これさえ身につけば上達は飛躍的に良くなるだろうと思う。
もう一点は、ゆうこさんと同じで下半身の筋肉の使い方がわかっていない。
同様に椅子に座ってやってみるが、その意味がまだ良く理解できていないようだ。高い声を出す際に腰を浮かすように、ということは、フトモモでしっかり身体を支えるようになると腰がしっかり入って、負荷のある良い声が鳴るのだ。

ラッシャ・テ・ミ・モリーレは中声用でやると、低い声域でとても魅力的な声が出る。これを生かしまた高いところを、腹筋でしっかり声を出すことを教える。
ネル・コール・ピウ・ノン・ミ・セント。これは、出だしが実に能天気!笑
ぼくは、あまりやりたくはないのだが、歌詞の意味を考えて集中をすることを教える。なぜかと言うと、それはあくまで代償行為でしかないと思うからだ。

音楽、音が持っている可能性は実に抽象的である。確かに歌詞には具体的な意味があるが、それをもってして音楽の全てが表現できてしまう・・とすることには反対であるからだ。音楽は最終的には抽象的な芸術である。特にクラシックの音楽はそうだ。

そうはいっても、彼女が集中力のとっかかりがあまりにもないようなので、歌詞あるいは、彼女の思いいれみたいな部分に頼らざるを得ないだろう。
彼女も練習に通うのはきついかもしれないが、乗り越えてもらいたいものだ。

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10月21日

今日はゆうこさん。ブレスの訓練を徹底的にやると同時に、歌う時の力の使い方を教えた。ブレスは、小さく吸って肩や胸を使わない方法を取ってみる。

端的に言えば、身体を使うことを促す。彼女は、いや彼女も以外と下半身がしっかりしていない。歌っている時に、肩に手を触れると上半身をバリバリに固くしているのが分かる。力の入れどころが分からないから、嫌がおうでも上半身特に胸と肩に力をいれてしまうのだ。これは、初心者は大概だれでもそうなるのだ。
そのために、大事な下腹部、いわゆる漢方で丹田と呼ばれる部分の筋肉を使うことがまったく出来ないで入る。胸や肩に力を入れないで丹田の筋肉を活性化するために簡単に出来る方法は、腰から上を後ろに反らしてみること。そうすると、腹筋や腰で上半身を支えるので、上半身を固くしようがなくなる。その上で、丹田の部分を中に入れるように運動させて声を出す。
応援団が後ろに身体を反らせて声を出すのは、意味があるのだ。ただ、あまり反らし過ぎると逆効果だ。程々に…。

それから、椅子に座って歌う。最初は、背もたれに、身体を預けて力を抜いてみる。そして次に浅く腰掛けて、背筋を伸ばす。歌いながら、高い音程に飛ぶ時などに、太股に力を入れて腰を少し浮かせるようにして、歌う。かなり、足を使うはずだ。
こんなことを30分くらいやったら、大分調子が良くなった。
フランスのロマンスは、声が前に良く出るようになった。そして、音程もはまるようになった。

辛島君。

フォーレの歌曲(リディア、漁夫の唄)は、大分良くなっていた。不思議なことに彼の気持ちにまかせてこちらがピアノを弾くと彼の歌の世界の萌芽を感じることがあった。音楽と言うものは誰から学ぶのではなく、自分を大切にすることだ。ぼくはつくづく思う。
歌と言えども、音楽であり、正しいリズム感や音程のきれいな旋律が必要だけど、どんなに初心者でもその本人が感ずるものを大切にしてやれないと駄目だ、と思う。それは、自分が学んできた経験からそう思うのだ。教師と言うものは、ややもするとおのれの独善に陥りがちだ。特に声楽家の場合本人がプレイヤーであると、本人の感性以外のものを受け入れることが出来なくなることがある。まあ、それだけのプライドと自信がプレイヤーを作り上げる面もあることは、否めないが・・
従って、グッド・プレイヤー=グッド・ティーチャーにはならないのだ。
さて、そうはいっても、悪い癖が直っているわけではない。息の感じ方にしなやかさと落ち着きが未だ足りない。また、口の開き方に固さがある。そのために口蓋の筋肉や、声帯周辺を固くしている。
歌になると、とても良い集中を見せたが、上半身で歌うために、身体をぐにゃぐにゃさせて、両手を合わせている。これは、見た目も良くないが、下半身がしっかりしていない証拠だ。


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10月20日

正真正銘の今日。ひさしぶりにスタジオを借りてレッスンをした。池袋のスタジオフォルテというところだ。昔良く使った、スタジオレッツというところが、名前を変えたのだ。
しぶやくんという若い男性。男前で背も高い。絶好の歌手向きだ。関係ないか・・笑
彼は、珍しくクラシックおたくではなく(考えてみると家に来てる子達は誰もクラシックオタクがいない)
それなのに、ディースカウが歌うシューベルトではまってしまったというのだ。
これは、とても面白い。現代の日本の若い男性がシューベルトにはまる!
シューベルトのあの精神性のどこが日本の現代男性の精神を射止めたのだろうか!?まったく興味深いテーマだ。

ところで、彼の声を聞いたら1点Cくらいから上が声帯を合せることが出来なくなっている。合せた声を出そうとするとひっくり返ってしまうのだ。あきらかに、声帯の弱体化ではないか?そこに行くまでの声は、非常に無理がなく、しかも軽い声なのだ。低い声を出させるとへ音記号の第2間のCまで出る。声帯は背の高さに応じてそれなりに大きそうだ。

ファルセットは間違いなく高い方まで出るので、声帯を下から引っ張る力が使えないのだろう。上に持っていくと喉がどんどん上がっていく。
それから、腹筋が使えていなかった。胸式の呼吸になっていた。
今日やったことは、とにかく、ファルセットではなく出すこと。口をかなり開く。
腹筋をかなり使うこと。

どうにか、出るようにはなったが、2点Eはきびしそうだ。しばらく訓練が必要だろう。後で聞いたのだが、家ではファルセットで練習しているそうだ。これが曲者である。腹筋を使ってきちっとしたファルセットを使うのなら、かえって良い面もあるのだが、口先で軽く裏声で練習すると声帯の筋肉がどんどん劣化していく。これは、危険だ。
なかなか将来性があるが、練習が問題になるだろう。せっかくのシューベルトから始った感動をプレイするための良いエネルギーに替えて欲しいものだなとつくづく思う。

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10月19日

今日は・・・正確には昨日は澤田さん。この時期(本番まで一ヶ月)に入ると細かい発声の練習よりも、曲を通す練習をしたいのだが、思った通りには行かないものだ。どういうことかというと、発声は声を暖める程度にしたくても、やり出すと色々問題が見えてくるからだ。
彼女は、元来肺活量があるし、腹式呼吸は比較的良く出来ている。
声帯の使い方もある程度わかっているのだが、あごの使い方が悪いのと口蓋を高くする筋肉の使い方がまだ分かっていないので、中音あるいは低い声の使い方が悪いのだ。俗に言う胴間声になってしまうのだ。
やや音程が低く、くぐもったビブラートがない真っ直ぐな声だ。
あごを開く時に、あごを前に出すように開くこと。これは、最大限低い声を出す時には役立つが、声域のなかで比較的低め…の場合、しかも声の出し始めでいきなり、このようなあごの開き方をすると、声帯周辺の筋肉と口蓋の筋肉を固めてしまう。また、声帯が開くので場合によっては鳴らない原因にもなるのだ。
5度の上向による発声練習で、アタックの際に、あまり口を開けずに始めて上に行くに従ってあごを開きながら喉の開きを促すのは意味があるのだ。
要するに、弦楽器などで最初に弓を弦にあてて音を出す際と、出してからボーイングをしている時の弦への弓の触れ方は違うはずだ。
これとほぼ同じだと思って良いだろう・・・・

曲は、モーツアルトのフィガロの結婚、伯爵夫人。「どこへ・・?」は相変わらず音が高い方に飛ぶ時に、雑である。きちんと鳴らさないので音が低く浅くなってしまう。中間部からは良く出来ていた。どうやら、イタリア語のアルティキュラシヨンが自信が無いらしい。
ケルビーノのアリアは比較的良く出来ていた。良くないところは、やはり言葉が詰まっているところだった。課題は、アルティキュラシヨンだろう・・

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10月15日

今日は、二回目のみむらさん。
発声をやっていたら、少し変わっていた。早速練習をやってきたようだ。彼女はある程度基礎が出来ているので、少し目先の変わったことをやるだけで大分変わるようだ。お腹の使い方が少しおかしい気がする。下腹部にむかって押し出すように声を出すし、息も出すようだ。へそから息を吸い込むように横隔膜あたりに、息を入れることを教える。

胸骨を広げて高くすることは未だ出来ないようだ。一度にたくさん教えると、混乱するのでお腹の部分の使い方に限定した。2点Gから上、3点Cまでをあごの開きとお腹の使い方を教えた。これだけで大分響きがしっかりしてるし、驚いたことに声に息が乗って届く声になった。彼女は積極的に学ぶ姿勢があるので、進歩は早そうだ。

曲は、Per la gloria d'adorarvi.
彼女の癖は、あごの開きを一定にして同じ響きを作ろうとすることだ。しかし、喉は良く開いているが、しばしば今度は声帯が開き過ぎて声が前に響かない欠点がある。合唱だとちょうど良い鳴り方だが、ソロだと物足りない。ただ、ピッチが良いので、後は息の使い方と、声帯の使い方の問題だろう。

2人目は、典子さん。彼女も2週間ぶり。発声練習は徹底して地声で上の方までやる。そして、次に地声とひっくり返した声を交互にやり、最後にひっくり返した声から地声に変える練習をする。

発声練習だけで3〜40分。鳴りが良くなってきたのと、姿勢が良くなった。あごが前に出っ張る癖も少し抜けてきた。しっかり考えてやっている姿勢がとても良い。結論から言えば、ひっくり返した上の声でも声帯がしっかりと合った強い声にしたいのだ。ただ、今日は大分頑張っていたし、集中力があったので、良かった。

曲は、アマリッリ、ネル・コール・ピウ・ノン・ミ・セント、カロ・ミオ・ベンそして新しいモンテヴェルディのラッシャ・テ・ミ・モリーレ。
アマリッリもほとんど文句のない仕上がり。驚き!後は、ひっくり返した上の声をどれだけしっかりさせることが出来るかだろう。第一段階はほぼ合格だ。

正直ここまでこれるとは思ってなかった。
ラッシャ・テ・ミ・モリーレは、思ったより譜読みが早かったが、和音外の音を出すところが難しいらしい。音が低くなってしまうので、何度も練習をやる。
後の曲で、ネル・コール・ピウ・ノン・ミ・セントをやりだしたが、上の声だけにしてみるとどうも音域が低い気がしたので、この曲とカロミオベンと、そしてもう一度アマリッリを高声用のキーでやってみたら、見事にはまっていた。

この方が声も充実するし、本人もやりやすそうだ。演奏会などに行ったらまして、本人が声を出す充実感を感じないと、失敗しがちなのだ。新たな発見であった。
とにもかくにも、今日は打てば響くようにこちらの要求に積極的に応えてくれた。若さと情熱に乾杯だな!笑
この調子で、第二段階、第三段階と進んで欲しいと思う。彼女なら良いソプラノになれると思うし、彼女のような本当の素人の人こそ、そこまで行って欲しいと思うのだ。ただし、忍耐が要るだろう。これも人生の「ある挑戦」だと思って頑張ってもらいたいものだ

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10月14日

ゆうこさん。
今日は、2週間ぶりだった。息が上がって固いので少し呼吸を落ち着かせる。
発声練習は暖める程度にして、歌をやる。あと1ヶ月少しで発表会なので発声の新しいことなどをやらずに、曲に集中することにした。
ぼくは、完璧主義者ではない。ある程度のところまで行ったら全体的になだらかな作品が出来るように、準備と作戦を練る方だ。
楽器でも歌でも音楽を演奏する行為は、時間に生きることと同じで、今という瞬間瞬間の積み重ねである。曲をやる前は全体を頭の中でイメージして組み立てることは出来る。もちろん、そのための練習だが、練習は練習でしかないのだ。レッスンでもぼくはまず曲をやり通す集中力を養うことに、意を注ぐ。
失敗した方といって立ち止まってはいけないし、そのために落ち込んで次に来るべきものに対処できなかったら、それは駄目なのだ。と思っている。それが演奏だ。
ロマンスで、フランス語がつっかえたといっては、止まり、声がうまくでないからといっては、止まるのでは本番がおぼつかない。
まず、今のうちから曲の終止音を聞き終わるまで、やり通すことを大事にしてみた。モーツアルトの、スザンナのアリアも、最後のページの2点Aの声をとにかくしっかり出すこと。そして、その次のFis音の1小節伸ばすこと。それが出来なくても、最後のコーダのフレーズをしっかり歌い終わること。
息を保持する筋肉がまだ出来ていないようだった。腹筋は使えているのだが声を出す瞬間に横隔膜筋がゆるんでしまう。そのために、声のアタックの際に息漏れがわずかだが起きてしまうのが、ブレスが足りなくなる原因のようだった。

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10月12日

一週間振りのレッスンだった。辛島君。
発声をやりだしたが、呼吸が気になる。吸気音が聞こえるが固くて早い。
案の定、上向5度で3首の母音を連続でやると、息が続かない。
発声練習はゆっくりとかつリズミカルにやるのだから充分息が入るはずなのに、入っていないのだ。
良く声楽教師がいうのは、へそから息を吸うようにすること。
これは、下腹部、へそから下をやや引っ込めることである。
あるいは、肛門括約筋を締めるようにした状態で、横隔膜を広げるようにして息を入れる。

腹から腰、胸、背中、すべての筋肉が旨く調和されリラックス出来て、はじめて良い呼吸が出来る。これは、実は日常生活でもそうだ。
落ち着くこと。静かにすること。ゆっくりとすること。
簡単なことのようで、これがなかなか出来ないものだ。
今日教えたのは、まずゆっくり吸ってゆっくり吐くこと。
片手を使って円描く。そのとき最初の半円で吸気、手先が頭の上に来た時に吸気を終わる。残りの下降の半円で呼気を出しきる。大事なことは手のうごきを一定にかつゆっくりとする。吸気も、呼気も一定の量を保つこと。
身体をやや横に倒し、その時突き出た側腹部に息を入れるように。

曲は、フランス歌曲、フォーレの「漁夫の唄」以前よりもリズムが柔軟になったが、母音が全部鼻声になってつまってしまっていた。
どうも、彼の癖らしい。一つ一つ直す。「リディア」では、悪い癖が直っていたがまだ、母音がはっきりせず、鼻声の傾向である。
このために、声量が前に出ず、また母音が明快にならない。
声楽では、鼻声は禁物である。直すための簡単な方法は、鼻をつまんで歌ってみることだ。
イタリア歌曲は、「ガンジスに日が昇る」鼻声を直すために、また母音のあいまいなのを直すために、とにかく口を良く開けさせること、また、母音のテニオハをはっきり口の形にあらわすことをやった。

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10月5日

よりこさん。
先週急な風邪で休んだせいか、喉が暖まるのに時間がかかった。やはり、1点Bくらいから軽く初めて、喉を暖めて行くのが良さそうだ。最初モラーヌ方式の開口による鼻音での発声練習で声帯を暖める。この際に声帯を充分に合せて鳴らすこと、合せて腰の支えをしっかり作ること。腰を意識して声を出していかなければならない。
次に、アの母音で1点Bくらいで同音でイ→エ→アという具合に出させる。この際に最初のイの母音の声質を変えることなくアの母音に変化させていく。
曲は、モーツアルト「フィガロの結婚」のケルビーノのVoi che s'apete.
ゆっくり始めて言葉の譜割りを確立する。声が慣れてきたところで、姿勢を見るとかなり首が前に出て、猫背である。首がしっかり胴体にうまるくらい真っ直ぐになるように矯正する。こうすると喉の声は。口から前に出るよりは脳天めがけて一直線に響く感じになる。同時にあごを開き、口蓋の高さも意識すること。
五線の上の方を流れる声の場合、つい声帯が上がってしまい浅い響きになってしまうが、この姿勢を保つとポジションがかなりよくなる。彼女の場合は、元々ブレスが長いのでこの発声のポジションの矯正がうまく行けばかなり良い線にまで行く。
今日はまずまうであった。
Dove sonoのイタリア語も見る。

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10月4日

水曜日のともこさん。笑
今日は、腹式呼吸をやる。腹式でも、2段階方式にする。これは、軽く横隔膜を広げる+胸骨も広げるというものだ。腹式が出来ないのに最初から胸骨を広げると、腹の筋肉が適切に使えなくなる。したがって、順番で言えばやはり腹筋で横隔膜の調節することが大切だ。改めて彼女の腹筋の様子を見ると息を入れた時に下腹部を前に出すように使っていたことが判明した。

これは誤りである。下腹部は中に入れるべきである。ベルトを締める位置よりも下は少し締め込む。必然的に横隔膜を開かざるを得なくなるはずだ。下腹部の筋肉に支えがないために、横隔膜を調節する筋肉が働かなくなるのである。これが出来るようになったので、プラス最後のもう一息を入れることを試してみた。これは、最大限のブレスで、横隔膜を軽く広げた後に、さらに胸骨、ちょうど胸のあたりを高くするように広げて一気に息を入れるのだ。

彼女の場合これが非常に効果的で今まで続かなかったブレスがかなり持続するようになった。そして副産物としてフレーズの終わりがきれいに息を出しきれるようになった。更に、これをやったことで副産物としてわかったことは、それまで腹筋の使い方が弱かったことが判明。この2段階方式でブレスをして発声練習をやると、アタックでかなりポジションに変化が出るのである。まだ不完全であるが、一瞬だがかなり喉が開くのだ。大成功だった。

曲は、バルバラのシャンソン。Si la photo est bonneをやる。今の段階ではとにかくフランス語の母音を開けること。EとIの母音があいまいになるので、直すこと。この曲は声域が低いので、声的には破綻がない。どうにかなりそうだと思う。L'aigle noirはキーを下げることにした。

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10月2日

今日は、はるばる、みかさんがレッスンに来た。ピアノもついて久しぶりに楽なレッスンである。笑
その分、曲の細かいレッスンが出来た。やはり、ピアニストは必要だな・・
また、持ってきた曲が超一流と来た!
シューベルトの「シルヴィアに寄す」とモーツアルトの「夕べの想い」
そして日本歌曲の「初恋」と「浜千鳥」
シューベルトは、単純ながら実に美しい純情な曲だ。私事で恐縮だが親父はシューベルトが嫌いだった。良く言っていたのは「白人の腋臭くさい・・」だそうだ!それが良いのにな・・とこの曲を聞きながら思う。笑
悪い癖は、歌い出しの準備が遅いこと。フレーズの最後で声が抜けてしまうこと。意味のないディミニュエンドを癖のようにしてしまうこと。
上向音形の際に、登るエネルギーがないこと。
モーツアルトは、譜読みが出来てない!2点Dくらいからあごが出てしまうので声が浅くなり過ぎ声帯を痛めてしまい勝ち。首をきちっと固定してあげるとこれも簡単に直る。

さて、彼女は基本的に立派な声帯を持っていて素材として素晴らしい。しかしまだ、欲がないのと使い方が完全に分からないので、その素材が生かしきれていないのだ。基本的に楽に鳴らしているけど、きちっと声帯を合わせて鳴らすことが出来ていない。アタックで声を出すとすぐに、声を抜く悪い癖がある。それから、腹筋を使うのだが下腹に入れたら後は出すだけ…という不経済な使い方なので、いわゆる「支え」がないのだ。そのために残念ながらフレージングということが出来ない。そして、高音部が続くとあごが出て声帯が疲れてしまう。身体、特に首の後ろの筋肉の張りがないのだ。
ここに指摘したことは、半年きちっと訓練すれば見違えるほど良くなる程度のことだが、残念ながらレッスンが出来ないのである。
これのことが、うまく行くとヴェルディのソプラノのアリアがピッタリ来るような素晴らしい素材だと思う。

日本歌曲で試してうまく行ったのは、本人の言う、母音があいまいになってしまうことと、子音、特にサ行が出ないということ。
母音は、舌を観察すると奥に引っ込んでしまっていた。これはいけない!
そこで、舌先を下歯の後ろにきちっとおさめるようにしてもらった。それと、特にアの母音で前に響かせるようにしたら、見違えるほど明るくきれいな母音が出せるようになった。子音はその処理の手早さが重要な鍵だが、苦手な子音こそ手早くまた、長めに出せば難なく解決できる。


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10月1日

今日は新しい方がレッスンに来た。
この方も、ともこさんである・・・・
早速レッスンをしたが、きれいな声である。音程も悪くない。
ただ、いわゆるベルカントのタイプではなく、合唱のソプラノにピッタリな
押さない、しかし音程感の良い真っ直ぐな声である。
しかし、本人はソロの勉強をしたい・・ということでレッスンをすることになった。
どの音域も完全にチェンジした声で処理しており、そのためにピッチは悪くないが声に、活力が乏しい。いわゆる、押さない声だがそのために、身体すべてが、棒のように止まってしまっていた。そこで、積極的に息を送ることと、呼吸のポイントを少し高くしてもらうようにする。腹式呼吸を意識しているのだが
かなり低い下腹部に力を入れて、そこで呼吸をしているので、エネルギーが声帯まで伝わらない・・・といった感じなのだ。
もう一点は、もう少し意識して声帯を鳴らすこと。そのために、わざと地声を使って鳴らす訓練を低い方からやってみる。
本人のイメージと実際に出る声のイメージは違うものだ。私が教える通りにすると、本人は、かなり雑に声を出しているように思ってしまうようだ。
本当の声の美しさは、もっと活力に満ちたものである。

典子さん。
彼女の場合も、同様にチェンジした声が活力に乏しいので発声練習ではきついけど、地声で2点Desくらいまで引っ張り上げて行う。かなり、声帯を鳴らす訓練は身についてきたので、少し声量を落して、また、あごが浮かないようにして声を出すポイントを脳天か後頭部、または、鼻梁に向けて当てるようにやらせてみる。積極的に声をアタックすること、息を腹部から送ってやることを促すと以前に比べてチェンジの声にも活力が出るのが認められたので、アマリッリ、ネル・コール・ノン・ミ・セント、カーロ・ミオ・ベンも全てチェンジした声で処理してやってみる。うまく行きそうだ。本番では彼女の積極性に期待したい。
かなり出来が良かったので、新しい曲を与える。イタリア・ルネサンスの雄、モンテヴェルディのラッシャ・テ・ミ・モリーレを譜読みする。付点音符のリズムがまだつかみ辛いようだ。音をとるのは早いのでリズム読みを克服して欲しい。


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