2001年5月後半レッスンノート

レッスンノート目次
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5月31日
5月31日

5月も終わりだ。台風のような1ヶ月だった。笑
というのは大げさだが充実した1ヶ月だった。レッスンを通して喜びを感じてもらえることが自分にとっても喜びだった。時として肉体的な疲労の中でのレッスンもあったけど、音楽を通したコミュニケーションは疲労を疲労として感じない心地よさがあった。りりこさんも3月末から来て2ヶ月近くになるけど徐々に音楽的な歌が歌えるようになってきた。ただ、彼女の癖は高い音になるほど声量が出て来て、音程がやや上ずってくることにある。今日思ったのは音程が上ずるのはブレスをするために声を出すフォーム(体の重心)がどんどん上に昇ってしまうことにあるのではないか?高くなればなるほど、腰に力を入れて重心を下に感じること、深いブレスを心がけること、高い音程を得るためには軟口蓋をしっかり高く維持することと、胸を広げること。良く言うことだけど、天井を高くするという言い方をする。これは、軟口蓋を上げることを言う。ただし、天井が無くなってしまっては駄目だ。天井は高くしても必ず意識することが大事だ。腰の重心はブレスの時に感じること。実際にお腹の筋肉はまだ使えていないようだ。そのために肩や胸に力を入れて歌っているようだった。腰が使えなくても少 なくとも、声を出す際に下腹部をしっかり使うこと。背中の壁に向かって下腹部をしっかり入れ込むような筋肉を鍛えてほしい。さて、リズムの練習のためにコールユーブンゲンをやってみる。彼女は基本を学ぶためには、実践的な歌よりもこのような練習課題で訓練することを好むようだった。課題は付点音符と短い音符による組み合わせ。短い音符の跳ねが弱いのだ。これも最終的には息をしっかり保持してお腹が使えないと、なかなか難しい。家で良く練習してほしい。歌は古典歌曲集からNINAを歌う。低い声は、あまり喉を落し過ぎずにやや浅くても明るい響きを工夫してほしい。高目の声もあまり奥に引っ込ませずに前に響かせるように。声量が出るほど声が後ろに回るような感じ。もっと単純に声帯を鳴らす意識を持っても良いのかもしれない。次回はその辺りのことと、コールユーブンゲンのリズムの練習ももっとしたい。


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5月30日

さたけさん。発声練習は下降を中心にやった。本人曰く、声を出すときに水を口に一度含ませてから出している感じだった、含ませないですぐに出す感じが良いと思う、とのこと。勉強熱心ですね。本人が感じたことを尊重してやってみる。確かに、声を出すときに上ずる癖が少しなくなっていた。それから癖のある声質が前よりもなくなっていた。ただ、音程が少し上がると、再び音程をずり上げる悪い癖が出てきた。そこで、声を胸に楽に響かす練習をした。Ha〜の一発で音程を取る。胸を高くして胸に声を軽く当てる。この当て方が大事で、きつすぎても駄目だし、軽すぎても駄目。基準は声帯がビ〜ンと響いて部屋の反響が出る感じが良い。うまく行くと自分の感覚と違った声の響き方や声質に厚みがついていることが分かるはずだ。これがきちんと出来ると、声の音楽に品格と落ち着きを与える。なんとなく音程も合っているし、表面上問題がないのだけど、なんだか音楽がざわざわとうるさい感じの歌になってしまうのは、この胸声の出し方の基本が出来ていない証拠である。
さて、さたけさん、これが大分出来るようになった。これが声のアタックで確立したことによって高い声まで安定したアタックが出来るようになった。アタック時の声の上ずりがなくなった。次に声帯の合わせ方をやる。胸の上、首の付け根の窪みに声を当てる。エの母音が声帯が合い易い。彼女の場合は比較的すでに出来ていた。ただ、意識してこれが出来ると、声の鳴りが更に良くなる。特に高音で強い声を一気に出すときに効果的だ。ただし、その際に腰のしっかりした支えが大事になる。さもないと喉を痛める。後、胸の広げ方と、支え方をやる。これが決まるとブレスがしっかり入りやすくなる。要するに下腹部を中に入れるようにすれば、胸が自然に上がり、肋骨が開く。呼吸時に吸気の運動とは関係なくこの筋肉は使えると思う。曲は、Intorno all'idol mio..中声用。少しずつゆっくりやる。胸声をきちんと確立する。そして、言葉の扱いと発声の関係に充分注意。上向のフレーズで特に細かい音符に言葉がついたら、その子音のせいで発声が切れないように、息を進ませて昇ること。PやBなどの破裂音(唇を合せる子音)などが一番注意が必要。そして、母音や子音の違いによって言葉の響かせ方の違いがあるのだ。音符上は同じ八分音符だから同じように…とアーティキュレーションすると音楽が幼稚になる。まだまだ課題はあるけども少しずつ進歩しているから、焦らずに基礎を物にして行ってほしい。


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5月29日

さぶりさん。きょうは合唱の直前のレッスンになった。そのせいかやや集中力に欠けたかな。曲で同じ課題を何度もやっていると、そわそわとしてくる…
さて、発声ではスタッカートで胸声の練習をした。簡単に、ドミソでやるが、音が高くなるほど声の厚みを増すように、深く響かすように心がける。もっと簡単に言えば、上に昇るほどクレッシェンドをするような感じだ。やってみると、もっとすぐに巧く出来るか…と思いきや意外と苦労する。その前にやった発声では、ドレミの上向きでなかなかうまくやっていたのだが、その時からどうも喉声に聞こえてはいた。ビブラートがやや目立ち、声が危ない感じだった。案の定、スタッカートで胸声を出すと、喉にひっかかってむせてしまう。意外と喉が開いてないことが分かる。結論的にいえば、声をどこかに当てる感覚よりも、声帯をもっと深く押し開いて厚く振動させる感覚を持つと良いのだが…言葉で言うがやるのは難しいものだ。そうだな…弦に弓を当てるときに、最初の当て方はやや軽目にしておいて、弓を動かし出したら、しっかりとやや強くあてて腕の遠心力で弦を充分に振動させる感じ…といえば良いだろうか。他の人たちにも言うことだけど、声を作るときには最初に共鳴を考えるよりも声帯をきちんと合せるこつをつかんでほしい。声帯を合わせるこつは、イメージとしては弦楽器の弓と 弦の関係が良く似ている。管楽器のリードに考えることが多いようだが、違うと思う。
曲は、寺島尚彦の合唱曲から…日本語にしても外国語にしても、声の出し方の基本は変らないと思う。声の質の好みはあるが、旋律の歌い方の作法には基礎がある。大事なことは、音程が変ったときにどういう響きで音程を移動するか?ということを良く考えること。例えば、半音の違い、2度の違い、5度の違い、上向か、下降か?同度の音を長く伸ばす時…れらを旋律の形の中で声の質としてどう捉えるか?そのことを良く考えて工夫してほしい。例えば、自然なビブラートを付けるのか?ビブラートを付けないのか?楽譜に書いてなくても、ややディミニュエンドするのか?クレッシェンドするのか?これは、合唱の場合こそ大事なことだ。特にバスはその倍音で和声の響き方が変ってくるのだから。そして、言葉。音楽の形、旋律の形、それらと言葉の語感を良く見極めて、声の質、音程、などを工夫してほしい。それでこそ、声の芸術だから。
今日、気になったのはウの母音が響きが浅いこと。これは気を付けてほしい。それから、アやイの母音も時々浅くなる。いずれにしても、短い音符の時になりやすい。充分注意してほしい。


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5月28日

さわださん。発声練習をいつも通りにするが、少し頬を上げてみることを教える。頬を上げると今度は喉が上がってしまう。平たくて子供のような声が出てしまう。実に簡単なことだけど、頬を上げることで声帯が上に引っ張られる。喉を下げて開けることと、軟口蓋を上げることそれぞれは実は相反する行為なのだ。だからあごを下げることと頬を上げることを一緒にすることによって、両者のバランスが保たれる。もちろん、それは声の調子を聞いて調節する必要がある。何度かやってみて、良い声を取捨選択する必要がある。これは、なかなか一人では判断できないものだ。うまくいくと彼女の場合、やや高目の音で素晴らしく気品のある光るような声が聞かれる。声帯というものは不思議だ。。。
今日は、トスカのアリア「歌に生き恋に生き」を譜読みする。以前にくらべイタリア語の読みが早くなった。慣れたのだろう。最後に2点bが出てくるが、譜読みが完全ではないとしてもこの声は難しい。
これからじっくりとこの声を熟成させたい気持ちになる。アリアは良いとして歌曲をドイツ系のものにしたい。バッハかヘンデルが良いだろう。たのしみだ。

むらたさん。
今日から本格的にレッスンを始めた。まず、深呼吸そしてブレスを整えるために楽に下降5度で始める。次に胸に息を当てる練習。Ha.Ha.Haを3度5度で上向。手を使って音が上がるときに下に引っ張るようにイメージしてもらう。次に実際にお腹に力を入れて音を上げること。しばらくやると、お腹の使い方と声の出し方の関係がつかめてきた。次に声の当て所を教える。一番簡単な胸の上の窪み。ここに指を置いて意識してエの母音を出して声がしっかり鳴ることを覚えてもらう。出来たら次は実際に音程を出してみる。1点Gくらいから。徐々に上がって行く。彼女はまったく着実に言われた通りのことを素直に確実にものにしていった。声が確実に鳴るようになる。エの母音が出来るようになったので次は同じことをアの母音でやる。これもうまく行ったのでしばらくはアの母音で5度上向とオクターブの上向きそして、スタッカートでやる。しばらくして気づいたのは、最初から口を大きく開き過ぎること。最初から大きく開くと声帯が合いにくい。低音からフレージングする場合は、必ず口を開き過ぎずにむしろ閉じた状態で声を当てると、むしろ喉が楽なフォームが出来るはずだ。それにしても今日一日 で長足の進歩!彼女は地声が弱いがチェンジボイスにも無理がなく比較的簡単に声が鳴るタイプ。
次回からイタリア歌曲集の実践に早速入りたい。


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5月27日

ふくのさん。ひさしぶり。発声練習は楽に始めるが、少し落ち着かない。息の取り方、声を出すことが何か不自然な感じになってしまう。声を出すときの力の掛け具合がわからないようなので、簡単に教える。手を使ってたとえば、手を思い切り握ってみる、あるいはお腹に力を込めてみる等…
すると、声が鳴るようになった。完全な地声ではないのだけど、声帯がしっかり合った響きは比較的簡単に出る。ただし、相当喉に力を入れている。最終的には入れなくても出来るようになるのだが
分からないときは、まず喉に力が入ってもやってみることが、彼女の場合は先決であろう。
曲は、Caro mio ben..これも、最初からしっかり声を出すこと。どの声もしっかり鳴らして歌うことをまず心がけてみてほしい。自宅で出来る大声を出さずに練習する方法。それは、ハミング、それも口を開けてやるハミングで高いほうまで良く練習すること。この練習で、軟口蓋を高く(開く)こと、同時に喉も開くことが訓練できる。お腹は声をしっかり出すときと同じように使えるから、防音設備がない人にはうってつけの練習だと思う。みなも試してほしい。

すずきさん。彼女は毎回笑いの絶えない楽しいレッスンだ。ぼくの顔がきっとおかしいのだろう。発声を中音部からチェンジした声で始める。高いほう、2点Eくらいから上の音域に入るとにわかに声に輝きがついてくる。そして2点hまでどんどん声が出ていく。その代わり、中音部はなかなか響きが集まらない傾向にある。今はこれだけがキーポイント。これさえ解決すれば、更に良いのだが…同音でイからアに移る発声をやると、少し鳴るようになるのだがまだ足りない。思い切り地声から上がって行く方法を取ると、喉が締まってしまう。少し声帯を下げる感じで出すと響きが太くなる。声をチェンジしても喉が上がらないように、胸に響かす感覚が更につかないと中低音の声の響きが足りない。そんなこんなで色々と発声をやりだすと時間がすぐ経ってしまう。もう少し色々な訓練を時間をかけてやりたいけど、なかなかそうもいかない。3日間でも合宿したらその辺りを集中して訓練できるのだが…
さて、それでもずいぶんと声が出るようになってきているが、言葉がつくとやはり声量が出なくなる傾向がある。曲は、Lasciate mi morire....声の出初めでも相当しっかり口を開いて声を出すことを忘れずに。声が出たら腹で息をしっかり送ること。とにかく気を抜かないでしっかり声を出すこと。口を開くこと。口から声を吐くように出すことに集中してほしい。
発声のこつはある程度つかんでいるから、今後は歌を中心に発声のポイントを見ていきたい。

みむらさん。マイペースにしかし着実に美しい声を追求している、みむらさん。今日の課題はもう少し声のアタックの時に声のひっかかかりというか取っ掛かりみたいなものを、感じて出してみること。
それは、弦でいえば、弓を弦に当てて音を出す瞬間の力の掛け具合みたいなことだ。
今の状態は、息を送って声を共鳴させ、その共鳴を便りに声を出している感じかな。もう少し弦をこするような声の出し方を工夫して見てほしい。そのことで、やや中低音で気になるビブラートも解消するだろう。要するに、良い意味で喉を使うこと。他の人たちも皆そうだけど、喉を使ってはいけない、という何かイメージがあるようだけど、それだけだと、本当のしっかりした声は出せるようにならない。
喉を使うというよりは、声帯をしっかりと合わせると思えば大丈夫。曲は、ヘンデルのOmbra mai fu...
中声用だと少し低い。出だしの1点bのオの母音を伸ばす際も、少し声を太目に当ててみると良い。
多分、クレシェンドしやすいと思う。クレシェンド出来ない声はやはり、どこか違っているのだ。
曲だけど、ぜひドイツ歌曲に挑戦してほしい。シューマンが御勧め。くるみの木や女の愛と生涯などは素晴らしい曲の宝庫だ。

たにさん。高音部の声の出し方が心境著しい。へろへろしていた声が随分安定してきた。良く練習できているみたいだ。後はあごの開きがまだまだ足りず、喉が詰まり気味。あごをしっかり開けることが習慣になるように気を付けてほしい。今の状態の場合第二段階のチェンジの声で練習することと、第3段階の声でなるべく声を集めてしっかり出すことと両方を併合して練習すれば、声がミックスして来て徐々に良くなってくると思う。発声では、初めてかな?二回目かな?ハミングを口を開けてやる。ハミングでやると第二段階のチェンジボイスでも随分安定している。この練習の時に充分に軟口蓋を高くすることと、口を開くことをしてほしい。もちろん腹も使うのだ。曲はフォーレのAu bord de l'eau...第3段階のチェンジボイスでやると、言葉がつくせいで響きが散ってしまう。やはりすべて第2段階の声
で歌い通してほしい。今の状態なら出来ると思う。この曲は上に昇るフレーズでは基本的に上に行くに従って声をしっかりと出すイタリア的な歌い方を心がけること。
ビリティスの歌。1曲目は低音が主体だけど、朗唱風の同度の言葉が続く。そのために低音の響きに充分こだわってほしい。そして、同度の言葉でも取り扱いには十分に気を付けてレガートになるよう。
2曲目「髪」も素晴らしい。この曲になると、弾き語りは勿体無い。やはり伴奏を付けてしっかり声を出した表現が聞きたい。最後のナイアードの墓。これもまったく美しい曲。いつのまにかこちらが歌わされるはめに!これもレッスンのうちかな・・・

にしさん。発声は低いほうからゆっくり始めるも、低音は比較的良いのだが高音部が声量が出ない。というか声がシンプルに鳴らないのだ。色々やってみる。ファルセットは大分出来るようになっていたがそこから、声にする際にうまく行かない。ぼくはテノールではないのに、ついつい声を出してしまう。ファルセットで出して地声にする際には、喉に力を入れずにそのまま鳴らすことがこつ。たとえ子供のような声でも良いのだ。そこから音程のついた声を出していくうちに、ファルセットからやらなくても出せるようになる。最終的に分かったことは腹の腹筋を最初から使い過ぎていて、肝心の時にまったく腹が動かない状態になっていることだった。とにかく、歌う前の準備段階でフォームを固めすぎている。例えば、ドーミーソと上がる際に、一番腹を使うのは、最高音を出すとき。逆にいえば、それまではそれほど腹を使う必要はないのだ。声の出し始めで腰を意識すること、高音の際には前下腹部をしっかり中に入れるようにすること。曲は、トスティのTostiのL'ultima canzone...これもやはり声量が出ない。何度か歌い終わって、最後に思いついたことだけど、何も余計なことをしないで声帯を鳴らすことをしてみる。すると、喉声にもならずに、部屋の壁にきちんと響く声が出た。一体何を苦労していたのかな!そう、声を鳴らすことが基本なのだ。声帯をきちんと合わせること。彼の場合はこれにつきる。
腹の筋肉の使い過ぎに気を付けて、共鳴のことも今は忘れて、むしろこのことを定着すべきだろう。

よしおかさん。相変わらず仕事が忙しいようだ。そのために体調も今一つのようだけど、きちんとしっかりと歌ってくれる、けなげな性格。発声練習では確実に良い声が出るようになってきた。声の出し方もぼくの言った通り、弦をボーイングするようにスムーズに出してくれる。声質は息漏れがまだ少しある。更に声が集まると良い。それから、声を出すポジションがもう少し深く低くなると、更に良い。そうすれば声量も出るはず。胸と首の境目の窪み辺りに声を当てて見ることが、有効だろう。高い声になるときにそのまま上に抜けないように、下に引っ張る力も感じて見てほしい。後は高音を出す際の口の開き。もっとしっかり開いてほしい。外から見ていると声を出すのに力んでいる感じがどこにも見えないのだけど、やや貧血気味になるのはブレスが足りないのかな。恥ずかしいのかもしれないけど、手を使って声を出すためのエネルギーの方向などを確認して歌うことも有効だからやってみてほしい。曲は、NINA…アウフタクトの入りはTregiorno.低い1点Cの音からだけど、しっかりと地声にして響かして。そして1フレーズを最初出した声で餅を伸ばすように声を伸ばして出しきるのだ。 他のところも全てそう。声の出し始めで全て決まるということだから、とにかく最初の一声に集中してほしい。ということはブレスが大事だし、声の当て所を決めることが大事だ。そして、声を出したら腹を使って声と共に息を送り流してやることで音楽が進むことを覚えてほしい。例えば、上向音形の場合は昇るのにエネルギーが要るから、楽譜に書いてある以上に上に昇るスピード感を感じることが大事。今日もボーイングの手の動きのことを話したと思う。Star vicino,,,これは軽く歌ってみるが、今の彼女の声にはむしろ合っている。軽く典雅な感じは合っていると思う。これも声が上ずらないように注意してほしい。


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5月26日

きょうは疲れた。手短に…
たむらさん。久しぶりのレッスン。発声練習をやるとずいぶん声が出ていた。地声の領域はそれなりに声が出るけど、そこからチェンジするのが早いし、チェンジすると声が出ない。
声を胸に当てるやりかたを色々するが、声を出す時点ですでに喉がキュ〜っと締まってしまう。エの母音だと、むしろ喉が締まる。アが一番締まらないけどその代わり声帯が合わずに声がこもってしまう。声帯を合わせることよりも、喉の開きを促すことを先決にやっていくことにする。声の出し始めのポジションの取り方も大事だ。自分で感じているよりもずっと低く、深いポジションで声を出すことを心がけてほしい。それが出来ないと地声で高いほうまで行くことが出来なくなる。最終的にはハッハッハ
という声の出し方でお腹を目一杯使って胸に声を当てると、大分ポジションが低く収まって胸声が出るようになってきた。この線でこれからもしばらく胸声を訓練する。曲はA・C・JobimのInutil paisagem
発表会でアカペラで歌った曲。最初のMais pra queと半音の上向で上がる音形だが、特にPra から
Queに音が変るときに、音は上がっても下に引っ張るように声を出すことを注意。この上向の際の上に上がる時のポジションの取り方は基本中の基本。これを覚えると喉の鳴りが良くなるし音が締まって響きが深くなる。要するに声帯が上がってしまうことを押さえるのだ。イメージでやるだけでも違うが具体的にはあごを引くようにするだけで、声帯が上がらないためにうまくいくことがある。
次回から曲をアカペラでやるが、徹底的にその辺り声のことを教えていきたい。

みくりやさん。
軽く発声をやる。どうも気持ちに落ち着きがない。からだというか首もぐらぐらしている。そのせいでブレスもきちんと入らない。どうしたのだろう?気持ちが落ち着くまで発声をゆっくりやる。そして今日は高い声の訓練をすることにした。苦手なハミングを徹底的にやる。高くなったら、口を軽く開けてハミングをする。頬を軽く上げて、軟口蓋を上げることを意識させる。軟口蓋を上げることで高い音程を取るのだ。要するにノドチンコ!が高くなるように。このフォームを取るためには下あごを前に出しては駄目だ。後ろに引くように。何度もやるうちにどうにか出来るようになった。そして次はハミングのために上がった軟口蓋をスポ〜ンと開いて母音を出すようにする練習。これをやったら一発で声を頭部に高く響かせるようになった。2点bまで出した。今までで一番それらしい声が出たと思う。この出し方を次回も忘れないでほしい。素晴らしく良く響いているから!
曲は、ラヴェルのギリシャ民謡をやることにした。最初は、2曲目のLa bas,vers l'eglise..
音取りをして発音をやる。ラララで歌うが、慣れるとなかなか良い。思った通りというか、急に思いついたのだけど彼女にはピッタリだと思う。これは全部で5曲あるが、全部やるのは先にして、取りあえずこの曲と最後の曲をまずやりたい。彼女の声は曲によって向き不向きがはっきり分かれるがはまるととても良い味が出る。比較的ビブラートが少なくて声帯が良く鳴る声だから。家でもハミングなら練習できると思う。これがもっと楽に出来ればもっと楽に高音が出ると思う。なるべく練習をしてほしい。それからフランス語の読みもきちっとしてほしい。うまく行けば、今年の後半にはこの曲集全曲が歌えると思う。忍耐がいるけど、素晴らしい作品だから、頑張ってほしい!これからが楽しみだ。

しらいしさん。
前回体験レッスンで今日から早速本番レッスン。前回の体験でも感じていた声の質の良さがすぐに出ていた。ただ、今日は少し調子が悪いようで声帯が少しちりちりしていたが、本人の自覚で痛みもないようなので声をしっかり出す方向で行った。が、これが後で祟ったようだ。。。
一通り下降の音形で発声をやると、前回気になった声質がわかったので、早速矯正に入る。良くあるタイプで、声を響かすために喉は開いているのだけど響きがやや奥まって、暗い響きの中音部。高音になると今度は少し喉が締まり気味だけど細い声をうまく当てる。まず中音部の声をもう少し楽に浅い響きになっても良いから、声帯を単純に鳴らすことをやる。要するに声を前に出すこと。
本人は気持ち悪いかもしれないけど、これだけでも丁度良い声質だと思った。ただ、最初の声のポジションが高いので、確かに響きは浅い。が、取りあえず構わず上の声まで昇る。今度は高くなったら逆に口をしっかり開いて、声を太く出す感じ。細かいことを言わなくても基礎が少し出来ているので、それだけでも少し太目の良い高音が出て来ていた。しかし、太めといってもぼくの感覚ではこれが普通だと思う。2点F以上はまだ恐いみたいで、しっかりとはいかない。焦りは良くないので。ここまでにしておく。喉が上がってしまうのをあごを引くことや下あごをしっかり下げることを覚えて防げば、恐れることはない。喉頭が下がれば自然と喉は開くからしっかり声を出しても大丈夫だ。これが出来るとかなりダイナミックな声になる。今でも充分に高い声は音程が良いのだけど、少し細過ぎるかな。きれいだけど、迫力に欠ける。彼女の背の高さ、体型や顔の形などから推しても細いリリックなソプラノよりも、メゾ系か太めのしっかりしたドラマティックなソプラノが出来ると思う。さて、フォーレの「ゆりかご」高声用で歌う。一度通してから、ゆっくりと少しずつ声を作って行く。2ページ目のサ ビの部分から高音を出すと、急に声が途切れる現象が現れた。どうも声帯の周囲の筋肉がひっつるようだ。疲れているか、出しなれない声を出したので、周囲の筋肉が疲れたようだった。次回は、その辺りをよく見て、姿勢、首の支えなどをしっかりさせて、練習したい。最後に、唇の緊張感がもう少しあると、声の質ももっと良くなる、というか声が集まると思う。フランス語のアーティキュレーションのこつでもある。

たにむらさん。
発声練習をやるが、いつもの調子で声帯がなかなか合わない。イの母音は良い。エの母音も何とかなるが、アになると、突然息漏れがひどく声にならない。発声練習だけであっという間に1時間が経ってしまう。色々やるけど、もちろん元来の声帯の形があるのかもしれないし、予想外のポリープがあるかもしれないが、最終的にどうもそれらしい?のは、想像以上に喉によりかかって声を出す癖があるらしいということ。それがわかったのは、まずブレスのやりかたが悪い。前腹部、おへその上辺りの部分をぷく〜っと膨らませてブレスを入れている。これでは息が足りないだろう。なぜなら支えられないからだ。前腹部だけを膨らませた場合、声を出した瞬間に息がボンと出てしまうはずだ。皆にも試しているが、これを治す方法。一つは下腹部を中に入れ、腰側から前腹部に斜めに延びる筋肉を使って横隔膜をしっかり支えるように息を入れる形を覚える。要するに腰の筋肉が後ろに出っ張るような感じで筋肉を使うこと。もう一つは息をしっかり止めたことを意識してから声を出す。この時には呼気は意識しなくても声が出れば自然に出ると思えば良い。
これで少しブレスが持つようになったが、相変わらずアの母音は厳しい。近くで声を出す様子を良く観察すると相当に首の前、喉の周囲の筋肉に力が入っている。そこで、首の後ろを意識することと、声を出す際に絶対にあごや顔が前に出ないように、意識してアの母音を2点Cくらいで出してもらう。この際、声を出す方向は脳天めがけるか、やや後頭部に送る感じで出す。これをやると、大分クリアな声が出るようになった。まだ喉に力が入っていて不完全だが、以前には出来ない結果が出せるようになった。次回以降このやり方を徹底してみよう。しかし、また2週間後になる。一番間が開かないでほしい人なんだけな…笑。


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5月25日

さぶりさん。発声練習を低いところ、1点ハより下のbからウの母音で3度上向音形で始める。
しばらくは、声馴らしで様子を見る。音程を上げる際に、3度なら二番目から3番目、5度なら4番目から5番目の時に声のポジションが変る。上に上がる際に覚えてほしいのは声帯の鳴らし方を変えないで上がること。音程の取り方はこれだけではないけど、バス(バリトン)らしいレガートな歌唱法というかフレージングの一つとして身につけてほしい。この出し方は究極のところ、音程のありかたと関係がある。音程というのはアンサンブルの中でもソロにしても上がり気味に出す場合とやや低めに出す場合がある。上から音程を取ることも良いけど、下から音(声)を引っ張り上げるように出すことも覚えてほしい。声帯の位置は比較的一定だし、無理なく下がっている。ただ、少しずつ音域を上げて、途中で休んでから声を出すと再び声のポジションが高くなる。元来がテノーラルな声の出し方をしていたさぶりさん。ブレスの仕方と声の出し始めの音を取る場所を深く意識することを徹底させてほしい。そのことと関係ある事で、気になったのはブレスの際にあごが上がることだ。レッスンの時ではなく終わってから書くのもなんだけどあごを上げずに、体でブレスするように注意してみることも大事だ 。高い音域、彼の場合は2点CからEくらいまで行くと声が鳴らずに後ろに引くように声が出る。バスパートでもあるしこの出し方でも充分だが、もし出来ればしっかりと声帯を合わせて前に響きを出せることも覚えられればソリストとしても完璧だ。あごを引いて声帯が上がらないように、口は開け過ぎずに響きを前に出すように。曲は寺島さんの日本語の曲。ここそこに発声練習でやった課題がある。二度の音程の上がり下がりの際、素直に音にしたがって出してしまわずに、声帯の鳴り方と相談して出すことに気づいてほしい。声帯が浮つかないように上がりそうになったら逆に中に入れるように気を付けること。あるいはちょっとしたエやウの母音で、声が浅くなる。ウの母音は同時に全体に鳴りが悪い。あまり頭部に共鳴を持っていかずに胸声で響かしてみたらどうか?充分に注意をしてほしい。でも中音部低音部ともに初めて来たときに比べて大分落ち着いた響きになってきた。これが完璧に出来ることと、もう少しレガートな歌唱方を覚えてほしい。言葉の扱い、口の使い方、同時に声帯の鳴り方に集中をすること。

ちばはらさん。
上向音形で発声を始める。開いたappertoな発声で上がって行くが、中音部の出し方がやや不安定だった。それほど高い音域でもないのに、音程を上げ気味に声を出す。これはあまり良くないと思う。
声を出すからだの状態は、緊張と弛緩が交互に不連続な状態になってバランスが取れる。高い声を出すからといって高くもない音域で音程を上げ気味にする必要はないと思う。それぞれの音域で体の状態と相談しながら…ということは声、声帯の状態が最良の状態になることを考えてほしい。
これは大事なことでむしろオクターブや10度の音程が上がるフレーズなどの場合に、最低音から声のポジションが浮つくと、結局高い声がきれいにはまらないことになる。
この方法で上がり下がりしてから、次にスタッカートで5度8度で出す。しかし、最高音がまだはまらない。良く観察すると、どうも下あごの動きというか力の入り方が気になる。そこで、ボールペンの端を軽く歯で噛んでもらって発声練習をする。これだと高い声を上げる時に下あごに力を入れられないために声帯が比較的自由になるのだ。そして音程を引っ張り上げる軟口蓋の筋肉が働いて、Appertoでも高い2点Aくらいまで何とか音が上がるようになる。もちろん、下腹を中に入れ息をしっかり脳天めがけて送ること、軟口蓋を高く働かせるために頬も上げるように。少しずつだが音程がはまるようになってきた。ここまでやってから今度はファルセットの練習をする。ファルセットは以前には確か2点G以上になるとほとんど喉が詰まってしまい出なかったが、今日は大分出るようになった。その上に声帯のコントロールも付いてカウンターテナー風に太目の、息が回る声になっていた。練習をしたらしい。
間で練習をしてくれると、こちらも楽になる。本人のやる気が嬉しい。そういう真剣さが教える身にも伝わり相乗効果が現れるものだ。2点As、Aくらいでもファルセットから地声に入る際にまだ少し声帯が前に、ということは喉仏の出っ張り側に倒れてしまう感じ。声帯というか地声を鳴らす方向を前ではなくてファルセットが響く方向を変えずに、胸の筋肉を下に降ろす感じで地声に戻す感覚が良いと思う。
これも次回再度やってみよう。曲はやはり寺島さんの日本語の曲。テノールパートはあまり高い音域がない曲だが、全体に静かさと滑らかさが要求されるようだ。同度が続くとき、ロングトーンの時、音程感に注意してほしい。音程を上げ過ぎずになめらかさが出るように、声の鳴り方に集中すること。要は音のアタックを一音一音で付けないで、フレーズ、固まりで捉えること。これも発声練習でいくらでも練習することであり、基本だ。何度も言うが、弦楽器と似ている。ピッツィカートよりもボーイングでロングトーンをやるのが基本だ。


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5月24日

りりこさん。きょうは発声練習もそこそこに、フランスの古いシャンソンを歌って聞かせたりピアノを弾いてもらって少し遊んだ。発声練習でも曲でもそうだけど、声の出し始めの音域が少し低めだったりすると声をしっかり出さない癖がある。今日は声が鳴りにくい感じだったので、そこを注意した。
別に難しいことはなく、腰、腹をしっかりさせて少し踏ん張って声を出すだけで声は無理なく、ということは喉声にならずに鳴るものだ。常々言うことだけど、声も楽器である。弦楽器ならば弓を使った最初の音の当て方には細心の注意と思い切りが必要だ。初心者はいずれかに偏り過ぎるか、そうでなければやり過ぎてしまう。あまりそ〜っと当てるとちゃんと鳴らないし、当て過ぎると変な音が出る。
声の出し始めには充分注意してみよう。
曲は、ベッリーニのVaga luna...これはやや低いけどしっかり声を出せば充分いける音域だ。そんなに難しいフレージングではない。フレーズの最初の音をしっかり出してそれを引っ張り上げる感じをつかんでもらう。低い声に降りる際はしっかり腰に力を入れ、喉も良く開けて鳴らすこと。喉を鳴らしてはいけないのではなく、体を使わないことがいけないのだ。腰の力がないのに、喉だけで鳴らそうとするのは良くないのであって、喉を鳴らすことが悪いということはない。特に低音部は頭部に共鳴がいかないから、弦楽器でいえば、弦そのものをしっかり鳴らす感じがないと、音は飛ばないと思う。
Sebben crudele..これも、最初はふがふがした声だったけど、同様にやれば、ちゃんと声が出る。
体を動かさないで、弦楽器の胴を振動させるように声を出せば、自然に周囲の空気が振動してくれる…と思えば分かるかな。体がぐにゃぐにゃすると、弦である声帯もしっかり保持できないから、きちんと鳴らないのだ。体を動かしたくなることを、我慢することが大事である。そのために最初は体が硬くなってしまうこともある。しかし、それを恐れるあまりに、重心がきちんと取れないようになってしまうのなら、これも良くないと思う。腰がしっかりした上で体の上体が柔軟になっていれば、理想的だけど、最初から理想的にはなかなか行かないものだ。そして何度も言うけれどもあごが上がらないように。
最後にヘンデルのAh mio cor...これも美しい曲だ。しかし、低音がいかんせん低いので高声用の楽譜でやってみる。彼女の声には合っていると思う。この曲はどちらの声域でやっても完全にメゾソプラノ向けの曲だ。とても品が良くてヘンデルらしい素晴らしい曲だ。品のある、美しいビロードのようなメゾソプラノ目指してほしいと思う。そう思えばきっとなれるから。


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5月22日

さたけさん。やや風邪気味のようだったけど、声は良く出ていた。注意点は二つ。声を出す際に音を探してしまうこと。そのために声をずり上げてしまう。それから、ブレスして声を出している間にも胸を開いていくように。ということは腹筋を使って胸を落さないようにすること。発声練習では、大分声が前に出るようになってきたけど、まだどこかに無駄な力というか、声質に独特の癖を与える要素が残っているのが気になる。最後に歌を練習し、レッスンが終わってから思ったのは、多分声を出す際に声をどうしても頭部に響かそうという力が働いているためではないだろうか?次回のレッスンで試してみたい。
本当に良い声の元というのは、頭部の共鳴で得られる声ではなく、胸声によるのだ。胸声というと太くてきたない声という変なイメージがあるけど、日本人がクラシックの声楽を練習する際に最初に憶えなければいけないことは、この胸声である。喉に力を入れずに楽に胸に響かすように出すこと。この練習をきちんとすることによって、声帯の基本的なフォームが確立していくことを忘れてはいけない。
しかし、レッスンでは目先のことが気になって肝心なことがなかなか出来ないで終わってしまう。今日の反省点だ。さたけさんの場合は、多分今の癖のある声を治すためには、まず低い声で(地声)で上に上がって行き、そのままのフォームでチェンジして行く方法が一番良いだろう。
声を前に出すことや、声帯を合せる練習も今後はそれらが出来るようになってからのことで良いと思う。やはり焦りは禁物だ。原点に帰って、声を作らなければいけないことを指導者として痛感した。
さて、曲はイタリア古典歌曲集全音版の2巻にある、Intorno all'idol mio....Marco antonio Cestiの作曲によるもの。17世紀の作品だ。この上ない美しい曲。多分当時の小さなオペラの曲ではないだろうか。フォーレの夢の後にや漁夫の唄を思わせる。Lamento(哀歌)の感じがある。
さて、歌って見るとリズムがおかしい。多分CDを聞いて憶えたのではないだろうか?
どこがおかしいか?というと、付点四分音符と組み合わせる八分音符、これが逆に来ている八分音符→付点四分音符というパターンがこの曲にはしばしば出てくる。この八分音符を16分音符にしてしまうことがある。付点四分音符も充分に伸ばせないことがある。
手を使って基本的なリズム確認をして見てほしい。この曲は3拍子である。そして、とても典雅なバロック風の3拍子である。歌でこの基本的な3拍子が歌えないと、この曲の良さが生きてこない。
アマチュアにとって、楽譜から音楽を導き出すことはとても難しい。特にピアノが弾けない場合は至難の技だろう。あえて、そういう方々に何がなんでもCDを聞くなとは言わないが、ピアノが少しでも弾ける人あるいは、弾ける環境にある人なら、楽譜から音楽を導くこともとても勉強になる。
それは、音楽が持つ構造を楽譜を通して知ることが出来るからである。それから、音のアタックでやはり意図的にポルタメントがかかることがあるが、これも基本はかけないで、かつ、レガートに歌えるようになった上でポルタメントを工夫してほしい。それにしても良い曲だから、じっくり良く練習して素晴らしい演奏が出来るよになってほしい。



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5月21日

さわださん。友達が一緒に見学に来た。終始楽しそうだった。楽しいことは良いことだ。この仕事をして良かったと思う瞬間。
発声練習では、上向5度音形の練習を主にした。イの母音から始めると、あごを引くのは良いけど、やり過ぎのために、首が固いし、声も固くなる。声のフォームはあごを引かなくても本人は意識できているから、あごを引かないで楽にやってもらう。案の定柔らかくしなやかな響きに変る。次にエの母音。音形が上に行く際に少しずつあごを開いて軟口蓋を高くするようにする。声帯の鳴りは変えないけど口の開きを変えることによって音が上に行くほど柔らかい響きになるようにする練習。
次に下降5度の練習で、最初の声のアタック時に良く喉を開いて、ということはあごを開き軟口蓋を高く意識して声を細くして出す。メッザボーチェの音色を練習。この軟口蓋を上げて、喉を開くための一番簡単な方法は、息をする際にまず息を止める。その状態で喋ってみる。すると、喋り声に独特の響きが出ることが分かるはずだ。それが出来ない場合は、息の入り方が悪いのと、しっかり息を止めていないことが原因。この方法で、喉そして鼻腔にかけての開きを意識できるはずだ。
この状態を作ってから、メッザボーチェの練習をした。彼女の場合これはすぐに出来た。これは声の表現の幅を与える有効な方法だから覚えてほしい。
今回の発表会の曲を反省した。
イタリア歌曲集から、Piacer d'amorは最初の声が低いけどこの声で一つながりのフレーズの音質が決まるから、大事に出してほしい。もちろん、一つながりということは、レガートだ。声の出し方は下から音程を引っ張り上げること。一つ一つの音を上から音程を取らないように。そして言葉の処理。言葉の語感よりも音楽を優先した方が良いと思う。音楽が変るとところ、Tutto scoldai per lei in silvia...
のくだりは、最初のウの母音から声を上に当てず、あごに向かって息をあてるようにして、一連の響きが上に浮いてしまうことを極力押え込むように。
Lasciar d'amarti...は良く歌えていたと思う。これはピアノが大事で、右手の旋律をいかにうまく歌わせられるか?で、大体音楽が決まると思う。歌の良さを知り尽くしたピアニストでないと、なかなか旨く弾けないものです。ピアノ伴奏者は歌を好きになってほしい。
オテロの「アヴェ・マリア」レシタティーヴォは、低いけど、音程が落ちないように支えて。早く喋るパッセージが音程が下がりがちになる。曲に入ってからは、やはり響きが全体に浮つく傾向にあるから息を脳天よりもあごから出すような感じで押え込む方が良い。もちろん、喉や鼻腔が完全に開いた状態を作れることが前提だが。この曲の全体にみなぎる、静かさを表現するためには、キンキンした響きを避けてほしいのだ。
O mio babbino caro...本番はとても良かった。しばしば陥るのは、役柄に適さない声質の問題。
立派な分別臭い声よりも若々しさ、未熟さ、若さゆえのテンションの高さを声でどう表現するか?
最初の、O mio babbino...と入るアタックの素早さ、2回出てくるAsに一瞬昇る音形の意味。それぞれの音形に必ず意味がある。娘が親に懇願する気持ちがこんな音形に表現されていると思う。音楽の形に込められたドラマ性を汲み取ることが大事だと思う。実は最後のAsを出すことよりもその次、最後のBabbo pieta,pieta...のフレーズの集中力でこの曲全体の意味が決まる。アリアの演技的表現というのは言葉の意味をそのまま歌に込めるのではなく、作曲家が「音の形」にしたことの意味をどれだけ汲み取るかということが大事だと思う。そして汲み取ったことを声楽的な意味での「声」でどれだけ表現するか?表現できるか?にあると思う。言葉の意味をそのまま歌にしたり、変に演技したりするとそれは滑稽ですよ。笑


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