2001年8月後半レッスンノートその2

レッスンノート目次
8月28日 | 8月29日 | 8月30日 | 8月31日
8月31日

あいそさん。発声を聞いてもう少し声が低いポジションになると良いな思った。しかし、やってみたけどかえって声がこもるし、音程が悪くなる。彼女の場合は、あまり低くすることを今は未だやらないほうが良いみたいだ。いつものことだけど、口の使い方、ブレスの仕方に注意。ブレスは、発声練習時に観察していると、フレーズを早めに切って、早めにブレスを取って、息を止めて待っている。これは良くない癖だな。この癖も以前に徹底的に直したのだけど、どうしても癖が出てしまう。準備は早くということは分かるけど、歌は料理を作るのとは違うので、自然な呼吸を心がけてほしい。要するに声が出る寸前に息を吸い終わるタイミングが基本だ。吸い終わって音が出始めるまで息を止めるのは不自然だと思う。声だけど、今日思ったことは中声部で息が回らない感じ。鳴りが良い分、息が止まったまま声を出しているために、音程がフラットになりがちなのと、どうもビブラートがなく、棒のような味気ない響きになってしまうこと。その代わりに、声量が一見出るのだ。この辺りをどうするかが、難しいところ。
さて、曲はAria di chiesa...なかなかドラマティックで面白い曲だ。ドラマティックでオペラ的な曲なのでやはり声を張りたくなる。そうなればなるほど、中声部の響きをうまく使わないと、喉が詰まってどうにもならなくなる。気をつけよう!

かとうさん。発声練習を始めるときに、ちばはらさんと同様、声のポジションを下げて意識してもらうことにした。しかし元々バスだった割りには、低いほうで喉が開きにくい。ともあれ、ポジションを下げて上向形で上がって行くと、どうしても2点Eくらいから明らかに喉が上がってしまう。これが彼のネックになっている。これでは、テノールで特徴の2点Fis以上のきれいな響きが出ない。もう一度丹念に低い音域から3音ずつ上がって行く。その際に、上に上がる時に喉を上げて音程を喉で取らないようにするため、音の上がりに応じて喉を開くように、喉の奥に入れるような感じで声を出してもらう。これは中音部ではうまく行くが、やはり2点Eくらいから喉が上がってしまう。次に、5度音程で同じ事をやってみる。結果としては、うまく行かない。見ていると、響きが奥に入ってしまうのと、どうも軟口蓋を上げる時に、今度は喉が上がってしまうようなのだ。軟口蓋を上げるということは、喉も開くということで、下からの引っ張りと吊り上げのバランスを取って、声帯を鳴らす感覚だ。下が締まってしまう。
それで、思い付きだが、フランス語の鼻母音の感じで、EINエ〜ンで母音にNが混ざった感じで出してもらったら、響きが顔面に出てくるし、喉も微妙に開いてきた。それに気を良くしてアの鼻母音にしてもやってみた。そして、一番高い音になるときに、腰を落して重心を低く感じるようにしてやってみたが、結果は大分良くなって2点Gくらいまで、声量はまだないが、きちんと声帯の鳴った、きれいな響きになってきた。しかし、それ以上はやはり声がひっくり返ってしまう。止むに止まれず自分が出してみる。声を前にしっかり当てること。そのためには、喉が上がらないように、あごを引いて喉の上がりを強制的に押え込む。これをやったら、2点Aまで声がひっくり返らずに、かつ、きちんと音程も出るようになった。この方法でやっていくのが一番良い。次回は曲でやってみたい。

あめくさん。今日で4回目。1点Cからドレミファソで上がってみる。声のポジションがやはり高いのと、音程を上げるとつられて喉も上がる感じ。今日は、思い切って少し理論的に直してみる。最初からあまりやると混乱して、分からなくなると困るから。良いものを持っている人は、持っているものを大事にしながら、伸ばしていかなくてはならない。他の人もこの点は同じだ。教えていると後から後から色々なことを言いたくなってしまうけど、焦りは禁物なのだ。さて、声のポジションは教えるとすぐ出来るようになった。やってみると、彼女の1点Cは軽い地声なのだ。しかし、息が動いているために喉が詰まらずに、きれいに出ている。この辺は以前に教わった影響が残っているのだろう。そして1点Gくらいからきれいにチェンジする。その境目が目立たないのが良い。最初は2音、ドレドレで音の上がりに際しての喉の上がりを抑えて、音質を一定にする練習をした。2点Aまでなんとか上がれた。同じ方法で、3音、そして5音、ドレミファソまでやってみる。高音のチェンジ、2点Fくらいまでは、ポジションを下げた効果と、音質の落着きは会得できていたけど、それ以上に上がるのが苦しそうだ。そ こで、スタッカートで喉の奥を開くように、喉の奥で鳴らすような訓練を少しする。まだ難しそうだけど、その意味を彼女は理解していた。だから、それだけで良いのだろう。無理は禁物だ。最後にもう一度低音の地声をやってみる。喉を開くために、やはり口を開けて、楽に出してみる。なかなか良い低音を持っている。曲は、Piacer d'amor の高音用。ラララで譜読みをして、イタリア語をつけて、難なく歌えるようになった。意外と良かったのが高音。2点Gもフレーズ始まりの音のポジションを低く意識させたらすぐに良くなった。なかなか飲み込みが早い。最後に出だしのPia-cer...のソードの音程差を音質を一定にする練習と、最初のHの音のポジションを低くして、きちんと地声を混ぜて鳴らしてみた。これが、すごく良くて実に良い声だ。この調子で、上まで伸ばしていったらなかなかなものだ。
楽しみ。


TOP


8月30日

りりこさん。きょうは、メシアンのミの歌?の楽譜を持ってきた。メシアンらしい音の重なりと、官能的なメロディラインが特徴的な歌だった。こんなのを歌えるようになると良いな。フランスのカトリック教会の雰囲気の解説は、実に見事なものだった。教会建築の内部における人工的な光と、外の光との対比について…メシアンの音楽をそんなイメージと重ねてみせるくらい、イメージが有り余っている人だ。きっと声のコツをつかめば良い演奏が出来ると思う。逆に言えば、有り余るイメージのために、色々な声が出せてしまうことも良さと言う反面、器用貧乏で、一つの方法論で決まりにくい原因だと言っては言い過ぎかな?なるべくいつも同じ発声をやって、同じ課題を少しずつクリアしていきたいのだけど、どうしても回り道をしてまう。これまでやってきたことを思い出して言えることは、、、

1、呼吸、特にブレスは、お腹の使い方の準備と関係がある。
2、お腹を使うこと=呼吸でもあるけど、声帯の使い方とはとりあえず分けて考えて見てほしい。
3、首をまっすぐに、特に首の後ろの張り。声を出すときにあごを出さないことを確立して。

声は出やすいけど、声帯の使い方がもう一つ。特に高音のチェンジから先で、きれいに声帯を合せる感じがほしい。そのためにも、あごを出さないこと、ブレスは、お腹の辺りで軽く、胃に息が入る感じで。そして、声は、その胃の当たりから出る感じ。

後は今やっているTu lo sai...今日は出来たけど、口を開いて息を逃がして歌わずに、きちんと声を当てて歌うこと。そのために、子音をきちんとすること。
大事なことはディクションのことではなく、きちんとした音程と、きれいに当たった声のためにこれらのことが必要ではないかな。
これだけを次回もう一度憶えて出来てほしい。


TOP


8月29日

ちばはらくん。今日は発声だけを見た。彼も喉で歌ってしまう傾向が強いのだが、今まで、軽く歌うことでなんとかしのいできたけど、無理がある。にしくんと同様にポジションを下げてやってみることにした。この方法は、場合によっては声がこもったり、太くなり過ぎて高音が出なくなるのも恐い。俗に言う腹から出す声だ。また、ポジションだけではなく、喉を開くことも大事になる。方法は別に難しいことはなく、まさに腹に声のポイントを置いて出す。たとえば、みぞおち辺りに口がついていて、そこから声を出す感じ。これも口が上(首に向かって)に向いて、下から上に向かって声が出ていることをイメージすることが大事だ。あるいは、息を胸に軽く当てる感じで低音部から出し始めて、2点Cくらいでも喉が上がらずに喉が良く開いて、やわらかい喉鳴りのしない声が出れば、まずは成功。今日はとてもうまく行ったけど、まだ2点Fくらいから喉を詰めてしまったり、喉に力を入れて歌ってしまう。もっともっと喉の力を抜いて、代わりにお腹の息を思い切り良く送ることが大切だ。もう一つは、ドレミなどの単純なスケールの練習時に、絶対に喉で音程を取らないこと、最初の声のポジ ションで声が出せたら後は、息だけで声を回すこと。自然に音程がそこに出てくるように感じて歌えて、なおかつ音程がうまく行けば成功だ。なんとか、良いテナーにしてあげたいものだ。

TOP

8月28日
あゆみさん
同姓の方がいるということは。ずいぶん生徒が増えたということで、ありがたいことです。彼女は検察官希望の才媛だ。高校時代から合唱で歌に馴染んで、すでにレッスンも随分経験があるとのこと。新しい方の声を聞くのは、この仕事をしているなかでも大きな楽しみの一つだ。外見と声との共通点や、体格的なことによる声の特徴が、自分の予感と合っていることもあるし、ないこともある。彼女に関しては、まず声の出方が、予想通りだった。無理が無く、きれいに歌えている。意外に中音部でも声が共鳴をして、良く出ている。どちらかというと、口を大きく開いて歌うほうだ。声は地声を使わない。完全にチェンジした声で全部歌っている。ただ、もっと低い声が出るかなという予想に反して、低い声はほとんど出てこなかったが、後でやった発声練習で、やはり予想通りだったことが分かった。彼女からの申し込みメールにあったように、確かに2点Fis以上になると、声が苦しくなる。特に下降形で、高い方から降りる発声では、2点Eくらいから、苦しくなっていた。ただし今度は、上向形で行ってみると、出る。声が暖まればもっと出るだろうと思って、思い切って狭母音のウで高い方を練習して みた。すると意外なことに、出る。ちょっと、軟口蓋の上がりが足りない感じと、息の流れが少し悪い程度で、結構高い方まで出る。もう一度、アの母音で最初にやった、下降形で上がっていくと、やはり、2点Fisくらいから出しづらそうだ。そこで、やりながら母音をウにしたりアにしたりして、ウで出しやすい高音でアも使えるように練習してみる。次にアからオに変えて低音に降りてみる。オの口の方が良く、あごがきれいに下がっている。しっかり下がっているが無理が無い。そのため、オの母音になると喉が自然に開く結果となる。これらの基礎的なことは、今までの経験で得たことだろう。オの口に限りなく近い形でアでやってみると、アの母音でも結構喉が開いてきれいな中低音が出てくるようになった。なかなかうまく行くので、次に息を吐く練習を例のごとくやってみる。歯で音を出して息を長く吐く練習。次に息の方向をイメージして、脳天あるいは、歯の前にしっかり当ててみる。この息の練習から、今度は声を使って同じ息の使い方で出してみる。結果としては、上に息を送るよりも歯に当てる感じで声を出すのが一番共鳴がついて、響きが出る結果となった。このままでかなりな高音2点Aま で行けた。いずれにしても、喉の具合や響きと相談しながら、柔軟に口の開き具合を変えたり、息を当てる場所を変えたりすることで、フレーズや音域の中の難しさをクリアしていく条件を作っていけば良いのだ。最後に、喉の下の窪みに当てるようにして、低音から上がって行ったが、かなり声が響くようになった。高音はおそらく、彼女が初めて出すくらいのしっかりしたきれいにチェンジした響きが出るようになった。この出し方をすると、ほとんどメゾソプラノかアルトでも使えるくらいの中低音が出るだろうし、高音も響くようになる。曲はアマリッリを歌ってみた。あまり声を出さない、抑制した声の使い方だったが、中音部で美しい色のついた声が聞けそうだったので、声を出させてみる。案の定声は出るのだ。今日のレッスンではちょっとしたコツで随分声に色がついたし響きも出せるようになる可能性が見えた。ソロなどで、しっかりした声を学びながらも、合唱アンサンブルにおける声の使い方に応用していけば、同じ弱声でも、本物の弱声の響きが作れると思うから、もっともっと勉強してほしいと思う。なかなかスケールのある声の素質を持っていると思う。


TOP

TOPPAGE