2001年6月後半レッスンノート

レッスンノート目次
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6月30日

ふくのさん。一ヶ月ぶりくらいか。ここに来てから4回目。彼女は本当に初心者だったので今までの蓄積はすべてなくなっているかと思いきや、体に残っていた。発声練習を始めると息が浅くてテンポ感がなかったが、すぐに感じが戻って来てゆったりとする。しばらく軽くやっていると、例によって息を当ててハハハハハハと音を切ってドレミファソの音形を発声する。そこで、音を切らず息を当てないで弦を擦るようにあ〜あ〜あ〜とつなげて声を出すように指示してみた。これが結果として彼女には良かったらしく、結局今日やった発声のテーマにピッタリだった。彼女も声を当てると比較的簡単に低い領域、1点C〜Fくらいの地声が鳴るのだが、その上の領域のチェンジボイスが息漏れが多いため、その領域の声を当てる練習をした。例によって2点Cくらいでイの母音で声を当ててエそしてアに移行する。最初はアの母音に聞こえなくても良い。要するに上顎に響きが当たる感じが出来れば良い。それが確立してから、下あごを軽く開けても響きが落ちなければ良い。そうすることで様々な母音を同じ音色で処理できるようになる。この方法は実に即効性のある響きの作り方だけど、イの母音が苦手 の人には向かない。彼女はこれがすぐ出来たので、この母音で発声をやる。地声領域まで下がってからまた上に上がりまた下がるということを繰り返す。今度は高音。2点F以上の声を強くする。これは今の彼女の場合は、下の領域で作った響きで声を出していき、喉が苦しくなってきたら、声を当てる場所を脳天の方に切り替えるか、口を更に開く。そしてもちろん腰の力を最大限に生かすこと。曲はカロ・ミオ・ベン。発声で出来たことを生かしてしばらく練習したがかなり進歩できた。声が当たるようになったし全体に滑らかに歌えるようになる。まだ少々喉っぽさが残るが、響きの場所さえ気をつけられれば問題ないと思う。

たにむらさん。彼女は息漏れが多く、特にチェンジしてからの声の出し方に苦労している。今日は地声の領域からほとんど上のチェンジした声で2音ずつとか、3音の連続したパサージュで上がっていった。声がかすれないように、かすれないようにするにはどうするか?徹底的にやった。そしてふくのさんと同様、イの母音からエアと切り替える練習。彼女にはイの母音の響きをいうよりも上顎、歯にあてるようにといった方がアの母音は有効のようだ。それと、ブレスを入れて息で推すのではなく声帯そのものを当てて鳴らすような感覚をいつも通りのそんな感覚でゆっくりと発声をやって、曲に入る。曲はアマリッリ。この曲をやり始めて始めて低い音域を地声を使わせたが、以前に比べてはるかにコントロールの効いた地声が出せるようになっていた。むしろ彼女自身が地声の中に息を混ぜてミックスしたように出す気持ちが芽生えていたことが、その成長を物語っていると思う。この曲はルネサンス時代のマドリガーレだし少々地声成分が強くてもむしろそのためにビブラートがかかずに息が長く持てる声で歌えるならその方が良いと思った。高い声は特にアの母音でもすでに難なく声が出せるようにな っている。むしろ問題は中低音部の息漏れをどう解決するか?その部分で地声に明快に切り替える意識で歌った方がうまくいくような気がする。要するにチェンジした声と地声領域の声に段差がつかなければ良いのだ。こう書くとこちらの指導不足のように思われかねないが、ぼく自身は地声を悪いとは思っていない。地声が悪いのではなく息の混ぜ方や、喉に力の入ったフラットでがなった声が悪いのである。結論から言えば音楽的に処理できれば良いのだ。この方が息漏れが少ないし、実際セクシーな響きですらある。もちろん合唱などのアンサンブルでは全員が同じ声質を要求されるので、このような処理が良いとは言えない。曲の中ではこのチェンジボイスと地声の使い分けが難しいが、使っているうちに両者混ぜんとなって自然にミックスがした響きが使えるようになると思っている。何より彼女が心から楽しんでいることが良いことだと思う。

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6月29日

蒸し暑い!眠い!明日も厳しい。寝たい。今日はあいそさん。発声練習でまずチェンジの低い領域を練習する、地声の当て方、そして最初のチェンジの低い部分の声の集め方。これは例によってイの母音で声を集めてからその響きをエやアなどに応用するやり方。すぐに出来るようになった。この場合アなどはあごを下げないようにしてやると、大体うまく行くものだ。そして再び地声から上がって自然にチェンジ、そしてチェンジボイスから再び地声に戻るということを繰り返す。要するにこのチェンジの場所の声の差が出ないようにしたい。次に高音域、特に第2チェンジの領域の声をしっかりさせる。これは高いのでアの母音でなるべくきれいに当ててから、今度は当て場所を頭のてっぺんあるいは、おでこに向けて当てる感じをやる。とにかくややもすると白い声になってしまう最高音域の声に艶をださなければならない。何度かあれやこれややって、前に当てようとするとうまく行った。が、再現性がなかった。笑
このあたり、なんとか今後も練習を続けたい。彼女は言えば言っただけのことが出来る。練習を積めばどんどん伸びると思う。曲は、Time to say good bye...この曲は低い音域で始る。そしてスペイン風の3連符の伴奏の上をどんどんとアグレッシヴに進んでいく旋律だ。特に歌のパートの3連符の扱いが大事。彼女の今の癖はこれの扱いがどうも遅い。乗り遅れる。声が気になるらしいが、気にせずにリズムの力を信じて歌って欲しい。そのことで声の能力も逆に開発されることがある。瞬間的な判断が声の眠っている声の能力を開発すると思って欲しい。音楽の中で声のことを立ち止まって気にしているような歌手の歌は駄目だ。さて、そんなわけで彼女には早くて音域の高い曲をやってもらうと思って次回からイタリア古典歌曲集の Violette...をやってもらうことにした。


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6月28日

りりこさん。久しぶりだけど声はどうなっているかと心配したら、高音がびゅんびゅんと出ていた。その代わり中音部が上ずり気味だった。元来高音が出る性質らしい。高音も一番高いチェンジボイスではなく二番目くらいの比較的強い声で3点Cまで出て行く。音程も良い。気になる中音部の音程を少し練習する。喉の下の窪みに声を当ててみるが、ほとんど変わりがない。横隔膜の突端、みぞおちあたりを意識して声を出してもらうが、これもほとんど効果がない。そこで、手を使って物を持ち上げるような意識で声を出してもらう。すると声がはまってくる。要するに声を出すときの腰を使う意識が足りなかったのだろう。それから、高音から低音に降りるときも音程の低さをきちんと意識することが大事だ。中音部は場合によっては喉っぽい感じがするものだけど、それを避けて息を流すことだけすると、やはり音程が上ずり気味になると思う。声質だけど、これも最初はやや口の奥にこもっていた。そこで、もっと前に軽く声を当てる練習をしてみる。口をやや横に開いて、声帯を合わせてみる。それでも奥に入る。声を歯の方に押し出すように声を出してみる練習も良いだろう。喉に来ないよう に気をつける必要があるが。響くと声帯の振動が倍加するし、喉に来るとすぐわかるから自分でやってみると調節できるだろう。ピアノの音を良く聞いて中音部のピッチ(音程)を良く練習してほしい。要するに声の芯がきちんと出てほしいということ。
曲は、ヘンデルのLascia ch'io pianga...3連符がやや短い。特にミファソといく最後のソに向かってクレッシェンドしてソをきちんと響かすこと。最初のLascia ch'io piangaはあまり休符を長すぎずに1フレーズで歌うようにした方がきれいだと思う。もちろんこの辺りの音程も上ずりは禁物だ。La dura のDuのウの母音は口を丸く突き出すように。La libertaの音程も上ずらないように。フレーズの終わりほど腰を使って声が抜けないように気をつけてほしい。それからLibertaは3音節だ。Li be rtaと3つに分かれる。リーベールータのように4音節にならないように気をつけて。日本人が陥り易い間違い。何度もやると、とても良くきれいに歌えるようになった、特に高音のパワーは素晴らしい。後は中音部の音程がはまるように気をつければ良いと思う。Vivardiなどのバロックなどをみっちり勉強して、中音部のしっかりした良い歌手になってほしい。モラーヌにも良く言われた。バロックをやりなさいと。本来、感性を持っているんだから続けて頑張って欲しいと思う。

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6月27日

さぶりさん。今日は前回気になった狭い母音の喉の開きをやってみたかった。その前にファルセットがどの程度かと見てみたが、驚くほど高い音域まで出る。ほとんどカウンターの出し方に近い充実感のあるファルセットが出せる。器用だ。多分テノールの訓練をすればテノールも出来るだろう。ただその器用さが本当の声の持つ可能性を閉じ込めている気がしてならない。合唱のバスでもソロのバリトンでも良いけど、この音域にはこの音域が持つ声質の良さというものがある。明るくてかつ喉の開いた、ということは声帯の開いた柔らかい中高音を身につけてもらいたい。喉が開くためには声帯が少し下がらなければならないのだが、アやエなどの開口母音になると、どうしても喉を上げてしまう。これは、声を前に当てるからだと思う。声を前に当てるためには声帯が閉じなければならないので、喉頭が上に引っ張られてしまうのだ。しかもこれは中声区といってどちらかというとテノール系の声の質に合っている。声楽を学ぶならば必ず声の種類、色を2種類持たなければ幅広い表現が出来ない。前に当てるか、後ろに引くかである。ウの母音ならびにイの母音で軽く高音を練習すると意識的に喉 を下げている。これは、喉を下げなければ喉頭が詰まって苦しくなるからだ。同様にアやエでも喉を下げることと軟口蓋を高くすることが出来れば、前述した声が出る。声はイメージだから本人が望まなければこういう声は絶対に出ないだろう。現在やっているシューベルトの曲ではこの声質があればこそ、柔らかい北欧の人々が好む幽玄な静かな音楽の表現が可能になると思う。
前回に比べて確実に良くなっているが、更にこの声質の問題を掘り下げて欲しいと思う。

ちばはらさん。
息漏れや喉っぽさが大分取れてきたが、まだ喉鳴りのする声から脱していないとのこと。確かに喉がびりびり鳴ってしまう傾向にある。ぼく自身は喉鳴りを治すというよりも、ピッチがあうこと、そのための発声を考えれば必然的に喉なりの不愉快さはなくなると思う。そのためには喉の周囲の筋肉の硬さをとにかく取り除くこと。今日は、例によってあごをわざと上げて、喉に力が入らないように特に下向きの力が加わらないようにして、徹底的に1点C〜F,Gまでを練習した。一番効果的だったのはやはり、口を開けるハミングで軟口蓋を開く練習だ。この際にあごを使って開かないことが大切だ。自然に鼻腔に響きがついて行く。それと喉周辺の固さと関係があるが、声量のバランス。絶対に出し過ぎないこと。Sotto voceを心がけて欲しい。これがうまく行くと喉でなるのではなく口の奥から軟口蓋にかけて響く感じがつかめると思う。きょうはこれが完璧に出来ていた。くれぐれも発声練習などでは喉に引っ掛けて声を出さないように気をつけてほしい。ただ、現状ではこのままだと声帯の位置が高すぎて少々子供っぽい声になってしまうこと。そのためには、声帯を下げなくてはならないがこれも、それだけ言うと、違う筋肉を使って下げるために喉っぽい声になってしまう。喉を下げるためにはむしろ喉の下の窪みにも少し声が当たる感じがあると、自然に喉が下がる。これらの声の当て方を工夫しながら最適なポイントを探すことになる。曲はシューベルトの合唱曲。高音部のSotto voceは大分巧くて来ているが、しばらくすると、喉に力が入ってしまう。軟口蓋の上げ方にまだ慣れていないのだろう。もう少しの辛抱だが。それと中音部の強声の場合、声が喉に降りてしまう。この場合は口を開けずにアーティキュレーションすること。そのことで、鼻腔に共鳴を持っていくことがとても大事である。それにしてもこのところの進歩は大きいと思う。後はどれだけ実践でそれが実行できるか?期待したい。


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6月26

やまうちさん。発声練習はアの母音で下から5度の上向で軽く上下してから、次にエの母音で同様に上がる。彼は声を出すエネルギーを背筋を使って出すので良く鳴る声なのだが、高音になるとそのままでは声帯が自由に伸びない状態を作っている感じがした。要するに呼気を扱う筋肉はとても良い使い方をしているのだが、声帯や声帯を支配する喉頭あるいは周辺の状態をどう持って行くかという感覚を更に磨いてほしいのだ。高い声、特にテノールで高音を出す場合は、最初から重い声で作るのは至難の技だと思う。少しあごを上げ目にして喉頭がなるべく自由な状態になるようにして上まで引っ張ってみることにする。ただし背筋は使ってしっかりと当てるように。高い声の場合、声を当てる瞬間に下に引っ張る力が無意識に働くのは良いのだがこのために、声帯の伸展を阻害する働きも出る感じだ。喉頭を下に引っ張ることで声帯周辺は自由になる理屈なのだが、実際は喉頭を下に引っ張る筋肉の使い方が悪かったり、無理が出て声帯自体も楽に高音を鳴らせない状態になってしまうケースが多いと思う。結局喉が上がる弊害に目をつぶっても声帯の伸展を阻害しないことを取るという考え方だ。 とにかく、この練習でここに来て始めて1点bまで何とかひっくり返らないで出すことに成功した。まずこの出し方で確実に音域を広げて次に声質を作っていけば良いと思う。
曲は、アマリッリから。アマリッリは全体に押さえ気味の声なのだが、やや声質がこもっている。悪くはないのだけど、もう少し声帯のエッジが尖っている感じの声といえば良いか、ダイナミックが小さくても明るくシャリシャリと倍音が出る声を心がけてほしい。喉の奥のどこかに力が入っている感じがあるかもしれない。もう一曲はTu mancavi tormentarmi...これも最初ながら良く譜読みが出来ている。彼は難しい課題をなんとかこなす工夫がある。音楽の仕上げが早い。声質と音程感の良さがセンスになっている。後は息漏れがやや多い声の響きをどうやって集めるか、その辺りを課題にして行きたい。

にしさん。彼もテノールで声の状態を一から作り直している。普通に発声練習を下の方から上向の5度、アの母音でやってみる。1点Fまで軽くやると前回まであった喉っぽさと音程の悪さ喉のつまりなどが少し取れていた。努力の跡が見える。ブラヴォー!自然さが戻っている。気になるのはやはりやや喉の奥に力を入れて響きを鼻腔に響かせようとしているために、声の響きの効率が悪いこと。これを治すために声の当て所を決めて発声をする。喉の下のくぼみに声を当てる練習をした。これはエの母音が良い。エだと喉の奥の感覚が育つからだ。これが最初なかなか決まらなかったが、次第に決まり出す。思い切りが悪くて息漏れが出て喉っぽい声になってしまうのだ。これの当て方を低い方で確立してから上に昇る。これがある程度決まってからアの母音でやる。これもうまく行った。次に高音まで昇ると、やはり1点G以上が音程が低くなって決まらない。このために、にしくんと同様に喉をやや上げて声を当てる瞬間に何も力を入れないようにして思い切って出す練習をすると、これがうまく行って2点Aまできちんと音程が決まるようになった。ここにきて初めての結果だ。調子に乗って2点Cまで上がる がさすがにひっくり返る。ひっくり返るが悪い声ではない。少しずつ練習すれば出るようになる可能性は充分ある。今日はひさしぶりに曲を見てみる。アマリッリ。出だしの声はとても良い。全体に大分ナチュラルな声で歌えるようになってきた。ブレスも短くない。ただ気になったのは全体にイの母音が喉っぽくなること。特に最後のアマリッリのイの母音1点Eの音が厳しい。
これを散々練習するが、結論としてイのイメージの持ち方一つで喉をつまらせてしまう。当面の解決策としてはイの母音でも口を開いて軟口蓋を高く上げることをする。アマリッリのアの声はとても良く出ているからその口のままでイの母音を巧く出すこと。そのためには舌をあまり意識せずに頭でイと思う程度で発音するだけで、大分良くなるはずだと思う。次回レッスンでその辺りをやってみたい。


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6月25日
さわださん。おめでただそうで、おめでとう!笑
とういうわけで、あまり腹筋を使わないことが功を奏して声も楽に明るく輝いているようだった。
声楽は難しいもので力も使うけど使い過ぎも良くない。息の吸い過ぎも良くないし、吸わないわけにも行かない。一言で言えば、自然な呼吸と楽な声帯の状態が良く響く良い声を出す原因となる。
とはいえ、元来彼女は喉の辺りや、胸、肩などに力が入って声質が暗くなる方向にある。口を少しだけ横に引いて、声の当たり具合を感じて声色に工夫を凝らしてほしい。それと、母音による音色の違い。特にイとエの母音が浅い響きになる傾向にある。母音による音色の違いを歌の中で極力減らすために口の動かし方や子音の丁寧な処理に神経を注いでほしい。今やっている新しい曲はVivaldiの小さなアリアだ。Vieni!これは音域も狭いし発声には苦労はないかもしれないけど、こういう曲でレガートを徹底的に勉強してほしい。とてもノーブルな音楽だからこういうものを勉強することで品のあるノーブルな演奏が確立できるのだ。ご本人があまり興味がないのが残念。こういう地味だけど美しい曲の良さが分かるようになってほしいものだ。。。
Toscaのアリアは、言葉がもう一つ定着していないが、高音はしっかりと良く出るようになっている。
今年の暮れの発表会は大きなお腹で出られると良いな。良い思い出になるだろう。。。

むらたさん。
今日は発声練習を始めると、やはり口が開き過ぎで、あごを下に大きく下げっぱなしだった。声を出す努力があるので、大分声は出ているが、声質が暗くなってきた。そこで、口をあまり開けずに口の端を軽く横に引いて、声帯を当てるような声の出し方をやってもらう。これだけで、声帯が少し合う。ただし気を付けないと浅い平たい声質になる。この辺の声の聞き分けは経験がないと難しい。
さて、今度は喉の下、胸の上端の窪みに声を当てる練習。ぼくのところではこれを良くやるが、これはAppogiare la voce...といってイタリアで良く練習をする声帯をしっかり合わせて鳴らす方法だ。彼女は勘所が良くてすぐにこの当て方を会得してしっかりと太さのある芯のある声が出るようになった。そして、何と2点A〜そして2点bまでしっかりとした声が出るようになった。この場合は最初はエの母音でやるのがうまく行く。エでうまく当てられるようになったら、次に同じようにしてアの母音でやる。アだと声が引っ込む感じだが、前に当てるようにしっかりと出すこと。それにしても彼女はなかなか身体がしっかりしていて、腰を使う要領が良く身についた。声にちゃんと反映されるように腰を使えている。曲はCaro mio ben...大分声量が出てきたが、まだ効率は悪い。口の開き方だがやはりたてにもぐもぐと開いてしまうせいで、声がやや暗い。また声の当て方を教えたので良く響くのだが、声帯の縁がピンとしてない感じの声になってしまっている。これはこれで声の当て方などを勉強しないと、明るい張りのある声になってこない。今はとにかくあまりたてにパクパクさせずに軽く横に開く感じで、声自体は喉の下にピンと当てると良いだろう。ここのところ連続で来て良く伸びている。来たときにはろくに声が出なかったので驚きだ。今後がたのしみだ。曲もたくさん見てほしい。


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6月24日

すずきさん。発声では裏声の領域で少し声帯が合わさるようにやってみる。口をやや横に開いて平たい声でも良いから出すような感じ。声が少し合わさる感じが分かるけど、本人が気づいているかな?本人が分からなければどうもならない。彼女は裏声がとても軽い。抜けてしまうのだ。しかし地声では、喉が締まって高音が出ない。最終的には地声で高音を出すわけではないが、地声の声帯の合わさりが分かれば裏声になっても、応用が効くのだ。とにかく裏声で声を集めるように工夫するしかない。中低音部は鳴らないが、高音になると俄然良く鳴る。ただし口をしっかり開かないと高音は声に厚みが出ない。そして腰の張りをしっかりと使うこと。今はこれだけで充分だ。後は曲で自分の良い声をどれだけ使えるかということが出来れば良い。曲はモーツアルトの「すみれ」アやエの母音に特に注意。高くても低くても口はしっかり開いて出すように。とにかく前回言ったことをしつこく言う。高音はかなり響きがつくようになってきた。本人もそれは感じているようだが、それ以上に想像以上に身体を使うことに気づいたようだ。彼女は身体自体ははしっかりしているのだけど、声を出す力が弱い 。何度も言うけど高音はしっかり口を開いて吐くように声をしっかり出すこと。アやエの母音も平べったくならないように、口を縦に開くこと。「すみれ」は大分形になってきたので、次回から同じくモーツアルトのAn chloeをやることにした。こちらの方が音域がやや低いのでかえって難しいと思う。この曲でなんとか中低音部の声に厚みと張りが出るようにしたい。次回やってみたいことは、地声とチェンジした声の中間を中低音部の声でどうやって出すか?

たにさん。発声練習では完全なチェンジボイス(裏声)の練習に徹した。しばらく低い方で地声で軽く練習した後、2点Cくらいから上の裏声で徹底的に、声を集める練習をする。下降形で2点Eくらいから3点Cまで出す。そこからまた降りる。最初に高音を当てるのだが、この練習では2点G〜Aの声に大分響きをつけられるようになってきている。まだ不安定だが、本人が思っているよりも喉をしっかり鳴らす感覚でやってもらうと、うまく行くようだ。それと、裏声を高い音域で出すと音程を探って口をせばめて出すのだが、口は狭めないで喉の中を声帯そのものを合せるような感覚が良い。多分、頭に響いている感覚を少し下に降ろした状態で維持すると、良いのではないかな?次に2点Dくらいでイの母音からエそしてアと変えていく練習。イの口の形を見ると見るからに下あごに力が入っている感じがする。唇を突き出して丸くした形にすれば、喉が開いて良いのだが。エそしてアにその音質のまま変えるのは最初はすごくデリケートだけど、慣れればすぐに出来ると思う。要するにイの母音だと、裏声でも声帯が比較的良く合わさっているから、その状態を他の開口母音でも使えるようにするわけ。これら の練習は本人のやっている感覚だから、忘れないように少しずつでも練習してほしい。
曲は、ドビュッシーの「ひそやかに…En sourdine」フォーレの同名の曲とまったく同じ詩だ。ヴェルレーヌの詩。ドビュッシーらしい、異国的な豊かなピアノの響きの中になんとも艶めかしい声の魅力が発揮できる名作だ。今の彼女には丁度良い音域だ。全体に言えることはアーティキュレーションで下あごをぱかぱかと開き過ぎること、そのために、声を掘ってしまう。要するに低音が太く潜ってしまう。もっと、楽にむしろやや浅めに当てる方が美しい低音が出る。高音部もこの場合、あまり口を開かない方が良い結果が出た。ドビュッシーのこの曲は女性の声がとろけそうに艶めかしくて良い。
次回はドビュッシーの月の光Part2を譜読みしたい!←part1があるのだ。

よしおかさん。発声練習を始めると、また前回と違った声の響き、安定した声の響きが感じられた。もちろんまだ欠点はあるが、来る度に必ず何かをつかんでくる。そうはいっても、どこが問題かというと、響きを浅くしないために、下あごに支えを持たせるためあごをやや前に出すように開くことだ。これをやると喉は開く感じがするが、声帯がきれいに合わないために、響きが暗くなるし、音程がややフラットになる。もう少し後ろにあごを引くように開いてほしい。それから、お腹を使っているが、むしろ腰に張りをもたせるような腰の張り方に注意してほしい。そして、出し始めだけではなく、フレーズの終わりまでしっかり腰をさせるように。これを意識するだけでフレーズの終わりまで声がしっかりしてくる。今日はかなり高音まで練習をする。2点GAsは相当しっかりした、そして微妙に輝きのついた声が出るようになっている。あとはエの母音が今度は響きが浅くなるから、注意すること。アの母音でかなり良い声が出ているから、アの響きから同様にエの響きを探してほしい。イも同じ事。これらの母音による響きの違いは実際に歌詞のついた歌を歌うと顕著に表れる。声楽というのは歌を取り 入れながらやっていかないと、こういう点で上達が難しくなるものだ。
曲はヘンデルのLascia ch'io pianga...これは高音が難しい。今のよしおかさんには少し高いが、これもやらないと問題意識が出ないからやる!高いイなどの狭い母音は喉が詰まるようだったら開いて出せば良い。声の当て具合が定まらないために、ポジションが決まらずに喉が詰まってしまうようだ。これの練習は次回にゆっくりやりたい。もう一曲、アマリッリ。これは譜読みとイタリア語からやったが、実に良い声を出している。特に最初のAの声はとても良い。声の響きに趣味性すら感じられた。
こういうことが出来るようになれば、第一段階終了!笑 問題点は、低い声に降りるときにその声のポジションに戻ること。それと、イとエの母音が浅い響きになってしまうこと。これさえクリア出来れば他には今のところ問題はない。


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6月23日

たむらさん。
発声練習を40分くらいやる。最初は特に何も言わずに様子を見る。声を出すための体の使い方がやや固定的だ。何度か教えたことを実行しようとする気配がどうもあまり感じられない。初心者、あるいは慣れないと、声を出していても神経支配が悪いもの。神経支配といえばむずかしいけど、要するに自分の肉体を使って声を楽器のように扱うことだから、声の「出具合」「響き具合」それに相応する肉体の「反応」のしかたのこと。例えば、声を出していて喉が詰まってきたら口を開ける、首の傾きを変える、お腹の筋肉の使い方、あるいは声帯そのものへの集中の仕方を工夫しなければならない。良く聞くこと、感じること。全体に声を「出す」ことに意識があり過ぎて声の出し始めに「力み」が強いと思う。もう少し声の出し始めを楽に始めれば、実はもっと筋肉が使えると思うし声帯も鳴りやすくなることに気づくと思う。お腹もきょうは言わなかったけど、前腹よりも側腹あるいは腰に力をいれるような感じを持ってほしい。すでに4ヶ月くらいは通っていると思うが、これからは一度やったことを思い出してもう少し声の出し方に一工夫出来るよう努力してほしい。最後にコールユーブンゲン をやってみる。楽譜の読み方を勉強するため。簡単な4拍子あるいは3拍子の曲を初見で歌ってみる。予想に反して結構読める。飲み込みも良い。こんどから、譜読みの練習をもっとやれるかな。

みくりやさん。声を出し始めるとやはり恥ずかしそうに声を出す。彼女には何か独特の感性ある。あまり何も言わずに自由に発声をやってもらいながら観察すると、こちらが思ったよりも口を開くけど、喉を開いているのではなく声を鼻根に当てるようにしていることが声質から分かる。元来が彼女はそうだ。だから声帯の合わさりは良い。多分ブレスの仕方、あるいは癖で、ブレスを一生懸命しないと声が出しにくい…という感覚に陥っているのではないかと思った。それから、ブレスの際に胸の筋肉と一緒に喉を上げて吸っている。息を吸うと首の胸から喉につながる筋肉が硬くなっているのが見られる。これをなくすこと。そして基本的にお腹を少し開く程度にブレスをすれば良いと思う。こういう癖は直るまで時間がかかるかもしれないけど、少し意識して見てほしい。最終的に効率よく声帯が鳴れば、息はそれほど必要ではないことがわかると思う。高い方まで発声をやってみたが、大分出来るようになった。特に3点Esまで出せていた。素晴らしい!曲は、ラヴェルのギリシャ民謡。3曲目「何て色男!」を譜読みする。1曲目「起きなさい!ぼくのうずらちゃん」は、ブレスポイントを教えてレガー トに歌うためのポイントを教えたら凄く良くなった。
Reveille toi=レ・ヴェイ・ユ・トワ〜と歌うのではなくて、レ〜ヴェ〜ュトワ〜と処理すること。笑
すぐに出来た。勘はとても良いから5曲全曲は夏休み前に譜読みを終わるだろう。望みたいのは歌詞の内容などに対しても「自然な」興味が湧いてくるようになってほしいということ。音楽というのは言葉でぐちゃぐちゃやることではなくて、ひたすら「やってみる」ことだと思う。彼女はそういう面で確かに「感じる」力を持っている。そこからもう一歩、作品や作者に対する好奇心が育てばもっと良いのだが。。。


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6月22日

あいそさん。発声では口を横にひいて声帯の合わせをかなり意識してもらう。彼女は喉を開けるのだがそのやり方のために、息漏れが多いのと暗い響きになってしまいがちだから。とにかく声帯を合わせる感覚を常に持って欲しいこと。それから、言えることは自分が出している声の音色や音程と肉体の使い方とのつじつまを合わせるようにいつも動いて欲しいこと。具体的には閉じた口で中音部を出していて高音が苦しくなったら口を開けて喉を開くようにすること。響きや音程感と相談すれば自然にそういう動きになるはずだが、ややもすると一つの行為を固定的にやってしまうことがある。ぼく達は自分という楽器を操るわけだから、出てくる音色、あるいは響き、あるいは肉体の感覚に常に敏感になって神経支配を柔軟にしてほしい。そうでないと、なかなかうまくいかない。
曲は、ボチェッリのTime to say good bye...低音部は地声で。これも明るく声帯を合わせるように。
チェンジしてからも同じこと。それからSiのスィという発音をシ…と発音しないように。くれぐれも注意。
高い声は、集中できればかなり良く出るようになっている。歌自体はとても楽しそうに歌っていることが好感を持てる。全体にどうにかまとまってきた。後少しだから頑張ろう!

みやむらさん。初めてとのこと。大学時代の歌や音楽の世界から離れて15年くらい。。忘却の彼方になった音楽の世界に再び触れたい…ということで随分遠くから何時間もかけてきてくれた。その事自体がぼくはとても嬉しかった。さて、発声を聞くと、ビブラートを通り越してトレモロに近い声を出している。声が震えるのだ。それと、呼吸がかなり苦しそうだ。少し驚いたが、治してみる。地声の領域で声を喉の下の窪みに当てること。声帯を息で当てないで、直接鳴らすような感覚を持ってもらい、段々と高音に上がって行く。地声領域はまったく問題なく、むしろ良い声が出ている。チェンジも無理なく行くが、変ると少しビブラートが強くなってしまう。どうやら息が漏れるとビブラートが強くなるようだ。息を吐いて声を出す感覚を弱めてもらう。もっと簡単に言えば、少し喉声になっても良いから喉で声を合せることに神経を集中してもらう。これだけでほとんど許容範囲のビブラート、自然なビブラートになる。
ただ、少し忘れるとすぐに戻ってくる。特に声を強く出そうとするとビブラートが強くなる。これは声を出すときに息を吐く力で強くしようとし過ぎるからだと思う。息を直接強く出すのではなく、腰の張り、あるいは横腹に少し力を入れるようにして声を出すことを心がけて欲しい。それから元声は良いのだがやや響きが浅くなるため。声を当てる際に喉の下の窪みに当てるように意識して欲しい。それと、口を縦に開くように。これはあいそさんと逆で、元来声帯の合わさりは良いから、むしろ喉を開くような意識が良い声に繋がると思って欲しい。きょくは、NINAそしてAmarilliをやる。これらの問題を克服しながら1時間のレッスンで見違えるほど良くなった。スリムで魅力的な良い声だと思う。少なくともビブラートの癖が直るまでは間を置かないで来てほしい。


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6月21日

ゆきえさん。体験レッスン。ライブ活動をしているそう。声に負担がかかるのと高音がもっときれいになりたいとのこと。小学校から中学まで合唱をやっていたころはきれいに出ていたそうだ。下降5度で発声を始めると、体をほとんど使わずに、口の開きもあまりなくやや喉っぽい声であ〜と始め出した。
が、しっか〜し!(笑)同じ調子で高音に昇っていくと地声のまま(それも軽い)どんどんと昇っていきついには3点Cまで出す。2点bくらいから急に響きがついているので、どうやらその辺りから完全にひっくり返ってはいるのだろう。こういう声の方は初めてだ。実は低い方もヘ音記号のCまで出すのだ。
本人曰く中学時代は5オクターブ出した!高音は測定不可能だった!?とのこと。ミーシャが6オクターブ出す?マライヤ・キャリーが7オクターブとか言ってるらしいけど、ぼくは実際に自分が確認しないと信じないことにしている。だって、7オクターブって言ったらグランドピアノと同じだぜ!そんなことがあるのか!笑
声にも実はフラジオレットという声区があるらしいことは知識として知っている。多分、世間で(ポップス)喧伝されている、奇跡的な声域というのは、このフラジオレット区のことを言っているのだろう。
ここでは説明は省くが、モンゴルのホーミーで出す独特の倍音に似たような感じだと思う。
オペラなどのクラシックでは声を張ってマイク無しで出すので、これは多分使えないだろう。
クラシックでは3オクターブ出れば威張れるぞ!笑
さて、発声を色々やってみて、本人はどうももっと楽に声を出したいらしいことが分かったので、まず地声で出している高音をチェンジさせてみた。どうしたかというと、ハミングを教える。これも口を開けて
軟口蓋のところで音を出すように意識する。そして、それで出せる高音までやる。
次に、口を開けたハミングでン〜と出してから急に軟口蓋を開いて母音にする。そうすると、いやでも声帯に引っ掛けた声ではなく、声帯をしっかり使ったファルセットが出る。これがうまく行って、途端に2点Fisくらいから、クラシック調のチェンジした響いた声がび〜〜んと鳴り出した。
後は腰の使い方を教える。それから、喉の下の窪みに声を当てること、喉を下げること。いずれもすぐに出来るようになる。特に低声部でのこの喉当てと声帯を下げることは効果的でとても柔らかい良い声が出た。全般に音程も良さそうだ。大きな声帯の持主ではないが、非常に柔軟で活力に満ちた声帯の持主だ。今回残念だったのは歌を聴けなかったこと。次回はぜひ歌を聴いてみたい。


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6月20日

さぶりさん。発声をやりだすと、前から気になっていたのがブレス。姿勢自体がお腹をやや突き出している。確かに胸は上がっていないが、胸郭が開いてない。少し低い響きにこだわり過ぎたせいかな。
体の支えは腰に来るように、腰で支えて胸に行く感じが良いのだが。ブレス時には、もちろんこれらの筋肉が使える必要があるけど、あまり胸に息を入れようとする意識が強すぎると、肝心の横隔膜の弾性がなくなってくる。必然的に歌唱中の呼気コントロールが出来なくなり、出っ放し状態になってブレスがイマイチ持たないという状態だろうか。。。彼の場合は、響きを前に当てることと喉頭周辺の脱力をすることが身についているのだが、それ一本やりのために、高音部のコントロールが解決していないのだと思う。声を前に当てる意識があると、高くなればなるほど喉頭が上がって来る。高音部に行く際に、程よく喉頭を下げる意識が持てると高音部のコントロールがつくのだが、これがなかなか難しい。これから少しずつやっていきたい。シューベルトのサルヴェ・レジーナ。シューベルトならではの憂愁と諦観に満ちた実に美しい曲。惚れ惚れとする。声のイメージも湧いてくる。ぼくがさぶりさんにいつも要求している要素ですべて解決できる。真っ直ぐな響き。軟口蓋を高く喉頭を下げた柔らかくバスらしい男らしいピアノ。楽器で言えばホルンのような響きを連想して欲しい。狭母音と高音の 組み合わせの部分は特に難しい課題だ。ウの母音は本来喉が開くはず。ウの口をした際に、軟口蓋周辺に空気の層があるような意識を練習して欲しい。そしてウの口をする際に下あごを引き逆に充分に唇を突き出すことによって自然に喉頭が下がるはずだ。本来良い声を持っているから少しずつ直していこう。焦りは禁物だ。

ちばはらさん。
少し胸声の練習をする。最初に発声練習を始めたら音程が定まらずに浮ついていたからだ。声を出す際に特に低いリラックスできる音域で、更に楽に胸に声を響かす感じをいつも持って欲しい。これはテノールでもソプラノでも同じ事。この練習の最には絶対にフォルテでやらないように。あくまで楽に響かす感じが大事だ。その次に下降5度で順次高音に上がって行く。彼もブレスの時にあごが上がる。
あごを上げてリズムを取ってブレスをする感じだ。これは多分、息を喉の下に貯めるくせがそうさせているのではないかな?今になってそう思う。この癖があると、声帯への集中力が低下するし、ブレスは実際には入らない。ブレスを息を肺にたくさん入れること、と思っている人が多いが、それは違う。
呼気のコントロールというのは必然的に声の響きのコントロールだ。逆に言えば、声の響きのコントロールが出来ていれば呼気は充分に使えていると考えた方が良い。まして吸気は何も考える必要はないと思う。案の定、首を動かさずに発声をしてもらうと、声のアタック時の声帯の鳴り具合が良いし音程も良くなる。微妙な違いだが、違うことを自覚して欲しい。それにしても、1点Asまではどうにか声が出るし音程もはまるようにはなっている。声自体はAまで出るのだが、ここは音程がはまらない。
アタックの微妙な瞬間に声を柔らかく当てること、脳天めがけて当てることを心がけて欲しい。絶対に前に当てないように。それから、口を開き過ぎないことも彼の場合は効果的だ。口を開くことで、上顎へ響かせて音程を出すことを逃がしてしまうから。おでこ、ないしは軟口蓋に音を当てる感覚を忘れないで欲しい。曲は、日本の合唱曲。一部。低音に下がるフレーズで低音の音程がまったくはまらないところがあった。これは、響きをきちんと胸声の領域に下げてあてないせいで、音程が低いのではなく音程が上ずっている。良くこれを勘違いして音程が低いという人がいるが、これは間違い。それから高音部でやはり軟口蓋の上げ方が足りずに、これはややフラットになる。声を出そうとする意識か、前に当てる意識だけど、当てるならもう少し上、おでこか脳天を意識した法が良い。


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6月19日

やまうちくん。上向5度で発声を始めると、完全なバリトン声が良く分かる。ただ、昨今はテノールといってもこういう重い疑似バリトン系のテノールが人気があるし、それも良いのだろう。最終的に少なくも1点bまで出れば、アリアも歌えるだろう。とにかく胸声が良く鳴る人だ。体の底から声を出す力がみなぎっている感じ。これも素質なら歌わせるとそつなくきれいに歌う素質もある。音楽性だ。けっこうキツイ発声練習をした後にアマリッリ(中声)を歌わせたら、少々喉に力が入りながらも、きれいに歌う。音程感も楽譜の読みこなしも良い。センスが良い。ただ、発声で色々な声の出し方をやりだすと、途端に集中力がなくなって、息も心も落ち着きがなくなってくる。声を上顎から上、前に当て響きを集める練習をやったが、なかなかうまくいかなかった。声量をしっかり出さないと、どうも気持ちが悪いらしい。軽く抑制してほどほどの感じで出せると、色々と小技が利くのだが。。。ただ、本質的な声の出し方を身につけているし、それなりの結果も出せるのでむしろ曲を歌いながらその中で声の問題点を探していく方が良い気がした。発声を理論的にいくらやっても、体が反応しなけ れば意味がないから。小技より彼の良いところを伸ばしていくことが良いのだ。次回はTu mancavi tormentarmi..を譜読みしてもらう。

さたけさん。発声練習をしだすと、声を必要以上に上に響かせようとする癖が出ていたが、注意してしばらく発声を続けるうちに直ってきた。それから、連続したパッセージの歌い方だが、一つ一つの音を打たないで、弦楽器のボーイングのようにつなげること。弦楽器の弦を鳴らす感覚を持って欲しい。そして腰の使い方を改めて教える。声のアタック時に腰を使うようにお腹を使うこと。お腹、特に下腹をいきなりドーンと使うと良くない。声の安定が得られない。同時に口の開き方。これは高音を出すとき特に2点F以上。腰を使うことと口を開いて発声することは同時に。逆に中音部は口を開き過ぎないように歯に当てる感じで発声練習をやってみる。段々と良い声が出てくる。ただ、本人が良い声を感じているのだろうか?アからエに変えても鳴り方は良く鳴っている。そのまま高音まで引っ張っていくと、相当に出るようになった、特に腰の使い方と口の開き方を教えると、響きの浅い声だったが張りのある太い高音が徐々にだが出るようになった。2点bまで行けたから後は練習あるのみ。
曲は、ヘンデルのLascia ch'io pianga...果敢にもレシタティーヴォから勉強していた。声は良く出るようになった。ただ、相変わらず声をずり上げる癖が多い。特に高音に上げる際に一度同度の音に移行してから上に上げる癖。これは早急に直してもらいたい。なぜこのような癖がついたのだろう?
モーツアルトの「夕べの想い」をやる。ドイツ語の知識がないのに、CDを聞いて発音を取っていた。ブラヴォー!良い耳をしている。しかも、この曲は彼女に合っている。ドイツリートは行けるかもしれない。これからはフランス歌曲も良いからやってみてほしい。


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6月18日
にしくん。きょうは中音部でゆっくり声の様子を見てみた。1点Fくらいからアやエなどの母音で声帯の当たりに集中してやってみる。2度の上向でも音程を上げると、声帯の状態が悪くなる様子が見て取れる。色々と試してみるが、トレモロのように声帯を自由に転がそうとするとなかなか転がらない。やはり声を出すときに喉に無理な力のかけかたをしているようだった。最終的に口を開けるハミングで高い方をやってみるが、これでも音程が上がらない癖がある。どうも喉の動きを阻止しようとする無意識の力が働いているように思える。喉を意識しない余りに、喉を非常に固定的に扱っていないか?歌(発声)を教える難しさは、本人の意識がどうなのか?ということがなかなか推し量れないことである。こちらが想像する以上に多分喉(声帯)を固着化していないか?喉声は良くないとか、喉を使うと良くないとか、良い声楽家は喉の意識がないとか、色々いわれるが、最終的には実は喉への集中が一番大切なのだ。肩凝りの原因は実は肩の筋肉を使っていないからという論法もある。喉が上がっても良いから。。。といって声帯が自由に伸びることが出来るようにということで、やるとどうにか 声帯が自由度を取り戻してきた。非常に根本的なところからだけどもう一度、一からやりなおし状態である。一見遠回りだけど本当に音楽的な声帯を持つためには大事なことだから。

かとうさん。きょうが初めて。合唱のテノールだけど、元々バリトン(バス)でやっていたのが2年前から現在の合唱団でテノールに。なかなか苦労するだろう、確かにバリトンぽい声で発声をしている。
ただ、体格の割りには元声は割と軽い感じではある。明るいし。ということで、ドレミファソで発声を1点Cから始めて2点Gまでやってみたが、高い声は苦しそうだ。高くなると声が喉っぽくなる。それから呼気の漏れがやや目立つ。意識して息を声帯に当てて声を出していると言う感じ。管楽器的といえば良いだろうか。もう少し弦楽器的なイメージで声を扱うことが出来ればブレスも伸びるしもちろん高い声低い声、自在に操れるようになる。イの母音をやってみるが、これも気息音があるし、やや喉っぽい。特に同度でイからエ、アに移る練習をすると、エで完全に喉声になってしまう。これは2点D。今度はハミングをする。ハミングで軟口蓋に響きを当ててそこをを上げる意識を持つこと。これで最終的に軟口蓋を上げて母音にする練習。これでも少し良くなったがまだだ。そこで、ともかく響きを上顎から上に逃がすというか響かすことを教える。ンの混じったイの母音で鼻根に響かす練習を2点Cくらいで始めると良い感じになってきたので、再びイからエ、アに変える練習をする。これで大分良くなってテノールらしい前に声の当たった感じ、明るい軽い声になった。まだFis以上はきついが、それで も喉の状態は良いと思う。最初声帯の雑音が混じって気になったが、喉が暖まるとでなくなったので大丈夫だろう。これからの伸びがたのしみだ。


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6月17日

すずきさん。きょうは声の当て所を教えてみた。歯に当てる感じ。これは中音部。鼻根からおでこへ。これは高音部。いずれにしても腰の力の入り具合が悪いと声に反映はされない。腰の力の入れ具合は、前下腹を入れて腰の筋肉が後ろに張り出すように力を入れる。その力が声を出す原動力になるように。ということはブレスをしたときにその状態が少し出来ていて声をいつでも出せるようにしておく感じ。声を出す場合も特に高音になればなるほど力がかけられるように。彼女の場合声の当て方はおでこに当てるのが一番理解出来たようだ。特に2点C以上の声は良い響きと声量が出てきたと思う。人によって当て場所は得意不得意があるだろう。いずれにしても響きが出る場所、上顎から上に響きが行く感じが持てればどこでも良いのだ。曲はモーツアルトのすみれ。今日はゆっくりとフレーズごとに言葉の発音と発声の関係を教える。彼女の場合はおおむね口の開きが悪いこと。特に広い母音。曲を歌う場合、彼女は胸声領域がどうも響かないので、口を開けることで声を下にも響かすことを促すことが出来る。これは、ひとそれぞれで口を開けて下に響かすと喉声になってしまう人もいるから注意 。あくまでその声と相談しながらやっていかなければならない。また発音との関係で言えば一度開いた母音の口の形をなるべく保ちながら他の母音も発音すること、逆に狭い母音ならばそれに統一することで、響きの統一が取れる。今後も再度イタリア歌曲で発声を確認しながらやっていきたい。

たにさん。発声練習ではずいぶんと力みのない声になってきていた。これはとても良い傾向だと思う。本人が思っているより軽く声を出してもちゃんと鳴る声は出ると思う。特にフレーズの出し始めは力みは禁物だ。彼女の場合は元来声を出すとどこかに力みが入って、本来良く響く声が出難くなってしまうことがあった。鼻母音を使って(Dans)鼻腔に響きを持たせる練習がなかなか効果的だった。例えばウの母音はそのまま出すとどうも喉がつまるような感じになるが、ンという音の出方をウに混ぜると響きが前に出るようになる。曲になると、まだ力みが出る傾向がある。今日やったフォーレのAu bord de l'eaも高音まで持ち上げるフレーズになると、最高音で力んでいるが、実は声の出し始めですでに力みが出ている。力みが出るのは高い音、苦手な音域に声を持っていくことがあらかじめ分かっているから筋肉がそういう状態になってしまう。具体的にはブレス。ブレスの際に一生懸命吸い過ぎるのではないかな?そのために首や胸の一部に力みが出てしまうのだろう。特に中音部から高音に持っていく場合、最初の中音部は楽に響かすように心がけてみると良い。フレーズに入ったら高音は自然に出るから大丈夫!心配しないで楽にフレーズに入れば出るのだ。それから、彼女も発音が一つ一つはっきりし過ぎている。一つのフレーズをなるべく同じ口の形で料理するように考えて欲しい。一つのフレーズ全てを開口母音にするわけにいかない場合は、なるばく開口と狭母音だの2つだけに分けるとかく風してみれば出来ると思う。そして子音をまたいで声の響きがなるべく切れないような注意を常に怠らないで欲しい。声としては今の状態ならば、2点Fisまでの音域は難なくこなせるから、どんどん色々な曲を譜読みして欲しい。

よしおかさん。声の当所を喉の下の窪みに決めて練習を通してみた。のどの下の窪みに声を当てると声帯の状態がかなり自由になり、より太くて力強い声が出せるようになる。ただし、声を出すきっかけである呼気の使い方には工夫が必要だ。これは誰でも同じだが腰の力の入れ具合が大切だ。下腹部をじわ〜っと中に入れて腰が外に張り出すような筋肉の使い方が声を出すキッカケになるような意識がとても大事だ。このきっかけがないのに声が出てしまうようではいけない。これだと喉声になってしまうから。このお腹の使い方は歌う場合ブレスの際に用意されるわけだけど、たにさんと同様、ブレスで力み過ぎるとこれが力み過ぎて声を出してから筋肉が使えなくなってしまう。筋肉は程よい緊張感からその最大限の力が産出されるのだから、ブレスの際の準備はほどほどが大事だ。要するに息を吸い過ぎないこと。息そのものを吸うよりも腰の力のために重点を置いてほしい。それから、声を喉の下に当てて高音を出す場合は、ある程度下あごを下げた方が喉自体が上がることを防ぐからこれも有効だ。あごを下げるタイミングを声が出るよりも前にできるようにアーティキュレーションすることがコツ 。きょうはイとエの母音で一番良く鳴っていた。息漏れも少なく良く響いていたと思う。音程が上がっても当てるところさえ決まっていれば、そして腰の力がきちんと伝わっていれば、音質が浅くなったり悪くなることはない。曲は、Lascia ch'io piangaを譜読みした。音はちゃんととれていた。発音を付けてから少しずつ声のことと共に、練習をした。音程の上がり下がりと声質との関係は難しい。音程が上がると声質も上ずるのは良くない。むしろ逆に感じられるように注意して欲しい。短い時間でも大分進歩できたと思う。発声は練習で幾らでも上達するものだけど、言葉の扱いはとても難しい。楽譜を見ながらCDなどを聞いて一流の歌手達がどう言葉をさばいているのか?良く研究して欲しい。



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6月16日

みくりやさん。彼女はどうもおもしろい子で発声練習を始めるとなんだか最初は嬉しそうだけど声を恥ずかしそうに出す。どうしてだろう?ところで前から思うのは彼女は息を下向きに吐いて出す癖がある。声もその吐く息に乗せて出すのでブレスが足りない。それから声帯の振動が呼気の力で鳴る感じだ。声帯自身をもっと効率よく鳴らすために、声を顔面に当てたり喉の下の窪みに当てたりして、その感覚を養うのだ。これが分かるようになると思ったほどの呼気の力を使わなくても声は良く出る。また、喉声にはならなくなる。中音部ならば口はあまり開かない方が良い。歯に当てるようにすることも良い方法だ。このやりかたで高音まで発声をやると、2点bまで素晴らしく響く声になった。口の開き具合は、自分の声の響き方と相談して決める。もちろん腰の張り首の姿勢を大事にすることが大事。姿勢は大分良くなっていると思う。曲はラヴェルのギリシャ民謡。2曲目のフランス語だけどフレーズの終わりのあいまい母音は狭くなり過ぎないように。口の使い方がまだ固定的なので、結局全体的にリズム感が固い感じになっている。もう少しフレーズ全体が柔らかく脹らむような感じがほしい 。そのためには口の開き方や唇のしなやかさをもって発音と発声が出来ると更に良いだろう。1曲目は、最初の1ページが音程差がないためになるべく口をぱくぱくしないで、声を口先や鼻根に響かすようにすると声が高率良く響くだろう。それにしてもこの曲は彼女の声質が本質的に合っている。次回までに3曲目の譜読みをしてほしい。

むらたさん。
発声を初めて気づいたのは声を一つ一つ鳴らそうとすること。例えば、ドレミファソ〜という5度の上向形でやると、ハハハハハ〜となる。声を出すときにはイメージとして、もっと弦楽器の弦を弓で擦って出すような感じがほしい。そう思えば、上記のようにハハハハハ〜とはならずに、あ〜〜〜〜〜となるはずだ。それから舌が後ろに引っ込んでしまう。特にアの母音の時。これが前にピタッとなっていると、声が前に出る。それから、お腹の使い方。前下腹は中に入れるように使うけど、その際に腰の張りが出るように使えば声の支えが感じられると思う下腹を中に入れるときにそれだけを意識すると腰の力が出ないので、それだけは注意した方が良いだろう。それから声を出すときに中低音部の声は口を開き過ぎないで前に当てるように。全体に口を開き過ぎる傾向にある。声を高くするときに始めてあごを開いていくように。あごを開いて高音を出すことと腰に力を入れる具合は同期しているように。そうやってしっかり声を出すことを心がけて欲しい。曲はCaro mio ben...最初のEsの音Caはしっかり口を開き腰を使って出して欲しい。2ページ目のRigorをリグロと読んでしまう癖を早いうちに直して。全体に声がずいぶん出て来ているが、高音の時はまだどこかで抑えている感じがある。腰に力を入れることと、声を前に飛ばすこととが別のことになってしまっているのかもしれない。声を前に飛ばす力を口の開き方と考えて見ることも良いかもしれない。

たにむらさん。
きょうは普通に発声練習をしながら、彼女の問題はどこにあるのかを少し探ってみた。どちらにしても息が物すごく漏れてしまうことと、声帯が合わないことに問題がある。それはチェンジしてからの声。
色々やってみて、結局イの母音がやはりきれいに鳴るけど、エでもうまく行くからアにしてうまく行くのは時間の問題だ。それから、彼女の体の動きや、声が出る際に鳴る息を当てる音などを聞くにつけてやはり強い呼気圧迫で声を出している傾向が強そうだ。みくりやさんに少し似ているけど、たにむらさんは露骨に息の方向が下向きに出しているのではないかな。要するにそういう下向きの息を吐く力で声を出すために声帯の状態がピンと張られないままに無理矢理声を当てようとするために、声ががさがさしたり、息漏れが多すぎてブレスが持たない…という悪循環ではないかと思う。これは癖なので直すのはなかなか大変だけど、コツをつかめば早いと思う。今日は、声を当てる瞬間の集中力を相当訓練してみた。イやエだとやりやすいが、アが一番難しそう。声帯のひだの状態が分かるくらい声帯に集中してみる。これをうまくやるために、むしろ声を鼻根や歯の裏に当てるようにすることと、声を出す際に落ち着いてやること。少しずつだが、彼女自身がこの事に気づいてうまく行きつつあるというところかな。ぼく自身もこういう声は初めてなので、彼女との一問一答でカット&トライでやってい かざるを得ない。でもすくわれるのは彼女が熱心であることと忍耐強いこと。こちらを信用してくれるからそういうやりかたでもうまく行くのだ。レッスンが終わって最後に「歌は楽しいです〜♪」と言って帰って行くからこちらも救われる。きっともっと良い声が出るようになるよ。頑張ろう!


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