レッスンノート目次

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12月28日

今年最後のレッスンはからしまくん。
発声練習で中音部から下降形でやるが、とても良いポジションで声が出ている。共鳴も鼻腔共鳴を伴った、軟口蓋の閉じた良い声が出ていた。
ただ、一点ファ〜ミくらいから下になると、鳴らなくなる。
テノールならまだしも、これではバリトンにはならない。
このような低い音域で鳴らないものを鳴らすには、下降形の5度の発声練習なら最後の音に入る前にあごを下げて喉を良く開くことを教える。そして、声帯を合わせる事を自覚させるのだ。ただ、声帯だけを合わせようとすると、平べったい耳触りの悪い音になるので、唇前方に向かって声を出すように注意する。ともかく、本人の声帯とのやりくりで、どうにか鳴らしてもらうようにするしかないのだ。

そして、フランス語特有の母音による発声練習、モラーヌ流。
i e aの3種類で5度の上向。イの母音を出す時、前に母音を当てる事がフランス語の母音の処理としては大事である。ただ、気をつけなければいけないのは、前にといってもあごまでが前に出ないように、あごはしっかり引いて、唇を前に突き出すようにする事が大事である。
もう一点、上向音階で2度の音程はポジションを変えない事。ド〜レ〜と歌う時にドの響かせ方と、レの響かせ方が変わってしまうのは、声帯が上に上がって喉を絞める方向にある証拠である。注意が必要だ。
ただし、これが3度、5度とい音程が飛ぶ場合は、逆にポジションの微妙なチェンジが必要になって来る。

さて、曲はフォーレの「夢の後に」勝手なブレスがたくさん入っていた。笑
狭いエの母音など、閉口母音がどうしても奥に入ってしまう。
出だしのDansの母音が開き過ぎ、また続く母音も開き過ぎで胸声だけで処理して音程が全部下ずってしまう。あごを開けないで、処理すること。
後は、ブレスポイントをキチット決めて、ボカリーズの部分ではしっかり息を流す事。一回のレッスンで大分きれいに歌えるようになる。
残念なのは、レッスンにあまり来られない事だ。

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12月27日

たかはしさん。発声は彼女の場合は高い方からの下降音形で始めると割と良いみたいだ。そして、下からの上向音形でリズミカルに早いテンポでやると息の入れるタイミングなども早くなっていくし、考えずに体で反応していく感覚が掴みやすいようだ。彼女は頭と身体が別れてしまう傾向にある。
彼女自身はゆっくりやったほうが納得が行くと思うのだが、本人が頭で納得の行くようにやることが、かならずしも 良いとは限らないのだ。頭は真っ白でも肉体自身が本能的に動いてくれるようになることが大事なものだ。
歌も運動である。

曲は、バルバラの新しい曲…Dis,quand reviendrais tu?そして、プレヴェールのその名もバルバラ。両方とも譜読みがかなりしっかりできていた。特にプレヴェールのバルバラはとても難しい曲だ。フランス語の読みをゆっくりと時間をかける。フレーズの固まりを大事にして、読む事を大事にする。
それにしても、バルバラのフランス語は美しいし、ナチュラルだ。
改めてフランス語の持つ感動に触れる事が出来て嬉しかった。

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12月24日

みむらさん。
発声練習から少し気になっていた、口の開き、あごの下げ方をやってみたが
なかなかうまくいかない。口を開く事を意識した事がなかったようだ。
彼女は自分自身の声のポジションをそれなりに持っているのでそれを壊してしまう感覚に対して、怖さがあるのだろうか・・
あわてずに、少しずつ新しい事に挑戦して欲しい。
なぜ、このような練習をするかというと、喉の開きを促す事と、喉頭を少し下げるように安定させる感覚を覚えて欲しいという事。
ついでながら、3度の上向を発声でやると、特に第3音でポジションが浅くなりやや高く上ずる傾向があること。相当ゆっくりやって、気をつけるとなくなるが大体この傾向がある。きれいな音程だし、目くじらをたてるようなこともないようでいて、こういうポジションの揺れが声帯の支えをなくして、安定した高音域のパッセージを不可能にしてしまうのだ。2度の練習で低い音域から初めてじっくりと練習をしなければならない。
曲は、Oh del mio dolce ardor.
bramato o gettoのmaのG音が少しアペルト(開き)過ぎて浅い感じだ。
その前のD音のBraのアの母音の口の開きを閉めて、その状態で音をはめることからGの閉めた発声をな導き出す。こ方が、声帯が上がらずにメタリックな前に響く声になる事と、音程感もしっかりする事が出来る。
今回気が付いたのだが、彼女の場合、あごの開きがあるわけではないのだが肝心なところでアペルトな傾向になっている。
そして、異常に腹部に力を込めている事が分かった。
最終的には、あごや口の開きをやることよりも、閉めた発声を練習した方が良いような気がする。そして、腹部の硬さを取らなければならないだろう・・・

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12月23日

ゆうこさん。
発声練習で、少し声を前にまとめて響きをコントロールすることを教える。
イの母音、子音をつけてミ、マとメをつける。これらを上向5度で2点Gくらいまでやるが彼女の場合、Fくらいが限度で、あとはどうしても声が後ろに引いてしまう。彼女自身が良く分かっているので、あせることはないが、どうももう一つ響きを鼻腔共鳴に持っていく事がわからないみたいだ。それと、体の重心が音程が高くなると共に一緒に高くなってしまうこと。最後にイとアを同度で1オクターブくらい。口をチェックすると、前に教えた事を忠実に守っていた。
彼女は、覚えが良い。
曲は、ベッリーニのVaga luna che inargentiとVanne o roza fortunata,
Vaga lunaは声色、音程ともに合格点。後は、フレージングの感覚がもう少し欲しい。ちょうど、車のアクセルを踏んで加速させるように、声を伸びやかに出す事を覚えれば、素晴らしい事になるだろう。
Vanne o roza...は、譜読みが完全ではないが、短いブレスのやり方のコツを教える。ブレス直前の言葉を軽く投げると、その反動で自然に早く息が入るのだ。ちょうど、水泳のブレスのように・・一度で会得できる。感がいい。
最後に、前にやったフランスのシャンソンを復習。やはりフランス語は発声が思ったように行かないみたいだ。しかし、彼女の明るいはっきりした母音の扱いはフランス語にも向いているので、これからも並行してやっていきたい。

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12月18日

さわださん。発声練習では、比較的スローエンジンなので、声慣らしに時間をかける。彼女との会話で、彼女はテンポの早いものがどうも苦手らしい。
そこで、発声練習のテンポを早めにやってみる。ブレスのタイミングを早くするのだ。
BIBLEという発音を下降5度でやる。あごがやや硬く、開き気味の傾向があるので鳴りが悪いのだが、鳴るこつをつかむと、驚くほど良鳴る声帯を持っている。ただ、息のまわし方がまだ、分かっていない。腹に重心を置いて、固めて声を出すので、確かにブレスが長いが、音が硬い。彼女のブレスが長いのは
どうも、この腹の固め方にあるようだ。
ヘンデルのLascia ch'io piangaを復習。出だしの音程感と、2点Fくらいの特にオの母音で、声帯が上がらないように、喉声にならないように練習するがうまく行かない。鼻腔共鳴をこれか徹底して教えたい。
ベッリーニのマリンコニーア。
低声用でやると、実に美しい声を聞かせてくれる。

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12月17日

みむらさん。今日は鼻音での練習で2点Fくらいまで。意外だったのがひっくり返さないで1点bくらいまで行けた事。
これに気を良くして、母音に変えてもかなり上まで地声が使えるようになっていた。そして、更に体のポジションをチェックすると体が浮つく事と、重心が後ろに行く事、そして首がしっかり据わらない事。これを少し直して声を前に思いきり良く出す事を教える。
口を縦に開かず喉を上げないように注意して、5度の上向音形でイからエに変化させる発声をやる。2点Cから上になると、まだ鳴り方が中途半端である。良くなるポイントが見えそうだが、あと一歩という感じ。無理をしないで2点Aまでにしておく。ゆっくり確実にやっていきたい。
曲は、イタリア古典歌曲集からOh del mio dolce ardor。中間部の強い表現のところがしっかりなってきた。しかし、ど頭最初のOhの音がきれいに入れるのだがどうも今一ポジションが高い気がしたので直す。喉を開く事、声を出すポジションを首から下に意識させ腹の前に押し出すように意識させてアタックをしてもらった。すると、驚くほど良い声のポジションになった。
このまま全部歌ってみると、すべての場所で今までよりも、声が落ち着く。そして、低い声になっても良く鳴る。
大成功だった。彼女はこれで一つ掴んだだろう。
気を良くして、以前にやったTu m'ancavi tormentarmiもやってみた。これも最初の出が同じくらいの音でウの母音である。実に好都合であった。ウの母音は、無駄に口を開かずに出来るから、ポジションが決まりやすいのだ…ところが差にあらず、ウの母音を開いてオのようにして出してしまう。これでは、ポジションが高くなり過ぎてしまうのだ。
しかし、すぐに直る。後は、掴んだものをやってもらうだけだ。思った通りに行く。さて、これからが実に楽しみだ。

ゆうこさん。
今日は発声練習でを意識して胸の呼吸を使わせる。たかはしさんと同じで、呼吸が甘くなってきたので、自然な胸を使った呼吸に戻す。リズミカルにしっかり胸を使って呼吸をすること。腹式呼吸では?と訝らないで欲しい。
腹式呼吸といって腹だけに意識すると、初心者は何も出来なくなる事がある。体の使い方が活力に乏しくなりがちなのである。

それから口の使い方の意識が足りないので、あごを開かない事、口をすぼめて唇を突き出すようにして、イやアの母音で声を暖めてから、5度の上向音形でイからエに変える練習をやる。これだけで発声練習で驚くほど声が出る。良く鳴る声になった。やや、息が出過ぎの傾向があるが、これからそれは少しずつ直していきたい。
何事も焦りは禁物だ。一回のレッスンで課題が多すぎると、本人が何も消化出来ずに帰る事になる。
しかし今日は彼女自身が良く納得してやってくれたので、こちらもホッとする。やってみたこと、その結果に納得してくれれば後は、本人の自覚でどんどん伸びて行くものだ。どんなに教えてもその通り出来ても、そのことに納得をしなければ絶対に身に付かないものだ。これも今日始めての結果といってもいいくらいの感じである。
彼女とは1年近く付き合ってきたが、ようやく何かを受け入れる体勢になってきたようだ。
このことは、なかなか言葉に出来ない呼吸のようなものである。彼女は、とてもオープンマインドのようでいて、なかなかナイーブなのだ。彼女に限らず、レッスンの難しさは、この呼吸にある。当たり前だが人間関係である。

さて、曲はベッリーニのVanne o roza forunata。これは、まだ譜読みである。8分の6の拍子感覚を徹底的につかむこと、そして、それを難しくするイタリア語の読みを徹底させる。イタリア語は 母音の数が日本語に似ているし、開口母音が多いので、一見日本人には取っ付きが良いのだが、歌になった時、音符への言葉の割り方が難しいのだ。
最初は音を外してひたすら読むこと、そしてリズムをつけて読む事。これを徹底する。
イタリア歌曲は声を訓練するのに適切な教材である。と、私は思う。彼女は驚くべき強い声帯を持っている、素晴らしい素材なのでこれで声をじっくり錬磨したい。そして忘れない程度にフランス語の歌も身に付けさせたいと思う。

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12月14日

からしまくん。
彼は発表会を終えて初めてだ。発声練習で狭いエと広いエの母音の違いをやる。イから始めて狭いエ広いエと変えていく。口の開きは同じにして舌の高さ一を変えて母音の差を変えるようにする。

狭いエといっても、フランス語の発声としてやるために、我々が思うより遥かに前で処理する。これは、唇をやや丸めて唇の方で声を出すような感じ。
発声練習といっても、フランス語の発音を基礎にしてやりだすと、微妙に音色の好みが変わってくる。フランス語は、どの母音もかなり前で処理する。その点はドイツ語や英語とはかなり違う。音色的にはイタリア語の好みに近いといえるだろう。

彼の場合低い声が出ないが、これは喉の下げと開きが足りないためにどうしても声帯を狭くしてしまうからだ。この声帯を下げる事、喉を開く事は本当に難しい。元来自然に出来ている人もいるが、日本人は一般に喉を開く事が苦手だ。声だけ聞くとテノールが出来るような軽い声である事が多いのだが実際は、本当に高い声を出すためには喉を開く事が出来ないと難しいのだ。
ものを吐くように、この際に腹部の筋肉と連動させて行わないと出来ない。
そうしないと、喉周辺の筋肉やあごの力だけで喉を下げようとするの、逆に喉に力が入ってしまう。
彼の場合、歌もそうだがすべての動作をせっかちに、硬く処理する傾向があるため微細な筋肉の収縮に神経が行かなくなる、という問題がある。
したがって、処理を少し遅くゆっくりとする癖が必要であろう。

曲は、フォーレを復習する。
漁夫の唄は、とにかく倍近いゆっくりのテンポで音程とレガートを注意して作り上げて行った。譜読みの甘さが残るし、言葉の処理もまだ不正確だ。何事も落ち着いて確実にやること。最初の譜読みがとても大事である。
リディアは、発音はあまり問題がない。高い音域の柔らかい声のために口をあまり開かずに、発音すること。

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12月13日

たかはしさん。今日は発声練習の際にブレスを中心にして・・
胸で呼吸する事も教える。なぜかというと、体の使い方が固着的になっていたからだ。どうやら、腹のところでぐ・・・と我慢している感じ・・・今の段階ではどのみち完璧にはいかない。そこで、わざと胸をしっかりつかって、呼吸させる。
発声練習というものは…1、喉を暖める。2、呼吸を整える。3、声の音色を見る。この3つがポイントになる。そこから、実際の旋律を歌う際の基礎を学ぶのだ。したがって、上に上げた3つのポイントどれを抜かしてもやる意味がなくなる。
今日は、呼吸を中心。ドレミファソファミレドを半音ずつ上げてアの母音でやるにしても、半音上げる際のブレスポイントでどうブレスをするかを、考えないとやる意味がない。ゆっくり、あるいは早くこれらの単純な発声練習をやることによって呼吸が整い、体の筋肉も暖まり、音楽の気が体中にみなぎってくれば良い発声練習と言える。

彼女は、胸をしっかり上げてやると、声の通りが良くなる。胸を意識して使う事で、側腹部の筋肉が活力を取り戻し声帯を程よくしたから引っ張ってくれるのだ。首の支えがきちんとあれば、胸がある程度上がる事によって声帯がうまく保持される。姿勢はやはり大事である。
曲は、シャンソンの復習。ベルジュレットとバルバラ。同じシャンソンといっても古典的なベルジュレットは旋律を大事にしなければならないが、バルバラは言葉をしっかり出さないと、うまく行かない。
言葉を出す・・といえば簡単だが、旋律の扱い方、とも言える。
長い音符を短めに処理する事。必要な母音をしっかり強調する事。
長い音符を短めに処理する事で、余裕が出来、言葉さばきも、音さばきも早くなる。
次回から、新しいバルバラの曲とコスマ=プレヴェールのバルバラ。
バルバラは本当に良い曲が多く、楽しみである。自分にとっても、弟子が持ってくる新しい曲は刺激になる。


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12月11日

きょうは、さわださん・・・・
彼女は声が暖まるのに時間がかかる方だ。暖める発声と、ピッチを正確に
付ける練習。
ピッチ=音程、音程は難しい。一発で出す音程、それから音と音の間で取る
音程。高い方から5度で降りる練習で、最初にアタックする音をきれいに出すために、ピアノの響きからどうとるか?俗に言う上から音程を取る練習。
この際気をつけることは、響きが浅くならないように。ただ、スイートスポットというか、音を軽くアタックできるようにするための、ブレス器官の体勢の取り方がまだ分からないので、これからじっくり教えたい…
あと、二つの母音を交互に発声する練習…イエイエとかイアイアなど。
あごを動かさずに舌の動きだけで処理すること。勢いあごはあまり開かない。

曲は、イタリア古典歌曲集から、ガンジス河に陽は昇る、ヴィオレッテ、そしてベッリーニのマリンンコーニア。
彼女も美声の持ち主だ。個人的にイタリアの音、音楽が好きなので教えていて楽しくなる。教えていて美しい声に触れる事が出来る時は至福の時だ!
最後に、発表会でやったヘンデルのLascia ch'io piangaを復習。
この出だしの一点Aの音は、とても難しい。声のポジションが定まらないと正しい美しい音にならない。この場合は、音程は下から取るような感じ。浮ついた音程はまったく駄目だ。音程はなんでも高く取れば良いというものではないという見本。始ってすぐの・・・La dura sorte..のアの母音からウの母音に音程が上がる際に、やはり声のポジションが変わってしまう。こういう細かいところに気が配れるようになれば、かなり上達するだろう。

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12月10日

みむらさん。

今日は、鼻音による訓練から。これは、鼻声を作るためではなく、軟口蓋を閉めて声帯の鳴り方にだけ集中するための訓練である。
日本人はともすると、必ず軟口蓋を閉めず(上げず)に鼻声の訓練をしてしまう。軟口蓋を閉めるという事自体が、日常生活でないことだからだ。
口を開けてこの鼻音の訓練をすると、軟口蓋の閉めが意識しやすい。
いわゆるあくびの感じ。同時に胸声を意識する事。
この場合、声は当然地声状態になるため(声帯がはっきり合う)高くなるに連れてあごを下げてしっかり、喉を開かなくてはならない。さもないと、喉が詰まり相当苦しい声を強いられる事になる。
これらの鼻音の訓練で、5度上向で2点Gくらいまで。

曲は、イタリア古典歌曲集から、Oh del mio dolce ardor..
Alfin..respiro..のAlは高いソ、2点ソをしっかり出す事をやってみたが、喉がやや上がり細い声しか出ない。
本人は細く当ててクレッシェンドをしようと思ったのだろう。
当然喉のコントロールが出来ていないため、クレッシェンドが出来ないし、喉が充血すると、思ったように細くあてられないのだ。
これは、喉を開くということが出来ていず、喉だけでコントロールをするからだ。

彼女は、俗に言う頭声を充分に使っているといえるタイプだけど、本当の意味で喉が開き、声帯自体をしっかり保持できていないので、体を使った頭声と言えず、勢い表現力に欠けてしまう。
腹部の使い方と、姿勢、声帯を開く事などがこれからの課題。
本人は難しいといっていたが、まさにその通り。難しいが、本当に良い表現力を持った、良い歌手になるための関門だ。地道な努力と、忍耐が望まれるだろう。

ゆうこさん。
発声練習で3点Cまで出す。すんなりと、出た。これから毎回出す事にしよう。
良く観察すると、全然呼吸が見えないのだが、そのせいか声が楽すぎる。
彼女は楽に声が出せるしそれで、どうにかなるが、やはり体を使った声の出し方になっていない。
息を意識させるだけで声が出るようになる。
いかに、意識しないで歌えるか・・という見本のような彼女。笑
しかし、呼吸法、発声の訓練には興味を示さない。どうも受け入れがたいなにかがあるのだろうか・・・興味を示さない者に無理強いは出来ない。いかに、説教しても、受け入れる心、興味を持たないと、物事は受け入れられない。こちらのやり方もあるのだろう。興味をもってもらうのは至難の技だ・・・
結局ここから先は、本人がどんな声になりたいか、どんな曲を歌いたいか・・というはっきりした目的意識を持つか、持たないかで決まるのだ。
持たなくても、楽しく歌いたいのであれば、それでも良いのだ。
プロの声楽家になるわけではないし、本来楽しみでやっているから。

曲は、ベッリーニ。Vaga lune che inargenti.しかし、あつらえ向きの曲だ。
Vanne o roza e fortunataを譜読みする。今回二曲ともCDなどを聴かずに自分の力で譜読みさせる。今までの曲はすべてCDやカセットを聞いてもらって譜読みしてもらったし、言葉もつけた。
そろそろ、自分で出来るようにならないといけないと思って・・・
Vanneo rozaの八分の六拍子は、案の定難しい。特にシンコペの所がリズムが分からなくなるのだ。少し音楽的ではないが、手で6拍子のリズムを叩きながら歌う練習をする。どうにか、一時間で出来上がる…
しかし、いずれの二曲も彼女にピッタリだ。明るめで暖かみのある声は、クラシック的に洗練されたものではないのだが、ベッリーニの持つ、いやイタリアの音楽が本質的に持つ、温かさ、明るさを彼女は実に自然に声で表現できてしまう。素質というものは恐るべきものだ!


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12月5日

さわださん。
発表会で少し自信ををつけたようだ。楽しかったのだと思う。
今までのレッスンで身に付いたのは、声の鳴らしかたと、ビブラートが取れたことだろう。息は元々長いのだが、まだ細かい息の使い方などは、わかっていない。

発声は、アタックのしかたを重点的に。細く当てること、そして息の交ぜ方。
息を混ぜないでアタックすることが、出来るようになったのだが、アタックが太かったり、繊細さに欠けるのでやや音程が♭になる。これを直す。
上向5度音形で、最後の音の際に伸ばしながら口を開けて息を混ぜる。
逆に下降5度音形では最初の音で伸ばしながら息と共に軽いアタックをしてクレッシェンドし、声を鳴らしこんでいく。
クレッシェンドは腹の力が物を言う。

今日は、復習。古典歌曲集のStar Vicinoから。やってみると、今度は軟口蓋の緊張感が足りないことがわかる。ちょっとした上向音形の際に、音程がはまらなかったりする。良く観察すると、あごが開き過ぎで、軟口蓋が上がっていない。
軟口蓋を上げる、ということを良く言われるがこれは、あごの使い方と関係がある。
発声の瞬間にあごをバク・・っと下げてしまうと、軟口蓋を上げる筋肉が働かなくなる。彼女の場合、このあごを下げることが大きすぎる事が問題点だ。
どの音域でもその動きがあるために、アタックの際にも声帯が合わなくなり声がかすれてしまう傾向がある。

ヘンデルのLasia ch'io piangaは、出だしの声の音色、ピッチがとても大事だ。
これだけで、時間を費やしてしまう。
結局、彼女の場合音程が上ずり気味になるのだ。1点Aの音で、鳴りにくい音域であることもある。はまらないのだ。
ここの音域は、ややピッチを低めにとってみる。そして、きちっと鳴らすこと。
口の使い方、子音Lの舌の使い方、唇、様々な事が大事だ。
そして、はまった音が出るようになった。この最初のAの音が決まると実にノーブルな音楽、ヘンデルらしい音楽になる。

彼女は面白さがわかってきたようなので、楽しみだ。

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12月4日

新しい生徒…ちばくん。男性、合唱団でテナーをやる若き社会人だ。
高校の頃から合唱をやり、かなり歌好き…とみた。
早速声を聞いたが、素直な明るい声だ。ただ、喉声のままなのだけど、無理があまりないので素直に聞いていられる声。しかし、発声練習から曲に入り出すと、喉あるいは、首の前部周辺にかなり力を入れて歌っているのに気づいた。曲は、イタリア古典歌曲集から”NINA”。
元来、体があまり大きくないし、多分声帯も小さいので、頑張って声を出してもそれほど気にならないのだが、よくよく聞くとかなり頑張ってしまっていてしかも本人は、それが習い性になっていて、頑張っているつもりがないようだ。
ただ、喉の開きは良いし音程感が悪くないので、声を押さえていれば合唱団でやっていけるのだ。
響きはいわゆる口腔共鳴だけという感じ。鼻腔共鳴が無さ過ぎるので、勢い喉に力を込めて、声帯だけを鳴らしている状態である。
腹筋の使い方は完全ではないがある程度出来ているし、声帯の鳴りはかなり良いので、これからは、共鳴の作り方を考えていきたい。
喉の力をまず取ることは、ファルセットの練習で出来るだろう、そして、声帯を小さくあてて、弱声を作ることから声を作り、共鳴を教えていきたい。

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12月3日

みむらさん…
今日は少し体調が悪いようだった。腰か腹の支えがあまりしっかりできないようだった気がした。が、彼女の声は安定している。
発声は軽くやる。2点b2点hで止めておく。どうにかこの2点hはクリアできるようになったけど、拙速は禁物だ。ゆっくり、少しずつ音域を伸ばしていきたい。
曲は、イタリア古典歌曲集のOh del mio dolce ardorの高声版。
出だしは声のアタックに注意。いつのまにか声が出ているように、かつ、遅くならないように声を出すのは難しい。

2ページ目の最後、導入の終わり、八分音符はブレスを取らずに次のブレス記号が書いてある部分で音楽的にブレスをすることが、コツ。
この辺り、校訂をした畑中先生はさすがだ!
元来、オリジナル版にはこのようなブレス記号はないはずだ。
初心者は、休符があると、すぐブレスをするが、そういうことではない。

3ページ目、導入から中間部。中間部の表現は少し力強く、モティーフのレガートに対して、リズム感をはっきり表わして力強さを表現したい。長い音符に力点がしっかり出るように。

さて、声の嗜好はテクニックがある程度出来ている人の場合、無意識に決まってしまう。特に、力強い声、本当にオペラが歌えるようになる声は、なかなか訓練が必要だ。元来でかい声を出せる人、声が強い人は、荒っぽくても削っていく内に音楽的に出来るが、ないところから作っていくためには、相当な発想の転換が必要になるだろう。
私自身も元来強い声ではなかったが、学んでいく中でどうしても、強い声への憧れがあったので、それなりに出来るようにはなった。なったが、喉への負担があることは否めない。
喉を使わないように・・・という教え方はある面で大事だが、これが行き過ぎるとやはり、ある程度キャパシティのあるホールでは、表現力にかけてしまうことがある。
歌曲などでは、力強さをあまり必要としない場合があるが、それでも声楽の持つ魅力は、力強い声の表現によるところが大である。

前述の声楽家の畑中先生は「弱声唱法」という言い方をしているが、声帯にあまり負担をかけずに、声楽的に作品を処理していく生き方もアリだ。
どちらかに徹することも大事だ。最終的にそれは、本人の嗜好だし、選択の問題だ。その場合。レパートリーにも限りが出るが、それによって自信の確立をすることの方が大事である。

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12月2日

きょうは、ゆうこさんが来た。発声練習で、前回発表会までに勉強したことをチェック。質問して答えてもらう。本人は理解できていたので良かった。実際に本番直前に分かってくれたことがあったので、今後それを更に学んでいければ良いだろう。一番困るのが、何をやるべきか?何が出来ていないか?ということが本人が分かっていないこと。それを言葉で表わせないことだ。

彼女の場合は、声の集め方、声の音色、そして高い声をもう少しきちっと当てて響きのある声にすること・・・中音部、出しやすい声域でもう少し意識して声の音色を作ること・・。そして、最大の課題は腹式呼吸の使い方だ。これは、経験あるのみ。そして、指導者が適切に指導していくこと。
今まで暖めたモーツアルトのアリアで、上記のことを確認する。すぐに出来ることは声の当て方だが、長いフレーズや言葉の扱い方、そして高い声を完璧にするには、時間がかかる。特に呼吸の問題が彼女の当面の課題だろう。

新しい曲をやった。ベッリーニのVaga luna che inargentiである。
彼女にはピッタリだろう・・・という予測がまさにその通り!
これほどはまるとは思わなかった。体にぴったりのお似合いのよそ行きの服という感じ。暖かみと、哀愁のあるベッリーニの曲を少しずつ学んでいきたい。
同時に、今までやってきたフランスのロマンスも並行して学んでいくこと。
イタリア語とフランス語を同時にやっていくことに難しさがあるのは、承知だが
声のこと、そしてフランス語を読めるようになること、フランス語で歌えるようになることをなんとか、課題にしていきたい。彼女はそれだけのキャパシティを持っているだろう。期待したい。

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