2001年9月前半レッスンノート

レッスンノート目次
9月1日 | 9月2日 | 9月3日 | 9月4日 | 9月5日 | 9月6日 | 9月7日 | 9月8日9月9日 | 9月11日
9月13日
9月13日

みくりやさん。発声を始めると声が少し浅くて可愛い声になっている。少しお腹の意識が欲しいのでお腹に口が書いてあってそこで息をしてそこから声を出す感じにしてもらう。それだけで、ちゃんと落ち着いた声が出てきた。そのままドレミファソで上がって行くと1点Gくらいから自然に声が変っていくのが良く分かった。チェンジしているのだ。以前はそのチェンジが彼女の場合ほとんどわからなかったのだ。今までは下の地声がかなり強い状態で上まで(2点F)出していたのだけど、ここ数ヶ月で大分声を軽く響かすことを覚えてきた証拠だと思う。そうやって上がって行くと予定通り2点Fisくらいから声が頭に響く声に変る。ただ、彼女の場合は口をあまり開けないで、軽く閉じ気味で出した方が頭にきれいに響く。今度はその声のままなるべくチェンジした頭声のまま、1点Cまで降りる。声が段々と前に響くように鳴る。彼女自身も声が後頭部から前に変っていくのが分かると言う具合に認識できている。男女問わず高音に行けば行くほど声は後頭部に響きのポイントを移すのが自然なのだろう。曲は、ラヴェルの「ギリシャ民謡」一曲目から順番に復習をする。3曲目まではほとんど問題はない。ど の曲もそうだけど、フレーズの長さ、粘り気みたいなものをもっと大事にしてほしい。ということは息の使い方、コントロールがとても大事ということだ。しかし彼女、ブレスが随分伸びてきた。彼女もアトリエでは最古参だけど、ここのところの上達は著しい。お腹でブレスすることが実感できれば本番で上がる癖も大分なくなると思う。胸でブレスせずにお腹でブレス。大事にしてほしい。4曲目の「真珠取りの歌」はやっとリズムがきっちり分かってきたので、ブレスをしっかりとってフレーズを長く朗々とやることを注意してみた。すると彼女、頑張ってやった。すごい。この集中力が彼女の真骨頂だ。最後の曲"Tout gai"の譜読みとフランス語も勉強する。フランス語の読みも独力でクリアできた。この曲は2拍子と3拍子が時々交互するので、間違わないように。これで5曲の譜読みを完全に終わる。彼女の弁では、「すごくきれいな曲!」こんな曲を歌ってくれるんだなと教えているほうとしても感激だ。発表会が今から楽しみである。


9月12日はあまりの多忙のためオヤスミしました。

9月11日

りりこさん。彼女はとても熱心で3月くらいから来ているけども、色々紆余曲折あった。頭の良い人なので、色々なことがわかるのだけど、なかなか身体がついていかない。色々なことが頭を駆け巡ってしまうのだな。そして、もっと確実なもっと確かなものがほしいのだろう。焦りもあったようだ。でも最近はとても落ち着いて来ていると思う。そのせいか、確実に少しずつ上達している。紆余曲折があって長く続けてきたから、信頼関係も出来てきたと思う。ぼくにとって教えるなんて本当に僭越なことかもしれないけども、教えられることが喜びに感じられる、そういうレッスンが出来るようになっている。そのことが自分にとって一番嬉しい。教えているのにこちらがパワーをもらえるということは、あるようでなかなかないことだもの。さて、今日も話の中に出たけども、発声。彼女はじっとしていられない性格で、例えば小さな部屋で我慢していなさい、と言ってもすぐにドアを開けて飛び出してしまうようなそんな奔放な声の出し方がある。美しさとは、奔放さの中にももちろんあるのだけども、抑制されたところにもっとも美しさが潜んでいる、とぼくは思っている。実はそういう自分が りりこさんと同じで、すぐにドアを開け放して飛び出したい性格なんだけど!(笑)何を言いたいかと言うと、特に高い声になったときにどこかで思いとどまる冷静さと言うか、観察力を常に持って声を扱って欲しいということ。今日は、昨日のレッスンとまったく同じ方法で始めたけども、低音から中音、そして高音に行く際に声が自然に頭声に変っていって、自然でとても良かったのだけど、高音域に入るとすぐにば〜っと出し過ぎてしまう。この癖を直して欲しい。それから、頭に天井をきちんと作って、響くべき場所を想定すれば自然に音程も良くなる。今日は、今までで一番音程が良かったよ。そのことの大事さを本当にわかってくれたかな。
メシアンの歌だけど、言葉が細かい音符についているから、何よりも言葉が身体にきちんとくっついてないと、譜読みをしても声に集中できないから、朗読の練習をしてみた。ゆっくりとしかし確実にフランス語を朗読して見てほしい。美しいフランス語だから。Le ciel,l'eau la terre,variation des nuages..どの言葉もゆるがせにせず、言葉の意味を言葉の音に託して読んで欲しい。それさえしっかりと出来ていれば、自然な言葉のリズムから音楽のリズムが読み取れるはずだ。メシアンの歌のパートはそういうふうにで来ている。決して音符の連なりのリズムだけで譜読みをしては駄目だ。リリコさん自身がそのことを良く分かっていればこそ、この一見難解な曲を持ってきたのだろう。
すごく期待してるからこの曲を徹底的に勉強して欲しい。しかし、なんて美しい曲なんだろう・・・
Mon dieux..という言葉についているピアノパートを弾いて見て、つくづく感じた。

さたけさん。彼女もここのところ上達している。彼女はりりこさんとはまた違うタイプだけども一番良い点は、天性の歌好きというところだろう。フォーレの「月の光」を好きな人というのは、意外なようだけども本当に歌が好きな人だと思う。最初は自分くらい下手糞はいない…と泣きそうな顔でやってきたけども、毎回毎回根気良く、ぼくの言うことを聞いてその通り確実にやってくれた。ぼくだって完璧な声楽教師ではないし、迷いもあったのだけども彼女の良いところだけを見つけて真っ直ぐに教えてこられたのは、彼女の努力のせいに違いない。自分が駄目だ、出来てない、という真摯な悩みというか「小さき者」の声はぼくの心を捉えて離さない。(背が小さいという 意味ではない)「小さき者」へのこだわりがすごく強いらしくて、そういう思いが伝わるとこちらも一生懸命になってしまう。いわゆる「意気」に感じるほうだ。自分が本当に色々なことに当たって砕けてみた人くらい強い人はいないと思う。どこかに自分を高く持ち上げて安住してしまうと、決して人は伸びないし本当の高いところには昇っていけないと思う。彼女の場合は砕けたわけではないと思うけど、とても謙虚に謙遜にだけど、楽しんでやっているところが良いのだろう。発声では、ドレミファソで普通に上がって、3点Dまで行けた。随分と音域も伸びた。上がっていくともう自然に頭声に変換してきれいに出せるが、まだ息で回さずに、喉でやってしまう癖がある。発声練習と言えども、小さなフレーズだし声を息で回すことは常に大事にしてほしい。そこからブレスも自然に生まれてくるはずだ。高いほうから降りて来ると、1点Bくらいから、声質を変えてきちんと中声の響きで出したところは本当に見事だ!すごい嬉しかった。この調子で発声はどんどん自信を持ってやってほしい。ところで、「月の光」これは彼女の場合声質ではなくてやはりリズムだ。伴奏のリズムと歌のリズムが身体の中 で矛盾してしまっている。基本に立ち返って、きちんと手拍子などで3拍子のリズムを身につけてほしい。それだけ。次回は月の光に加えてReve d'amourもやってみよう。

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9月9日

かとうさん。前回のコンサートのことを色々話した。声はそれなりにそつなくまとめている、という感じだったのだけど、もう少し説得力があったら…、ということを言った。それは、歌に言葉を乗せるテクニックの範囲のことではあるのだけど。だって、せっかくオリジナルで日本語!の曲。クラシックならともかく、Popsのジャンルならば、声質よりも語りに重きは置かれるべきだと思う。クラシックは抽象性が高いがゆえに、声質や旋律の歌い回し方が音楽を構成する重要な要素だったりするけども、Popsはもっと具体的なものだと思っている。それは、言葉を歌う歌手のアイデンティティだったり、コンセプトみたいなものにものすごく依存するということだと思う。その歌手がいなければ、その歌は成り立たないくらいに。後は、歌うときのテクだけど、きょろきょろしないで、目線を決めて歌うことは声にとっても良いし、集中力にも大事なこと。今日は、発声だけをやった。1点Cくらいからお腹から声を出すことと、ドレミと音階を上がる際に、喉を開くように、ということは、音程が上がっても声質が変らないような出し方。音程が上がっても、お腹の声を出す位置を変えないようなやり 方で、出す。これは比較的良く出来ていた。これだけでも、声に深みと響きが出てくる。滑らかできれいな声が出ている。ブレスがやはり浅いことが、お腹から声が出難い原因。これは女性には誰にでもありがちだ。
お腹の胃の当たりでブレスをして、そこに息を入れる感じ。喉や首、胸当たりに息を入れない。お腹だけでやる。そして、そこから声を出す。高音だけど、喉で当てる癖が相当に染み込んでいてこれを治すのは容易ではない。コペルニクス的発想の転換をするくらいにすると、ある日、目から鱗で出来る日が来ると思う。その日が来るまで根気良くできるかな?

こぬまさん。
彼女も本番が終わって、これから本格的なレッスンになると思う。普通にドレミファソで発声を始める。やはり、中低音部で声が浅く、また当たらないために、声量も出ない。そうはいってもきれいには処理できていてそれなりに、訓練された声にはなっているのだけど。中低音部で声量を出すためには、声のチェンジのことを良く分かっていたほうが良い。ということは、彼女の場合一番高い2点Fis以上の声の出し方で、中低音部も出そうとするために、スカスカになってしまっている。この領域の声は、もう一段階下げたポジションを使わないと声は鳴らない。お腹から声を出すこと。かとうさんと同じように、音程を上げても、声の位置を変えないように。こうすることで、自然と声帯が下がって、声帯がきれいに合った声が出てくる。音域が低いのでやや喉で出している感じが最初はあるかもしれないけども、喉が開いていれば、胸は身体全体に共鳴するから、それで良いのだ。高い音域の声は楽に上に響かせば自然に頭声になって、喉ではない感じがするが、中低音部の声を同じように出していたら声帯が合わないために、声が前に出てこないのだ。この当たりの声の出し方の判断が難しい。けれども 、今の彼女ならば少しも喉っぽくないし、問題がない。まあ、顔の顔面にあてようとするために、もう一つ胸に響く大らかな中低音が出ないけども。もう少しかな。高音は、チェンジすればぼくは充分な声が出ていると思うけども、もっと出したければ、下の領域の声を上にまで引っ張っていけば良いと思う。その際には口を良く開けて、喉をしっかり開けることを気をつけないと行けない。今日はディズニーの曲。全体に、中低音が多く、最初は痩せた響きの弱い声だったけど、ポジションをお腹に下げてやれば、しっかりしてきた。アの母音で浅くなるので注意を。オの母音は全体に口をすぼめ過ぎだと思う。もっと縦にそして大きく開けたほうがきれいだ。そのほうが声帯の縁がきれいに当たった響きが出る。

よしおかさん
発声を始めると、どうも喉が開いてないし、声がお腹から出てこない。声を出しなれていない声だ。前回同様にお腹から声を出す練習をする。しばらくこれをやっているうちに、声が慣れてくる。喉も少し開いてくる。高い声、2点Fis以上は頭声に変える。それまでは、なるべく我慢して下の声の出し方で出す。その場合は、口を閉じずになるべく開けて。お腹の底から声を出す感じだ。しっかりとした太い声が出る。やっているうちに段々と声が出て来て、1点Eから下の声は地声に転換するようになった。これはこれで、練習でいつでも出せるほうが喉のためにも良い。ただし、喉を詰まらせて出さないように。充分に喉を開くことが大事だ。曲は、O cessate di piagarmi...今度は、お腹から声を出す余りに音程が悪くなっている。歌っている姿を仔細に観察すると、やはりブレスを胸でしている感じだ。彼女は振りが大きくないので分かり難かったのだけど、首から喉で息をしている。それから、首が前に出ているし、声を出す瞬間に、首が前に出る。ブレスも必要以上のブレスをしている。ブレスだけども、ドンと立ったら、まずはお腹だけで軽く吸うだけで良い。もっと言えば、あまりたくさんの息を吸わないほうが良いのだ。入ったか入らないか?くらいの感じのほうが、首や喉に無理な力が入らない。声を聞いていると、どうもあごというか舌根というかどこかに力が入っている気がしていた。触わってみると、喉から上あるいはあごの下当たりに力が余計に入っている感じだった。この力の使い方を阻止するために、むしろ、首をしっかり後ろに置いて、ということは、あごをしっかりと引いて、声を出すときは、なんの前触れもなくいきなりドンと出す方がずっと良いのだ。頭のてっぺんに10円玉を置いたら、お尻の穴まで直通くらいのまっすぐな姿勢が大事だ。その当たりを今日は練習してみた。あごがしっかり引かれた彼女の声は、とてもし っかりしたビブラートが適度にかかった良い声が出ていた。次回もこの練習をしつこくやってみよう!


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9月8日

なんだか、台風のせいか蒸し暑くてやる気が起きませんな。笑

すずきさん。彼女念願のモーツアルト「魔笛」の女王のアリアをやる。そのために、発声をやるが、充分に低音部をやってから、高音に移った。彼女の低音は、チェンジしていると、喉の開きが足りず音程がやや浮つき気味なのと、子供っぽい声になること。地声が出る五線の下半分の領域はもっと意識して、限りなく地声に近く出してほしい。高音は上がって行くとどんどん出て、自然にフラジオレットの領域に入れる。彼女の声は希有の資質だ。夜の女王が好きだ!というだけあって、自然にその領域の声を手に入れることが出来るのだ。声は不思議だ。大体3点Cを過ぎる辺りから自然に声が小さな笛のような響きになるから、そのまま出せば良い。頬を高くしたり、口の開け方を工夫して音程を載せるように。後は譜読みを完全にすることと、ドイツ語の読みをしっかりしてほしい。発音だけど、口先で発音すると喉の中が開かない。今日ぼくがやってみせたように、口の中はいつも開いた状態で発音して歌えるようになることが、美しい響きで歌うために、とても大事なことだ。あくびをするような感じをつかんでほしい。最後に、暗譜を早くしてほしい。暗譜することが、こういう声のキャパの 大きい曲を早く仕上げるコツだから。

すぎえさん。発声を始めると喉の開きが足りず、喉っぽい声になっている。それから、喉や首に力をいれてブレスをしている。これが喉を絞める原因になる。ブレスはくれぐれも軽く、鼻で鼻の香りを少しかぐ程度に抑えたほうが良い。一生懸命吸っても声は出ない。胸や首に力を入れないように、お腹だけで軽く吸うほうが良い。それから、喉の開きを促すためにも、口は開いたほうが良い。その際にあくびをするような感覚で、口の中を広くするように。ブレスの時にこれが出来ると、喉も開くし軟口蓋が上がって、軽く楽に声が出せる。後は、低音は地声を積極的に出すようにすることと、その時に口の中を開いて、喉を開くことを忘れずに。そうやって、声を出していけば、自然に良い声が出るようになってくる状態ではある。高い声は、まだ喉で出す感じがあるが、悪くはない。息を上に向けて流して出せれば良いが。曲はアマリッリから。お腹を使って息をしっかり送ること。低い声の出し方に気をつけて。O cessate di piagarmi...は最初のOの声を息で送るように。口を開いて、あくびの状態を作って出してほしい。喉声にならないように気をつけて。これも低音になったら、低音の声に降りるようにしたほうが魅力的だ。

たにさん。低音から発声をやっていく。チェンジした声でも、喉を開いて、お腹から出るような意識で出すことを心がけてほしい。そうやって上がって行くと、自然に2点Eくらいから、逆に喉を開かずに頭声に変換するような出し方になる。そうやって行けば、彼女の場合楽に3点Cまで出せる。約2オクターブの音域の中で、必要な声質をどうやって出すか?音域による声の出し方はそれぞれ出来るようになっているから音楽の中でそれを意識して出すことを心がけてほしい。特に五線の中の音域では、大事な問題だ。中低音を出す際に、喉の開きをきちんと意識して胸にも響くような感覚を忘れずに。曲は、ドビュッシーの「ビリティス」どの曲も同じだけど、音符の形が見えないような歌い方、言葉さばきを作り上げてほしい。特にこの曲はレシタティーヴォ(朗唱)風に書いてあるから、そのことは大事。それと、お客様に分かるような言葉さばきと言うか、音楽の在り方を考えて。自分だけが分かる歌い方だと伝わらない。それは声量の問題というよりは、イメージの大きさとそのことによる言葉の形の大きさの問題でもある。子供に聞かせてあげるように。そのことと、言葉がどんなに細かくあっても 、繋がった響きが途切れないような声楽的な技術も必要だ。声の出し方はもうかなり良くなっているから、これからは、言葉と響きのレガートについて勉強しよう。


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9月7日

あめくさん。声慣らしに軽く発声をやってから、少しお腹から出す感じで、2点Gくらいまで。2点F以上は少し苦しそうだ。2点Dくらいからでも、息の力が足りない感じがした。お腹から声を出して高音に上がる場合には、口を縦に開いて、喉が上がらないよう、ということは、喉を充分に開くようにして出すこと。しっかりした声量のある高音を出すには、これが一番簡単な方法だ。お腹はしっかり使うこと。前腹を中に入れても良いし、側腹を少し開くように力を入れてみる。息を送る練習をしてみる。息を軟口蓋に当てて、ハ〜という息の音をさせるように、息を吐く練習。口から息を吐くのではなく肺から送った息を、軟口蓋に当てる感じ。これは、うまく行かなかった。力のため所、あるいは喉の開きが足りないのかな。シ〜と歯に当てて出すのはうまく行くのだが。声を出すことと、息を吐くことの感覚が同義になると、大分喉も楽になるし響きも出てくるから。この練習は毎回やってみよう。
今日は、喉の下の窪みに声を当てる練習をやってみる。チェンジしてからの音域でやる。最初はドレドレだけで。二番目の高い音のほうを強く当てるように意識してみる。声は太く強くなる。また安定した。このやりかたで、2点Gまで危なげなく出せるようになった。同様にドレミの3音でもやってみた。これもうまく行った。ただ、気をつけてほしいのは、この練習だけでは、声に本当の輝きが出てこないこと。あるいは、今の彼女の場合、というか、彼女に特有なことだけど、音質がこもる傾向にあるので、声に輝きを与える練習方法も合わせてやらなければいけない。彼女にとっては、多分こちらの方が難しいだろう。それらの練習も合わせて行って、本当に美しい声に仕上がって行く。でも少しずつでもそうやって、美しい声にしていくことも、楽しみの一つだ。本人にも、ゆっくりと考えてほしいと思う。曲は、イタリア語でPiacer d'amor..出だしのPia - cerの5度は、最初の声を少し軽目に出しておいて、5度上の声を出す際に、足を踏み下ろして踏みしめるようにすると、うまく声が体に響く。声と言う楽器は、一つのフレーズ、音域の中でそういう、踏みしめるポイントをうまく見つけることが上達の秘訣である。それから、声の使い方は、発声の最後でやった声を喉の下のポイントに当てる感じで全部やってもらった。安定して歌えるようだ。彼女にはこの方法は合っているようだ。地声の領域になるととても良く響くが、チェンジしてからの声質と合わないので、あまりやり過ぎないように。Piu che'un di sol non dura...のCheのエの母音はもっと口を縦に開く感じで。Martir d'amor - tuttaのAmoruとtuttaの間で地声とチェンジの切り替えが出るので、地声を鳴らさないように。そして、tuttaのトゥッタは日本語のように詰まると、声が切れてしまって美しくないし、声の調子が変ってしまうので、あまり詰めないように。全体にとてもきれいに、音程も良く歌えていた。次回までにアマリッリないしは、ヘンデルのOmbra mai fuを譜読みしてほしい。


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9月6日

みくりやさん。夏休みも終わって一ヶ月ぶりだ。さすがに声の感覚が少し退化していた。声が鳴らないし喉が開かないので、低いほうでしばらく声馴らしをする。地声も少し出してみる。良さそうなので高い方に昇ってみる。2点Fisくらいから自然にチェンジしていくので、その辺から上はむしろ口をあまり開けずに頭に響かす感じだと、きれいに共鳴が出る。ただ上がっていって2点Bくらいから声がきつくなったときに少し調子を崩した。口の開け具合や、喉の開き具合で、喉に来てしまった。まだ調子が本調子にならないようだ。色々仕事も大変だったようだけど、これから取り戻していけば良い。気持ちが明るくなれば彼女自身が持っている活力も元に戻って声も調子が出るだろう。でも、今日はラヴェルの「ギリシャ民謡」の2曲目がとても良くなった。以前に比べるとブレスがとても自然になって、伸びている。この曲は比較的高目の声でフレーズをきっちりと歌い上げる必要がある。声の入りをちゅうちょせずに、出すこと。声を前に押し出すのではなく、引き寄せるようにして声を出す。なぜなら、最初の1点hから2点Eの跳躍をうまく上がれないから。ブランコの原理で上がる前の声を引き 寄せてその勢いで上に昇る感じ。これがとてもうまくできて、きれいなフレーズで歌えた。次に4曲目、真珠採りの歌をやってみた。これは、夏休み前に急いで仕上げたので、まだ体に入っていなかった。フランス語の読みとリズム。これをきちんとしなくては。まず出だしのヴォカリーズの16部音符を充分に跳ねるように。そして、長い音符は息をどんどん伸ばすことと、細かい音符、特に上向形の音符はこれもさっさと歌い上げること。そうしないと、長いフレーズを歌いきるのが難しい。要するに日本の民謡と同じだから、細かい、特に3連符はこぶしのような感じで扱うことが大事だ。これさえクリアできれば後は楽だから、頑張って!

りりこさん。発声は低音を中心に始めた。ドレミファソファミレドの場合、最初の低い音から始って高い音に昇り、また戻るときに、最後の低い音にきちんと戻ることを大事にして。出だしの音のポジションをお腹に感じて。お腹でブレスを軽くする感じ。これらのことを守ってやると、とてもきれいに響く低音が出る。この中低音はほとんど問題ない。段々と上がっていって、気になるのはやはり、2点Fis以上の声の響き。高いほうの練習では、やはりあごを上げないこと。そして、喉の使い方だけど、なるべく力を抜いて。あごの下げ具合や喉の力の入り具合で、どちらかというと彼女は下の引きが強い声質だ。喉っぽいというよりは、少し胸っぽいというのか…特に2点F以上になってから、声をしっかり出そう、喉が上がらないようにしようと思う余りか、この胸っぽい響きが気になる。この辺りの調整は難しい。あちら立てればこちら立たず…となる。単純に言えば、音域によって高音は強く響かせることを主眼におけば、少し胸にも響かす心持ちがあると、声量が出るし太くなる。軽くきれいな高音を出すためには、首から下の響きを出さずにいわゆる頭声だけを大事にする。今は2点Fis以上はむし ろ、頭声を訓練したいのだ。喉は力を抜いて、お腹を少し広げる感じでお腹の力を入れるタイミングと口を開くタイミングがうまくあうと、喉が開いた軽い高音が出る。また、強く出すためには、胸よりも、喉の下のくぼみを意識して声を当てることかな。今度やってみよう…
曲は、メシアンを譜読みした。フランス語とリズムの譜割りがむずかしい。32部音符が出てくるので、どこでどの母音を入れるのかの判断が難しいのだ。最初1ページの低めの声は、今日も良い声が出ていたのだけど、本人が気に入らないようだ。声はイメージに左右されるし、気にしだすと微妙な違いもすごく気になる。その人によって感覚が違うので一概に言えないけど、聞こえて来る音をあまり気にしないで、むしろ体の使い方、あるいは体の中で響く感じを大事にしたほうが良い。なぜかというと、響く場所によって、外から聞こえる声は変るから、そういうものに依存していると、思ったように声を出せなくなるからだ。それよりも、このメシアン!音楽を早く入れなければ!


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9月5日

さぶりさん。大きな本番を終えたので少し声のことにこだわってみる。発声練習を聞いて思うことはやはりもう少し声のポジションに深さがほしいこと、あるいは良く開いた喉。この二つのことは同義に捉えても良いかと思う。彼は声帯を良く鳴らす技術を持っているのだが、ポイントが高めにある。とはいっても合唱のバスパートだからキンキンした声ではないのだが、もう少し喉の開きがほしい。声の出し始めに喉で低いポイントを出そうとする癖が出ている。微妙に低い音からずり上げる。これは良くない。最初の声を出す前のブレスでその場所というか、空間の感じが出来ていないといけない。それはブレスの仕方も関係ある。どちらかというと、胸で吸っている傾向が見られる。見分け方は、ブレスの音だ。ブレスの音をむしろさせないで静かにお腹だけで出来てそして良い声が出ればその声は良いポジションの声だと思って良いと思う。今日は、良い感じで1点Fまで出せた。音域としてはバスなので充分だけど、むしろb〜1点Dくらいの声のポジションがまだ軽いと言うか高い感じ。同時にこの辺りでももっと喉が開く感じの声が出れば言うこと無いのだが。良くあくびの形というけども、 これは軟口蓋だけではなく、喉の広く開く感じ。だから、この形の場合喉頭も適度に下がるし、軟口蓋も上がる。上下に広がりのある口の中のフォームになる。この上下の引っ張り合いをバランスして良く喉の開いた声を探すのだ。アマリッリや、ディズニーの歌を歌ってくれた。アマリッリの場合、良く歌えているけど、母音、特にエの母音が今一つ、浅い。縦に広いエの母音を探してほしい。ディズニーのポップスはむしろ今の彼に良くあっている。バスパートのソロだけど、なればこそ、もっとバスらしい声が出てほしいと思うのはぼくの欲目だろうか?もっともっと改善の余地があるから、上を目指してほしい。

ちばはらさん。低い音域の発声では、さぶりさん同様にもっと腹から声を出すことを心がけてほしい。彼もそうだけど、鳴らそう鳴らそうという意識が強すぎる。鳴らすことよりも、声を出すときにポジションを低めに感じることと、喉を良く開くことに集中してほしい。声の鳴らし加減は、自分で感じているものの60% くらいで良いと思う。その代わりに充分に息を送ることと喉を開くこと。しつこいようだが、この事に尽きる。そして、高音域。特に1点Fから上になってきたら、今度はあごをなるべく下げずにあごをしっかり引いて、喉が上がらないようにして声と言うか息を鼻腔に送って共鳴で出す意識を持ってほしい。どうしても、あごを下げて喉を必要以上に下げて出そうとする余りに、喉声でビャ〜っと出すために音程がフラットで、喉声になってしまう。フレーズの中にある場合は、高音のその前の音の音程というか響きに注意することが大事だろう。結局発声練習を2点Cまでやる。どうにか1点bまではファルセットにせずに出せるし、1点Aまでは安定して来ている。いずれにしても、まだ完全ではないが、音程として悪くない高音を出すこつはつかめているはずだ。
黒人霊歌の一部分を練習した。高い1点Fisでイの母音は、思っているよりも中、軟口蓋に向けて息を送ることと、Godのオの母音もあごを下げずにイと同じフォームで同じ共鳴の場所に送る感じで良いピッチ、良い響きが選られる。どうやら、本人が感じるよりもずっと中で響かす感じが良いようだ。


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9月4日

さたけさん。アの母音でドレミファソで発声練習を始めると、とても安定していることに気づいた。無理が無い。息が通った声を出している。今日は少しポジションを深くする練習。要するにもう少しお腹を意識して声を出すこと。ただ、具体的に体で何かをするというよりも、声を出す際のイメージ程度に捉えたほうが良い。またはブレスの際に胃の当たりにす〜っと入る感じ。首とか、胸とかに力が入らないように。横隔膜あたりを意識して軽く入れる感じ。そして入ったところから声が出る感じ。これは出来る。そして声を出していったときに、例えばドレミと上がった場合に、高い音に行くほど、喉の奥から出る、あるいはお腹の方を意識するように。彼女の場合は割と楽に出来ているが、特に2点Fくらいから上に行ったときに大事にしてほしい。要するに喉が締まらないようにすること。高い声になるほど喉を開くようにすること。また、高い声をだすためにも、声の出し始めのポジションが高すぎないようにするころが大事だ。ブレスは、力を入れて入れれば入れるほど、入らない。胸に力が入ったり喉に力が入ってしまう。声を出しきれば自然に入る。ということで、発声をやってみると 、今度は出すことに一生懸命なあまり、お腹に力を入れ過ぎている。最初は確かにお腹を引っ込めて息を送ることは大事なのだが、これもやり過ぎるとお腹を固くし過ぎて、ブレスの時に横隔膜が自由にならなくなる原因だ。お腹、特に前面を使い過ぎの場合、むしろ後ろの腰を張り出すようにしてみる方法も有効だ。この辺りが今のさたけさん、課題だろう。お腹を楽にすることも大事。最後に低音部に降りて地声を出してみる。大分楽に地声が出るようになっている。現在のチェンジボイスが良くなってきたのは、適度な地声の練習も関係がある。声帯の筋肉を目覚めさせるためにも適度な地声の練習は必要だと思う。声帯をリラックスさせる大きな効果があるからだ。
曲は、フォーレの「月の光」発音は比較的良いと思う。ウの母音が開き過ぎでもう少し締まった丸い口にしたほうがそれらしい。この曲も出だしから、あまりポジションが高くならないように。あるいは、音が上に飛ぶ際に、お腹に響くように意識したほうがきれいだ。リズムも大分理解出来ているようだが、まだ少し不安定。彼女の感じているテンポがもう少し早いほうが良いのだろう。ピアノがなくても、手で指揮をしながら歌ってみることも練習には大事だから、やっておいてほしい。でも随分声が楽に出るようになった。今度こそ発表会に挑戦してほしい。

あゆみさん。合唱曲を持ってきた。ロッシーニのクァルテット。ロッシーニらしい晴れやかな良い曲。
音域も広いし、声楽的にはなかなか難しい曲。正真正銘の4重唱でやるとなると、ソプラノにはなかなか負担になる曲だ。もちろん、テノールも。合唱であればこそ、アマチュアでもそこそこ歌えるものだ。一通り楽譜を読んで見て高音の頻発する曲なので、発声練習では声のポジションを低く意識することを主眼にして、高音を練習してみた。彼女の声はなかなかキャパシティがあって、低音部の軽い声を聞くと一体高音が出るのか?と不安になるのだが、それなりに出てしまう。ただ、中低音部で声のポジションが高いために、本当の意味でしっかりした高音が出てこない。今日のさたけさんや他の人もやっているように、単純に声の出初めを低く意識すること。そして、音程の上がることにつれて喉を開き喉の奥から声が出るように意識することを大切に。そのために、口を開くことによって喉が上がることを防げるし、不安定な喉の動きを一定にするあるいは、喉を開くことを助けることが出来るだろう。この方法で1点Cまで出してみたけど、安定してくる。大分細くて喉が締まっていた声が楽に出るようにはなっている。ただ、彼女の口の開きをみていると、やや、中が開いてない感じではある。前 回口を開かないで発声をやってみたのはそういう面を見たかった。今日は、少しリスクがあるけど喉の下の窪みにしっかりと声を当てることをやってみた。喉に近いところに声を当てるために、恐がってやると喉に来るので注意が必要。あごを引いて喉が動いて上がらないように。一気に当てる。少し声が安定して適度な太さと声量が出ているので、理解しているのだろう。口を開けずに声帯をしっかり開いて鳴らすことが出来るので有効なやり方だと思う。それから、お腹を少し積極的に使うこと。オクターブで一発上がる時などは、前下腹部をしっかり中に入れ、同時に口を吐くように開いて一気に高音を出すこと。高い声から更に声を上げる時には、側腹部を横にしっかり張るように、あるいは後ろの腰を張り出すように力を入れること、などなど積極的な体の使い方を教えてみた。いずれにしても声のポジションをブレスポイントで決めてフレージングに当たることを計算しておかないとこのような声楽的に難易度の高い曲は難しい。それなりに声が出てしまっても、表現にはつながらないから。高音そのものよりも、むしろ五線の下半分の声を出す際に、胸に楽に声を当てられるようなブレスあるいは、 間合いを取れるように工夫することが、結局安定した高音を出す秘訣につながる。頑張って練習してほしい。


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9月3日

さわださん。発声練習を普通にドレミファソ〜で上向形。深い声で、軽く。彼女はこの声をすぐに出せる。軽く出すと、自然に頭声になってくる。喉が開いているということ。彼女は声の出し方に関してはとても器用で、意外とすぐに出来る。きっと学生時代の勉強が体の芯に残っているのだろう。下降形で高い方から頭声で細く出すやり方もすんなりと、とても良く出来ていた。2点Dくらいから今度は頭声でアタックしてクレッシェンドすることをやってみる。クレッシェンドは出来るのだが、完全に強い声にまでは行かなかった。喉の下のくぼみに当てるやりかたで、出すと、素晴らしくびんびんと響く声が出る。この声にまでクレッシェンド出来れば完璧だ。まあ、これだけ出来れば言うことはないので少しずつ出来るようになりたい。曲はVivaldiのVieni..出だし、イの母音が喉っぽくなることに気をつけたい。口を丸くすることで、声帯が合うことを防げる。充分に気をつけて。出だしは、これらのことを気をつけていくと、素晴らしく美しい声の予感が。この最初の部分の美しさで不覚にもぼくは涙がこぼれそうになった。癒されるな〜!(笑)しかし、彼女は良い声をしているな。このVivaldiの 曲と彼女の声とで、うまく行けば素晴らしく上質の世界を歌い上げることが出来そうだ。後は、PucciniのDonde lietaの譜読み。そして、ToscaのVissi d'amore...これも出だしの頭声と、すぐに出てくる強い声との対比。彼女自身が鳥肌が立ったことで、良い音楽への予感が出来ている。すごく楽しみだ。声というか歌が持つ芸術性というのは素晴らしいな。

にしさん。ドレミファ〜の上向形で始める。声のお腹から出すポジションは出来ているが、例によってあごをそのまま開けっ放しでブレスそして声を出すという繰り返しをやるために、どうも口の中が固い。そのために、やわらかい自然な声が少し固くなってしまう。これは、悪い癖だから直してほしい。もっと歌を歌うときの体の使い方を自然に出来るようにしてほしい。どうなるか?というと声が中にこもってしまう。声の出し始めの位置はお腹でも、声自体は口から前に軽く出す感じが大切。あごもしなやかに固めないことは何度も言っていると思う。それらのことを治しながら、高音の練習に移っていった。最初は、喉下の窪みにしっかり当てて出す練習。喉を上げずに、しっかり喉を開くためだ。この練習はイタリアではAppgiare la voceといって、もっとも古典的な声帯を最大限に振動させる練習だ。2点F以上になっても喉が上がらずに、しっかりした声が出るが、今度は気をつけないと音程が上がらない。そのために、軟口蓋を上げるために、口を開く。軟口蓋を上げることで喉頭筋を引っ張り上げて音程を出す感じ。2点Aまで出す。
曲は、ヘンデルのLargoから。大分落ち着いた声になった。高い声は、練習でやったように、しっかりと息を送って。低い声は良く喉を開いて。鳴らそうとせずに、喉を開くことが大切。高音は、深いポジションだけでなく軟口蓋を上げて、音程がフラットになることを防ぐこと。次に、アマリッリを再びやる。立派な声で歌えるようになってきた。何より自然な感じが出てきた。これまで苦労してきたことが実りつつある。根気良く通ってくれた成果だね。次回は、Sento nel core..発表会を楽しみにしている。


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9月2日

りりこさん。今日は、メシアンの"Poem pour Mi"を譜読みした。その前に発声練習ではとにかく音程をきちっと出す練習をした。意外と普通に発声をやり始めたらきちんと音程が出ていた。そこで前からやりたかった子音をきちっと出して声を出す練習。Dolce mio benをドソミドの下降形で、最初のDoをきちんと子音の処理、舌を硬口蓋につけて離す勢いで母音を出す練習をした。この時に音程を先に取らないように。音程は、お腹で頭で感じるだけで良い。もっといえば、ブレスで音程を感じればそれだけで良い。最初は、Doの子音を出す前にNを出して音程を探っていたが、これは駄目。何度かやるうちに出来るようになったが。未だ慣れていない。音程を出してやる前に、普通の話し言葉の低さで、この子音で母音をしっかり出す練習をしてほしい。
メシアンの曲は、ドビュッシーの継承者らしく、朗唱風の旋律がメシアンらしい音の重なりの上に乗って得も言われぬ美しい表情を醸し出している。言葉のニュアンスや語感があれば、自然と譜読みが出来ていくような旋律だ。ただ、前半部分は良いが、中間部がとても難しく音域が高い。でも彼女が心底好きで持って来ていること、そういう情熱を大事にしたいので、なんとかやってみたい。歌の勉強はやはり、歌う情熱が大事だと思うから。体を機械のように扱って、発声のことだけで処理するやり方にはぼくは賛成ではないから。何より楽しく嬉しそうな彼女の姿勢が好もしい。ところで譜読み時に、胸声を意識してもらった。胸声のことは、説明すると長くなるけど、喉から下、いわゆる胸に響かすところから言われているのだけど、喉声と勘違いされることがとても多い。これが、とてもやっかいだ。基本的には声帯の鳴らし方だ、と思ってほしい。声帯というのは肉のひだであり、この部分が振動して声となるのだが、声帯の全体を大きく振動させると思ってもらえれば良い。逆に言えば、頭声は声帯のエッジの部分を細かく振動させることだと思ってもらいたい。共鳴はまた別の問題で、共鳴もつ けることで、喉から出ている感じはなくなるのだけど、まずは、喉っぽくても、この声の使い方を覚えることはとても大事なことだ。

よしおかさん。
前回まで頭声の練習をやったが、今日は思い切って胸声あるいは、喉を広げて出す声を練習してみた。ところで、頭声とか、胸声と言うのは、まだ色々な解釈がある。例えば、これを音域に応じた声、いわゆるチェンジボイスのことを同義に扱う場合もある。女性の場合は、一番下の音域のいわゆる地声を胸声と理解されている方も多いと思う。ぼくは、そういう考え方でも良いと思うけど、もう一つは、声の出し方の問題としても捉えたいと思っている。要するに、音域とは関係なく、胸から出るような声、あるいは頭部から出るような声、という考え方、あるいは事実である。結局は声帯の使い方の問題と共鳴の問題があるのだけど、胸声は、頭部の共鳴をあまり考えないし、頭声は、頭部共鳴を大事にするということもある。ということで、どうしたか?といえば、要するにお腹から声を出すことをやった。体の使い方でやると、また色々な勘違いや、やり過ぎが問題になる。ひたすら、おへそあるいはへそ下、あるいはみぞおちでも良い、要するに声帯の位置よりもずっと下から声をだす感覚である。気をつけることは、絶対に声をずり上げないこと。声帯をびりっと合わせて鳴らさないことである。こ のことがうまく行くと、自然に喉も開いてくる。また、口の開け方をうまくすることで喉も開きお腹からの声が出しやすくなる。よしおかさん、実にうまく出来るようになった。この声が出来たら今度はフレーズでの応用である。ドレミと上がる場合に、お腹の声が出る場所が変らないように出すことである。それを意識しないと、音程が上がると喉が上がり、平べったいいわゆる浅い声の響きになってしまう。どうするか?それは音程が上がるにつれて、むしろ声の方向あるいはお腹の意識を下に持って行くことである。あるいは、音程を上げるにつれ、声を中に潜り込ませる感覚である。このやりかたで、2点bまでかなり良く出せた。特にうまく行くと高音が適度に太くしっかりとして、安定した響きになる。ただ、やり過ぎは禁物。胴間声になって、今度は高音が出せなくなる。彼女はこの辺の加減が実に良い。バランス感覚のある人だ。復習で頭声もやったけど、完璧に出来ていた。素晴らしい。曲は、O cessate di piagarmi...曲で今日やった発声を応用してみる。これは難しい。発音の仕方の問題がついてまわるからだ。特に頭声ではなく胸声でやると、1点C以上でフラットになる傾向がある。それを避けるためにも、唇や頬の使い方が大事になってくる。特に上唇をめくるような鼻の下を上げるような口の使い方が音程をきれいに乗せる大事な要素だ。低音に降りるときには、思い切って声を腹まで落すように。そうしないと、低い声の音程がはまらない。大分イタリア語らしく、声楽的な響きが出てきた。大分良い。後もう少し。


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9月1日

たにさん。
発声練習を始めると、しばらく声を出していない声が出る。彼女はあまりびんびんと喋らないので声の暖まりが遅い。しかし、しばらく高いチェンジから練習をして上がり下がりしているうちに、大分暖まってゆるやかに響く声が出るようになった。何も言わなくても高いチェンジのままで下の響きまで違和感なくつなげて声を出せるようになっている。中低音部でもう少しからだ全体を意識して声を出してもらうと、良く響く。この声も、完全な地声ではなく、上の響きを落さずに出せるようになった。今の状態ならば充分だ。Bravo!である。結論だけど、発声練習ではあまり中声の練習をしなくても歌になったときに、必要なだけ出せばそれに応じて声が出せる状態になっているのだろう。あるいは、この状態になってから、中声の練習を始めるべきだったのかもしれない。次回にでも中声の練習を少ししてみよう。とにかく、安心して一定の響きで広い音域で声を出せる状態になった。教えるほうとしても一安心。これから、やっと本当の声の響きを追求できる。今日は、高音などは、きれいに3点Cまで出した。むしろ2点Fis以上の声の方が響きが乗ってくるほどだ。この声に中声の響きを加味できれば 鬼に金棒だろう。オペラも歌える。
さて、曲はドビュッシーの「ビリティスの3つの歌」せっかく高い声が出るのに、この曲では勿体無いかな、、、と思ったけどそれは杞憂だった。この曲は、そんな音域だけで、聴かせるつまらない音楽ではなかった。1曲目の出初めは、低音部だが、言葉の大事な母音の響きを充分たっぷり気味に響かせて歌うほうが美しい。狭い母音、特にウの母音はきちんと閉めて。逆に広い母音あるいは鼻母音は充分に響かせたほうが良い。楽譜上は細かい音符でも、あまり音符の短さに囚われないでディクションできたほうが、言葉としてきれいだし、良く分かる。ひいてはそれがドビュッシーの朗唱風の歌曲の味を出すことにつながる。例えば、Il m'a donne une syrinx Faite roseaux bien taille Unis avec...comme le miel....Mais je suis un peu tremblanteなどのようなところ。Il est tard..はっきりと。verte qui commence avec la nuit..これらのように、鼻母音のところは大事である。これがきれいに決まると本当に美しいビリティスになる。いや、フランス歌曲すべてそう。鼻母音は胸まで共鳴を感じて、広く響かせることが大事。2曲目、3曲目もすべて、言葉の上記に上げたような点を探してみると良いだろう。後は、高音が出てくるけど、すべて、中声の領域で処理できるから、やってほしい。一番高いチェンジボイスを練習したせいで、中声に落しても無理が無い。このあたりの響きをさらに追求して行きたいな。でもとても良くなった。楽しみ。

たにむらさん。
発声練習は、普通にドレミファソで低音から上がって行った。彼女不得意な、チェンジから上は、なかなかうまく行かない。今日は、声のポジションを低くする練習をやったのだけど、これもなかなかうまく行かない。声を出すこと自体がすでに、喉に来てしまう。声を出そうとしただけで、息が上がってしまうので、ブレスから注意深く静かに、お腹に少し入れる程度にする。ブレスの際に、胸を上げて一杯吸おうとしてしまうと、首に力が入るし、喉を良い状態に出来ない。また、低いポジションになったとしても、どうも息をためて、ボンと当てる癖がある。もう一つは、必要以上に舌根に力が入る。どうしてなのかが分かれば良いのだが、これが分からない。息を吐く練習をしてから、Hoで2点Dくらいで練習すると、とても良い声が出るのだが、これも何度か続けていると、段々元に戻ってしまう。今日やった声で一番良かったのが、このオの母音。とにもかくにも喉に力を入れる癖を徹底的に無くさなければならないかな。彼女自身が、高い声をアの母音で出すと、しゃがれてしまう、と信じきっているので、それを直すこと自体がとても難しいのだ。何かをきっかけに発想の転換が出来れば良いのだ が…全体に、声を出す際に少しせっかちかな。もう少し落ち着きがほしい。体の中への静かな集中力みたいなもの。今までの声の出し方、あるいは出し所とは違うという感じを見つけてもらいたい。とても難しいけども、出来ると信じているが。曲は、Plasir d'amour..全曲譜読みを終える。歌を歌い出すと、とても調子が良い。ブレスは短いけども、この曲が好きらしくて、色々な声のハンディを乗り越えて歌える。何よりも彼女、明るい。一緒にいるとこちらの憂鬱も吹き飛ばしてくれる明るさが救いだ。これは、歌を歌うためにあるキャラクターだ。あまりに結果論的で教師としてはどうなのかわからいけど、彼女の場合は、発声練集よりも曲そのもので勉強して行くほうが良いのかな、という気もしている。



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