2001年5月レッスンノート

レッスンノート目次
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5月20日

5月20日

はたけやまさん。
きょうはフォーレの月の光を持ってきた。フランス語の読みを中心にやった。楽譜は全音のもので、せっかく発音記号が書いてあるのだから、カナを書かない方が良いと思う。ほとんどの発音記号はローマ字読みで読めるのだから、特殊な子音字の記号と、あいまい母音や鼻母音、そして二重母音の記号だけ憶えれば、分かるようになると思う。彼女は声が出来ているから、フランス語そのものを読めるようになれれば、鬼に金棒だと思うが。。。
月の光を歌ってみるが、伴奏のリズムに惑わされてリズムがつかめないようだ。右手は良いのだが、左手のバスが後打ちで入るため、それに惑わされてどこが強拍なのかがわからなくなるようだ。ぼくはこの問題を抱えたことがなかったのだけど、あらためてこういうケースに遭遇して、フォーレのこの月の光の音楽が持つ特異性を認識することになった。良く良く考えてみるとこの曲は面白い。3拍子なんだけどバスの後打ちのせいでどこが3拍子なのかが良く分からないし、弾き方によってはまったく千変万化の音楽になる。ただし、ピアニストも歌手も3拍子の音楽であることはきちっと押さえておいた方が良いだろう。はたけやまさんは声は良い声を持っているから、言葉の読みと譜読みにもう少し時間をかけてほしい。せっかくのフランス歌曲だ。じっくり勉強してほしいと思う。

すずきさん。
1点Aくらいからアの母音で発声を始める。彼女は胸の声が足りないので、口を開けることを意識させる。喉が下がって自然に開くのだ。まずこのフォームでじっくり発声をやる。口を開けるといっても下あごをしっかり下げること、唇をやや上下に皮をむくように開くことなどで、声の響きの調節をする。
これをしばらくやると、声が馴染んで出てくる。時々ガラっと声が引っかかるような音がする。地声が一瞬出かかっているようだ。要するに声帯の状態は良い方向に向かっている、と解釈できる。多分声帯が充分に動かない(振動しない)状態から全体的に振動しかかっているのだと思う。多分にこの長い発声練習が声の声帯のマッサージにつながるのだろう。彼女は地声がすぐ出るのだが、低い声でも喉がつまり気味で出るので、高い声にはとても持って行けないけど、もう少しチェンジボイスの状態で喉を開くことを覚えれば、低い地声でも喉が開くようになるだろう。その状態で今度は高い声まで地声の訓練をすれば、強い声の出し方が感覚的についてくるようになると思う。焦らずにじっくりやってほしい。途中、イの母音からアに移る練習をすれば、チェンジボイスでも更に鳴りの良い声になる。この声の出し方だけでも、身につけてすぐ出来るようになってほしい。要するにアのチェンジした声でも響きがまとまった状態をすぐに出せるようにしてほしいのだ。曲はLasciate mi morire....
喉をやや意識的に下げ気味にして、喉の開きを促すこと。息をしっかり吐くこと、流すことを心がけて。
大分声が出るようになったので、低い声は地声に変えてみても良いだろう。E che volete che mi...
あたりからは、地声に戻して。出来たら、in cosi grand martire..まで地声で持っていけるように更に訓練したい。最後に、O cessate di piagarmi...これは最初に母音だけで歌うと声は大分出ている。言葉がつくと、喉が締まるので言葉の発音と発声の関係を充分勉強することが大事だ。Lucingrate...からは地声で出すと良い声が出ている。

たにさん。
発声練習では、今まで完全な地声から3段階の声の変化を2つにまとめて感じる方法をしばらく勉強してみた。最終的には1段階目のチェンジした声でなるべく高い声まで出せれば理想だ。ただ、喉の詰まりがあるし、息の流し方もまだ不自然な状態なので、喉の負担を少なくし腹筋で息を流して歌うことが更に身についてから、再び1段階下のチェンジボイスで練習を始めると効果的だと思う。声の訓練は無理が禁物だ。一つの方法だけを長くやっていると、悪い方向に行ってしまうから。
2段階目のチェンジボイスで発声をやると、前に比べれば大分良い。2点Fまではとにかく出せるようになっている。しかし、まだまだ声帯が上にいってしまう。もう少し喉が開けること。そのために、軟口蓋を上げること。下あごも充分に下げて声帯が上がらないように気を付けること。
このように発声のやりかたは、カット&トライで慣らしていくのが一番良いだろう。それにしても、ずいぶん高い声まで楽に声が出るようにはなったものだ。
曲はフォーレのAu bord de l'eau....この曲でも、一番上のチェンジボイスで喉を良く開いて声のポジションを確立して出すことを心がけた。特に上向音形の際に、最高音に行く前の声のポジションが崩れないように注意してほしい。A l'horizon s'il fume...のzon の前のイの母音で響きが浅くならないように口の開け方、声帯の状態に気を付けること。最初のAの低い声もチェンジボイスで出すけど、低い声の位置をしっかり押さえて出してほしい。それから、フレーズの最後の音が抜けないように。
低い声は充分鳴っているし魅力的だ。
最後に、ドビュッシーのビリティスの歌を弾き語りした。ピアノと歌を弾き語る場合、どちらもどっちつかずにならないよう、気を付けて。ピアノで音楽の土台をしっかり作って、歌ってほしい。そのためにブレスをしっかり確立することが大事だ。ブレスがきちんとしてないと、リズムを端折ってしまうし、歌も苦しくなる。せっかくの名曲だから、例え裏芸だとしてもきちんとやることを忘れないで!それにしてもこの1曲目は天才の名をほしいままにした人の作品の価値はある。ヨーロッパの音楽アカデミックの世界でギリシャ多神教の世界の雰囲気を音楽作品にしたのはドビュッシーを置いて他にいないだろう。

しらいしさん。
体験レッスン。はじめて来たのだけど、最初からフォーレを歌った人は珍しい。聞けば学生時代にフランス語を勉強していたとのこと。実に頼もしい限りだ!声を聞くと体から想像するよりも細い声を出す。
声は素直で癖がないし、きれいに出すセンスがあるので、これから教えていくのがとても楽しみだ。
背は高く、いかにもメゾっぽい体型だけど、声を当てるときに細く当てるので音程が良い。ただ、その出し方でそれ以上の響きがないために、声量、声の太さ、艶もやや少ない。せっかくの体が勿体無いと思う。口の開き方も無理がないのだが、やや声が中にこもってしまう。もう少し声を前に出すことも大事だろう。その点を少しレッスンする。細く声をあてたら、口を開いて喉の開きを促すように、声を前に出すことなど。それと、声を出す際に口の開きと同時に側腹を押し出すようにして、声に力を与えること。これらをやって、高い方まで上がると、意外と高音に輝きがあるし太さも出る。少しまとめて練習するとかなり伸びるだろう。曲はフォーレの「ゆりかご」出だし、Le long du quaiでは低い声を下から物ぼ引っ張り上げるように意識してLe longを一つの線で処理するように。全体に比較的レガートで歌えている。ただ広い母音の際に口の開きが足りない。声をまとめるためだろうけど、声の質はフレーズの出し始めで決まるから、怖がらずに開口母音はもう少し開いた方が良い声が出ると思う。コロの先生についていたせいか?低音を出さないけど、出した方が魅力的だ、とぼくは思う。その辺から声を作っていっても、高い方まで出るから声域にこだわらずに良い音楽が作れるようになるといいな。

よしおかさん。
発声練習を始めると、おやと思うほど声が出ていることに気づく。後で聞くと朝に練習をしていたとか。。。こういう話を聞くと教えている方はとても嬉しい。ぼくが教えている人たちは自分の時間の有効な使い方の一つでやっていると思うから、あまり無理はしてもらいたくないと思う。思うけど、自分が教えたことを早く身につけて少しでも音楽の深い世界に一歩でも近づいてほしいと思う。ぼく自身も仕事で教えているわけだけど、教えたことに使ったエネルギーは効率よく使えるようになってほしいと思うのも事実だ。だからこんなレッスンでもきちっと練習してくれる積極性は何にも増してありがたいことだ。
ようやく声を鳴らす感覚が身についてきたようだ。大体30分の発声で、今のレベルならぼくが思った通りのことを出来るようになってきた。多分今までぼくが発声でやろうとしてきたことの意味を、頭だけでなく体でも理解できるようになったと思って良いだろう。長足の進歩というべきである。ここまで来たら後は歌で教える方法を取ることにエネルギーを注いでいきたい。
と、ここまで誉めちぎったけど、もちろん完璧なわけではない(笑)声は大分前に出るようになった。響きがつくようになったけど、声のポジションがまだ少し高い。もう少し低い声のポジションが出せるように気を付けてほしい。そのためには、声を出すときに、胸の奥から出す感じを必ず持つように。ブレスをした時に、息が入る肺の奥から逆に声が出るように意識してみること。それはどの母音でも同じ。
やはり、一番気を付けるのはエの母音のときである。
曲は、Nel cor piu non mi sento...最初の出だしのNelの声もまだ高い。今日はやらなかったけど喉の下げ方もこれから少し憶えると良いかもしれない。ブレスをする際に声帯を少し下げる感じを持つのだ。口を開けてブレスすることも良いかもしれない。曲全体に、このエの母音の浅さ、息漏れの多さみたいな感じがある。大分治ったけど、まだまだ練習は必要だ。最初が肝心だから、嫌になるほど練習しておいて損はないと思う。こういうテクニックは一度つかめば、応用が効くから。頑張ってほしい。
最後にNinaをやる。母音では声は良い状態になっている。次回はこの曲も詳しくやりたい。

むらたさん。
体験レッスン。合唱団に入っているとのこと。声を聞くと息のエネルギーが極端に少ない。そこで、簡単にまず息を吸うこと、吐くことを練習する。お腹の使い方胸の上げ方、開き方など。そして吸った息を前にしっかり吐く練習。体の使い方を見ると、それほど固くないし無理はないので、問題はあまりないと思う。この後で発声を再度始めるとこれだけで、大分声が出るようになっている。声なんてそんなに難しいことではなくて、第一歩は出そう!と発意することである。その発意が呼吸のエネルギーになって身体動作に跳ね返ってくるわけだから。今度は発声練習で、声を出している際に胸が落ちないように腹筋で支えること。これはイコール声を出す際に、腹をひっこめるようにすること、と思って良い。
まだ、腹筋が弱いせいか、完全には行かないけど、言った通りのことは出来ている。口の開き方大きすぎて声が散ってしまう。そこで、イの母音で声を集めることをやる。イからエ〜アと変化させてイで集まった声をそのままアの母音に持っていくこと。ここまでで来た時の倍以上の声の響きになっている。
合唱をやるもソロをやるも、最低これくらいの基礎的な声の出し方を身につけないと、厳しいだろう。
後は、慣れと積み重ねである。ご本人曰く、仕事のプレゼンでも声が小さくて、損をしているらしい。
話し言葉も息を使うことは同じである。また、声帯の使い方は歌とは多少違うが、コツは同じである。
まずは、発声を徹底的にやって合唱の曲なども使いながら、基礎をみっちりやっていきたい。


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5月17日

りりこさん。発声練習をやり始めてすぐに思いついて、手を使うことをやった。彼女はスケールの練習をやると、一つ一つの音符を手で一つ一つなぞるような動きを見せる。ならば、その手を使って良い方向に持っていけば良い。一つ一つなぞらないで、フレーズの終わりまで一定の間隔で動かし続けるという方法。そしてフレーズの最後、息が無くなるまで手を前に伸ばし続けてみる。これが効を奏したので、この手による歌い回し方でレッスンを通した。要するに、フレーズの出し始めの息を節約して軽く当てること。軽く当てれば、声帯が薄く鳴って音程が良いし無理がない。それを確立させることと息を腹で送ってフレーズを歌い通すことをやるのが目的だ。この場合息の流れは最初ゆるやかな放物線を描いてフレーズの終わりではその放物線は急激なカーブになると思えば良い。
下降5度で段々と上がって行くと、彼女の場合高音になるほど最初の声のアタックで息を出し過ぎるのだ。これは誰しもある。息を強く当てないと高音が出ない感じがあるからだ。針の穴に糸を通す瞬間はじっくりと、通ったら即座にさ〜っとくぐらせる感じ。車の運転をする人なら分かると思うが、高速でカーブを曲がるときは、スローインファーストアウトが原則だ。(曲がる直前はゆっくり曲がり出したらアクセルを踏むこと)しかし、声の場合はこのパターンだけではない。最初にいきなりがツーンと太く声をあてることもある。これも一つの方法だが最初のアタックで声を軽く当てることは、最初に覚えた方が良い。
2点Gまでは、彼女の声のアタックはとても良い。音程も良いし喉が開いた美しい響きが出る。しかし2点Asになると、少し喉が締まる。2点Aになると、ややきついが2点bまでは、なんとか使える声が出る。昨日のゆみさんと同じで息が太くなってしまうので、音程ををずり上げてしまうのだ。ブレスの時にすでに軟口蓋の高さをしっかり準備して、そこに横隔膜から送った息(声)をツンツンと当てる感じを持ってほしい。このブレスの際に頬を少し上げるようにして口をやや開くと良い喉の上体が出来ると思う。口の開き加減は、声を聞いて喉の締まり具合と相談して調節してみる。
今度は低音部から上向5度で昇っていくと、2点As以上の高音が出なくなる。低音をしっかり鳴らすために高音を出す際に声帯がぼたっと厚く響いてしまうから重くなってしまうのだ。上向きの際には低音をしっかり鳴らして、上に行くほど軽い響きになるように意識してみると良いと思う。それから2点Cくらいから声を出す場所を少し高く意識してみるの良いかもしれない。さて、低音部1点Cくらいから上がって行く時は低音をしっかり鳴らすために、手を下に掘るように使う。この方が低音がしっかり鳴るからだ。ソプラノに特定して低音を犠牲にするのならば、このやりかたはしなくても良いかもしれない。しかし、ソプラノになるとしても、低音を鳴らすにはどうすれば良いか?を知っておくことは高音で強い声を出す際にも役立つからやっておいて損はないと思う。
声の出し始めの際の手の動かし方は、手を上に上げる下げる、前に出す…の3種類が基本とすれば
上に上げる時は声を軽く鳴らしたいとき、前に出すときは声を明るくはっきりさせたいとき、下に掘るように動かすのは、声の鳴り始めをしっかり鳴らしたいときだ。この3要素を使い分けて声の響きを使い分けられるようになってみることも面白いだろう。
曲は、イタリア古典歌曲から、Star vicino...手を使ってみると、最初のフレーズがすごく安定する。
これもケースバイケースだけど、高いところから急に下の音に降りる際に下の音が鳴らない場合は手を掘るように使って見てほしい。それから、いずれにしてもフレーズを通す際には手をゆっくりとあせらないで前に伸ばしてほしい。息をしっかり使い切るようにすること。特にフレーズの最後に息が出切るように使ってほしい。Son tutta duoloをやってみる。最初の声のアタックが弱いため、手を使って下から重い物を引き上げるようにしてみる。これだけで、最初の声の重さが出てくる。
というように、手を使ったフレージングの実践と声のアタックの方法を少し覚えて今後のレッスンに使っていきたいと思う。


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5月16日

ゆみさん。発声練習をアの母音で5度の下降で始めるとなかなかクリアな声になっているので驚いた。良く勉強されたようだ。一人で勉強することももちろん良いことだけど、声の調子が悪くなったときは気を付けてほしい。前に地声の訓練を薦めたことと、声の暗さ、こもった感じを指摘したことがきっかけらしい。録音で御自身で判断されたのだと思うけど、誰でもお勧めはしない。人によっては方向が間違ってしまうこともあるから。さて、発声の響きに気を良くして、低い方に降りると、1点Cよりも低いbやAになって地声に自然に変っていった。そして、再び上に戻って今度は高音に上がる。2点Dくらいから音程を探る癖が出る。そして微妙に声のポジションを替えて声を細くしたので、逆に細くせずに太く強い声の出し方を練習する。横隔膜から息を上にしっかりと送り脳天めがけて声を出してもらう。2点Eではとても良い声が一瞬出たので、気を良くして上がって行くとやはり、音程を探って下から摩り上がる癖が出る。今度は、声を前に一気に出すことをやる。あるいは、胸に当ててみたり、喉の下の窪みに当ててみたり。要するに、音程を探らないようにすることと、息の柱を太くして声 を出す感覚を養うためだ。強くしかも瞬時に筋肉を働かせることがコツ。この際呼気によって声帯を痛める可能性もあるから声を当てる瞬間にあごをしっかり開いて喉を開くことを忘れないように。
次に、高音の軽い声。腹筋はしっかり使うが一気に息を上に当てずに柔らかく当てる。口は開き過ぎないで下あごを軽く出す感じで声を脳天の中に向かって入れるように出す。これも比較的うまく行って軽い声が出る。声質は軽いが、体はしっかりと使う。あごの開き方が違うのは、声帯の位置が自然と変るからだ。しっかり下げれば、声帯もしっかり下がる。軽く開ける程度だと、声帯の位置も下がり過ぎずに中くらいの位置になる。こうやって、自分の声質と相談しながら、息の使い方あごの開き方、声を当てる場所などを考えて、声の表現の幅を作って行く。もう一つ観察していて気づいたことは、ブレスをすると、とても良く胸が開くようになったのだが、声を出すとすぐに胸が下がってしまうこと。胸は下げないようすることが大事だ。ただし、それを胸の力で頑張らずに腹筋や背筋などを使って支えるようにしてほしい。これが出来ると、響きがフレーズの終わりまできれいに伸びるはずだ。
最後に、エの母音で中音部で発声練習。彼女は、声を作ってしまう癖がある。顔の表情を見ると、声を出す前から、顔に共鳴を作ろうとするのだがそのために、口の中や喉などに不必要な緊張感を作ってしまう。そうして、声質が暗く浅いものにかえってなってしまうのだ。顔を作らずに、声はむしろ下品なくらいに楽にエ〜と声帯を合わすようにして出してもらった。これを充分にやってから、エからアの母音に移る練習。すると、それだけで、彼女の場合充分良く響いたアの母音になるのだ。今度はアからエの母音に変る練習。この時はゆっくりと、あごを絶対に動かさずに舌の位置をゆっくり動かすだけでエに移行すること。このようにして、エの美しい響きを作って行く。この後、下降5度の練習時に、低い音になるほどあごを開いて喉を開くようにして降りると、自然と1点Fくらいから地声に変化することが分かる。今度は地声の音域からチェンジする音域への移行の練習をする。
曲はSebben crudele...
最初の声からして、もう発声で出したクリアな声が消えてしまった。エの母音のやり直し。まず、比較的クリアに出る、アの母音で出してから、エに移行してその響きを確認すること。これは比較的すぐにうまくいった。気になるのは、Sebben crudeleのcruの2点Dの音のポジションを必要以上に高く当ててしまうことだ。この音域(中声用)だったら、ポジションはその前の2点bと変えない方が美しいと思う。これを実行するために、ウの母音の口を大事にすること。唇、特に下唇を突き出すようにして音を突き出した唇の方向で取る感じが大事だ。ゆっくりやると出来るが、前の音から続けるとどうしてもポジションが変ってしまう。きょうはこれで時間終了してしまう。なんか残念だ!だが、また来週あるので、なんとかこれを身につけてもらえるよう努力したい。


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5月14日

にしさん、はじめての方。まだ学生さんだがしっかりした方だ。合唱からソロボーカルに興味を持って数年間レッスンに通っていたとのこと。テナーで勉強して来ている。早速声を聞くが、まず姿勢と口の使い方から、相当なフォームの固まり方だな!という印象だった。胸を開いてブレスをするのは良いのだが腰が中に入り過ぎている。腰よりも前に上体が乗っかってお尻がかなり出ている。必然的に腹部にもたれかかって声を出していると思う。本人は下腹部を入れて声を出しているということだが、触わってみるとかなり固くしている。そして、顔。あご、唇すべて固い。目まで上を向いてしまう。そして声を頭部に当てるために、口の中、軟口蓋から舌根からすべて固くなっていて、声が出ないでこもってしまっている。昔の音大出身の歌謡歌手のような声になっている。例えば、藤山一郎とか。
姿勢を治すが、腰の使い方はすぐには治らない。もう少し腰が前に出て、腰骨から背骨にかけてが真っ直ぐになるようになってほしい。そして、胸の開きも良いのだが、やり過ぎだ。八分目くらいに開いて歌を歌っているときに、開くように使うべきだ。そして、腹部もなるべく固くせず、歌のエネルギーを出せるようなしなやかな状態にすることが大事だろう。意識せず普通の声を出してもらう。そして、声を真っ直ぐ前に出すこと。あまり頭声にこだわらず、顔の前面に出すように。そうやって、高い声まで出してもなんとか2点Aまではすぐに行ける感じだった。それから低音部まで下がって自然な胸声から高い方に持っていくと、実に良い声がでる。音程が苦しくなる辺りから、軟口蓋を高く意識して音程を引っ張り上げるように、同時に、横隔膜をしっかり上げること。これらの練習で最初に出した声よりも確実にしかもすぐにまっとうな声になった。意外と本人もそれは意識していて、迷っていたようだ。
案外すぐ治りそうなので安心。歌を聴く。トスティを持ってきた。「最後の歌」では、なかなかテノールらしいスタイルの歌い方を身に付けている。まだ、やや口の中や喉を固くしているが、何度も気を付ければすぐに治ると思う。育てるのが楽しみなテナーだ。

あやこさん。仕事帰りで大変だろうけど、若さだね!発声をチェンジボイスの下降5度で1点Aくらいから上に向かって進むと意外と声が出て来ていることを発見。口の開け方が足りずに喉がしまっているため、 口の開け方などを指示する。例えばブレスをして息が胸の上部、首のつけねあたりまで充満した感じを持った時に、息を止めて喋ってみる。ブレスを出してしまった時に比べ、声が良く響く感じがわかると思う。その状態で声を出せば良いのだ。息が出るのは、声と共に出るからあえて、息を出すことを意識しなくても良い。こんな練習をして更に良い感じの声が少しずつだが出て来ている。地声の練習などをやりながら、何度もチェンジしたり、地声にしたりして最後に中低音部の声を、前にそして腹を中に入れてしっかり呼気と共に前に出す練習をすると、かなり声が良く出るようになった。多分喉が開いてきたのだろう。後、喉の感覚や体の使い方なども慣れて来ているのだろう。地声とチェンジボイスの中間を狙った声の出し方も覚えていくこと。そして、やはりあごを引くこと、また口を開いてあごを下げることを意識して声を出すことが大事だ。彼女の場合は口の開け方が足りないために、喉が開かないのだ。まずは喉の奥を良く意識すること。
曲は、モンテヴェルディのLascia te mi morire...最初はラララで歌って声のことを見る。伸ばしている音の時にしっかりと腹を使っていきを前に出すように、そして息を吐くように出すこと。この二点を忘れないでほしい。言葉を付けると、やはり、喉が締まってしまい声量がなくなるし、浅くなる。低音部のチェンジボイスの際には、少し喉を下げることを意識させる。これも効果あり!次回、この続きをやって良くなってきた発声を更に確立してあげたい。進歩し出しているときが肝心だから。


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5月11日

ちばはらさん。ブレス時の身体の使い方を見る。お腹を前に突き出すようにブレスをしているが、胸には息が入っていない。特に、お腹を突き出しているが、横隔膜はきちんと使えてないのではないかな?下腹部をしめるように息を入れると自然と横隔膜が開く。同時に胸郭も開く。一番息が入るやり方だと思う。練習してほしい。発声は、イの母音を使って高い方でファルセットで練習をするが、どうしても喉につっかえてしまう。イの時にどうも声を前に出す意識が強すぎるのではないかな。軟口蓋に空間が出来ている感じで、そこで声を響かす感じがつかめれば良いのだが、さんざんやって、かえって調子を崩しそうなので、やめる。アの母音に戻してもどうも今度は喉がひっくり返ってしまう。そこで、低音を練習してから再び上がって、今度はしっかりと軟口蓋と横隔膜を上げる練習。2点G〜2点Aにかけて。アタックをファルセットにして、クレッシェンドする。クレッシェンドが効かず、すぐに喉声に落ちて、音程が半音フラットになってしまう。今度は、下からオクターブのアルペジオでスタッカートにする。スタッカートだと、音程も響きも問題なくはまる。そこで次にスタッカートで最 高音の時に少し伸ばしてみる。どうにか。。。でもまだ音が落ちる。多分 軟口蓋の上げ方が弱いのだ。頬の筋肉も上げるように、そして下あごは下げずに後ろに引くように。この時何が起きているか?というと声帯が上がるのをあごが阻止して、逆に軟口蓋をしっかり上げることで喉を開き声帯の鳴り方を良くしているのだ。大雑把だが、声帯の鳴り方に厚みを加えるのが、声帯を下方に下げる力であるが、そのままだと音程が上に行かないので、軟口蓋を上に上げる力でで音程を上に無理矢理引っ張り上げる…という感じだろうか。これは、同時に同じ上に上げる力を横隔膜を引き上げることで行う。
ここまでやって、やっと張りのある輝かしい、音程のしっかり上がった高音が出てくる。これは、相当筋肉を使う作業だから、訓練あるのみ。これらの筋肉を総動員して、しかも一瞬のうちに行わないと喉に来る可能性があり、危険である。
曲は、プーランクのExultate deo....これは、明るく力強い素晴らしい曲だ。いかにもプーランクらしい。
八分音符で切るフレーズの切り方は、掃き捨てるように、しっかりと切ってほしい。高く張る声と低い声の音程差を声質にしっかり反映させること。ラテン語の音節を間違わないように。全体にはそれほど問題なかったと思う。一番目立つ最高音の場所は、発声練習で使った筋肉を総動員して、思い切りやってほしい。


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5月10日

りりこさん。前回厳し過ぎたかな。とても良いもの(声質と感性)をもっているのだけど、それは宝石の原石のようだ。だから磨かないと輝きを持たない。
今日のレッスンで分かったこと…発声のことだけど。初心者なんだから当たり前だけど、声を出すのにすごくエネルギーを使っている。一声一声に息をものすごく使っている。声の鳴らし方のコツを覚えればもっと少ない息の量で、軽く声を出せるはず。そうすれば、息を保持して声を出すということが分かるんだけど…
発声練習をすると高い声がやや重いので、今日は軽い声の出し方をやってみた。小さな軽い声で声をアタック(出し始めの当て方)する。その時に軽くしかし正しい音程を取ること。確実になったらその声のポイントでお腹を使って声をクレッシェンドすること。喉に力をためないように。軽く出すととても良い声が出ている。後、首というか顔が上を向く癖を少し直してほしい。発声で子音を使って早いテンポでやってみる。やはり、声を出すのに時間がかかる。素早く響かせる訓練も大事だ。Bibleという言葉で下降5度でやる。声は直線的に素早く前に当てるように。高い声になったからといって簡単にあごを浮かさないように。あごを浮かしてしまうと、一見喉が楽な気がするけど、浅い響きになって平たい浮ついた声になる。それは声帯の位置が上がって悪いポジションになってしまうから。
曲は、Star vicino...身体が硬くなってしまう…という本人の弁は多分…息がしっかり保持できずに喉で歌ってしまうためだろう。息をしっかりと腹筋で保持して、一定の息の出し方が出来ないと、この曲の中高音の歌いまわしが難しい。出し過ぎずに息の混じった軽い高めの声を軟口蓋をすべるように出す感じがつかめると、エレガントなこの曲の雰囲気で旨く出る。もう少しこの曲で練習したい。
さて、最初にレッスンに来たときにやったO cessate di piagarmiを聞かせてもらう。何かとても雰囲気を出すのがうまい。声にイメージがある。どうも、曲の好き嫌いというか、乗る曲と乗らない曲があるようだ。歌というのは、ある意味で感情の流出だから気持ちが乗る曲をやることは一つの原点だけど声楽の表現は、表現の客観性にあるからこそ、声を楽器として扱う大事さがあるのだ。だから好きな曲と並行して、苦手な曲も少しずつやってほしい。

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5月9日

あきこさん。今日が発表会前、最後のレッスンだったけど、初めて来た頃から比べて随分声が出るようになった。声を張ることを覚えたようだ。後は、口の開き方、軟口蓋の上げ、などもう少し覚えて音程がしっかり出るように気を付けてほしい。そのためのブレス。いい加減なブレスをしないこと。暗譜だけど、初めての経験で伴奏合わせの回数も少ないので本当の暗譜には至らなかったけど、そのことも経験の一つだからこれから頑張ってほしい。Star vicinoでは、ヴォカリーズのフレーズの後半を遅くならないように。そうしないと、次のブレスもきつくなる。イとエの高音の喉と口の開きを忘れずに。
Vergin tutto amorは、譜読みが不完全。最後のフレーズの音程の取り方に注意。2ページ目の高音が続くところは、オの母音の開きが悪いため、音程がフラットになるから気を付けて。全般にオの母音が暗い。もっと口を縦に開いて。でも、思ったよりも積極的な姿勢は評価できる。これからも頑張ってほしい。

さぶりさん。今回は2回目だったけど改めて欠点が良く分かった。欠点というには厳しいかもしれないけど、せっかくのバスパートだ。まず、声の出し方だけど、母音になった場合に、悪い意味で微妙に喉を使っている。それは、声のポイントが浅いということと関係がある。母音を作るために、喉の奥の開きが悪くなっているのだ。音程の取り方が、上から取るだけになっている。確かに音程はフラットにならない長所があるのだが、本当に良い響きを得ることが出来ない。厳密に言うならば音程がやや上ずっている。非常にしばしば音程が低いということを指摘することがあるが、実は、バスパートの音程の問題は難しい。特にアンサンブルの場合、バスパートの音程が上ずっていると、落ち着いた和音が出来ないからだ。
これらの問題の矯正のために、発声でまずハミングで低音を徹底的に練習。腰から発声するように出すこと。お腹を引っ込めて顔に向かって出すのではなく、あくまで腰だけで出す感じ。2度の
音程も腰と腹の筋肉で広げるようにして音程を上げる。音質を絶対に変えないこと。この練習を40分近くやったが、さすがにうんざりみたいだ!笑
歌になると俄然張り切るね。笑
ヴィクトリアの曲。良く観察すると、アーティキュレーションが悪い。やはり口がパクパクしている。
外国語の歌は、母音による違いをなるべく省いて口の開きを統一することが大事。なぜなら、アの母音なども開けすぎるために響きが平たくなっている。確かに明るい響きだが、響きが浅い。
口の使い方を教える。これだけで、俄然良くなったと思う。本人も納得のようで良かった。元がとても良い体(がっしりとした下半身)良くなる声帯を持っているから、更に良いバスパートに可能性は高い。楽しみだ。


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5月7日

さわださん。風邪を引いて体調を崩したけど、歌うに連れて声が輝いてくる。さすがですね。
イタリア歌曲。Lasciar d'amartiは少しテンポが遅いから、引っ張るように。Meno mossoの入りと
は、すぐにテンポに入って。ピアノとの合わせでずれないように。Piacer d'amorはまずピアノの最初の3拍子を叩く右手を正確に。これだけで品格が違ってくる。リズムの基本の大切さを。
歌い出し。もたつかずに、上昇のフレーズを軽くクレッシェンドを付けて推進力を持って。
オテロのアリア。ピアノの前奏。長い音符から、次の音符への渡しの間を充分に。オケの音楽であることを忘れないでほしい。この前奏でオペラ全体の雰囲気を作ることが出来る。アヴェマリア。レシタティヴォはとても良くなった。祈りの気持ちを忘れずに。もう少し、緊張感があるともっと良い。
歌い出し、Pregaの声は急がずにたっぷり響かせることを忘れずに。アリアの最初のページはフレーズの間を充分とって。所々声に甘いところがある。どの声にも常に緊張感のある響きを忘れないように。O mio babbino carは、高い声をもう少し伸ばして響かせて。伸ばすところは充分伸ばして。
後は当日の体調さえ良ければきっとうまく行く!頑張って。


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5月6日

りりこさん。発声では、低い声を訓練する。それは、単に低音の訓練だけではなく、本来彼女が持っている声を引き出して、そこから一から声を作り直したいからだ。顔面の共鳴の問題などは、後の問題だ。声帯を合わせて地声を出すこと。腹筋に力を入れて、声帯が自然に合って声が出るようにする。なんとなく声を出している方なので、息が漏れてしまい、なかなか意識の元で声帯を合わせることが出来ない。別に難しいことではなくて…ッアと声を出してみれば良い。
ッ…の時に嫌でも腹に力が入るはずなんだけど、どうも思った通りに行かない。もしかしたら、色々な情報…喉を使わない…とか、力が入らないように…とか、頭に入った情報に惑わされて、身体が拒否反応を起こすのだろうか?身体の使い方など、最初から理想通りには行かないものだ。最初は多少のストレスがあっても、第一段階でやれることをいつでも即座に出来るようにしてほしい。変なところに力が入るのなら、まず出来ることを出来るようになってから、直せば良いと思う。声帯が危ないかどうかその他の判断はぼくがすれば良いのだ。こちらが責任を持って教えているわけだから。
2度の音程を上げる時には、少し声を下に押すようにして上がること。要するに、音程が上がっても音質が変らないようにするためだ。そのために、腹筋だけでなく、喉も下げる感じを持つこと。例えば、舌根を押し下げないで、あごを引いたり首を多少前に傾けるだけで、声帯が上がるのを防いで、音質の変化を押さえることが出来る。要は、声帯がピラピラ勝手に動かないように意識すること。
次に、地声で上がって行き、声が苦しくなってから声をチェンジさせる。今度はチェンジした声から降りてまた、即座に地声に戻す訓練。要するに地声と、チェンジボイスを即座に切りかえることが出来るようにする訓練をする。少なくとも、低音部は、地声の訓練が出来ないと、鳴らないし、チェンジしてからも地声の出し方が意識できないと、本当の意味で良い声が出せないのだ。女性の場合、この訓練は最初に徹底的にやるべきだと思う。曲は、MonteverdiのLascia te mi morire...
伴奏で歌わせてみると、どうもリズムが確立されていない。手で拍子を叩いて、軽い声で歌う練習をする。案の定、細かい音符や、付点の音符で拍子が崩れる。この辺は、自身で徹底的に練習してほしい。あと、声を出すときには冷静になってほしい。声を出していても、あらゆることに神経が行き届くような感覚でいることも大事なことだ。特に高い音の時。今出している程度の高さは、まだ本当に高くないのだから。

ゆかさん。アの母音から下降5度で始める。音程の取り方。最初に出す高い音は、軟口蓋の辺りから出すことを心がけること。即ち、その部分を高くする意識。上顎を上げるように意識するだけ出違うと思うよ。そして、それが出来たら今度は、3番目の音が低くなりやすいから、一度出した音は、同じ場所を通過するように意識して出すこと。要するに、音が低くなると、緊張感がなくなって、音程が下がるからだ。次に上向音程で、低い方から上がる練習。2度の音程でりりこさんと同じように腹筋に力を入れて音程を出す練習。3度4度とやって5度にまで上げていく。もう一つ大事なことは、上がる場合は一番高い音まで上がれるだけの、軟口蓋の高さを意識すること。それがないと、高い音に上がる際に喉が詰まってやはり音程がフラットになる。
次に、イの母音で声帯を合わせてアの母音に移る練習。これをやると、アの母音が鳴るようになってくる。アの母音でこの鳴らす感じがつかめると、大分良いのだが。簡単に言えば、中低音部では声を前に出す感じ。そして、口をあまり開かないこと。下唇に少し緊張感を持ったり、喉の下のくぼみに声を当てる感じでもこの「鳴らす」という感覚はつかめると思う。
これらの、練習は本人は何をやっているのか分からないだろうけど、彼女は素直にその通りやってくれるところが良い。一回のレッスンの時間内でそれだけの成果になって跳ね返ってくる。レッスンの間が空くから、ついつい忘れてしまうだろうけど地道に続ければ、自然に身体が覚えるのだ。姿勢は良いし、無駄な動きがないこと、無理をしないところが、最大の美点。進歩が早くなくても、必ず身につくだろう。曲は、Nel cor piu non mi sento...歌い出すと、声は鳴り出しているのだが、響きが浅いし母音によって響きが変って浅くなってしまう。最初の4小節をじっくり直して、通してみると大体良くなった。まだまだだけど、ぼくが言ったことは、必ず理解して実行してくれるから大丈夫。後、言葉だけどイタリア語に限らず、外国語で気を付けることは、シラブル(音節)に気を付けて。例えばCorpaは2音節だ。くれぐれも、コ・ル・パと3音節にしないこと。母音と子音の区別をキチッと付けてほしい。


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5月5日

きょうは、子供の日だ。アトリエには何にも関係がない。最近鯉のぼりをあまりみけけないのは、子供の居る家庭が少ないのか、鯉のぼりなんて立てるスペースがないのか…
あやこさんが、ひさしぶりでやってきた。海外出張で日本にいなかったのだ。しかし仕事で忙しいだろうに、休みがあれば、良く来てくれる。とても身体が大きく見える彼女だが、声は意外と軽い。チェンジした高い声は、最初は誰しも声が出ないものだが、お腹の力と、喉の開きが訓練されると、ずいぶん声量がつくものだ。発声練習を高い方からやってみる。口の開け方がまだ少し足りない。開けるといっても、喉の奥が開くように開けないとあまり、意味がない。ラッパでいえば、ラッパの広がりも大事だけど、ラッパの根元も太くなっていないと駄目なのと一緒だ。とにかく喉を開くために口を開けること、そしてお腹を使って声を出す事を一生懸命やってみること。それから、今日は喉を少し下げることを意識してもらう。そうすると、軽い響きに少し色が出る。あるいは、重さが出てくる。まだ、少ししか出来ないので本人の自覚はあまりないだろう。時々、艶のある声が偶然出るのだが、本人が気づかないので、身につかない。気づいてくれれば、もう少しなんだけどな。。。それから、イの母音で声帯の鳴りを良くしてから、エ…アと母音を変える。イの鳴り方とアの鳴り方が一緒になるように 、注意すること。歌は、アマリッリ。発声練習で注意したことが、少し反映されるようになった。しかし、まだ簡単に声が出てしまい、声量というか声の艶が出ない。もっともっと身体を使うように。口も意識してしっかり開けて高音を出すこと。吐くように出す事。そして、低い声は、逆にイの母音を出すように、声帯を合わせて声を前に鳴らすように意識してほしい。とにかく、今は、身体を使うこと、口を使うこと。ちょっと疲れるかもしれないけど、しっかり歌うことに集中してほしい。定期的に続ければ、まもなく声が出るようになってくるはずだ。

ゆうこさん。今日も元気一杯の彼女。しかし、暗譜になって伴奏合わせのせいか、少し緊張気味。
軽く声馴らしを済ませて、すぐに曲に入る。伴奏合わせのアンサンブルの問題を除けば、ベッリーニ曲は声は大丈夫だろう。意外と、ベッリーニの2曲もアンサンブルが難しい。本人の声にあったテンポ感や、間の取り方。Vaga luna の方は、急ぎ過ぎないで、ゆったりと、しかし明るく。フェルマータの所はきちんと、間を取ってほしい。ブレスも急がないで、きちんと自分のブレスを取ってほしい。
Vanne o rozaも、伴奏次第で、彼女の良さが違ってくるので、伴奏はとても大事。最初の前奏は田舎の金管合奏のように、華々しく、かつ格調高すぎないように。歌い出したら、伴奏で引っ張ってあげることも大事だし、ブレスを誘うように、フレーズの終わりを収めることも大事。最後のページのTuに入る前のブレスの間合いを急がせないように。最後のd'amorのオの母音は一拍長く伸ばして終わってほしい。さくら横丁。最初は、必死の形相で声を張って出していたが、これでは少し興醒めだ。もっと軽い声で…といったら、ちょうど良い具合の声になった。出だしはくれぐれも無理のないように。ブレスも充分に入れて、息が足りなくならないように。最後のページの上の段。花でも見よう〜♪のところだけはしっかりと声を出して、ヴォカリーズにつないでほしい。ブレスまでは、どんどん行って。そしブレスはたっぷりと間を取ってほしい。ブレスの後は、ゆっくりと…再現部に入る間合いを取って。再現部はまた軽い声で、すこしゆっくりめで歌って終わるように。後1回あるから、大丈夫でしょう。

たにさん。発声練習では、チェンジボイスだけを徹底的にやる。どうも地声の強い声を練習するとどうしても喉に頼ってひっかかってしまうようなので、喉の通りを良くして、喉を楽にしてみたかった。
地声といっても、完全に声帯が合った声ではないのだが、その加減が彼女の場合は難しい。チェンジした声でも、ついつい喉の開きが悪くなるので、口をしっかりと開けてもらうと、やはり軟口蓋があがって高音の伸びが違う。結果が良いので、そのまま地声領域まで降りて、その声のままで口を閉じてイの母音で声帯を合せて、アに移る練習。この場合は、あごを絶対に動かさないで、イの響きを使ってアにすること。少しうまく行くが、まだ完全ではない。そして、完全に地声になる低音から中音、そしてチェンジする声域を行ったり来たりして、その境目が分からないように声を調節する練習。本人の感覚で声の鳴らし具合を調節してもらう。このコツが分かればどの音域でも、本人の感覚で地声、そしてチェンジボイスを混ぜ合わせて声を使えるようになるはずだと思う。
ロンサールから、やってみる。最初まずチェンジボイスで通してから、再び地声を混ぜて歌ってもらう。意外とすんなりと通したので、高音部の口の開け方などを注意して何度かやる。やっと、どうにかこの曲の表現らしきものが、出てくるようになった。今日もあったけど、高い音域での語尾の狭いあいまい母音の処理に注意!狭すぎると、響きが詰まってしまうので、その前の開いた母音になるべく近い広い母音であいまい母音を処理してほしい。最初のページ、そして、2ページ目も大分良くなった。
Toute foisのWaの母音は地声がもう少し強くなると良い。最後のページPassantの響きも同じ。
J'ai ditのイの母音ももう少し伸ばして。最後のDorsのオの母音は良く喉を開いて。
マラルメの「ため息」最初の区分は、インテンポをかっちりと。ブレスの数が多くなっても良いからフレーズを端折らないように。1ページ目の跳躍する高音は、口と喉の開きに気を付ければかなり良い。
Angeliqueのイの母音は、少し抜き気味でやると、うまく行くと思う。もしかすると、その下に出てくる
Melancoliqueの前でもブレスをすると、チェンジが目立たないかもしれない。それにブレスが持つだろう。Vers l’azur attendriのフレーズ感はとても良くなった。もう少し最初のVersの出の思い切りの良さがあると更に良い。Infinieの最後のイの母音は少し間を置いてピアノに合わせるように。そして、最後にあいまい母音を付けるのを忘れずに。最後のページou la fauve agonie des feuilleの高音はチェンジした声で、これも口を開けて喉を開くことを忘れずに。Et creuse un froid sillonは急がないように。最後のRayonのオのナザールは、喉を良く開いて、柔らかくしかし、良く響かすように。

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5月4日

さかもとさん。はじめて。ゴスペルクワイヤーで歌っているが、喉が疲れてガラガラになってしまう、とお便りをいただき、レッスンに来ていただいた。早速発声を始めると、驚くほど声が出ない。ブレスも入っていないし声が出ないので、まずブレスを意識することから始める。声を出さずにゆっくりとしたブレスと長い呼気を練習する。次に下降5度でアの母音でゆっくりとした発声をする。口を開くことも少し意識する。少し声らしくなってくる。次にイの母音で声を胸に当てて出す訓練。これで、大分声が鳴るようになってくる。イの母音の時に口を丸くするように…と言われているらしく口を真ん丸にしているが、どちらかといえば、下唇を意識した方が良いと思う。なぜ口を丸くするかというと、丸くした方が鼻腔
に響くからだ。軟口蓋が自然に少し上がるのだ。下唇の意識は、声帯がしっかり合うため。これで大分声帯が合った響きが出てきた。ここから、アの母音に移動する。案の定息漏れのないアの母音の響きが出てきた。次に低い方でイの母音で声を出す。声のポジションを低く意識してそのまま高い方まで同じポジションで出す練習。完全には行かないが、これで大分しっかりした声が出るようになってきた。姿勢を見ると、腹式を意識するために下腹部を前に出して、その上に胴体を乗っけているような姿勢になっている。そして、首は胴体よりも前に出ている。いわゆるあごが前に出ている姿勢。
これでは、まともな声が出ないはずだ。姿勢の矯正。下腹部をひっこめること、そして胸を広げるように楽にそして深いブレスを心がけてほしい。時間がかかってもきちんとしたブレスを身に付けるようにしてほしい。そして、声を出すポジション。イの母音で声帯を合わせる感覚を付けてほしい。
彼女のように、声を出すことの技術が未熟でも、ある方法を取れば見違えるように声が出るようになるものだ。逆に未熟だからこそ、素直に一つの方法論に従うことが出来るので、進歩が早いのだ。


りりこさん。発声を始めると驚くほど声が出る。特に高い声は、安定した響きだ。音程も悪くない。上ずる癖がなくなっている。しかし、低音が出ない。出そうとするとかなり、喉に力の入った声になる。ちょっと気にはなったが、歌をすぐに始める。プーランクの「花」前回よりもリズムの間違いはなくなった。ただ低音が出ない。声を出す時に高い声の響きをそのままにして低い声を出そうとするからだ。取りあえず声帯のイメージ、縦に長さのある声帯の上を使って高音を出すなら低い声の時は下の部分を鳴らすイメージでやってみる。少し良くなった。が、完全ではない。高い声はそれなりに安定しているのだがややべったりしている感じがある。腹筋が使えていないのだろう。ブレスもやや浅い感じがする。が、きょうは歌を中心にやりたいので、発声は後回しにする。本人が発声の研究を独自にやっているらしく、取りあえず(これも取りあえずだが!)本人の納得が行くようにやってもらうことにした。
次にドビュッシーの「美しい夕べ」
どうも歌のリズムが安定しないが、これも取りあえず先に進む。最後のページでリズムの間違いが良く分かる。結局、3拍子できちっと感じて歌っていないことがわかる。なんとなく…旋律を歌っているのだ。さて、ピアノを弾いていると、本人が歌っている様子が観察できないので、アカペラで歌ってもらいながら観察すると、相変わらず歌う時に首が前に出ている。当然肩に力が入っている。それは、喉で歌おうとしているので、首が前に出るのだ。その首を支えようとして、肩に力が入ってしまうのだろう。
低い声も無理に出そうとすると、かなり喉の奥に力を入れてしまう。喉を見ると、喉仏、声帯周辺、気管の部分が相当力が入っている、というか気管自体を膨らませるようにしているのが分かる。管楽器のように鳴らしている感じだ。発声練習で妙に高音が安定していたのはこのせいだったのだ。
声帯を下げること、気管を太くすることは、ある程度やることだけど、あまりこれに頼るとやはり、喉に力が入って疲れてしまうだろう。それに、首でやるのではなく、腹や腰そして胸の筋肉を使ってやらなければいけない。それに、響きがやや暗い。それはそれで魅力があるから良いのだけど。どちらかというと、ドイツの歌手にある声の色だ。
う〜ん、やはり本人のやり方を少し尊重しながら指導していくのは、無理があるな。それなりに声が「出ちゃう」人なので、正直言っていじるのが難しいのだ。もう一度一から発声を直していくことにしたい。声を出すということのイメージを根本から変えないと、姿勢も治らないし、声の音色、低音の声量不足、そして、ブレスが関係する、リズム感、総合的に直すことが難しい。何度も言うけど、ぼくのやり方は自分の身体そのものを共鳴体にして、自然にその共鳴体を鳴らすやり方だ。声を意識して外に放り投げる感覚ではないのだ。その違いを本人が自覚してくれるかな?ぼくのやり方を信じてくれるかな?ぼくの所で勉強して進歩するためには、そこに鍵がある。

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5月3日

からしまくん。発声をしたが声が高いところまで出るようになっていた。中音域も元気の良い明るい響きが出ている。調子は良さそうだ。2点Aまでは問題なく出るようになっていた。音域の広さも大事だが、音域の場所による声の正しいピッチをしっかり持てるようになってほしい。この問題はむずかしいが、音楽的、器楽的な声の扱いにはとても重要なことだ。曲は、フォーレの月の光から。まだ、ブレスの良いポイントが見つからないため、声の響かせ方にやや余裕がない。そのために、全体に音楽が小さくなる傾向にある。これは、今日やったどの曲もそう。その代わり、まとまりはとても良い。破綻がないのだ。少しブレスポイントを増やしても良いから、母音の響きの朗らかさのようなものが出ると良い。あと、フレーズの終わりがしょぼくならないように。Deの発音をデにならないように。Masques et のところはブレスを入れるなら、ゼ…とならないように。この曲、詩は全体にアとかエの母音に特徴があるから、その母音を充分響かせられるような、工夫がほしい。
ゆりかご。これもダイナミックの大小をあまり気にせずに、堂々と歌ってほしい。出だしのLeとかgrandの響きをたっぷりと。前半の盛り上がりはとても良く声が出ている。ブレスもしっかりしている。
後半の盛り上がる所、Sentent leur masse retenueのところもブレスを入れて良いから、しっかり声を出して。最後のPar l'ame de lointainブレスberceauxとつないで、最後の伸ばしはしっかりした方が良いと思う。この低い音は、無理に鳴らすときたないので、息だけを伸ばすだけでも良いと思う。
アーンのクロリスに、はとても良い。出だしの音、1点ソの音はもう少し声のポジションを低めに取った方が音が良くはまる。あまり、鼻腔に響かそうとしない方が良いと思う。最後の我が詩に翼ありせば、はこれもブレス。きちんとブレスを取って、急がずに朗々と歌ってほしい。小さくまとまらないように。
最後のゆっくりのテンポをもっとはっきりと遅くして。音程や発音は大体良いから、どの曲も小さくならないように留意してほしい。

まさこさん。きょうは体験レッスン。芝居の勉強をしている学生さん。発声を始めるといきなりドカ〜ンと凄い地声が出た。さすがに芝居で声の訓練をしているだけある。その後、少し声量を落してというと、すかさずちょうど良い声を出す。これだけで、勘の良さみたいなものを感じるものだ。その後、口の開け方そしてチェンジボイスでの声の集め方、などを順を追ってやっていったが、どれも即座に反応して言ったことをすぐに実行に移してくれる。決して素晴らしい声を出しているわけではないのだが、言うことにすぐに反応する運動神経は、多分芝居の訓練などを通して培ったものだろう。芝居と歌との共通性はこういう動物的な勘と反射神経のようなところにあるものだ。これは、とても大事なことである。
声楽で必要なチェンジボイスでの発声のこつを一通りやって、曲に移る。曲は彼女が高校時代に音楽の授業でやったCaro mio ben...まずラララで歌ってみる。久しぶりに歌ったはずなのに、以前にこの曲を教わった時の音楽的なダイナミックがきちんと再現されていた。こんな所にも非凡なものを感じる。イタリア語を付ける。一通り歌うと発声で出来た声の感じが出ないので、少しお腹の使い方を教える。高い声を一発でポ〜ンと出すためには、お腹のへその当たりをぐ〜っと 中に入れるように。
この時、お腹が動くから声が出る…というタイミングのことを大事にして。逆に高いところから音程が離れた低い音域に落ちた時は、地声に落さないが、確実に低い場所で声をならすような感じを持ってほしい。イの母音は口を丸くしてあごに当てるような感じ。オの母音は明るく前に声を出すように。
2ページ目の2段目ポルタメントしてミ♭に上がってから後、少しずつ低い音域に降りて行くフレーズは声の響きを下に落さずに、お腹を入れて上に響かせるように出せば声が落ちないでうまく繋がりが出ると思う。このことは本人の自己申告で、「気に入らない」といった言葉で直したのである。なかなか積極性があって良いものを持っている方だ。

たにさん。前回レッスンで教えられなかった点を補習。少し厳しくやったけど、分かってもらえただろうか?結論から言えば、ピアノ伴奏が入ると、どうもその音の響きに惑わされて声を少し出過ぎてしまうこと。それから、アーティキュレーションが強すぎて、それがために発声に悪影響を与えている感じがある。例えば、Tres chere hotesse de mon corpsのhotesseの語尾を二度押ししてしまうこととdeで子音を押してしまうためにせっかく上に響いた声を落してしまうのだ。今、一番気を付けることは、発音よりも、響きが母音や子音のせいでおかしくならないようなアーティキュレーションを工夫すること。特にフランス語の語尾のEは広くすることが大事だ。
Ronsard a son ameでは最初本人の申告で早いテンポで歌いまわす。発声でやったようなかわす感じだ。これだと、何とか問題点をすり抜ける感じだが。本番を想定すると、いかにせん音楽的にならない。どんなに難しくても、この音楽が要求している声楽的な技を完璧でなくても良い、一つでも良いから実現することの方が、大事だと思う。だから、逆に2拍子のこの曲の指示を無視して4拍子に感じてもらう。その代わりブレスはたくさん入れてもらう。そうやって、まずブレスを確実にする。そして、彼女の課題である高音への跳躍部分の問題を確実にクリアしてもらう。4度や5度の跳躍の場合上の音を少し抜き気味に感じるだけでかなり、うまく出せると思う。2ページ目のtoute fois simple のfoisの響きがtouteの響きと変らないように口から下の空間に響かすように感じてほしい。最後のページ、passantも同じ事。J'ai ditの跳躍も上の音を軽く抜くように。
マラルメのSoupirは、1ページ目の音が跳躍する所で喉によりかからないように。うまく行かない時はあごが前に出て、口がふさがっている。こういう時こそ、あごを引いて、そしてあごを開けるようにして。たの部分もうまく行かないところは同じこと。今日のレッスンでは問題は何とかクリアしたけど、出来た事を盤石なものにしてほしい。

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5月2日
あきこさん。伴奏合わせを始めてやった。思ったよりも、きちんと出来たので一安心。多分こういうソロボーカルをやるのは初めての経験だろうし、ピアノときちんと合せるのも初めてだろうか。
イタリア古典歌曲集のStar vicinoは伴奏の出だしに対して、歌は少しゆっくりめだった。歌のテンポで良いのだが、フレーズの上がりの時には推進力を持たせて昇らないといけない。ピアノ伴奏を引っ張るつもりで歌ってほしい。そうしないと、ブレスが苦しくなるし聞いていても、辛い感じがする。それからフレーズの終わりも、必要に応じて素早く切って次のブレスに備えられるように。ボカリーズの部分も特に高い音を出す前のブレスはそれに応じたしっかりしたブレスをしないと、声が苦しくなる。そういう所でピアノのテンポに遠慮してきちんとブレスをしないから、次のフレーズの高音が苦しくなる。
これは、次のVergin tutto amorもまったく同じ事。ブレスで全部決まるといっても過言ではない。声の出し方は、ずいぶんしっかりしてきた。まだ高い声が詰まり気味だけど、どうにか腹筋でしっかり出している。口の開き方が決まると、響きも上に乗る。Vergin tutto amorの最後のフレーズO verginの2点Fの音は、あごの開きを良くしたら決まったね。初めて来た頃から比べると随分良くなった。後1回のレッスンだけど、暗譜が出来れば、ブレスの集中力も付くから更に良くなるだろう。

さぶりさん。初めての方。ちばはらさんと同じ合唱団のバスパートの方。声を聞くと随分と良く鳴る声だ。体格も良いし、羨ましいくらいだ。しばらく発声を聞いて分かったのは、声のポジションが少し高いこと。それでも明るいバリトンの声だが微妙に喉鳴りしている。顔面に良く共鳴させているし、実際鼻腔にも響いているのだが、そのポジションでどの音域も声を出そうとするので、バスに必要な本当に低い声が鳴らない。また中音部から高音にかけても、バスやバリトン特有のおおらかさに欠けていると思う。確かに声は通ると思うが、バスパートらしさに欠けると思う。後、ブレスも体格から類推するに少し少ない。今日はポジションのことはあまりうるさいことは言わずに、みぞおちあたりから、声を出すように意識してもらう。それから、低い声に落ちる時には、顔面に響かせずにしっかりと、低い場所、腹まで落すこと。その際にあごを開いて喉の開きを促すこと。そのことで、声帯全体の振動を促す、というかそのことを自身で良く感じてもらいたいのだ。当然低い音は声帯全体がゆっくりと大きく振動するわけだから、喉が開いてないといけない。ついでに言うと、この時に軟口蓋もしっか り上がっていれば、音程がフラットになるのを防ぐことが出来るはずだ。曲は、ヴィクトリアのGaudent in coelis animae.....これの出だしが1点Aだが、どちらかというと、テナー的な声が出てくる。明るいといえば明るいのだが、もっと声のアタックを低いポジションで感じて出してほしい。ポジションは低くなっても軟口蓋が高くなって、開いていれば、明るい声は出せると思う。色々やってみたけど、少しの意識の変化と身体の使い方でずいぶんと良くなる方だと思う。ブレスの長さは声の使い方で決まるから、これは少し時間がかかるだろう。もう少し落ち着いてブレスをすること、練習時にはフレーズをゆっくりと練習して声の変化に充分耳を傾けることが肝要だ。

ちばはらさん。きょうは、少し声を鳴らす練習をした。最初は軽くアの母音で高音から降りる練習。次にイの母音で2点Gくらいまで。どうしても上に行くと喉が詰まる。声のアタックでどうしても喉に力が入っている。喉の力は抜くように、そしてもっと軟口蓋に向けて響きを入れるように。声の当たりはもう少し浅くても良い。どうも高音になると、力の入れ所が下向きになるようだ。イはウの母音はあごを引いてあごが上がらないように。ブレスの際にしっかりと喉が下がるように。そして声が出たら喉の動きに任せて声を出す感じ。イの母音の次にイからエそしてアに変化させる練習。そしてアの母音で上に上がる練習。アだと力が少し抜けるのだが、まだ2点G以上になると、音程がフラットになる。そこから更に上に上がる練習をする。ファルセットで音程をきれいにとって、そのまま力を入れて地声に響かす練習。やはり、喉に力を入れてしまうため音程が半音くらい下がってしまう。最初から高音でアタックする場合は、比較的良い音程が出るのだが、下から上がる場合、特に1オクターブだとまだまだ音程がフラットになってしまう。多分下の声を出す時の声のアタックが低すぎるのだと思う。相 当な高音に飛ぶ場合は、上の音のポジションで声を軽く出して、上に上がらないと、音程が極端に悪くなる。今日は、かなり高音の練習をしたせいか、逆に喉鳴りの声の悪い癖は少し抜けているようだ。
曲はヴィクトリアのGaudent in coelis animae,,,,彼の場合は、最初の1点Aの音を出す際に、しっかりとあごを開いて、軟口蓋を高くすること、そしてその部分から響きを出す事を心がけてほしい。
Vestigiのgiはズィではなくていヂの発音を気を付けてほしい。それからどこもそうだが、イの母音とウの母音が、やはり、声が詰まるしフラットになる。これは、まず、あごを少し下げて出す癖が悪い。あごは使わずに、むしろ、ほぼ口は閉じた状態で鼻腔に響きを直接送る感じ。必然的に、軟口蓋に当てる感じだ。これはさぶりさんも同じだが、全体にアーティキュレーションが平べったい。あごをパクパク開いてアーティキュレーションするせいだ。日本語の場合はむしろ発音がはっきりして良いかもしれないがラテン語など欧米の言葉の扱いと発声の関係では、無駄が多いし、響きの平べったさが品格になさに繋がってしまう恐れが琉。なるべく、あごを使わないで、アーティキュレーションすることを心がけてほしい。


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