2001年8月後半レッスンノート

レッスンノート目次
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8月27日

りりこさん。今日は彼女オキニのMonteverdiのCDを聞く。Si dolce e tormento..これは信じられないくらい美しい曲だ!そして、Sancesという作曲家の作品もスペイン風なリズムとスタイルの曲で素晴らしい。彼女、なかなか趣味がよろしいので、心強い。
さて、発声を始めるときのメニューは、本人に声を出してもらってからイメージする。昨日同様に、地声領域から軽く始める。声に力がないので、腹筋を開くように、横隔膜を開くようにしてみる。低音部を出すときは、腰から側腹に力を入れるようにすると出てくる。どうも、まだその力の入れ具合と声を出すキッカケとがリンクしないようだ。これは慣れるしかないな。徐々に上がって行くと、2点C前後はとてもきれいな声が出るのだが、それ以上に上がって行くとどうしても、喉で音程を上げてしまう。2点F以上くらいだろうか。現象としては、ポルタメントがついて、それが喉を鳴らして上に上がる感じなのだ。ドミの3度の音程差で、少し切ってハッハと出してみる。この上がる際に横隔膜を少し開く感じで上がること。そして、喉も一緒に開いて、声帯の下側を鳴らす感じで上がると、息でもって音程を出す感じがつかめるはずだ。喉の開き具合に注意しないと、今度は太すぎたり、音程が下がり気味になってしまう。もちろん、横隔膜の開き具合との関係もある。その辺を充分に探さないといけない。いずれにしても、喉で音程を出さないことに充分注意してほしい。それでも、わかってきている から、大きな進歩だ。同じような練習を5度でもやってみる。今度は上から下がる場合は、上がるために開いた横隔膜はそのままで喉頭に自由にしてもらって低い音程にどすんと落ちれば、きれいな低音が出るはず。要するに喉頭が自由な状態になっていればこれが出来るし、これが出来ない場合は、喉頭が自由になっていない証拠だ。
曲は、Tu lo sai..出だし、八分音符で下がるところで、やはり喉で音程を歌ってしまう。発声でやったことを守ってほしいな。口をどうしても、横に引いてしまうので、喉っぽくなるのだけど、口を丸くするときれいに、そして、彼女の場合むしろ胸声も混じってなかなか良いメゾっぽい響きになる。低音部も横隔膜は開いた状態で、そのままドスンと降りればきれいに出るはずだ。これが、きれいに出ないのは喉頭周辺が固くなってしまっているから。

にしさん。
発声は、彼の出しやすい声で、自由にやってもらうも、なんだか、やはりしゃっちょこばった姿勢が目立った。妙に顔が固まっているのでどうしたのか?と聞くと、首の後ろをまっすぐにしているとのこと。彼はまじめだから、なんでも一生懸命やるのは良いのだけど、やり過ぎは禁物だ。それから、今日のレッスンで気になったのが、お腹を中に入れる余り、胸までボン!と上がってしまうこと。声を出す前にこれだと、声が安定して出せないよ!とにかく若い男に多いのが、声を出すがあまりに筋肉を使い過ぎること。それも声を出すこととリンクしていないことが多い。さて、今日は声のことを少し観察して見て、いよいよ発声の考え方を変えてみようと思った。ようするに、テノールにこだわらないで、とにかく中低音部で、ポジションを充分に低くして出す練習をすることにした。声のポジションの取り方だけど、ブレスの際に軽くやることが大事だ。横隔膜を軽く開く感じで息を胃の中にス〜っと入れる感じで、入った胃のあたりからその息を声で出す感じ。ようするに、声楽の先生なら誰でも言うけどみぞおちあたりから声を出す感じだ。これが出来なければ、声を胸に当てる感じ。それにしても 上から下にぶつけるのではなく、腰から胸に息を当てる感じ。イタリア語で、Corpo di petto ...などと言われている方法だ。そしてこの声でアタックをして5度音程を歌ってみる。高いほうの声を出す際に横隔膜を更に開いて、喉頭は楽に、ある程度の緊張感で声帯を鳴らす感じ。決して出し過ぎないこと。これがうまく行くと、しっかりと鳴る根音に対して倍音的な5度上の響きが出る感じ。これが、きょうはうまく行った。まだ、完全ではないが、結果よりもそのやりかたを分かってくれたことが大きかった。早速アマリッリで実践をやってみる。最初の2点Dを出す際に、例えば5度下の音のポジションをしっかり感じて出すこと。この方法でかなりうまく安定して歌えた。音程も落ち着いた。気を良くしてヘンデルのLargo..これもとってもうまく出来た。バンバンザイだ!このやり方を今後推し進めて行きたい。


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8月26日

すずきさん。発声を始めると大分声の流れは良くなっていて、間が空いたことによる退化がなかったので良かった。前から思っていた喉の開きを中心に練習をする。しっかりと口を開ける。あくびをする。喉の奥に声の意識を持つ。お腹、みぞおちあたりに声の意識を持つなどして、練習をする。この練習で変ることは、声質が良い意味で太くなって、音程が落ち着くこと。今でも大分良くなっているが、彼女の出し易い2点C〜Eくらいの音域では、簡単に出すと、声質が浅く、少々子供っぽい声だ。この辺りの声を出す場合に、声の場所の意識を深く持ってほしい。チェンジした声では低音部が難しいけども、この辺は地声をやったり、チェンジをやったりしながら少しずつ改善するほか無い。
発声で色々やっていて、気づいたのは彼女も少しせっかちかな。もう少し落ち着いて声を出してほしい。声は出す前の準備ですべてが決まってしまうために、ここでせっかちに声を出してしまうと、台無しになってしまうのだ。そうかといって、音楽の流れの中では待ったはないのだ。だから、練習の時にこそ、じっくりと、腰を落ち着けて声を出して、その声質を吟味しなければならない。ピアノなどと違って声楽は良い声質が出せれば、ほとんど決まったようなものだ。というくらい、声質が大事なのである。ブレスの際に、喉の奥まで開いていることと、声帯の深い部分から鳴らすようなコントロールが必要になる。このことは、結局歌を歌っているときの発音とも関係してくるので、発声だけで練習しても意味がない。曲を歌うことによって練習が出来るものだ。曲は、モーツアルトのAn chloe...低音部では特に発音の浅さに気をつけてほしい。これも要するに簡単に出さない。口の開き方は、あくまで縦に。同音が続くパッセージでは、なるべく口をパカパカさせない。そのために、唇を柔軟に良く使ってアーティキュレーションすることが、良い響きを産むコツだ。何度も言うが、特に低音部の発音には充分に気をつけてほしい。

ゆきえさん。しばらく中低音部で発声を聞いていると、大分滑らかでざらつき感の無い声になったことに気がついた。初めて来たときには、少しざらざらとした喉っぽい声で出していたからだ。彼女によれば、大分クラシック系のCDを聞いていたようだ。耳からイメージトレーニングしていたというわけ。耳は大きい。物まねも大きい。物まね芸人は逆に言えば耳が良いものだ。楽譜とか理論とかいっても本当のところ音楽は耳の差で大体決まってしまうもの。発声上の問題…といえるのか分からないけども、マイクで歌う以上は、身体の共鳴は関係が無い気もするのだけど、どうせ勉強するんだからそういうマイクを使わない声の出し方も勉強しておいて損はないだろう、と思って教えた。
その点から行けば、中低音部の声に響きがもう少し足りなかった。体はとてもリラックスさせているのだけど、リラックスさせ過ぎというか、力を入れてほしいところで入れてくれない感がある。ただ、中低音部の声の共鳴は、意識させれば充分に出来ているので、これはほとんど問題はない。問題は結局チェンジしてから上の領域だ。今日の練習で、高音の練習を見ていると、彼女がお腹を使っているのが分かったので、その点は進歩だと思う。そのせいで、レッスンに来る度に高音域が出しやすくなっている。ただ、2点Aくらいから3点Cくらいになってくると、声を当てる癖が大きいために、スムーズさにかける。まだまだ息で声を出す感じになっていない。声帯そのものを無理に合せようとするために音楽的な流れの中で声を出せないから、使えないのだ。また、使えたとしても、共鳴がないために、下の領域の声とのつながりが持てない。3点Cを出したときに、声帯が離れて息が混ざった声が出たので、それをきっかけにしても良いかもしれない。曲は、Time to say good bye...言葉もイタリア語で意味が分からないし慣れていないので、歌いにくそうだった。少し練習したけど中低音部の声は、すぐに出せる。高音に上がるところで、難しくなる。今日は、ブレスをしてからいきなり2点Gに上がる練習をしたけど、声は出るのだが、言葉のせいで、フレーズ途中でかすれてしまう。リズムの強拍の部分だけを出して後は抜けば良い。それと、響きがないために、やはり下の声との連関性がなくなってしまうこと。下の声からもう一度作り直したいね。声を当てようとしないで出せる高音をなんとか見つけたい。

りりこさん。最初に地声から発声を始める。彼女は地声から発声を始めると、ナチュラルな中低音の声が出てくる。結局、声帯そのものを軽く鳴らす感覚なのだろう。これをしないと、声を押してしまう、あるいは、声帯を無理に下げてしまう、あるいは、軽すぎて芯のない声になってしまう。声は、体から出すということを言うけども、声帯自体をコントロールすることが必要だから、最初は喉を使っている感覚だとしても、声帯に神経を向けなければ、コントロールする感覚は育たないと思うのだ。そんなことをしてから、今度は高音部の練習をする。これも色々やると、喉を太くして太い息でぎゅーっと押し上げる感じが出てくる。ぼくが彼女に望む声のイメージは、ヴァイオリンなどように細くてもちゃんと声の芯があって、かつその声に共鳴がある感じだ。今日はその感じが少し出来てきた。何ということはないのだけど、2点Cくらいから、お腹とかを意識しないで、ということは、あまり喉を下げる意識を持たないで、単純に声帯を合せて声を出すことをする。彼女の場合は、余計な力を使わないでそれだけで、声帯のエッジの立った、軽くて芯のある声が出来るのだ。なぜかはぼくにはわからない 。そして、その声で上がって行く。2点Fis以上になってくると、喉が上がってくるので、喉の奥にその声の当て所を変えて行く。声の当て所を深く意識するために、例えば、ドミソでスタッカートで練習する。上の音に行くほど、深く喉の奥に声を当てるように意識する。この感じを応用してやってみたけど、きれいに声が当たって、かつ、頭部に声が反射する軽い良い高音が出てきた。今は高音の声はこれ以上の余計なことはしないほうが、良いと思う。この感覚を大事に。曲は、Tu lo sai..今日は彼女の前に立って、声は出さないけども、口の使い方、などを一緒にやりながら歌ってみた。Tuのウの閉った母音、loのLなど言葉の意味に繋がる母音の形や子音などに充分に注意して声を出してほしい。それから、細かい八分音符をなおざりにせずに、むしろ、カチッと歌うこと。唇はめくれるように柔軟に良く使ってほしい。口は彼女の場合は、ぼんやりと開き気味なので、口の使い方に適度な緊張感がほしい。これらのことを注意しながら、また、発声で学んだ声をラララで確認しながら、やった。以前に比べて随分まとまりのある、そして、音程感の良い、かっちりとした音楽が聞けるようになった。

よしおかさん。
今日も最初から、頭声の練習を徹底的にやる。下降5度でHu〜でやる。2点Eくらいから降りて行ったのだけど、むしろ低音になると、喉で声を出してしまうことに注意してほしい。この母音の場合は充分に口を丸くして、唇を突き出すこと、そして息を通す感覚に注意してほしい。そうしないと、低音部で声帯がビリっと鳴ってしまってしまりのない、声になる。これが、今彼女が問題にしなければならない点だ。高音部はむしろ楽である。ただ、頭声の練習で高音をやると、今度はポジションが高すぎて、声質が落ち着かない。これを直すために、前述の、ドミソでスタッカートで声を深く当てる練習をした。上に昇るほど、喉の奥を意識すること。このやりかたは功を奏して相当な高音、3点Cくらいまで出せるようになった。多分始めてだろう、喉の奥を意識するだけだと、今度は音程が出なくなるために、頬を高く上げるようにして、声帯を合わせるように。顔面や喉の中の意識に集中しないとなかなかきれいな声が出てこない。むずかしいけども、ここが声楽の正念場だ。曲は、O cessate di piagarmi...最初中声用で歌ってみたのだけど、せっかくの頭声の練習だと思って、高声用でやってみる。最初伴奏を入れると声のアタックが見つけられないくらい、感覚の麻痺が起っていたので、伴奏をつけないで練習を始めた。声の出だしの息の方向が定まらないと、なかなか出しづらいと思う、それと姿勢、首をまっすぐに。それから口の使い方。上唇でアーティキュレーションするように。下あごで母音の形を作ると、響きが落ちてしまう。それから、頭声であっても、喉の開き、声帯の深い部分を使うことを忘れないように。フレーズで低音に降りて行くと、特にイの母音で喉声になってしまう。これは、喉の奥を開かないで口先でイの母音を作ってしまうからだ。この辺もよしおかさんの癖だから充分に気をつけてほしい。一通りやってから、今度は中声用で再度挑戦する。最初のフレーズの声がものすごく喉が開いて良い声になった。頭声でも息をしっかり送れば共鳴がついて、とてもふくよかな良い響きが出てくる。この場合も、同様にアーティキュレーションを気をつけてほしい、口の使い方一つで響きがすごく悪くなってしまうことに気をつけてほしい。特にア、そしてエ、イ。 喉の奥を狙って、そして、喉で声を作らないこと。今日の声はとても良いので、忘れないように。この方法でじっくりやって、しばらくしたら、再びしっかりした声の出し方をやれば、また一段レベルアップするだろう。


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8月25日

すぎえさん。発声を始めると前回聞いた、少しエネルギーの足りない声だった。少しずつ声を出せるようにやってみる。観察していると、彼女の場合は口を単純に開けて見ることが大事ではないかと思った。どうも喉の開きが良くない感じだから。口を開けてみるだけで、少し声が伸びてくる。そこで、積極的に喉を開く練習をしてみる。あくびをする感じを持つこと。これは、古典的な発声のイメージトレーニングだ。イメージではなく実際にあくびをするときには、喉が開いて軟口蓋が高くなる。この方法はフランスに行っても言われるし、どこでも言われることだろう。彼女はこの方法が非常に有効だった。すぐに効果が現れたのが、低音部だ。とても、きれいで滑らかな低音が出てくる。元々彼女の顔の形や体型からして、ふくよかな低音と艶のある高音が出るタイプに見えていたから。誤解をされないようにお願いしたいのは、声がふくよかなのであって、体型がふくよかということではない。笑
要するに日本人離れした声質を持っているはず、と見たのだ。それから、まったく地声が出てこないので地声の練習もしてみる。これもとてもきれいな地声だ。そのまま上がっていけば無理なくチェンジするので、この地声も練習の価値はあるだろう。中音部で声を出すためには、声帯の鳴りを促すために低音部の地声の練習は大事だから。曲は、アマリッリをまずやった。発声の効果で前回よりもずっと声の伸びが良くなった。微妙に声も出て来ている。無理が無い。低音部を少し出すようにすると、またこれもきれいだ。高音部は少しお腹を中に入れて、息をしっかり送るように。O cessate di piagarmi...出だしのフレーズは口の開きが小さくならないほうが良い。しっかり開けて。Lucin grate..からは逆に口をパクパクさせないほうが低い響きがまとまって良い。唇をめくり上げるように、柔軟に使って。今日のレッスンでずいぶん声が伸びやかになったから、次回まで忘れないで!

たにさん。高い方から発声を始めると、喉やどこかが恐いのかおずおずと声を出し始めるのだけど、息を使って喉は通過点のつもりで適度に思い切り良く出したほうが良いと思う。息を流して出す練習を高音部でしばらくやると、調子が出てきた。声の当て具合をちょっと工夫すると、高音部はとても響くようになってきた。その音域が丁度彼女のチェンジ点から上になる。その下は、チェンジしたままだとまだ少しスカスカするが、丁寧に出していれば悪くない。うまく行くと、下降形の練習では、中音部でも下の声、中声が混じってうまく出るようになった。調子が良かったので、低音部まで降りてから、もう一回少しずつ上がって行く。うまくチェンジできている。そして今度は、ドミソドのオクターブで低音部をしっかり鳴らしてから高音にきれいにチェンジして昇る練習をした。少しやりにくそうだが、うまく行ったと思う。以前にかとうゆきえさんでやったけども、低音部をしっかり出して昇るのは、息を昇る勢いをつけるためだ。下の声をちゃんと出さないと、上に昇る勢いがつかないからだ。まさに、息追いである。余談だが、グレゴリオなどで使うネウマ譜は、この上昇形の場合の音符が音の 連なりで書いてあるのでとても良いのだが、現代の楽譜ではそういう記譜が声のパートにはまったくない。この辺が、クラシックの場合の声の勉強の難しさになっていると思う。要するに音符一つ一つが点になってしまうのだ。ぼく達がやるべき事は点を打つ仕事ではなくて、点をつなげる事と思ってほしい。つなげるためのエネルギーは息だ。さて、曲は、ドビュッシーの月の光から。フレーズ事にやる。低音部の声、そしてチェンジした声。はっきりと意識して分けてやってみる。ブレスをきちんと入れて、無理につながないほうが声に安定感が出る。丁寧に見ていけば充分に美しい輝く声が出る。彼女らしい抜けるような白い光を持つ響きだ。復習にフォーレのリディア。中声用。最初に頭声でやっても、きれいに歌えているが、少し低音部が多いので、思い切って中声に変換してやってみたが、これが成功で、とてもきれいに、安定して歌えた。以前の喉が苦しそうな感じがほとんどなくなっている。完璧に歌えているので、嬉しかった。河のほとりで、も同様に中声で歌いきる。こちらも見事に歌いきった!ただ、まだまだ声は伸びるし、もっと良くなる。そのために、頭声の訓練と、中声の訓練の交互 の使い分けが必要だ。彼女の課題は、まさにそこだと思う。根気良く続ければ、もっともっと美しい声が出るから。

やまうちくん。レッスン室に着くなり、軽い声の出し方が分かったので聞いてほしいとのこと。上向形で早速発声練習を聞いた。少し喉が暖まっていないので、調子が乗らなかった。要するに息を充分に混ぜて開けた口で楽に歌っている感じ。しばらく色々やってから、もう一度今度はしっかり声を出す方法で上まで上がってみる。ぼくが思うに、あごが上がることと、ブレスの際に喉を開くあまりにあごが上がって、口を固定的に開くのであごが痛くなるし、どうも喉っぽい感じに聞こえるのだ。この感覚は難しいのだが、歌っていて本人が喉が痛くなければOKなのかというと、必ずしもそうではない。要するに、楽な喉が負担が無い方法が良いのであれば、それにこしたことはないけど、残念ながらきれいに響きが集まっていないのだ。少し首の後ろをしっかり伸ばして、口を開く際に唇も使って発声をやってみる。この段階で、高音が今までで一番良い美しい金管のような声が2点Gまで聞くことが出来たのだ。これは、成功だと思った。舌がどうも長いせいか、舌根が固くなるとのことなので、舌を中空に伸ばしてみたり、あるいは上の歯につけてみるなどして、舌根が下に行き過ぎないようにしてみるこ とと、口の明け具合を工夫して共鳴させる感覚で声をうまく当てると、高音がきれいにカ〜ンと出る。曲を歌ってみる。Se tu della mia morteは息を出してからクレッシェンドする感じでなかなか雰囲気が出て、良い感じだ。トスティのセレナーデ。これは、一点だけ2点Fのウの母音が全然うまく行かない。この辺に彼の声の難しさのポイントがあるのだけど、こいつはなかなか手強いぞ。声自体は、もう少し声が前に出てくると良いのだが。健闘を祈りたい!

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8月24

あいそさん。発声を始めると、本当に良く声が出るようになっている。間で練習はほとんどしていないのだけど、とても調子が良い。レッスンが終わった後で話したのだけど、色々工夫すると声が変るのが面白いという。そういう変化が良く分かることや、イメージと声が直結していることなどが、面白さにつながっているのだろう。別に芸術とか表現とか言う前に、やって面白いのはなぜかを考えれば、歌に限らず何をやっても、面白いか、面白くないかは、本人の気持ち次第ということも50%はあるだろう。発声では、中声よりも、頭声の出し方を練習する。中声が良く出るようになっているので後は軽い頭声を確立して、更に美しい高音の響きを確立してほしいのだ。特に2点ミ以上になったときに気をつけてほしい。息で音符を回すようにして、響く場所を大事に。ド〜レの9度の練習をしたけども、さすがにこれだけの音程になると、息が回らない。こういう長くて音程差のあるフレーズの場合は、声の出し始めが、なおのこと大事になる。最初から声を出し過ぎないことが、その後で息を使いまわせることにつながっていくから。後、最初の発声で気になったのが、ブレス。鼻でブレスしようと すると、今度は口を固く結んでするために、見た目がなんだか滑稽になってしまう。口を開けるとも、鼻から吸うともどちらとも言えない、楽な感じで息を入れてほしい。声は頭声もうまく行くと綺麗に響く。2点Gから上はあごに力を入れ過ぎないように、息をしっかりさせて。
曲は、最初に、Star vicinoを復習した。音程に難があった高音部も難なくクリアできるようになった。これも頭声の確立の恩恵だろう。新しい曲はAria di chiesa...教えるのも見るのも初めての曲だけど、シンプルでバロックらしいよい曲だ。軽く譜読みをしてからイタリア語をつける。全体に高目の音域なので、頭声を大事に響きを見つけていきたい。

あめくさん。発声を始めると、気になるのが姿勢が悪いことと、あごが出ること。声質は良いものを持っているが、姿勢が悪い(猫背)のと、あごに力がやや入るために、息漏れが多く、ちょっと喉っぽい感じの声になってしまう。喉っぽいのだけど、高校時代の基礎が少しあるために、無理な声がなく、それはそれなりに聞ける声になっている。まず、低音の練習をしてから、今度は地声を出してみる。上がり下がりしているうちに、喉が暖まってきたのと、口の開き方を制限してみたせいか、息漏れが無く綺麗な響きになった。姿勢は、普段使わない姿勢なので慣れるまでは大変だけど、とても大事なことなので、気をつけてほしい。後、あごが出ることかな。地声は、最初からこればかりやると、あまりきれいではないし、喉に負担をかけるので、やり過ぎは良くないが、ある程度やったほうが、声自体の鳴り方が良くなってくるので、避けることはないと思う。クラシックでもわざと、低音部は使うこともあるから。頭声に変るのも無理が無いので、なるべく発声練習では地声から頭声まで通した練習をしていきたい。頭声も1点bくらいから、2点Cisくらいまでは割と良く響くのだけど、それ以上がす ぐに詰まってしまう。口を開きたいところだけど、あえて開かずにやってみると、やはりうまく行く。彼女は開かない方が、喉が良い状態に保てるのだろう。今日やった範囲では2点Fisくらいまでは綺麗に出せる。時々、声帯が微妙に合って、すごく響く声が出そうな予感があるのが、すずきさんに似ているといえば、似ているかな。曲は、カロ・ミオ・ベン。最初のCaでは、子音をきちんと言えば自然に横隔膜が動くのでそれに任せれば、声が出る。senza de teの高い2点Esは、お腹を張るよりも中に入れて、この場合は口をしっかり開くことが彼女の場合良いようだ。大分まとまった歌が聞けるようになったので、Piacer d'amor..を譜読みする。どうも、彼女自身の声の指向があるらしい。本人の指向、イメージは大事なのでその辺りから伸ばしていきたいものだ。


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8月23日

さたけさん。発声を始めて思いついたので、ブレスの練習。これは、ブレスそのものというよりも、単純なドレミファ〜という発声練習の中で、ブレスのタイミングと体の使い方を覚える方法。フレーズの終わりの切り方と、ブレスをどう一致させるか?そして、フレーズを切ってその勢いを利用して自然に息が入れば言うこと無い、という感じだろうか。意識してブレスするのではなく、息を吐いた結果自然に息が入る感覚を、リズミカルな発声練習の中でつかんでもらえると、良いのだけれど・・・
発声そのものでは、上向き形のドレミファソだと2点Fisくらいから、どうも喉が締まってくる。それは、最初のドの声のポジションがやや低いために、そのまま上がっていくと、ちょうど2点Fisくらいで、響きが上に乗らなくなってくるために、苦しいのだと思う。それぞれの声域があるのだけど、その中で半分に割ったら、下半分の声のポジションと、上半分の声のポジションをきちんと意識して、やると、うまく行くのではないかな。彼女の場合は1点bくらいから、それが変ってくるから、その辺から、声の出すポイントを少し上げて、響かすことを意識すると、良くなると思う。これらのことをうまく出来た彼女の中高音域の声は、鈍く光り輝く、弦の音、丁度ビオラの高めの音のようなとても美しい響きが共鳴する。彼女がそのことに、気づけばもっと良くなるのだけど。
曲は、フォーレの「月の光」スゼーの録音を聞いているけど、なるべく女声の録音を聞いた方が良いのではないかと思う。この曲は、意外とリズムが難しいものだ。ピアノの伴奏に引きずられて、分からなくなってしまうことがある。伴奏とは一切関係なく、歌のパートできちんとリズム練習だけでもしてほしい。3拍子だけど、二倍にして6つを叩いて練習することも良いだろう。今日は、響きのことや発音のこともあったけど、それは次回に。リズムを確立してほしい。


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8月22日

りりこさん。地声の練習から。低い声の領域の時は、少しお腹から腰にかけて膨らます感じで声を出すと声が安定する。後は、声を当てる場所を、喉の下の窪み辺りに意識すると、声が浅くならずに、深みのある声が出る。ドレミを上がった場合は、上に行くほど、お腹を膨らますような感じで。少しずつ上に声を上げて行って、声がチェンジしてからも、しっかりと声を当てる意識は持ったほうが、低音は出る。そうでないと、すかすかしてしまう。また、低音部はあまり息を送る意識が強すぎても駄目。息漏れが多すぎて、鳴らなくなってしまう。ただ、喉の下だけではなく鼻の方にも響きを持っていければ完璧だ。低音部でそれをやるためには、あまりあごを上げずに喉で出た声が直接鼻から、上の歯の後ろ辺りに当てられるように顔を下げ目に意識すると、低音部の響きも意識できると思う。もう少し高音部になると、今度は、おでこや脳天の方を意識する。お腹の使い方も、少し前腹を中に入れるようにすることも必要だ。声の当て所や、お腹の使い方、響きの場所は、音域によって変ってくるので、柔軟に考えてほしい。頭声は割と出来ているのだけど、2点Fis以上で響きが落ちてしまうこと が多い。喉ぽくなってしまう。むしろ口を開け過ぎずに、歯で閉じるくらいにして、響きを逃がさずに高いポイントで声をアタックしてみて、良いポイントを探してほしい。もっと高くなると、今度は口を開かないと難しいけど。目の両脇、こめかみあたりを開く感じも大事。それと、頬を高くすることも大事。
ドミソとスタッカートで上がる場合に、上に行くほど、喉の奥から出るように。頭声で高音を練習すると、今度は喉が上がってしまうので、これも要注意。喉が上がり過ぎないように、喉の奥も意識して、深いポジションも忘れないこと。
曲は、Tu lo sai...最初のTuは狭い母音だけど、子音を発音する勢いで息を吸い込むようなイメージで声を出す。次のlo..Lの発音は大事にして。これもLの発音をすることで、声と息が流れるような発音を心がけること。りりこさん自身が言ったように、まさに子音と横隔膜が繋がっている感じが大事です。低音部は、上記のやりかたで、もう少し声を響かせるように。せっかくの魅力溢れる声が勿体無いです。


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8月20

さわださん。ひさしぶりだ。発声をしても声は変っていなくて良かった。彼女は、中声域と地声の混じる低音にとても魅力があるのだけど、中高音域から、高音にかけて、どうしても喉っぽさが残る。音程が悪くないのでそれなりに、歌えちゃう…のだけど、前から直さなきゃ…と思っていた。昨日のよしおかさんと同じことだ。ただ、さわださんは充分に中声域で声をしっかり鳴らす訓練が出来ているので、逆に難しいのだけど、それだけに難しさを乗り越えれば本当に素晴らしい声になる可能性が大きい。声楽の声の作り方というのは、比較的低めの声域でしっかりと、声を鳴らす訓練と同時に、鳴らさない頭声の訓練とをバランス良くやらないと、本当にクオリティの高い美しい声を手に入れることが出来ない。このどちらが欠けてもバランスが悪いし、声域も伸びないのだ。男声は、むしろ中声域と胸声が出来れば良いのだが、一般に女性は声域が命みたいなところもあるから。でも、彼女はこちらからのそんな難しい提案を快く受けてくれた。信頼してくれていることは、教える身にとってどれだけ励みになるか分からない。そうわかれば、こちらも絶対に良い声にしてみせるぞ!と意気に感じ ることが出来る。VivaldiのVieni...をやった。これは、比較的音域が低いので頭声の練習に良さそうだ。低音域は相変わらず良い艶のある魅力的な声を聞かせてくれる。声というのは不思議なもので、どこにそんな魅力を隠しているのだろう?と、不思議な気になることが良くあるものだ。笑
ToscaのVissi d'amore...これは本当の高音域で頭声が必要な曲。これは難しいが、やれるだけのことを挑戦してみたいと思う。

にしさん。前回は鉛筆をくわえて練習して好結果が出たけども、今日は違うことをやってみた。前からそうだったけども、声が頭声にチェンジするあたりから、音程を出すのが非常に難しくなる。今のところは、顔を上に上げ喉を上げて鳴らして音程を出しているが、これは喉声だ。喉で作らずに、息を使って軽く当てる練習が必要だと感じたので、例のムニャムニャを鼻先で出す練習から始める。しばらくやっていると、出来るのだが、ちょっと声を出すと喉に降りてしまう。なんとか、出来てきたので、普通に軽く発声を始めると、やはり、喉に力が入ってしまう。前から見ていると、首の喉周辺に力を入れて声を出しているのが良く分かる。横から見ると、声を出す瞬間亥首が前に出る。そこで、首を胴体の背骨の上にしっかり載せるように、矯正してみる。しかし、声を出すとすぐに首が前に出る。どうも中高音域になると、すぐに首が前に出るようだ。正しい首の位置のイメージとしては、肛門のまっすぐ延長線上に首の中心が来るようにしてほしい。普段の姿勢からすると、多分かなり首を後ろに置く感じ。こうすると、首の後ろの筋肉を使うのが良く分かるはずだ。しばらくは、この姿勢を徹底し てみてほしい。後は、息を軟口蓋に送る練習をしてほしい。軟口蓋で、音程を取って、声をそこから出す感じ。あるいは、息を軟口蓋に送って声が息のせいで自然に声が出るというイメージが一番良いのだが。にしさんも、時間がかかるが、あせらないで、じっくり進んでほしいと思う。


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8月19日

あんどうさん。発声練習を始めると、声のエネルギーの弱さがまず気になった。そして、体の固さというかこわばり、ブレスの不自然さが少し気になった。まずは息の流し方を練習する。歯で音を出して前に出す、そして、上をめがけて出す。息の方向性を明快に意識できるため。それから、息が切れるまでその息の流れの先まで責任を持つこと。声、息が口からスルスルと出ていき、その先の到達点まで見えることが大事。ついでに言えば、到達したら地面にもぐりこんで、足の裏から息が入る…イメージでブレスが出来れば完璧だ。当然戻ってくるのは瞬時だけども。
息の練習をして再び発声を始めると、やはり、スムーズな息の流れと、特にフレーズの終わりの息のつながりが明快になった。これは、今日の収穫だ。後は、口の使い方と体の硬さ。口は、彼女の場合はややあごから下に力が入る感じなので、少し頬を上げ気味にすると、音色が明るくなる。
体の硬さは、特にブレス時に問題だ。ブレスするときに胸を上げ過ぎると思う。横隔膜辺りが自然に広がる程度、もっといえば、声を出した後に自然に入る息だけで充分なのだ。ハイ!歌ってといっただけでシュン!と肩が上がる。最後に、低音部の鳴らし方。重いものを持ち上げる要領で少し側腹部から腰にかけていきんで、声を出してみる。例えば、ドレミだったら、上に行くほど、力が入るように。今日やったことは、これだけ。曲は、Handelの”Largo”最初の長いbのOmは、息をけちらずに、しっかり息を送って出す。後は、今日発声で教えたことを活用できれば、大丈夫。次回までに、今日のことを確実にしてほしい。体の硬さは、緊張と関係がある。少しキャラクターが緊張指向のような気がする。肩凝りではないけど、肩だけを揉んでも肩凝りは治らない。むしろそういうキャラを自分側に手繰り寄せて・・・ということは、逆に思いきり良くやってみることも大事ではないかな。

ゆきえさん。
同性の人がいるので、お名前を。発声練習を始めると、リラックスしているのだけど、息の流れがあまり感じられない。少し声馴らしを低音部でして、再び上昇してみる。和音だけでリズムを2ビートで取ってやってもらうが、1点bあたりで、少し音程がはまらないけども、少し上に行くと、自然にはまる。この辺りは、大体定石通りの声。そして、もっと上がって行くとやはり、2点Fくらいから、声を喉で当てないと、出せなくなってくる。ただ、首の周囲や喉の辺りの力みはまったくないし、ブレスは比較的無理が無い。次に、息を混ぜるためにスタッカート、ハッハッハでドミソで出してみる。高い音ほど、喉の下に当てるようにやってみる。これをやりだして気づいたのが、声に息が混じり出したこと。意外と問題の2点Fis以上で綺麗に声が当たり出したこと。彼女の「裏声は当て所が分からない…」に意を強くして低音部でもう一度声を軽く出させると、息が混じっている。なんだ、出来るジャン!ということで、5度のドーソで高音の練習。まず、下のド声を前にしっかり押し出して、戻る勢いで上に上がるイメージで高音を出す。要するにブランコの原理というか、振り子運動のイメージを持つ 。これが実にうまく行って、楽にきれいな高音が出るようになった。まだまだもっと柔らかい高音が出せるはずだけど、今日はここまでにしておく。彼女の体を見ていると、これをやるときに、自然に腹筋が使えている。曲は、Time to say good byeをやってみる。イタリア語が舌を噛みそうだといっているが、それほどのことはない。高音を出すときには、ブレスを早めに取っておいて、上に上がる前の音とつなげて出す方が高音は出しやすい。ブレスを取ってしまうと、最初の一発の力が要るためと、力が入り過ぎてしまうからだ。うまく行くと彼女の歌はすごいエキサイティングな可能性を持っている。爆発的な高音はすごい持ち味だ!当初に比べて、大分良い手応えを感じている。彼女は、オープンな性格のようで、実はなかなか繊細だ。3回目だけど少しずつ心が溶解して来ているような感じがしている。

たちばなさん。
彼女はこれまた体、特に上半身、胸から肩にかけて固い感じがする。体がどちらかに力をかけているような立ち方。また、手の先もジョキン!としている。それから、声を出す際に、あごから前に出てしまう。発声を始めると、声に力が全然ない。そのため始めに、あんどうさんと同じ息を吐く練習をする。息は充分力強い。それから、発声練習。彼女は、声が鳴りにくい方なので、まずは地声を練習する。息で練習した、口の前に息を送るやりかたで声を出させると、驚くほど声が響く。そして、脳天めがけて息を送るように声を出すと、ちゃんと柔らかい声が出る。彼女は面白いように素直な反応を示す。その次に、裏声で練習する。裏声の響かせかたまでは、時間がなくてやらなかったのだが、ゆきえさんに教えたやり方で、地声領域から高音に飛ぶ際に、ぶらんこというか、振り子の振幅を利用した飛び方を教えると、比較的、無理なく出来た。コツは、下の地声領域の声をまず十分に響かせることが大事だ。それは、ブランコを大きく揺らせてあげる際に、大きく引くか、大きく前に踏み出すのと同じ事だ。曲は、シャンソンの「サン・ジャンの恋人」出だし、低い声は充分に響かせて出ること。なる べく、地声領域は、しっかりと鳴らすことが大事。そして少し音程が上に飛ぶ際には、少し抜き気味にする。このことをしっかり守ると、すごく上手に聞こえる。全体的な表現だけど、絶対に女らしくならないように、強い意志の力を持って歌うことがコツだ。
次回は唱歌の「ふるさと」を勉強しよう。とても美しい伴奏アレンジだった。彼女も、歌をとてもエンジョイしている。

よしおかさん。
いつも通りの発声を始めると、やはり声のこもりと、音程の悪さが気になった。今日こそはこれを徹底的にやるぞ!と意を決して、改造に取り組む。最近気になっている、口の開き方だけど、これは今日のあんどうさんも良く似ていた。外見はほとんど問題が無いのだが、どうも、口の中のどこかに力が入っている感じだ。イの母音で発声をやり、次にミミミで、発声練習をするが、もう一つだった。そこで、口にボールペンをくわえてやってみるが、これも、どうもうまくない。結局、最初ここに来たときには、声のエネルギーがあまりにもなかったので、とにかく、声に力をつけようとしたのだ。それが、ここにきて逆に悪い方の喉声を気にせずに鳴らす癖に傾いてしまったのだろう。響きが全体に、口から下に降りてしまっている。これでは音程を喉で取ってしまう。直しかただけども、とにかく小さな声で、鼻先の障子を軽くピリピリ言わせる程度の声で練習をする。絶対に、声を喉で感じないこと。鼻先で感じることが肝要だ。ムニャムニャという言葉を口を小さくして口先で唱える!そして、響きは鼻先に感じるように。
これを10分ばかりもやると、たちどころに頭声の響きがついてきた。そこから、息を強く送って響きを大きくしていく練習をする。この響きを練習すると、いやでも口の開きは小さくなる。ほとんど、口は閉じているに等しい。音域にもよるが、うまく行くと驚くほど共鳴が出て響いてくる。この練習をしばらく大事にしてから、曲をやる。イタリア古典歌曲集の" O cessate di piagarimi "応用が利くかな…と心配したが、意外と応用が利いていたので一安心した。細かいことは良いから、しばらくは今日の響かせ方を身につけてほしい。また、逆に言えばどういう声が喉声なのか?ということが良く分かるようになってほしい。


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8月18日
たにさん。声のチェンジはなかなかわかりにくいけど、どの声質でも大事なことは息を流す、息を送る、息を出す、息を吐く、ということが伴っていないといけない。発声練習を始めたときに、自分なりにやってみた声を出してみたけども、声質はともかく息の流れが感じられなかった。慣れるまでなかなかわからないのだけども、歌声を出す事は、喉でやるのではなくて、お腹から出すことを忘れないで。それは、どん声のなときでも。このことはとても大事なことなので、いつも忘れないでほしい。どんな小さな声でも。口の使い方だけども、なるべく口の端を引かない方が良い。丸く、あるいは突き出して、唇を良く動かすように、そう、フランス人のように口先を使うこと、逆にあごを下にぱくぱくしない方がうまく行くと思う。特に上唇が不活発なので響きを上に導くことが出来にくい。今日やったように、鉛筆なりボールペンなりを軽くくわえて練習してみてほしい。曲は、ドビュッシーのEn sourdine...これは音域も低いけど、安心して聞ける。時々喉が詰まってしまう声が出るけど、その時は大概息が伸びてないと思う。あるいは、響きが上に昇ってない。声楽は、慣れるまではお腹や顔、口、頬、体中を総動員してやらないと、うまくいかないと言うか、声が死んでしまうもの。疲れるけども、あるいは難しいけれども、何度もトライしていくうちに、自然に身についてくる。月の光は、何度かやってみて、息の流れが感じられるようになったら、スムーズになった。高い声は、口から息を吸い込むような感じで声を出すと、自然に息が上に送られる感じになると思う。


たにむらさん。ひさしぶりなので、裏声が全然出なくなっていた。色々発声をやってみて、今日思ったことは、裏声であろうと、地声であろうと、要するに高い声になると、喉が上がってしまうこと。それの原因はブレスの仕方と、姿勢にあるようだった。この両者は関係があるのだけど、ブレスで胸が上がり過ぎている。これは、息を吸おうとし過ぎている。お腹を開いて、自然に、静かに、息が入ること。そして、息が入るときに喉の奥が開くような感じを持ってほしい。それから、息の吐き方。ちょっとたとえは悪いけども、バケツで水をすくって、いきなりひっくり返して水を捨てるような、声の出し方になってしまっている。水をすくうときに、一滴もこぼさずに、静かにじっくりと、しかし、確実にすくう。そして水を捨てるときも、少しずつ、時間をかけて捨てるように。こうする場合はものすごく筋肉を使う。
お腹の筋肉や、首をまっすぐにすること、などは、この水をこぼさないように細心の注意をすることと共通するのではないかな。ハッハッハという発声をやったけども、高くなると、あごがでてくる。ブレスの時も胸が上がってしまう。今後はこのことを徹底的にやってみよう。曲は、彼女のお望みでイタリア歌曲集のPiacer d'amor..をフランス語で。どうにか、中間部までの部分を譜読み終える。フランス語の語尾のEは、あいまいに。エと読まないで。



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