2001年9月後半レッスンノート

レッスンノート目次
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9月30日

はたけやまさん。ドビュッシーのBeau soir...とサティのJe te veux...を勉強する。とはいってもフランス語が読めないので、読み方から。彼女は大学で声楽の訓練を受けているので、良い意味で言葉の発音がきっちりしていなくてもそれなりの歌が歌える。ドビュッシーの曲は比較的合っている。サティの方は、ちょっと色気不足というか、曲に対して声域が少し高いだろう。それと、ブレスト声を出す関係がしっかりした直線的な声とフレージングなので、サティのカフェコンセール風のちょっとやくざな歌い回しがうまく出来ない。特に低音のふくよかさ、中高音の軽い頭声が出ないので、ニュアンスが出ない。それと、もう少し声をはすっぱな、浅い、前に当てた軽い声が出せると、もっとそれらしくなる。アカデミックに過ぎないような声のほうが良い。テンポは、これも自由にそれらしく。声のことだけどもう少しブレスを楽にしなやかにとって、フレーズを高く長く伸ばせるような、もっとやわらかい歌いまわしみたいなところを勉強して欲しいな。やはり、ブレスが大事だろう。声の当て所も一つだけに限定せずに、後ろに持って行くことも良いことだ。次回は、ドビュッシーのC'est l'extase..をやってみる。後はラヴェルの「シェラザード」に挑戦したい。

すぎえさん。発声練習を始めるとやはり線の細い痩せた声が気になる。こいつは何とかしたい!ということで今日は徹底的に声の改造を計る。胸に声を当てる、お腹を入れる。それよりも効果があるのは、低音を地声で出すこと。多分地声で出しても、上の声とのチェンジは無理がないだろうと思ったら、その通りだった。低音は本人としては地声で出してもらった方が、逆に喉が開く。そのままのポジションで上まで上がって行けば、しっかりしたチェンジの声が出る。音程などにまだ難がある(フラットになる)けどもそれは、追々直していけば良い。これは、上の開きの問題だ。後は、腰の張りないしは、前腹を入れて声を出すことを心がける。姿勢だけども、首がやや前に出ているし、固い。平らな壁に後頭部から首の後ろ、腰、かかとをくっつけるようにして立ってみる。要するに体の後ろの線がまっすぐになるように立つ。あごが引かれて声帯の状態が良くなる。この姿勢は少し考えて見て欲しい。アマリッリを使って練習をする。彼女はメゾが良いと思うので、自分の声の出し方で、どんどん教えていけば自然とそれらしい声になる。はじめて持ってきたトマのミニョンを再度挑戦したが、とても 良い声になってきた。成功だった。口の開き方も工夫が必要。声をとにかく低いポジションでしっかりと太く出すことに、今は気をつけて欲しい。

ゆきえさん。発声練習を始めて少しした頃に、とても良い声を発見したので、そこから突破口を開く。そうでなくても、とにかく高音までスムーズに出せるようにはなっている。とても良い声は1点Gくらいあたりの声で、チェンジした声だ。彼女は一番低い胸声領域の地声とそのすぐ上のチェンジの声の区別がちょっとつきにくいのだ。口を楽に開けて出すと、鼻腔に響きが行く声が出る。そのまま上がって行くと、2点Eまですごくきれいに出るのだが、そこから上に行くと、声を喉で当てにかかる。それでもスムーズには出るのだが、下の声とのつながりが悪すぎる。これは、もう腹筋と腰で声を昇らせるしかないのだ。それから、音程をもっと高い場所で取る感じ。頭の上で音程を取る、あるいは感じるくらいにして、声を出すことも効果がある。それと、姿勢。それから、ブレス。ブレスが短すぎて、体の体勢が出来ないうちに声を出している感じ。ゆっくり目に吸って、ドーミーソーミードを長くフレーズを歌う練習もした。体の伸びというかブレスによってからだ全体にきれいな張りが出る感じが大切。曲はシューベルトのアヴェマリアをやる。声はまだ慣れていないので喉声になってしまうが、なか なか良いものを持っている。歌心のある人だな。

よしおかさん。発声練習をしばらくして、声の声量がもう少し欲しいと思ったことと、前回決めたメゾソプラノの音色を作るために、練習をした。音程を上げるのは喉で調節するのではなくて、腹筋を使うこと。広げるように使う。フレーズはこれを応用して下がる時もしっかりと広げること。少しやってみたけど、大分うまく出来るようになった。要するに腹筋を使わないと声が出ないくらいに思ってしばらく使うようにしてほしい。やり過ぎは良くないのだけど、最初が肝心なので。それと口の開き具合。今日はうまく行くと軟口蓋も上がって、口の中が良い状態になtっていた。ブレスの時にこの状態にして、腹筋を使って声を出すこと。声の出だしが一番肝心だ。そのためのしっかりと、しかし、しなやかなブレスが大事になってくる。胸でしないで、横隔膜を少し広げる程度に入れること。そのことで、声の出だしの腹筋が使いやすくなる。曲はO cessate di piagarmi...これで、練習した腹筋と口の使い方を徹底してやってみた。全体に声がすごく安定したのだけど、今度は下あごのパクパクが気になった。このせいで響きが下に落ちてしまう。上唇の緊張感が、軟口蓋の上がりとか、鼻腔の開きと関係してくる。鼻の穴も少し開く感じでいると、良いかもしれない。Sento nel core...これも大分声が太くなって、しっかりとした声量が出せるようになった。一番高い2点Fの音は、喉から出さないで、お腹から一気に出すように。最初のSentoのSの子音を呼び水にして、エの母音を響かせること。次回もこの調子で!


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9月29日

今日は、右手の痛みを理由に短くします。笑
すずきさん。発声練習では、中低音を中心に。地声とチェンジの声を交互に出して、その感覚をなるべく近づけるべくやってみる。地声のほうをもっと返した声に近づける感じが良いのだろう。そして、2点bまでの高音を、しっかり出す練習もした。胸でブレスをせずに腰でブレスをすることと、高音でもしっかり腰の張りや前腹部を入れること、声を脳天めがけてしっかり送ることを練習する。
夜の女王は、全体に強さと、威厳が必要だ。転がすところの最高音は良いのだが、前半の2点hくらいまでの高音を出す際の強さがポイント。後は、最後のページにかけての長い3連符で転がすパッセージ。特に一番高い音で音程がフラットになるので気をつけて。後は、万が一のためにブレスポイントは一応取っておいたほうが良い。姿勢だけども、首を前に出さないように、それから、高音を出す際の口をしっかり縦に開くことと、腰をしっかり入れることを忘れないように。本当にこの曲はモーツアルトの天才がいかんなく発揮された曲だと思う。くれぐれも大事に、そして精一杯歌って欲しい。うまく歌う必要はないし、まだまだそんな域ではないけども、こんな素晴らしい曲が歌えるのは天のお恵みだと思って…

こぬまさん。発声では、ブレスを注意。彼女も声のポジションが割と出来ているのだけど、ブレスが浅い。胸でブレスをしている感じ。これも腰に入れる感じで、横隔膜が開くようにブレスをして、声を腰で支えて欲しい。特に声を響かす時は腰の張りが大事だ。それと、ブレスのスピード。なるべく短く一瞬に入れる練習をして欲しい。それから、低音のポジションはなるべく1点Cくらいまで我慢して喉を良く開け、しっかりと当てるように出す方が良いだろう。彼女の場合は完全な地声ではないので、しっかり当てても大丈夫。そのまま上がっていけば自然に変る。喉の下の窪みを意識していけば、しっかりと出来るだろう。曲はBustoのAve maria...口の使い方だけど、やはり下あごがパクパクし過ぎて、響きが上顎に行きにくい。あまり高くない音域なので、これはなるべく下あごを下げずに、上唇をうまく使ってアーティキュレーションしたほうが、発声はきれいだし、レガートになる。プーランクのO magnum mysterium...はブレスの気合いが大事。やわらかいブレスト、一瞬のブレスによる筋肉の使い分け。フォルテに入る前の一瞬の気合いのブレスを大事にしてほしい。

たにさん。
発声練習は、低い方のチェンジボイスで上がっていくと少し不安定である。喉が暖まらないと安定しない。次に高い方のチェンジした声で昇っておりる。再び低いチェンジボイスで上がるけど、随分と安定した声になってきた。2点Fisがかなり安定して出せるようになっている。2点Gもやってみたけどもこれは少し不安定。腰の筋肉が未だしっかりと使えていないようだ。この辺りがしっかりしてくれば、もっと高音まで強い声で出せると思う。高いチェンジボイスと、低いチェンジボイス、両方の練習は彼女の場合とても大事だろう。長くする必要はないと思う。後、曲で出てくることだけど、低いチェンジボイスの場合、やはり下あごを落して出さずに、声を上顎に当てるように、鼻腔に持っていくように出すことがコツだ。うまく行くと、滑らかに高い方まで声が出せる。口とパクパクと開ける必要はないのだ。曲はドビュッシーの「ビリティスの3つの歌」本当に美しいこの曲集は、フランス語の発音だけではなく、全体にドラマが必要である。特に1曲目。若い女の子の逢い引きの思い出を語るように歌うために、歌そのものだけでなく、立ち方や目線など、演技的な体のありかたもとても大事な要素 になってくる。それが、ひいては声や音楽になって反映される。普通の声楽曲ではないのだ。
前回の発表会では終始伏し目がちに歌っていたけども、今度は少しその辺りを出来るように考えて欲しい。2曲目も3曲目も音楽的には全体に大分安定している。低音は響かすように。高音のFisはその前の音符の声の出し方に気をつけて。それから、Suis をシュイとならないように、スュイとなるように。

たにむらさん。レッスン前に彼女から声のことについて今後のことについて、申し入れがあった。それは、現在やっているクラシックの高い声(チェンジボイス)の練習が苦痛だから、レパートリーを変えるか辞めるか?というものだった。もとより趣味でやっていてそれ程に苦痛ならば、レパートリーは変えて地声領域だけで歌っても良いということで、継続することになった。彼女はチェンジすると、息が出過ぎて声にならなくなってしまう。普通のクラシックの楽譜で歌うと、音域が半オクターブくらい高いことになってしまう。カルメンなどクラシックで歌いたい曲があるにもかかわらず、声のことが原因で好きな歌が勉強できないのもおかしな話だと思うので、曲を変えることで合意した。低い領域の声で発声をやると、声そのものはとても魅力的だ。ただ、レガートに歌うことが判っていないのと、上が開いてないの、その辺りを中心に発声練集をした。クラシック、あるいはアカデミックという限定した枠で考えずに、勉強していくこと。そのためには、ポップスやジャズも視野に入れなくてはならない。ぼくとしては自分の好きなスタンダードやジャズを歌って欲しいのだが、まずはイタリア歌 曲集のPiacer d'morを下げて歌うことになった。短3度下げた。これが彼女には丁度良くて、ポップな味わいのイタリア歌曲となった。こういう歌もあるし、いけないことはない。今後はこの路線でやってみよう。


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9月28日

みくりやさん。発声練習を少し長くやる。どうも調子が出ないようだ。ブレスが胸でスースーしてしまいお腹に息が入らない感じ。間が空くとどうしても声を出すための体の調子が出なくなる。声が暖まれば段々と響いてくるが、特にイの母音でエ、アと移行して響きを作ってみると、きれいな上顎に響くアの母音が出るようになってきた。ただ、イの母音がやはり微妙に喉っぽい。開ける傾向にあるのだけど、口をかなり閉じた状態で、喉の調子を良くする練習がこれから必要な気がした。良く考えると彼女はこのポジションでも、悪くない音程できれいに歌えるから。もっともっと響きを密にして美しくするためには、この口を閉じた状態で喉を開けて出す練習が必要だと思う。
曲は、ラヴェルの「ギリシャ民謡」から、「ピスタチオを採る女達の歌」真珠は大間違い。笑
完全に民謡であるから、基本的なリズムがついたらば、もっと大きなフレーズ感で歌うこと、そのためには端折るところは端折って、伸ばしてクレッシェンドするところでドンドンと息を伸ばして歌って欲しい。特に出だしのフレーズと、最後のページでピアノが途切れて歌うところは、聞かせ所だから充分に出して欲しい。そのために、しっかりブレスするところは、テンポに惑わされないで、自分のブレスを心がけること。声のことは心配ないので、以上のことを次回にも再現して欲しい。

あめくさん。発声練習を始めると、とても姿勢が悪い。あごが前に出るし、背中も曲がってしまっている。一日中仕事のせいか、歩き回るのか、声には良くない姿勢だ。これを今日は徹底的に矯正して見違えるほど良くなった。もう一点は、口の開け方。声を中にこもらせないで、頬を少し上げて微笑む感じで歌うこと。これらのことを矯正して発声ををもう一度やり直す。声がスムーズに上に向かって流れる感じになってきた。後、もう一点。喉の奥、軟口蓋の口蓋垂(のどちんこ)を上に上げてそこに向かってというか、そこから声を出す感じ。これも喉声にならないために大事だ。2点Aまで発声練習で出す。全体的に声質は、やはりメゾかアルトと言う感じだ。アルトという感じはなかなかいないもので貴重だと思う。ただ、レパートリーはむしろ、ルネサンスのカウンターテナーの曲などの方が美しい曲が多いかもしれない。後はバッハなどのカンタータのアリアも美しいものがあるのだ。曲は、Piacer d'amorを復習する。高音も無理なく楽に出るようになった。中間部の転調した部分も声が前に出るようになり、以前に問題があった高音部がスムーズに出た。姿勢のせいなのか、良くなった。アマリッリも、高音が楽に出るようになった。何よりスムーズに歌いまわせるのが進歩だ。最後に、モンテヴェルディのLasitemi morireを譜読みする。初めてでも、やはり高音が楽になったのが印象的だった。姿勢は大事だ。常日頃からこの姿勢を気をつけて欲し
い。電車に乗って立っているときでも気をつけることが出来るから、今のうちに訓練を積んで欲しい。


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9月25日
あゆみさん。合唱で少し歌いやすくなったとメールをいただいた。ちょっと教えて効果があるとこちらも嬉しい。さて、発声を聞いて今日気になった事は、昨日のあんどうさんとにている。声が少しこもりがちなのと、彼女特有のことだけど、声が当たりかけているのだけど、高音になってくると、完全にチェンジしたままで、声に芯が出てこないこと。最初にやったことは、ただ、声を前に当てる意識を持つこと、次に唇を開くこと。あまり効果がないので、口をあまり開けないポジションを作って、前歯に声を当てるような感じにしてみた。中低音ではそれなりに効果があるが、問題は高音だ。最後にイの母音で響きを作ってみる。2点Dくらいまでは良いのだが、それ以上になると口を開いて喉でイを作ってしまう。本人はそういう感じを持たないだろうが、実はそうだ。きちんと閉めたポジションでイを作ることの意味は、実は本当に口の中を開くことが出来るために必要なことだ。口先は閉めても、いや、むしろ閉めることで、軟口蓋から鼻腔にかけての開きを意識できるようになる。こちらに声を出すことで、無駄無くしかも、声帯を閉めた状態で響かせられるので、最大限、声帯が振動した状 態でかつ口腔内を開いた状態を作ることが出来る。最終的にロッシーニの歌を歌ってみると、まず口をぱくぱくさせた状態でアーティキュレーションするために、発声としても響きが逃げてしまうし声がレガートに処理できなくなる。そこで、鉛筆をくわえさせて、練習する。こうすると、高音も声がしっかり当たるようになる。本人は喉っぽいというけど、良いのだ。今までいかに声帯を閉じないで声を出していたかと言うことの証拠だから。声帯をきちんと閉じた形で声を出すことに慣れていない人は、みな喉っぽいと言うことを言う。これは、先生にも責任がある。ここでは何度でも言うけど、喉は使うのだ。問題は喉の状態を良い状態で来ているかどうか?そして、その響きを上顎部に持って来て響きを作ることが出来るかどうか?である。それがきれいに出来れば、喉の意識がなくなるのだ。
今日、曲で教えたことは良く響かすとき、低音部をしっかり出すときに、腰をしっかり張ること。前腹部も使って、音を飛ばすこと。以上である。色々なことを少しずつ憶えて、応用して見て欲しい。


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9月24日

あんどうさん。発声練習を始めたらとても滑らかで安定した声になっていた。何がしかをつかんでいる感じだ。この感じは崩したくないけど、気になることが出てきた。それは口の使い方に癖があって、声質が全体にこもってしまうこと。唇を歯にかぶせるようにして歌うためだ。多分、軟口蓋から鼻腔にかけての開きを意識するためだと思う。2点C〜Fくらいの中高音域は、頭部に共鳴がで出来て良いのだけど、中音から低音になると、こもってしまう。中音部はむしろ、唇を開いて、めくるような感じで声を前に出す感じの方が良いと思う。いずれにしても、固定的な使い方に陥らないように工夫して欲しい。後は、低音の出し方。低音に限らずだけど、声を良く響かす(鳴らす)ために、腰を外に張り出すように力を入れて見て欲しい。この練習をしたら、低音は地声の混ざった、メタリックな響きが少しついてきて、声量が増した。彼女は声の使い方が慎重なので、これくらいやって、丁度良いくらいだ。曲は、ヘンデルのラルゴ。全体に低いこの曲は、しっかりと腰を使って、前記の声を前に出す感じでしっかりと歌い込むこと。頭声はあまり意識しない方が良いと思う。中声域、胸声域の声を しっかりと練習するのに良いと思う。はじめて来たときに比べて大分良くなった。この調子で維持して欲しい。

えりこさん。今日が初めて。声楽経験は5年。ピアノ歴は長いし、専門学校でピアノを習っていただけあって、音楽の基礎は良く出来ていると思う。声の出し方も、基礎は終了している。良い声だ。メゾかドラマティックなソプラノが良いだろう。ソプラノだと重目の声。日本人離れした魅力的な声だと思う。良い勉強をしてきたのだと思う。フランス語の歌が歌いたいということで、やってきた。読み方はまったくの素人だ。オッフェンバックの「ホフマン物語」からロマンス「きじ鳩は逃げ去った」を読む。
発音記号の読み方と理屈を交えて、ぼくが読みながら真似してもらう。思ったよりも苦労はない感じだけど、本人は大汗をかいていた。日本人はみなCoeurのOEとあいまい母音の発音が狭くなり過ぎる。要注意。この曲。なんだか懐かしいと思ったら昔、音大時代に、サークルの発表会で、聞いたことがあったのだった。なんだか大昔の話になってしまったな…笑
とにかく、良い声だし問題があるとしたら、高音のチェンジ、2点Fis以上の声の出し方だろう。頭声をきちんと勉強していけば、狂いのない美しい高音も手に入るのは、そう遠い話ではないだろう。
デュパルクの楽譜を買ってもらって、「旅への誘い」と「哀しい歌」をやってもらうことにする。これからが楽しみである。

さわださん。
今日は、発声を徹底的にやる。頭声をやってみるけど、どうも彼女の場合ポジションを崩して分からなくなりそうだったので、止めにして普通の声で響きを上顎に当てるような練習をする。軟口蓋の上がりが悪いので、Ngaで高音を練習すると、少し上が開いてきたけど、今度は喉が締まって浅い響きになってしまう。この辺り難しい。彼女の歌っている首や顔の辺りを仔細に観察すると、喉を下げるためだろうか?かなり喉の下の筋肉が張っている。胸声が強いのはこのせいだろうか。このことを指摘して、少し力を抜いてもらって声を出す。そして響きを今度は上顎に徹底して当てるために、ぼくが彼女のあごを押さえつけて、後頭部を動かないようにして、出してもらう。面白いもので響きが上に行くようになる。このやり方が良いので、これを意識して、プッチーニのDonde lietaを歌う。全体に声が前に響くし、発音の浅さもなくなる。母音による響きの違いがなくなるのだ。まだまだ、慣れていないので練習の要ありだけど、悪くない。高音を出すときには、くれぐれもあごを上げないで引くようにして響きを深くすることを大事にして欲しい。


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9月23日

すずきさん。発声では高音よりも中低音を中心に。彼女の課題だけども、中低音が喉の開きが悪いために、子供のような声ですかすかになってしまう。もちろんチェンジしてからの声。結局一番効果的なのはイの母音でしっかり声を当てること。そしてその響きを応用してエそしてアに移行していくことだ。これは難しいけども、いつも気をつけて欲しい。簡単に出来ることは、唇の使い方。朝顔のラッパよろしく唇を開いて、声をしっかり前に押し出すことも良いだろう。曲のほうは大分歌い通せるようになっているけど、特に前半のそれほど高くないところの声が、発声上の前期の問題が残る。ただ、これは相当時間がかかるから、焦らないで欲しい。それよりも、しっかり暗譜してほしい。取りあえず口先で憶えたら、今度はノートに憶えたドイツ語を正確な綴りで書き戻すことをやってほしい。その上で大事な単語だけでも辞書を引いておくことを奨める。

りりこさん。今日はお疲れのようだったので発声もそこそこにイタリア歌曲を歌う。どうしたことか、メシアンを歌わないし発声もどうもうまく行かない。彼女はその辺り実に正直だから、なにかあったのだ。。と思ったけど、当たりだった。笑
その理由は後でわかった。コンサートの話を半分くらいしたかな。彼女は音楽あるいはコンサートというものへの考えが随分としっかりあるようだ。真摯な気持ちで彼女のコンサート評を聞いた。その通りだとも思うけども、とどのつまり、ぼくの責任に集約されることだ。実はぼくも若い頃自分の先生に対して思っていたことと同じ事だった。ぼくの言い訳としては自分の出来る範囲。理性と経験と現実の範囲で考えた末に、自分で決めてやったコンサートだ。批判は批判として受け止めるけども、悪かったことも含めて自分が責任を取って、逆にそのことの後始末も含めて考えたい。でも、真摯な評論はありがたかった。

ゆきえさん。発声は随分スムーズだった。高音のチェンジ近辺の声もかなり楽にそつなく繋がるようになっている。何より、声を無理に出さなくなっている。スムーズさと無理の無さを考えて声を出してくれているからだろう。楽に声を出せる範囲ではもう少し響きを意識して声を出せると良いだろう。
曲は、シューベルトのアヴェマリア。母音やラララで歌いまわしを勉強する。フレージングの基礎。昇りのクレッシェンド、下がりにディミニュエンドを教える。このことは、息の使い方でもある。お腹を使ってしっかりと息を回して歌いまわしていくことの基礎を憶えて欲しい。ドイツ語での歌も前半を勉強した。ドイツ語で歌うことが初めての彼女にとっては、かなり難しい作業だったようだ。最終的に通したけども、慣れない言葉を詰まらないで、つっかえないで、歌い通すことも大事なこと。もっとたくさん教えて上げたいし基礎は大事なので今のうちにみっちりやってほしい。大事なことは、はばたくことでもあるけども、自分自身が地道な作業を積み上げて、その上で飛躍することを胆に銘じて欲しい。
積み重なりがないままに飛躍出来たとしても、羽がその重みに耐え兼ねてすぐに落下してしまうから。

いとうさん。ぼくの所に来ている某合唱団のベースパートの一人。発声に難ありとのことで、指導者から送られてきた。声を聞くが実に素直な良い発声である。悪い癖がないのが、彼の何よりの美点だ。たとえ今うまく行かなくても、この癖のなさであれば、ちょっとしたきっかけでぐんぐん伸びていく。何よりも高音に至るまで、喉や身体に変な力の入れ方がない。そのために、自然な声のチェンジが出来ている。問題は素直に出し過ぎるあまり、声に力がない。高いほうはポジションが高くなるのだ。低音部からドレミの3音で、腰の筋肉の使い方を教える。最初の声のポジションも常に深めに意識すること。次に、声をしっかり当てる練習。例によって喉の下の窪みに声を当てる。イの母音から始める。そしてエ…アと実に素直に簡単に声量が出るようになった。後は上顎部への響きの意識を常に持って行くことも大事だ。最後に、アペルトな軽い声の出し方。いわゆるあくびの口の状態で行きを脳天めがけて当てて声を出す。後頭部に響きが行き、声がやわらかくなる。大事な事は息の送りをスピード感を持って行うこと。きょうやったことは、全て実に素直に、受け入れて出来た。なかなか素質も、勘 も良いものがあると思う。あとは、歌うときのマインド、積極性あるのみだ。

よしおかさん。
発声だけども、声の暖まりが遅いことが判明。問題は、喉の開きと鼻腔の開き、そこへ息と声を送ること、そのために喉にひっかかりなく、声を出せること。喉を単なる通過点として、息を素早く送る意識が大切だ。この辺り、何度もやれば、出来るのだがまだまだ身につかない。癖だけども、喉で留まってしまうことだ。何度も言うが、息を脳天、あるいはおでこまで送りきって声を出すことを大事にしてほしい。もっと低レベルで言えば、もっと身体をしっかり使って声を出すこと。腰を使うこと。あごを出さないように、姿勢に気をつける事は言うまでもない。彼女が同じ事を何度も言われて根気を無くさないかな。。。と心配だった。同じ事を本当にしつこく言わないと、皆なかなか本当のテクニックは身につかないものなのだ。概して、プライドが高い人は、この辺りで挫折する。彼女の良いところは謙虚なところだ。何事によらず謙虚さは大切な美徳だと思う。確かに謙虚なだけでは、威厳のあるプロらしいプレイは出来ないかもしれないが、半端なテクで威厳だけは一丁前の演奏は滑稽なだけだ。そういう演奏はすぐに化けの皮がはがれるのだ。だから、本当に素人で、謙虚に学ぼうとしている彼 女には、なんとか、今のうちにみっちり基礎を身につけて欲しい。声を聞いているうちにメゾというイメージが出来たので、今後はこの声でみっちり教えていきたいと思う。



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9月21日

あめくさん。雨がたくさん降っているのに夜遅く来てくれるのは嬉しいものだ。彼女が仕事しているCDの音楽を聴いた。フランスのクリンペライのアリスワンダーランドというのと、Novell cell poem
なんだか、昔はやったタマを思い出した(笑)それから、子供の頃に始めてビートルズを聞いたときのような、アメリカじゃなくてヨーロッパ〜!という感じ。とても新鮮だった。トイポップというらしいけども、子供の頃の音感覚が甦るようなシンプルで懐かしい感じのサウンドだ。こんな若い世代の新しいものに触れられるのも、喜びだ。
さて、彼女の発声だけど大分高い声が出るようになってきた。今のところ、高い声は頭声で軽く出すのが良さそう。口をしっかり開けても良いし、閉じ気味でも良い。いずれにしても、息を素早く送ることと、なるべく高いところめがけて送る感じが大事だろう。喉で出すことを忘れてやってほしい。声帯が多分大きいと思うけど、喉でひっかかりりやすい。低音は地声にすると驚くほど太い声が出る。フランスで言うコントラアルトが出来そうなくらい。ということは、カウンターテナーに近いくらいだ。まあこの声は良いとして、中音部の息漏れを少なくしてなるべく声を前に集めるために、口の使い方を教えた。ウの口をしてなるべくすぼめて、唇が突き出るように。ぼくの先生がベゼーの口と良くいっていたけど、こういうことをレッスンで言うと、いかにもオヤジと思われるのでぼくは言いたくない(笑)
その口で縦に開くと、唇が外に捲れた感じになる。これで声を前にしっかりと出すのだ。こうするとアの母音でもしっかりと声帯の閉じたきれいな響きになる。後、声を喉の下の窪みにしっかりと当てて出すこと。高い方は少しまだ中途半端だけども、低いほうがかなり効果が出ていた。高音でこれが思い切りできると、かなり声が出るようになる。
アマリッリを歌うときもこれを意識してもらう。やはり、声を前に当てることと、イの母音の時だけでも喉のくぼみにしっかり当てる感じを持ってもらうと、うまく行く。音程は良いので、今後は今日勉強した声質に注意して欲しい。それから、単純にお腹から声を出すことも忘れないように。それと、もっとしっかりと声を出すことを基本に心がけてほしい。もと声が良いから、喋るときも胸板に軽く響かせるようにして喋るだけでも、良い喋り声になると思う。普段でもそういうことに気をつけると、歌声にも良い影響が出るから、積極的に声を使って欲しい。


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9月17日

今日は火傷をした手が水脹れになったため、短いです(笑)悪しからず。

さわださん。発声練習を始めたら、いつもと違ってきちんと声を響かせる感じが出来ていた。高いほうに行くと自然にきれいな頭声になっていた。練習をしたらしい。彼女は寸暇を割いて良く練習をするし良くこちらの言うことを聞いてくれる。今あらためて、自分の教え方が問われるような気がして身が引き締まる思いがした。彼女は、まだ高音が喉っぽい。喉で鳴った声がそのまま出て来てしまう感じだ。もちろんチェンジはしているのだけど、完全な頭声の出し方を分からないうちに、中声の出し方で上まで持っていくために、共鳴がつかないし、喉がきれいに開いている感じが出来ない。頭声をやる際にも、口を狭くすれば自然に頭に響くのだが、その前にどうも喉周辺にどうしても力が入ってしまう。ここで辞めておけば良かったのだけど、今度は、ならばということで、中声をしっかりさせる練習をした。喉の下に当てる練習だ。これがどうもうまく行かず、そのまま尾を引いてしまった。
ミミのアリアで軽い頭声を出そうとしたのだけど、喉にひっかかって、どうしても鼻腔への軽い自然な共鳴が出来なかった。トスカのアリアも同じ。このために、高音のフォルテでも喉で押してしまい、苦しそうだ。これから、このことを相当真剣に教えないと、なかなか大変なだ。でも、彼女は頑張るのできっとクリアできるだろう。まずは、息だけで鼻先でフンフンと小さな軽い感じで出すことを練習して見て欲しい。この際に、喉には絶対に当たらない感じを持つこと。次回また、練習しよう。

にしさん。
発声練習をすると、大分声が落ち着いて音程も悪くないが、まだ喉のどこかに力が入った声の出し方をしている。くぐもったような、こもった声だ。これがどうも良く分からない。色々やりながら、今日は1点Aまで出してほどほどにして、曲の譜読みをすることにした。トスティの「マリア」から。この曲はテノールでもバリトンでも歌える程良い高さと音域の曲なので、彼には最適だ。歌って見ると、そこそこきれいに、安定して歌えている。しかし、発声で聞かれる通り、喉に力の入ったこもった音質でなんとも声の効率が悪すぎる。どうしたら治るだろう?と、思いついたのが、おもいきり喉声で歌ってみることである。喉だけで、鳴らすのだ。これを始めたらウソのように、喉の力が抜けて、声のこもりがなくなった。喉の力を抜く前に、共鳴だとか、ブレスだとか、喉の開きだとかに気を取られる余り、喉に力が入ってしまっているのだろう。こういうケースは実は多い。特に男声。妙な情報で喉で歌ってはいけない。ということばかりが喧伝されるあまりに、余計なことを他のところでして、力んで逆に喉に力を入れてしまっているのだ。肩凝りを治そうと自分で肩を揉むあまりに、肩に力が入っ てしまい肩凝りがいつまで経って治らないのと一緒だ。こういう喉声に悩んでいる御仁は一度、思い切り喉声で歌って見て欲しい。そして、楽に喉で出せる感じがつかめたら、あごを引いて、下あごを動かさない方法で、発音して、響きを上顎部に当てる感じにして見て欲しい。これだけで、かなりの確立で喉声が治る。取り合えず、この他の「夢」「セレナーデ」も問題はないと思う。この3曲を発表会のプログラムにしよう。たのしみだ!ガンバレよ!


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9月16日

きょうは手に火傷をしたので、キーボード打つのが厳しいです。手短ですが、悪しからず。

りりこさん。体調不良とのことで来月からしばらく休むらしい。残念だが良くなってまた来て欲しい。
発声練習をやりだしたら、そんなわけでちょっと元気がないのだけど、むしろ音程感が良かった。いつも彼女は元気なので、有り余る元気がちょっと声を外してしまうのかな。発声は大体良かった。大分落ち着いた良い声になっているし、音程も良い。高い声も素直になってきた。やはり彼女の持ち声はメゾかソプラノでも低めだと思う。中低音部の声は魅力的だと思う。アマリッリで発声を見る。お腹をパ〜ンと入れて息を瞬時に送ってスパ〜ン!とした声を出すと、自然に喉も力が入ってない。やはり、お腹を積極的に使うことが出来てないのだろう。でも、きょうは大分それが出来るようになった。アマリッリでこの練習は続けて欲しい。曲はメシアンを譜読みした。ピアノがきちんと入ればもっと譜読みも楽に出来るだろう。これは先の楽しみに取って置くとして、他のメシアンを見てもらうことにした。休んでいる間は、軽い発声と曲をとにかく歌うこと、イタリア歌曲集は忘れないで、発声代わりにいつも歌って欲しい。

ゆきえさん。

発声練習を低い方から始める。少し胸に響かす感じでやると、深みのある良い声が出る。中低音はこの声を活用できると良い。楽にだけ出さないで、お腹から響かすようにすることを憶えて欲しい。高い声は、まだ喉が締まり気味だけども、大分滑らかに出せるようになってきた。特に2点E以上の高音を出す際には、取りあえずあまり口を開けないで、頭声になるように、口をあまり開けないで後頭部に響かす感じで出して欲しい。あごは引いたほうが喉がうろうろせずに、要するに喉を意識せずに出せるのではないかな。それと、ブレス。まだ胸でブレスしている感じ。お腹、横隔膜を広げるようにしてブレスして見て欲しい。そして、またフレーズの中で声を余計に響かす場合は、その横隔膜を横あるいは背中のほうに広げる感じで出して見て欲しい。声を出してからやるのではなく、声を出すためにその筋肉を働かせると思って欲しい。楽譜の読み方を勉強した。拍子の問題。小節単位の音符と数の関係が四分の四とか四分の三という表記になること。付点音符の数え方は、手で拍子を取りながら勉強して欲しい。コールユーブンゲンをやってみたけど、意外に譜面が読めているし、音感もとても良い。音 楽性はしっかりあるのだから、自信持って少し理屈のことも勉強すると良い。曲はシューベルトのアヴェマリアをドイツ語の読み方と、ラララで譜読み。声の悪い癖や良いところを勉強するには丁度良い曲だ。これからが楽しみだ。

すずきさん。

発声は低い方から始めた。チェンジしてからの声だけど、なるべく地声と混ぜるような感じを保ってほしい。高い声だけど、頬を上げること、口もそれに応じた開き方を守って欲しい。その際に後頭部や軟口蓋に当てる意識が有効だろう。音域によるけども、2点bくらいまでは、しっかりと、喉を開いてお腹から出す、あるいは、喉の下の窪みに当てて、きちん声帯を鳴らす感覚は大事にしてほしい。そして、3点C以上になったら、後頭部や脳天あるいはもっと高い所めがけて当てるように。頬を上げたり口を横に開くことを声を上げるための方法として積極的にやって見て欲しい。スタッカートでも高音の練習をする、2点bまでくらいは、やはり喉の奥を意識して当てる感じ。それ以上は軟口蓋に当てる感じを大事に。それにしても、良く高い声が出る。夜の女王のアリアをドイツ語で歌ってみる。とりあえず何とかできそうだ。後は、暗譜を早くして、暗譜で歌えるようになってから細かい練習を始めたい。高いところのボカリーズは別として、これもやはり2点bくらいまでは、しっかりした声を出すこと。軟口蓋よりも、喉の下の窪みに瞬時に当てて、しっかりした高音を出すように。

よしおかさん。
発声練習を始めて気づいたのは、大分声のチェンジがはっきりとしてきたこと。下の地声領域から段々と上がると、1点Gくらいから、声が変る。なるべく軟口蓋を開けることと、喉を開けることを憶えて欲しい。これは、あくびをする感じ。口先を開けるのではなく、口の中を開いた感じ。これは言葉で歌うときも同じ事。それから、頭声領域になったらば、今は軟口蓋に息をしっかり送って出すように。とにかく声を出す際に絶対にちゅうちょして出さないでほしい。発声練習の時は一つのリズムに乗って歌うわけなので、そのリズムから外れずに、思い切り良く出して欲しい。特に高い声は出ない…と思っては駄目だ。そういう所から微妙な緊張が生まれるからますます声を出しにくくしてしまう。難しい発声の理論よりもそういう心がけというか、心の在り方がとても大事な、とてもメンタルな分野である。さて、曲だけども、O cessate di piagarmi...やはり気になるのが発音と発声の関係だ。アやイの母音そして全体に口先の発音になってしまうために、前述の口の中が開かない感じがある。軟口蓋あるいは鼻腔に開きを与えるためには、上唇の柔軟な使い方や頬の緊張感、目からこめかみにかけての開きなどが大事になってくる。上唇で発音することで、響きが下に落ちないし、鼻腔に共鳴を持たせられる。このあたりを良く勉強して欲しい。声はどんどん出て来ているから心配ない。

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9月15日

こぬまさん。
彼女はソプラノだが合唱団が歌う場所である。彼女の合唱団は一人一人が高いレベルを要求されるのでソリストとしても通用する技術を得ることが目的なのであろう。全体に軽い美しい声を出せるのだが、その分中低音部の響きが弱いことと、高音も本当のしっかりした高音が出せないことにある。とはいっても、普通に聞けば充分だし、まして合唱なのでそれ以上の何が必要なのかなという気も正直あった。さて、低い声から発声を始めるのだが、一つは胸声域の声。とりあえず不安定ならば低い方の基準の声をちゃんと出すようにしてみる。彼女は胸声をあまり使ったことがないので、その声を出すのが不安なのだが、この声をきちんと出しておかないと、上に行ったときにちゃんと芯のある声を出すことがむずかしくなる。最初は喉声っぽく感じても良いのだ。使いなれない声帯の感覚なので違和感があるが、とりあえず今日の低音の出し方を少し憶えておいて欲しい。後は、そのまま上がっていけば、彼女の場合芯のある中音部がうまく出ていると思う。腰および腹筋の使い方がどうも良く分かっていないので、そのためもあって喉で出していると感じたのだろう。声を出すためのきっかけが喉ではなく て、腰の後ろへの張りとして出して見て欲しい。これは後にプーランクのExultate Deoをやったときに、やはり中音部から高音部の声をしっかり出す際にやってみたときに感じたことだ。この曲では、声、特に高音のしっかりしたこえをだすために、以前やった声を喉の下のくぼみにあてること、をやってみた。彼女はこのやりかたで充分しっかりした高音が出せるようになっている。腰の使い方と共に、一度現場で試して見て欲しい。そこで問題になったら、そこからまた新たなことをやってみたいと思う。

たにさん。
発声練習を低い声から始める。息が良く出る声になっている。高いチェンジで出そうとすると、息が良く出るのだ。そのかわり、お腹から声を出そうとすれば声も浅くならない、が、息漏れは多い。次に声を喉の下に当ててみると、声は良くなるのだけど、高くなってくると喉がつまってくる。彼女はまだ、喉の開きが充分に出来ていない。また、喉の開きと軟口蓋の上がり、いわゆる「あくび」 の口の形がつかめていない。これを練習した。これで低い方から発声をすると、中音部はやわらかく太さのある声がうまく出るのだけど、今度は下のチェンジの声になってしまうので、再び上のチェンジボイスに変るときに、声に段差が出てしまう。彼女はチェンジボイスがすごくはっきりあるので、ここが難しい。難しいけど、しばらくは音域と感覚でチェンジをしながら歌っていくのが良いのだろう。問題はチェンジそのものよりも、喉を良く開けること、軟口蓋を上げることを憶えることだろう。
曲は、ドビュッシーの「ビリティス」1曲目の歌いだしは、どうしても、言葉だけで歌ってしまい、響きが足りなくなる。声は良い。Pourのウ、jourのウ、HyasinthieのEの鼻母音をしっかり響かせることそれらの響きが中心をなすようにフレーズ全体を歌いまわすこと。後は、曲の部分によって、テンポの緩急をつけること、早く喋ること、響きを中心にすること、など、全体にお芝居を心がけると、素晴らしくなる。2曲目はとても良い、高音のFisが下の声で出して欲しいのだけど、なかなか難しかった。腰のしっかりした張り方、あごの下げ方、お腹の使い方などを中心にやってみた。まだ完全には行かないけど伴奏がきちんとつけば、音楽の勢いで行ける範囲だと思う。ここだけは、急に声を変えてしまうと他とのバランスが悪くなるので、なんとか頑張って欲しい。



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