2001年7月後半の続きレッスンノート

レッスンノート目次
7月24日 | 7月26日 | 7月27日 | 7月28日 | 7月29日 | 7月30日 | 7月31日
7月31日

やまうちくん。発声練習を上向5度で始めて気になったのが声の出し始め。ッアアアア〜という感じ。要するに声帯を声帯周辺の筋肉で狭めて声帯を振動させる感じ。本人の感覚で喉っぽいか喉っぽくないかというのは、声帯あたりのストレスがあるかないかだけど、実際に聞く声が喉っぽいのでは本人がその自覚がなくても意味がないのではないかな。教えたことは、声帯に力をかけずに呼気を送って自然に声が出るようなアタックの仕方。ブレスの際に軟口蓋を高くして横隔膜との連帯感を持つこと。これがうまく行くとちょっとした横隔膜の動きで声がすぐに出る感じがわかるのだが。これらの練習を一から始めるとなかなか大変だ。もし声を前にあてたいのなら、むしろ開いた母音アなどではなくイやエの母音を使って、口をあまり開けずに前に当てる練習をしたほうが良いかもしれない。
今のやまうちくんなら、後者の練習方法が即効性があるかもしれない。曲は、トスティのセレナータ。この曲で今の口をあまりパクパクさせない方法でやってみた。特に1点Fのウの母音は出しにくそうだけど、鳴らそうとしないで息を口から吸い込むように意識して出してみるとうまく行くと思う。そのやりかたで狭い口をした高音のウでなれたら、そこから今度は前に声を当ててみるようにすれば良いかもしれない。後は、中低音部でイの母音で前に当てる練習をして徐々に上に持っていくのも良いかもしれない。今の出し方は、口を開いてアペルトなポジションで声を前に当てるやりかただから、難しさが助長されるのではないかと思う。あごが疲れるのも、あまりにこのアペルトなポジションで固めてしまうためだと思う。あごは楽にした程度の開きで、ということは、あまり開けないで声を前に上の歯に当てるようにアの母音で中音部を練習する。そしてアの母音ならばそのまま高音に行くにしたがって徐々に鼻あるいは鼻根あるいはおでことアタックの場所を変えていく方法もありだろう。
後は、前にやったけど喉の下のくぼみに声を当てる。イの母音でやる。ここからエそしてアと変えていく方法。とにかくテノールは難しい。練習あるのみ。ただ、くれぐれも無理をせずに。喉を壊しては元も子もない。


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7月30日

こぬまさん。発声練習は、声馴らしをしているうちに、下降のフレーズで最後のほうの声が響きがなくなる傾向にあるのを発見!軽い声の響きの練習をしてその響きを落さずに下に降りることを注意する。意識を持てばすぐに治るのだが、お腹あるいは腰の使い方の問題かな。どうもブレスの大きさやフレーズの息の流れ方に乱れがあるので、お腹の使い方が悪いのではないかな。
彼女の場合、声の響きは軽く当てて共鳴を意識すればきれいな軽い声は手中にある。軟口蓋を高く意識してそこに息をすべらせるように、コントロールして出せば無駄なビブラートもつかずに、高い響きが出る。声の響きに微妙に高さが出ないのは、多分、多分だけど、前に当てる場所が低いか、あるいは前に当てる意識だけが強いかのどちらかに原因があると思う。少なくとも軽い柔らかい響きならばもう少し脳天か後頭部に意識を持っていくほうが、本当に軽い高い響きが出るだろう。ただし、あごの開け方、喉の下がり方も関係してくるが。息だけど、下腹部を軽く入れた状態にしてブレスをしてみて、横隔膜のあたりを軽く開くようにしていれると、無駄に口をぱくぱくしてブレスしなくても入ると思う。これも今日は出来なかった。違うフォームを研究するのはコンクールが終わってから、じっくりやったほうが良い気がしている。曲は、プーランクのExultate deo...発声のテーマと違って強い声が必要な曲だ。出だし、フォルテッシモなんだけど、強い声が出ない。細くあてようとしてもフォルテッシモは無理だ。声帯の扱い方が軽い扱い方なので、呼気を強く持っても声帯がしっかり保持されていないからひっくり返ってしまうだろう、あるいは痛めてしまうかもしれない。声帯をもっとも強靭にかつ自由に鳴らすには、喉の下、胸骨の上のくぼみに当てないとむずかしい。が、これも慣れるのに時間がかかる。取りあえず、口の使い方をChiuso(狭くして)顔面にしっかり当ててアーティキュレーションするようにする。彼女の場合、アとエの母音であごを下げたり横に口を引いてしまうので息漏れと同時に響きが逃げてしまうのだ。発音は口が一定でも問題なく出来るから。後は、最後に出す2点Aのイの母音。イを意識しないでアのポジションで舌の先に神経を集中して喉を楽にして一気に呼気を与えて出す。恐がらないで、但し喉を充分に開いて軟口蓋も高くして、一気に行くことが大事だ。逡巡しては良い音楽が出来ない。

むらたさん。久しぶりに来たけど、声の調子は良かった。軽く発声をしながら、あごを開けてお腹を使ってしっかり呼気を送ることを練習する。しっかりした声、あるいはお腹から声を出すというと、すぐに力を下に向けてしまうのだが、これは間違いだ。腰がしっかりしていることは、もちろんだが、声のエネルギーは下から上に向けていかなくてはならない。下腹部をしっかり中に入れて呼気を上に向けて出すように。そして、高音になったら口もしっかり開くことが今のむらたさんには大事なことだ。その次に2点Cくらいで、イの母音からエそしてアに変る練習をする。これですっかり響きが出るようになった。大分響きのある声が出るようになっている。まだ呼気の送り方が不十分だったり、あごが硬かったり、喉に力が入りがちだが、まあまあ合格点を行っている。第一段階は終了と行ったところか。声は良いのだけど、曲に入るとまた違う問題がある。それは発音発声の関係だ。発音は無駄無くするためにあごは必要以上にパクパクさせないほうが良い。特にエの母音。そして新しい譜読み。
Nel cor piu non mi sento..これは譜読みの段階。譜面の読み方の基礎がないので、苦労する。CDで聴いて覚えるのも良いけど、それだけだと、なにかあった場合に応用が効かなくなる。ということで、コンコーネの勉強を進める。ともかく声に響きを持たせることが出来るようになったので、これだけは忘れないで次回も出来るようにしてほしい。


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7月29日

はたけやまさん。発声を下降で一往復そして上向で1往復しようとしたところ、3点Cでむせてしまう。
少し無理だったのかな。声は悪い声してないのだけど、予想以上に無理をして声を出しているようだ。声は明るく良い声だけど少々喉っぽいかな…という感じだった。軽くやってもらいたいのだが、軽くという感じがどうも出来ないようだ。声帯は合っているけども、息で声を流すというのが、苦手のようだ。フレーズの終わりもびしっと切る癖がある。声の立ち上がりに強さがある。それはそれで良いと思うが、もっと軽い響きでレガートに歌いまわすテクニックが必要だろう。ヘンデルのLascia ch'io pianga...を歌いたいというので、歌ってもらう。全体にせかせかとした音楽になる傾向がある。これも息の使い方の問題と声を出すこととの関係があるだろう。声だけど、響かすというよりは鳴らしているという感じ。イタリア的というのだろうか。ただ、それにしても、どちらかといえば一音一音を鳴らす感じなので、息も相当使うだろう。フレーズ単位で声の響かせかたを考えて、ということは、そのために息を使うような出し方を覚えてほしい。他の曲は、フォーレの「月の光」彼女はこの曲のリズムが苦手のようだ。特に伴奏が入ると、分けが判らなくなるらしい。八分音符単位で数えて練習すること。それから「夢の後で」出だしの旋律は、声を押さないように。ここで押すと音程が悪くなる。それから、Cieux tes yeuxなどのスィやズィなどを、シ、ジなどと発音しないように。最後にサティのJe te veux...これも声が強すぎるというか、フレージングが無くて幼稚な音楽になってしまう。もっとレガートにそして、軽く歌うところは、軽く歌ってほしい。特に出だしはオペラのアリアみたいに立派になるとおかしい。元来がシャンソンだから。

たにさん。下降形で軽く発声を始めるが、力を抜いているのだが、息の回りがまったく感じられない。力を抜き過ぎているようだ。前から懸案だった発声を第二換声点(彼女は2点Dくらいから)の声だけに集中してやってみる。声はハミングで。その前の発声でも息の流れが感じられなかったのでお腹を使って積極的に呼気を出すことを促す。それは、声を出す際に力を抜くために、息も使わなくなっていたのだろう。力を抜くことは大事だけどどこかで、その代償を払うことは間違い無い。力を抜き過ぎても駄目だし力が入り過ぎても駄目なのだ。さて、地声ではないチェンジした声のハミングでしばらく上がり下がりしているうちに大分滑らかになった。結局、呼気を活発に息を流して歌う感覚が大事なのだ。母音に変えて発声をする。2点Eから上くらいでかなり共鳴のついた声が出せるようになってきた。この声に慣れてきたようだったのでそのままかなり下まで出してみる。そこで、今度は低い声に響きをつけるために、1点Gくらいでイの母音からエアと変える練習をする。かなりシビアだけど、うまく行けばこの声ですぐに使えるくらいの状態だ。発声の効果を試すためにフォーレの「リディア」を高 声用で歌ってみる。中低音部の息の回し方を教えるだけで、見違えるほど音楽的に歌えるようになった。そして、高音部は見事に美しい声の響きが出ていた。大成功!ドビュッシーの「月の光Part2」も歌ってみる。中低音部は声が集まらないけど高音部と中低音部の声質が統一されるし、高音が澱みなく美しく出る。フレーズの終わりの雑音もまったくない。やはり、この声区で統一して勉強して行くのが正解だった。今後は迷うこと無くこの方針でやっていこう。

よしおかさん。発声を普通に始めて思ったのは、やはり息の流れと、軟口蓋の上がり方。この両者がどうもまだ足りない。軟口蓋のことは、ハミングをやらずに口の開け方、意識だけでやってもらう。これは、自身で手鏡を見ながらやってみると良く分かる。そして、息をしっかり送る練習。彼女はお腹を良く使っているほうなのだが、肝心の下腹部、腹直筋がまったく使われていないようだった。この部分を使うためにには、その部分だけに意識を持つだけではなく、例えばお尻の穴をしめるようにあるいは、腰を前に回すようになど、色々な感じ方がある。それだけに難しいが会得すれば強い呼気の回しが出来るようになる。下降形の発声よりも上向形の発声のほうがこの呼気の使い方は強くなる。いずれにしても、呼気をもっと意識して声を出してほしいのだ。それと、喉の奥の開き、特に軟口蓋を上げること。もう一つは、2点Dくらいでイからエそしてアに声質を変えずに出す練習も彼女の場合とても有効だ。声が見事に前に集まってきれいな共鳴を響かせるようになる。今日やったことはこの3つ。呼気の送り方、軟口蓋を上げること、そして声を集めるやりかた。これは今日のレッスンでかなり出来 るようになっている。後は、意識を常に持って歌ってほしい。体を思ったよりも使わないと駄目なのだ。曲では、気になったのがエの母音。ほとんどアを出すつもりでやるのが、コツ。それから、Lascia ch'io pianga...では、強い高音の出し方として、もっと口を開けて喉をしっかり開くこと、これは母音の狭い広いに関わらず。しっかりした呼気を送ることももちろんだ。大分声に芯が出てしっかりしてきた。あともう少しだから頑張って。


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7月28日

たむらさん。相変わらず忙しそうな彼女。政府開発援助との関わりや、ODAの問題、複雑な海外援助の話は、実に難しい。そこで発声は声慣らし程度に止める。声だけど、人によって声の出方がかなり違うものだ。これは練習や技術にもよるけど、その人が持っている無意識の声のイメージがかなり大きな影響を持っているのではないだろうか?たとえば技術の問題だけではなく筋力そのもの、あるいはその筋肉を働かせるイメージが少なければ強い声は出ないものだ。彼女の場合は、全体に声が柔らかいからむしろそういう声を大事にしていけば良いのではと思う。音域は何にせよ広いほうが得だから伸ばしたほうが良いと思う。今日は、コールユーブンゲンで譜読みの練習をした。5度の音程をドレミの音階で上がったり下がったりという課題だ。これは、音程に対する耳と声を出す感覚の慣れ。ドレミという階名唱法だけど、音程の相対的な関係をつかむには、慣れない人には簡単なのでオススメする。絶対的な音程を身につけるのは、大人になってからは難しい。歌の場合は、声を出すこと、喉で音程を覚えられるから、その程度に止めておけば良いのだ。むしろ耳だけで絶対音程を身につけると声 という、音程に不確定要素が大きいものの矛盾に慣れることが出来なくて、弊害があるような気がする。曲は、トムの夜のオルフェを歌う。これは、音程が低すぎるので短3度くらいは上げたい。ポップスだけど、声を張る必要はないと思う。むしろ良い響きの追求と、その響きをつないで歌いまわすことが出来るようなテクニックを身につけることが大事だ。気持ちだけを追求しても決して良い歌とは言えない。

すずきさん。発声練習を始めると大分声が出るようになってきている。ただ、なかなか前々回の声の当たりがすぐに出てこない。大した差ではないのだけど、声のひっかかりというか、とっかかりがつかめないのだ。ただ、何度も練習をしていると、出るようになってくる。特にイの母音からエそしてアに移行する練習が効果的だ。第二チェンジから上の声、2点G以上になると、今度はいつでも当たった声が出せるようになってきた。中音部の声の出し方だけど、ブレスをしてから声を出すまでの準備の段階で、どう意識するかが問題。簡単に声を出さないで、当たった声を出すべくいつも気を使ってほしい。アの母音で出すときも、イを響かす感覚を持って出してみる。頭の中のイメージを大事にしてほしい。低い声だけど、最終的には1点Cまでは、地声にせずにチェンジボイスで歌ってほしいのだけど、低くなると声が集まらない。低い音域でも声を集めることを忘れないように。お腹もしっかり使って息を送ることを忘れないでほしい。曲は、モーツアルトのAn chloe...声は集まるようになったけど今度は、響きが気になる。響きというのは、ドイツ語自体が持っている母音の響きだ。他の欧州の言語も同様だけど、響きが浅くならないように気を使ってほしい。アやエの母音は口を縦にして。上顎の空間が大きくあるようなイメージで。そしてイは丸い響き。そして、ここからが難しいけど、言葉の中の音のつながりが途切れないように。特にエの母音は舌が前に出過ぎないように、むしろアの母音に近い発音が出来るように。充分に気をつけて発音してほしい。高音部は問題ない。終わってからオリーブオイルの話をしたけど、思い出せなかったのがバルサミコソースの話。バルサミコソースとオリーブオイルを合せたものにパンを浸して食べるとおいしいよ。笑

あんどうさん。彼女は体験レッスン以来初めてだ。細く当たった声、低音の声量、ブレスなどが彼女の課題だそうだ。普通に発声練習をして気づいたことは、楽に声を出しているのだが、やや息漏れが多いことと、響きがわずかに低いこと。あごの動きがどうもその低さに関係があるような気がした。
声を出す際にあごをわずかに前に出すような感じのために、響きがくぐもってしまうことと、そのために音程がフラットになってしまう傾向がある。まず、軟口蓋を上げて響きを上に持っていく練習をした。Ng−Aの練習。ハミングからアの母音を出すわけだけど、ハミングは割と上手く出せる。ただ、不用意に出すために、きれいに行かないうちに声を出してしまう。これは、デリケートなので充分に注意深くやってほしい。慣れないことをやると不安だと思うけど、このハミングから軟口蓋を上げて母音を歌う練習は非常に古典的な練習方法だから安心してやってほしい。正しい音程の基準、そして軟口蓋を上げる筋肉を鍛えること、その結果、喉が開いて軟口蓋も上がった柔らかいが芯のある声を会得するためにはとても大事な練習だ。結局、イの母音からエそしてアに移るやりかたが、一番分かり易かったようだ。軽い共鳴のある声が実感できたのだと思う。呼気のエネルギーを背中を開くことで得ているようだけど、もう少し腹直筋(下腹)を中に入れて呼気を上に送るようなやりかたも出来ると更に、力強い呼気が得られると思う。今日は時間切れで詳しく出来なかったけど、あごの使い方も 軟口蓋あるいは、上顎に声を響かせるためのアーティキュレーションに関係があるので今後は注意して発音してほしい。合唱曲をやったが、低音部とくに1点Cから更に低い声を出す場合は、音程を上げようとするよりも、むしろ口を開いて喉の開きを促し声帯を楽に振動させる感覚で出したほうが楽に良い低音が出ると思う。今日一回で大分良い響きが出るようになった。この感じを忘れないで。次回から、イタリア歌曲集をやることにした。ヘンデルのラルゴから。


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7月27日

おかださん。滞日3回目のレッスンになる。きょうで終わりだけど、声は変った。それは息漏れが少なくなったこと。無理な声の出し方がなくなったこと。まだ、喉で押している感は否めないが、全体に太くて胴間声で息漏れが多かったのが大分コンパクトできれいになったと思う。彼女の問題は多分舌と下あごに力が入っていることと、お腹の使い方かな。お腹を出すように力を入れてそこで支えているために、息の力が上に昇っていかない。それと、下あごに力が入るために、柔軟に口を開いて軟口蓋を上げたり、下あごを下げて喉を開くことが出来ないこと。そのために、ある程度の高さになると音程を取り辛くなって、音をずり上げる癖が出てしまう。これは、軟口蓋を上げることが出来ないからだと思う。こう書くと難しくなるが、要するにアアアと発声をやる際に、最初の声を出す瞬間に軟口蓋が上がって、そこで音を響かせる感じをつかむこと。今日の声は大分声が当たった感じになっていたけど、まだ喉っぽさが残っている。それは、軟口蓋の高さ、開きが足りないからだと思う。上向でも下降でも、発声の時にドレミファ〜と一つずつ声を出さないで、最初の響きで決めて音をその響き の中で歌うようにすることも大事。ということは、最初の声の響かせ方でフレーズの全体像が決まってしまうと思って良い。曲は、アマリッリから。声が変ったせいでブレスが大分長くなった。なんとか音楽的なブレスが保てるようになった。何度も言うけど、口の開き方で軟口蓋の高さが決まるから、どの母音もなるべく開いて、軟口蓋を高くそこに響かせるようにすると、うまく行くと思う。
カロ・ミオ・ベンも同じ。後3回来てくれたら、もっと確実にここに書いたことが巧く出来るし、確立できるのだけど、残念だ。でも仕方が無い。声を出すエネルギー(息)は下から上に。響きは上に。そのためのお腹の使い方や、口の使い方を思い出してほしい。また次回お会いする日を楽しみにしています。

りりこさん。
発声を始めて気がついたことは、音程がずいぶんと良くなったこと。音が上ずることがほとんどなくなった。要するに無理な声の出し方がなくなったのだろう。以前の夢にうなされているような感じがほとんどなくなった。少しずつ上がって行くと、五線以上の音程(2点G)が大分軽いけど、逆に少し喉っぽくなっている。これは、2点Eくらいから始る傾向にある。喉は楽にしておいて、顔の共鳴点か軟口蓋に息を送って、結果的に自然に響く感じが良いのだけど、喉を当てに行ってしまう見たいだ。ところが、息を送ってほしくても息の流れがイマイチつかめない。お腹、特に胃の当たりをガチガチにして声を出していることが良く分かった。これは良くないと思う。
胃の当たりはなるべく柔らかくしておいて、下腹部を使って呼気を積極的に送る感じも覚えてほしい。りりこさんの場合はとにかく、胃の当たりの筋肉の固まりをなくして柔らかい状態で歌えるようになることだけ練習しても良い。そのために、喉っぽくなっても良いくらいだ。そして、呼気を送るエネルギーを下腹部の使い方でコントロールするようなことも練習してほしい。例えば息を長く吐き続ける練習。この時に下腹部、腹直筋を中に入れて出すこと。今日はこの練習だけに終止した。声帯そのものの鳴り方は良くなっている。変に太くもならないし、喉で歌っている感じもなくなった。お腹を中に入れて声を出すことが少し出来ると、不思議なことに自然なビブラートがつくようになった。今までは確かにノンビブラートだったのだけど、それは喉で調節していたのではないかな。そういうやりかただと、大して声を出さなくても意外と喉が疲れるものだ。曲はTu lo sai...ルネサンス風の典雅な曲だ。言葉をつけなくて良いから、まずはお腹を使った響かせ方を充分に練習してほしい。言葉がつくとまた色々あるのでそれはレッスンで教えたい。

あいそさん。発声を下降形で始めると、声が良く鳴るようになったことに気づいた。それに響かせ方も覚えてきた。そして、なんとそのまま3点Cまで出せるようになった。ずいぶんと進歩したものだ。ただ、低音部がスカスカなのでその辺りを今日は練習した。1点Cで、チェンジした声でイの母音を出してもらい、そこからアに変える。このやりかただと、声量はまだなくとも、きちんと当たった低音が出る。すぐに出来るようになった。彼女はなかなか勘が良い。ただ、気になるのはりりこさんと同様に妙に声にビブラートがないことだ。りりこさんと違って彼女は声がやや太くなる傾向にある。そこで、倍音を聞いて声を出す練習をしてみた。しかし、まだ難しそうだ。下から上がるドレミファソで練習すると今度は声が出しづらそうだ。これは、やはり声のチェンジの問題がきちんと解決していないからだろう。要するにもう一つのチェンジポイントの声との連絡、合わせ方がまだ良く理解できていないからだ。もう一つのチェンジポイントは大体2点F前後にある。そこから上は基本的にはもっと軽い声が出せるのだけど、それを使わないでそのまま上がって行くから、下降系の発声だと音程もまあまあ悪 くないし声量も出るけど、下からの上向形だと、音を押してしまって音程が低かったり、詰まった響きになってしまうのだ。これは、上のチェンジポイントの声を下の声との練習をもっとやったほうが良いだろう。それから、彼女の場合も呼気のエネルギーがまだ足りないようだ。お腹をもっと使うこと。これも練習を積んでもっと使えるようになってほしい。これらの課題が直接結果になって表れるのが今日歌った「すみれ」Rugiadose odoreseの2点Fになる、oの母音が安定しない。チェンジした声にすると弱いし、その下の声だと失敗する確立(音程が下がる)が五分五分になる。下の声で上げるのだったらもっとお腹を使って呼気をしっかり送ること、喉を開くこと、軟口蓋を上げること、これらの肉体をしっかりつかわないと、うまく行かない。

かとうさん。発声練習を高いほう(1点C)からアの母音で軟口蓋を上げて練習を始める。1点E以上になると途端に浅くなって喉が詰まってくる。喉が上がってしまうのだ。一旦下がって下の声を楽に出してエの母音でやってみる。もう一度高い声で始めると、エの母音のほうが喉は深くなる。開く感じはある。しかし、声を当て過ぎるきらいがある。ともかく、上がってみるが、アの母音にすると、途端に浅くなってしまう。ちょっと無理をしてそのまま上がってもらって、半分ファルセットのような感じで出してもらう。どうしても喉が苦しそうだ。イの母音で口を開かずに前に当てる練習もやってみたが、喉がひっくり返ってどうにもならなくなる。そこで、ハミングの練習をする。1点Cくらいから、ハミングだけで昇っていく。軟口蓋に当てること、お腹をしっかりつかうこと。これらを守った上で、口の開き方を教える。要するに、軟口蓋を上げることは、喉頭の引き上げ筋を使うことであり、あごを下げることで声帯が下がる。舌骨からの引き下げ筋を使うことになる。この両者の筋肉をバランス良く使うことによって、声帯の位置の良い位置決めが可能になるのだ。今日はどうにか2点Gまではこのや りかたで上手く声帯が当たるようになった。ハミングからアの母音に変える、Ng-Aの練習でも声帯の位置が変らずにうまく響くようになった。彼の場合はこの方法は有効のようだ。そこで、曲に入った。
シェーンベルクのSchein uns, du liebe sonne..楽譜の持ち方が悪い。下を向き過ぎている。まっすぐ前を向くように持ってほしい。声は必ず上顎から上に響かすように。この場合、前に声を当てずに脳天に向けて響かせるように。お腹をそのために使うこと。これだけのことを守った上で、言葉のアーティキュレーションをその響きを確立できるように使うこと。そのためにもっと口を使って、上顎部の軟口蓋から硬口蓋にかけて大きな空間が出来るように.アーティキュレーションすることが、うまく響かせるコツだ。そのためには、下あごを支えに使うような感覚も必要になってくる。ただ、まだこの曲では課題がたくさんある。もう一回レッスンをして今日の課題を確立してほしい。


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7月26日

みくりやさん。穏やかに発声練習を始める。最初はアアアアアと軽くやる。いつものように何だか嬉しそうなので、こちらも思わず微笑んでしまう。この時は何も考えずに喉を暖めることに集中して。今度は上から降りる。ソファミレド〜。これをやり出すと声に響きがついてくる。今日の発声はそのことをテーマにした。要は、下から上がる時は低い声から始めるので響かせにくいのだ。そして、そのまま上に昇るので高い音でも響かない下の声のまま押してしまうことが良くないというか、響かない声で発声をしてしまう原因になってしまう。それにしても、声が響くようになるまで、使っていない暖まっていない声帯を運動させるから、最初の内は仕方が無い。本人もその違いが良く分かっているから大丈夫だろう。五線よりも上の音、2点Gより上になると、また響かせるポイントが違ってくる。彼女の場合はあまり下あごを下に下げるよりも、頬を上げて上に当てるほうがきれいに軽い声が響く。このままで3点Cまで楽に出るようになった。ブレスも自然にしかも楽に長いブレスになったと思う。彼女の場合当面はこの軽く響く声が良いと思う。曲はラヴェルの「ギリシャ民謡」4曲目の真珠採り の唄をやった。譜読みを再度やってから、フレージングを教える。民謡風で長い音符が多いので、その長い音符を歌うときに、息をけちらないで、流すように。自然なクレッシェンドと思えば良いだろう。それからこぶしを思わせる3連符を文字通りこぶしのように、歌いまわすこと。この曲は本当に広い空の高い風土を思わせる、追分節のような歌だ。まっすぐできれいな声が軽く出ると、本当に素敵だ。
フランス語をつける。いつのまにか、ほとんど辞書無しで読めるようになっている。時間をかけてすこしずつ やった成果が現れていると思う。彼女の唄を聞くと、アマチュアでもやれば素晴らしい曲が歌えるということが、良く分かる。なんだかザマアミロ!という気分になる。笑
夏休みの間に、この曲のフランス語を完全にしてほしい。後は最後の曲で終わりだから、もう一頑張り!楽しみ。


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7月24日

7月号後半のレッスンノートを更に別ページにした。段々書いていると、重くなってくるからだ。このパソコンは頭が悪いしメモリーも最低なので、テキストでも40Kb近くなると、重くて書きにくいのだ。
というわけで、今日は史上最高空前絶後前代未聞の暑さだった。笑
やまうちくんは、汗を拭き吹きレッスンに興じていた。発声はなるべく彼の自由やってもらう。まずは調子が大事だから。聞いていると、少し音程が不確かな感じがする。良く鳴っているが鉛筆の芯が丸い感じ。特に下降形の場合最初の音がそうだ。少し意識してもらいながら上がって行くと、2点Cくらいから音質が変る。ここらから音程を上げようとせずに倍音を聞いて鳴らすような感じだと少し鳴りが良い感じになると思うが、なにしろどうも体も顔も力を入れて発声するので、喉っぽくなってしまう。
その後は、高音の練習をする。2点G以上はどうしてもきついので、少し当て所を変えてもらう。前に当てようとしているのを脳天あるいは、少し後ろ気味に出してもらうと割とうまく行くみたいだ。しかし、それも2点Asまでで、2点Aは至難の技だ。ひっくり返るか、喉でワーと鳴らしてしまうかのどちらかだ。多少軽目にしてむしろ、口を開かずに、ということは、下あごを下げずに声を当ててもらうほうがうまく行くような感じがある。まだまだ難しさがあるが、力の抜き具合、お腹の使い方、などなど再考の余地がありそうだ。思い切りどこかに力を入れてとにかく喉に来ないようにして思い切り出す感じしか出来ない。もう少しコントロールした感覚がつくと良いのだが。。。
曲は、トスティのセレナータをやる。これは完全にテノールの音楽だ。どうも聞いていると最初のFの音からものすごく力が入っている。本人はあごや舌根に力が入っているというが、むしろあごが動かないで固めている感じもある。お腹をしっかり入れること、胃の当たり、即ち横隔膜の突端の筋肉を固めているけど、これも原因ではないかな。お腹をさすってやって、柔らかさを意識させてやると、柔らかい声が出る。喉っぽい感じはこれとは別の問題ではないかな。喉が開いていないから喉に来るのであって、喉をきちんと開けば大丈夫のはずだ。だから今後は喉を開くこと、腹の使い方、などなどもう一度じっくりやってみたい。

さたけさん。発声を始めてしばらくは、声を押さない感じが良かったけど、いまいち響きが低い感じだった。ウォーミングアップだから、余計なことは言わずに、続けた。響きを意識してもらってやり出すと段々と前回の軽い響きのある声が戻ってきた。高いほうも無理なく出るようになった。2点b以上は少し喉っぽくなってしまうが、それでも無理なく出る。響きのある声はほとんど使えるようになった。何ケ月来ているのかな、長足の進歩だ。声量はまだないが、とにかくこの響きのある柔らかい声をものにすれば、後はいくらでも応用が効くから心配はない。声楽は声量ではなくて滑らかさと声の響きの豊かさで決まる。応援団をやっているわけではないから、声量で人を脅かしても駄目だ。音楽も恐い音楽になってしまう。音楽はもっと愛に溢れたものだろう。ということを実は自分に対しても言い聞かせている。自分の場合どうしても、声量というか声を張ってしまう傾向がある。こういうことは習い始めが肝心。自分のことを考えると恥じ入る次第である。いつになったら、この自分の悪い癖が治るのか…さて、発声の最後にAvemariaという歌詞をソーソードソミド〜というパターンでやる。これ をやりだすとどうもフレーズの作り方がおかしいので、徹底的にやってみる。要するに声を回す感覚が足りない。音と音の有機的な関係が無くなってしまうのだ。特にソードという上がりの時に、直線的になってしまうことと切れてしまうことが気になった。音から音に移る際、特に音程が上がる場合は、その上がる前の音の出し方がとても大事になってくる。そこで勢い即ち息の動きが出ないときれいに次の高い音に移れないのだ。これはとても物理的な法則と似ている。これの練習のために手を使って左右に振って上がる時に上に上がって一回転する練習をしてみる。要するにソーソで左右。そこから一回転させて上に上がる勢いで、上のドに上がるのだ。このように音楽のフレーズやリズムを手の動きを使って一緒にやってみることはとても大事なことだ。自分の声がいかに、体を使わずに口先だけでやっているかが、良く分かるから。曲は、リディアから。ずいぶんきれいに滑らかに歌えるようになった。しかし低音部の狭母音がすべてイの母音に近い感じになってしまっている。これは口を開いてほしい。その代わり響きが落ちないように。「河のほとりでも」とてもきれいに行けそうな予感を持った声 が聞けた。後で高声用でやると、こちらの方が更に彼女が身につけた美しい響きが感じられる。もう一人前のソプラノになりつつある。フォーレはとても彼女の声に合っているので、後は今日やったフレージングとレガートの細かいことを良く勉強して更に精進してほしい。とても良くなった。


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