2001年4月レッスンノートPart2

レッスンノート目次
4月15日 | 4月16日 | 4月18日 | 4月19日 | 4月21日 | 4月22日 | 4月23日 | 4月25日 | 4月26日
4月27日 | 4月28日 | 4月29日 | 4月30日
4月30日
とうとう、4月も終わりだ。嵐のような一ヶ月だった。朝ゆっくり寝る時間があるだけ良い方だろう。
きょうはさわださん。発声は軽く。喉が少し荒れているそうだが、最初から良い響きを出していた。
早速、オテロの「アヴェ・マリア」のレシタティヴォを練習。ここまで来ると、技術的なことではなくて言葉の意味、真実味が大事な要素だ。Ave maria piena di grazzia..という件から、声の大きさではなくて心の中で真実の祈りを唱える心がないと、とても声に反映することは出来ない。そのために、必要なブレスをまずやれば良いのだ。楽譜の記号に拘泥しないこと。ブレスをすると自然に声が出てしまう…くらいでないと、駄目だ。
アリアの最初のくだりは、やはりテンポが軽すぎる。もうすこしゆったりと、美しい心を声に託して歌わないと登場人物の純粋さが表現できない。その代わりブレスも充分間を持ってやること。
盛り上がりの部分は思わぬ悲劇の予感を表現し再現部ではまた心穏やかに。激しさの表現は思い切ってやることが大事。最後のAveの2点Asはとてもきれいな声が出ているから、最後のAmenに入る前に充分間を持って。これも、間を持たすのではなく祈りの心をそこにこめることだ。
Giannni schicciのO mio babbino caroは最初からしっかりと声を響かせて。自分が持っている一番良い声を最初から惜しみなく出す事。高い声も急がなくて良いから充分響かせて。思い切り歌いたいだけ歌う落ち着きを持たないと、中途半端な表現になってしまうよ。とにかく最初の声は、思い切り良くしないと、中途半端になるから恐い。そのためには、心持ち早めのブレスト声のアタックが必要。
イタリア古典歌曲の2曲も。最初の声のアタックが中途半端。迷ってる。ブレスの準備と声を出すタイミングを充分考えてほしい。とにかく最初の声さえ、うまく行けば、後は大丈夫。初め良ければ終わり良し!笑


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4月29
ゆかさん。発声を始めると、声が元に戻っている。始めたばかりだし、アマチュアの方だから無理もないのだが前回かなり良い感触があったので、こちらも欲が出るのだ。また念入りに発声をやって声が出るようになる。アの母音で始めるのだが、彼女は口の開け方に無理がない。力が適度に抜けているのだ。ただ、音程が少し高くなると、軟口蓋が上がらないので、音程がフラットになって喉が詰まる感じがある。この時点で軟口蓋の上げ方を教えると、多分せっかくのあごの脱力が崩れるのでこの時点では教えない。軟口蓋の上げ方というのは難しいから、初心者にはあまり教えたくない。少し声が出るようになってからでも遅くないと思う。さて、そこで口を軽く開けてもらうと、ほんの少し声に色がついてくるのがわかる。要するにあごを下げるから声帯に適度に緊張感が出て、鳴るようになるのだ。次に息を吐く練習。腹直筋を腹の中に入れて(へこまして)、口から意識して息を吐く。この時、ティッシュを口の前に当て、息が出ることを確認する。今度は、息を口から出さずに脳天めがけて送るような意識で。ティッシュの動きに注意することと、息を送る場所を変えると、感覚的にどうい う違いがあるかを実感してもらう。息は口から出ても良いし、脳天めがけても良いのだが要するに、腹できちっと息を上に送る意識を持ってほしいということ。次にイの母音で発声をする。それも胸声を意識させる。あごに声を当てるように。下唇を少し突き出して(あごではない唇だけ)そこで声を引っ張り出すように意識する。あごは、やや引いて声帯が動かないように。腰の筋肉を後ろに押すようにして支えること。すると、たちどころに声帯が合って、鳴るようになる。そして、イ〜エ〜アと同じ音で母音の音質を調整する。ここまでで約40分くらい。良い所は、無理がないのでやればやっただけ、着実に成果が現れてくる所。こちらも焦りは禁物だけど、退歩しないように少しずつ前進してほしい。声が楽に出るようになれば、更に歌が楽しくなるからだ。身体がそういう身体になってくると、今度はやたら声を出したくなってくるものだ。
発声練習で少し力んだせいか貧血気味になる。食事時のレッスンで血糖値も低かったのか?何しろ声楽は肉体労働だから、少し腹に何か入れてきた方が良いだろう。
歌は、Nel cor piu non mi sento…イタリア語の読み。単語の読み方をやって譜割りに合わせて言葉をリズムだけで読む練習。そして、言葉を付けて歌う。まだ言葉に慣れていないせいか、声が浅くなるが、意識すると戻る。声自体は大分出ているから、後は言葉を付けた時の発声について勉強したい。Caro mio ben.は前回までに注意したことがほとんど出来ている。同じ曲でもう少し声を洗練することも勉強になるから、しばらくこれも続けて勉強しよう。


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4月28日
ゆうこさん。前回よりも元気そうだったので一安心。発声練習時に思い切って、今までやらなかったことをやってみた。どうしても地声の域から脱しないこと。それは、息を吸って息を喉にぶつけてボンと声を出してしまう癖だ。それでも、声帯の強さのせいと腹筋の強さか持ち前のものか、音程が良くて適度に鼻腔に響くため、中低域の声はなかなか魅力的なのだ。今回、中田喜直のさくら横丁をやると、どうしても高音域が苦しくてブレスが足りないために、この問題からなんとか抜け出してもらいたかったのだ。まずブレスをする時に、胸を開いて、喉から鼻の奥にかけて空気の層が出来るように意識すること。そして声を軟口蓋の所で音程を取って軽く出すこと。このやりかたで、地声から響きのあるチェンジした声をつかんでほしい。あるいは、この鼻の奥の軟口蓋の意識を高めるために、ハミングをやってみる。ところが、彼女はハミングが極端に苦手だ。逆に言えば、苦手だから高音域のチェンジボイスがうまく行かないのだろう。結局この試みは挫折して、少しテンポアップして曲を歌ってみることにした。本人は不満なようで、やはり、本番直前に余計なことをするもんじゃないな…と 反省。
もう一回、次回に課題を残した。
ベッリーニ二曲は今の声で充分だと思う。後は、良い乗りで歌えれば100点満点だ!

たにさん。きょうは体調は良いようだったが、調子は今一つだった。これも発声のやり方が悪かったかな…メンタルな行為だから、理屈を通すだけでは駄目だ。身体の中にみなぎるやる気みたいなものを引き出してあげることも、我々の仕事だ。。。これも反省。
発声では、やはり声帯の位置決めが不安定で、声がひっくり返りそうな感じ。彼女は声帯を下から引っ張る筋肉が多分弱いのだろう。以前にたかはしさんが、やはりそうだった。きょうは、それを避けるために、息のまわしを中心に練習する。要するに、声帯の位置の不安定さをフレーズを流すことでやり過ごそう!というやや姑息な手段だ。これら、色々なことをやるも、根本的な解決には繋がらなかった。どうも、うまく言葉に出来ないのだが、やはり息が口から前に出てしまう傾向が、喉の不安定さを助長しているのではないか?息を口から出すのではなく、真っ直ぐ上に脳天めがけて送る感じ。必然的に息は声帯の後ろ側をすり抜ける感じ…というようなイメージだと。声がひっくり返らないのではないかと思う。確か、昔ぼくもボイトレの先生に指摘されたことがある。声帯の裏側、あるいは首側の方をすり抜ける感じだ。 腹の筋肉だけを使って息を首の方から後頭部にそって出すようなイメージで吐く練習をしてみるのも良いかもしれない。当然口を開ける必要なあまりないだろう。とにかく腹を使うことだ。
曲は、ロンサールとマラルメ。発声の問題がからむので、細かくは出来なかった。曲を歌っている方が案外安定はしていると思う。ただ、ブレスの力が弱いのでやはりテンポ感がやや緩い。もう少しがっしりとしたテンポ感が歌から感じられると良いのだが。マラルメ後半のVers l'azur attendri d'octobre pale et pur qui mire au grand bassain sa langueurの言葉の流れを朗読の練習でつかんでほしい。

たむらさん。声は大分出てきた。特に地声からチェンジボイスの中声域にかけての声の厚みが少しだがついてきた。積極性が出てきたのだろう。彼女は意外とブレスが長いのと、落ち着いた性格のためか音楽に無駄がない。息をしっかりしなやかに入れること、そして声はもう少し前に明るく響かすことを心がけてほしい。ジョビンの曲2曲だが、「おいしい水」は大分出来てきた。最初のモティーフの一連の部分は充分に長い音符を歌い込んでほしい。テンポは急がないで、かつ正確にビートを感じてほしい。スキャットはもう少しリズミカルに歌えると良いな。Corcovadeは、やはり最初のゆっくりのテンポでのモティーフの声は、太く胸声を出して歌うこと。これを実践すると素晴らしく良い。大分分かってくれて出来るようになっている。もっと太く暖かい声が出るようになるだろう。そんな将来の声を予感させる響きが出ていた。Jazzなんかも良いだろうな。本番が楽しみだ。本番はこれまた響きが俄然変るから、その辺りに適応できるかどうか?


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4月26日
りりこさん。発声練習では、あまり色々なことをやらずに、音程を出すきっかけ、音のアタックについて注意を促すに止めた。あまり理屈をこねずに、とにかく声を出してみる。ただし、声を出す際のブレスというかタイミングを充分に感じてほしいということ。彼女は、簡単に声を出してしまい、音程がきっちりと行かないのだ。腰、横隔膜の実感が足りないのだろう。また、例えば、3度、5度などに上がる際も腹筋の意識がまだ足りないため、音程が上ずる癖がある。これも要注意。彼女はこれさえきっちりとやれば、かなり声は出るし、後は音楽的な訓練を充実させる方が得策だ、と思うのだ。本人自身が響きマニアというくらいなので、音楽的な練習をしないで発声で響きを追求して終わってしまうことは、危険だと思う。
さて、曲はドビュッシーのBeau soir....譜読みの段階。この曲と、プーランクの「偽りの婚約」から「花」を持ってきたのだが、図らずも、基礎、特にリズムの問題が浮かび上がった。ピアノを叩きながら音程を取っているのだと思うが、同様に右の脳みそで全体のイメージを捉えるのではなく、左の脳みそを使って、実質的に、分析的にリズムの問題を捉えてほしい。声を出す前に良く分析してから、今度はその曲の拍子で手を振るなり、叩くなりして言葉をリズムで読む練習。そして、次に母音などで歌いながらリズムを確認、などという段階的なリズム練習をやってほしい。本人が苦手だ、というのだから、まず苦手なことを克服しなくてはならない。
フランスの音楽、特に近代の音楽は新しいことをしていると思われがちだが、そうではなくてルネサンス期の旋法、それに即応する柔軟な和声構造、そして民謡などにある、変拍子の手法やスタイルを言葉のリズムに即応させて新しい手法を作り上げている。ドイツロマン派やイタリア古典に慣れきっていると難しく思ってしまうが、慣れてしまえばこれほど柔軟でイマジネーションに飛んだ音楽、声楽の世界を味わう喜びは他に代え難いものだ。
声の響きはとても良い響きが出て来ている。最初のモティーヴは特にうまく行っていると思う。
Fleur tenu dans tes brasのbras...Mi♭は素晴らしく響いた喉の空いた息の混ざった声だった。
良いものを持っているのだから、後はリズムの基礎をみっちり手に入れてほしい。
音楽というのは、イメージだけでなく数学的な理知的な美の要素が大きいと思う。声楽の世界はその辺りのアナライズが一般に弱いのだけど、大事にして欲しい。


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4月25日
ゆみさん。自分は、完成された声の持主に音楽を教えることも楽しいが、どちらかといえば未開発な声の持主を開発することに喜びを感じる方らしい。彼女も未開発な声の持主だ。ここに初めて来たときはなんとも暗い声で、声も出なかったけど、見る見る内に声が出るようになった。特に高音域が明るく響きがつくようになった。しかし、まだ不十分であることに変りはない。
声に対する固定的なイメージが本当の声の開発を妨げて癖となって邪魔していることではないかな。
自分の声を作るのはなかなか根気がいる。それは、自分の中で聞こえている音色と他人が判断するものとの間の距離感にあるのだ。それをどうやって埋めていくかということは一朝一夕ではいかないのだ。
きょうは、発声をアの母音で低い声から始める。しかし、声が鳴らないし声帯が合わないのでなんとも苦しそうな顔でなんとか響きを出そうと、口から鼻から型を作ってしまう。少し直してみるが、これを直していくのは時間がかかりそうだ。ブレスがいかにせん足りないので、ブレスを直す。やはり、下腹部だけを膨らましてブレスしている。これでは、本当の意味で横隔膜が広がらず、胸郭も広がらないので、ブレスがきちんと入らないし、コントロールもつけられない。腰をしぼめるようにして、胸も広げてブレスをすること。すると少しブレスが長くなる。逆三角形の体型になるように、ブレスしてほしい。発声で高音域に入ると、俄然ブレスが長くなる。それは声が良く鳴るようになることと、その効果で息を無駄使いしなくなるからだ。しかし、高音域から少し降りて中音部になると声が暗くなる。そこで、声を前に出してみる。今度は俄然声量が出る。気を良くして、低い方に降りてから地声を出してみる。地声も大分出るようだ。
曲は、イタリア古典歌曲集から、Sebben crudele
やはりブレスが足りない。そして声が口からすぐ下にこぼれ落ちるように、暗い声になる。これはエの母音が多く、軟口蓋が下がりがちだからかな。本人はあまり意識がないかもしれないけど、中音部から低音にかけては、下腹部によりかかって声を下に出しているのだろう。と思って、声を上に脳天めがけて送るように促す。さて、自分でそう言いながら矛盾してるな〜!と思うと案の定、そういう質問が帰ってくる。これが一番答えにくい。笑
結果論になるけど、歌を歌っている時には、明らかに下腹部によりかかって下向きの息で声を出していたので、声のエネルギーはなるべく上に向けて送ってほしいという意味だったと思う。発声の時には息の使い方に集中が行っていたので、声の共鳴を前に感じてほしいという意味だったと思う。発声の問題は、実はアーティキュレーション(言葉をともなう発音)が入ると問題がややこしくなる。
言葉を伴うと、途端に発声で分かったことが、台無しになることが多いのだ。
最後にアマリッリをやる。これは、やや音域が高いので、声が出しやすそうだった。事実2点C以上の声は良く響いていた。
今後は、出来れば発声の根本からやりたいと思っている。これがなかなか難しい。なぜなら、生理的に不愉快な声を意識して出したりすることもあるからだ。先に書いたように、自分の中にある声のイメージを少し変える努力をしないと、なかなか客観的な良い声を作るのが難しいという問題があるからだ。根気良く続けてほしいと思う。


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4月23日

さわださん。発声練習は軽くやる。イの母音で上向で。きょうは最初から良い声のポジションで出している。次にイエア3種類を同じ音形で5度。イとエは良いけど、アになると少し浅い。声をもう少し前に当てるように。上の歯の裏あるいは、硬口蓋にぶつけるようにすると、エやイと同じ音質になる。イタリア歌曲のPiacer d'amorからやる。最初の低い声、4度の跳躍は切れないように同じ声質でつなげるように。下の声の響きを変えないように。母音がイからエに変るので、例えばPia-cerとなっているのをce-erで歌って見て、声質を確認して、Pia-cerにしても、変らないように練習する。
2ページ目のtutto scoldaiのフレーズだが、ウの母音が苦手らしく響きが詰まって平べったくなる。
これは、声帯が上がってしまうから。声帯が上がらないように、あごを引いて、首の後ろを張るようにすること。そして、声を押さないで下あごに軽く当てる感じで出すと、喉が開いて、柔らかい深いポジションの声が出る。その後で出てくるイの母音で高い声も、あごを引いて下唇を少し出すような感じで、喉のつまりを取るのだ。狭い母音の高音は、テクニックがいるが、慣れると、むしろ出しやすいものだ。オテロのアリア「アヴェ・マリア」は、例によって、レシタティヴォを練習する。なかなかちょうど良い声質が得られない。歌詞の意味を考えて、内容が自然に歌声に反映されるように、練習してほしい。
技術的には、軟口蓋の開きというか、鼻腔の軽い響きが少ないので、音程がどうもフラット気味になる。Gesuの6度の跳躍は上に上がっても声質を抜かないように。pregaからの最初の旋律は1小節目の八分音符を急がずに、2小節目の4分音符で流れるようにした方が良い。そして3小節目に入って少しテンポを戻す感じ。フレーズのおしまいの4分休符は十分に尊重してほしい。この曲全体に言えるが、休符をきちっと尊重すること。そうすることで、この曲全体の音楽の緊張感が保たれるのだ。
最後の、ave,aveの最初のアの母音は軽く、硬直的に出さないように。横隔膜で軽く上に放り上げるように声を出すこと。その際に軟口蓋が高く意識されていること。柔らかい声が脳天めがけて放り上げる感じ。最後のAsのエの母音を切ってから。落ち着いて、低いAmenを言うこと。すぐに言わないこと。


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4月22日

みむらさん。発声練習をしていると気がついたのは、というか、前から分かっていたけど喉を楽にして声を息で軽く鳴らす感じで声を出している。そのために、あごの使い方が固定的だし身体もお腹と下半身でしっかり固定している。従って、安定してかつ無理の無い声が出ている。響きは比較的鼻腔に響いている感じだけど、前述のように固定的な身体の使い方のために、声を出すというより声を響かせているだけに止まっている…と言えば良いのかな。響いているのなら何が悪いのか?といわれそうだけど、ぼくらがやることは、声を響かせて音楽を演奏することにある。そう、例えば、弦で言えばボーイングの練習をして上りあるいは下りだけの開放弦で歌っている感じといえば良いだろうか?
ボーイングの際に腕の力の入れ加減はあるだろう。まったく力を抜いているだけだと、張りの無い音になってしまう。多少の力の入れ加減は必要だろう。
実際は、フレットを押さえて音程を出さなければならないし、ボーイングだって片方の動きだけでなく上げ下げや、小刻みな動きを取らなければならないだろう。
少し、隠喩のようになってしまったけども、声を出して歌を歌うということは、単に音を響かすだけではなくて、声を響かすための息の使い方に工夫がある。息にも力強さや、か細さ、速さ、遅さの違いがあるが、それが響きに反映されるようにならなければならない。多分今の発声のままだとクレッシェンド、デクレッシェンドが付けにくいだろう。そのためには、お腹の使い方、声帯の使い方、それらを効率よくコントロールするための姿勢の矯正が必要だ。今日は、伴奏合わせだったが、ほとんどきれいに歌えている。ただ前述の問題があるので、例えば全体に長い音符を気持ち良く響かせている…というイメージに終始していると思う。これからは、音楽に運動性を持たせるため、それを可能にする発声法にもう一度、トライして欲しい。そうは言ってもかなりきれいに歌えているので、更に上を目指して欲しいということ。

さつきさん。ひさしぶりといっても、まだ2回目だ。声楽をやるにはとても良い体格の方だ。今日軽く発声を始めて行くうちに、声のイメージが湧いた。少し声を下から出す感じを持てば多分変るだろう。月並みだけどお腹から声を出す感じ…といったら本人は手をお腹の所において声を出し始めた。すると声が驚くほど鳴り出す。比較的低い声域だったので、地声が混ざったのだけど、喉が上がらずに声が身体から出てきた。身体がとてもしっかりしているからだろう。初心者でこれだけ簡単に声が出るようになるのは珍しい。これが出来るのなら、後は声を出す際にというか、ブレスの時に喉が開く感じを持てれば、音域が高くなっても声のポジションが深くなって、太さのある気持ち良く響く声が出るようになると思う。曲は、カロミオベンを歌ってみる。曲になると、発声の時の良い声が出難くなる。どうしても声を出すときの意識が高くなってしまって、響きが浅くなるからだ。これは、口の開き方と、喉の奥が開いた感覚だ。ブレスをしたときに息がお腹から鼻の奥まで充満するような感覚を持つこと。これからやることは、数小節ごとにゆっくりと、母音を定めて声の響き方を確立していくこと。 時間はかかるが、まずそのことを大事にして、ある程度コツをつかんだら色々な曲を歌いながら、スキルを延ばしていけば良いと思う。コツをつかむまでにはもう一歩が必要だ。ただ、今日はそのコツのキッカケがつかめたと思う。コツをつかめば彼女は声がかなり出るタイプなので、とても楽しみだ。

ゆかさん。今日も前回と変らない声で発声を始めた。やや、細くて軽く出す声が彼女の特徴だ。でもぼくの勘なのだけど、ほんとうはもっと太い声が出るはずだ。さて、1点ソから下降5度で発声を始めたが、声の出し始めが不安定だったので、声を出す位置を決める。それから、ブレスする際に、口を開けて喉を開くようにブレスする感じ。喉を良く開いて息でスースーする所の更に深い所から声を出す感じ。後はみぞおちから上に向かって声を出す感じを持ってもらう。彼女は声を出す事に関して絶対に無理をしないので、こちらもゆっくりと発声しながら、彼女の声の変化に耳を傾けることになる。焦りは禁物だ。実は、出し過ぎる人よりも軽くても落ち着いて声を出してくれる人は教えるのが楽だ。
こちらのじっくりとした教え方に、素直について来てくれるからだ。次に2度の上向で、音質を変えずに音程を上げる練習をする。音程が上がるときにポンプの取ってを下に押し下げるように。腰の筋肉を使うことを促すイメージだ。すると、しばらくそのまま発声を続けていた声が微妙に鳴り出してくる。それまで、声帯の一部分しか振動していなかったものが声帯筋全体が振動をし始める感じだ。そこで、更に声を出しながら喉を開くことを促すために、口を開けることを薦める。これだけでも更に響きが変ることが実感できる。ただ、口を開けるのではなく、喉の奥が開くことを助けるために口を開くことを忘れずに。例えば、あくびをするように…ということをやってみる。もう少し喉の奥の開きが実感できると、更に音質が変って良くなるんだけど…
発声練習の最後に、低音域の地声の練習をする。ちょっと喉を意識してみること。すぐに出来たので後はもう一度その声で2度の上向音程を上述の方法で上がって行く。すると、大分声が響いて鳴るようになった。ここまでくれば、第一段階のコツはつかんだといえるだろう。後は、高い声の時の喉の開きと、腹筋の使い方が強く出来れば、相当声が出るようになると思う。曲はカロミオベンをやる。口の開け方がまだ、足りない所がある。自分の声を聞きながら、声と相談してもっと積極的に口の開きを促してみることが大切だろう。ただし、下あごを前に出さないように気を付けて欲しい。他の3曲、NINA、Nel cor piu non mi sento、Star vicinoの譜読みをやったが、すでに声を出すコツは大分つかんでいた。次回までにイタリア語を付けてほしい。楽しみだ。

りりこさん。発声練習は、地声の練習から始めてみる。彼女は地声に対して相当抵抗があるらしくてどうもうまく行かないようだ。無理なものは止めてチェンジした声で発声を始めると、声の鳴り方が大分違っている。彼女は、声楽を始めてまだ間も無いのだけど、イメージは豊富で色々な声を出す。ややこもった感じの音質だけど、声質としては魅力的だ。喉の奥に少し力が入った感じ。もう少し軟口蓋を高くして、声のポジションを高くとってもらうと、今度は浅くなる。彼女は少々理屈っぽい性格に反して、何を基準にその声を出しているか、という意味での音楽を演奏するに際しての明確なイメージが不足している。これは、声楽家にはありがちなのだけど、器楽的な練習方法を教わってないのだろう。古典的な声楽家の先生は、とにかく響かせることや、高音を出す事をまず教えるからだ。これも確かに大事なことだけど、ぼくはそのやり方には反対だ。なぜなら、このやり方は人によっては失敗するからだ。声楽教師は、声を出すことと音楽性とのバランスをどう考えて教えるかということに腐心しなければいけない、と思う。さて、彼女は最低限必要な響きの質には敏感なのだけど、例えば音程は どうやって取るのか?という類の問題に疎い。問題は声の出し始めだということと、声帯をきちんと合わせることを知ること。そのために喉の下の骨のなくなった窪みに声を当てる感覚で、発声練習をする。案の定、2点Aまでは太さのある、しかも喉の開いた声が出るようになった。まだ何も分からないと言いながら実は結構なことを身につけているのだ。
曲は、「夢の後に」を始める。アカペラで練習をすると音程の問題は、ほとんどクリアできてきた。本人はアカペラと、伴奏付きとで集中力が違うというが、本来は、伴奏付きでもアカペラでやっているのと同じくらいの集中力が必要なものなのだ。後は、響きに淫する傾向があるので、テンポを速めにしてブレスを少なく、1フレーズを長めに取ることをやる。このやりかただと、考える暇が無い。音楽に緊張感が出る。3連符は、素早く流すように気を付けてほしい。最後にプーランクの偽りの婚約から「花」を
譜読みする。彼女の声にはぴったりだ。ぜひ歌ってほしい。


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4月21日

ちあきさん、ひさしぶり。フォーレの「夢の後に」を持ってきた、フランス語の読みをやった。oeの発音は大きく開いたオの口でエを発音するように。発音は声を前に出す事がコツ。良くFleue(花)という発音をフルールと発音するけど、これは発音が中に入り過ぎたと思う。フランス語は前下母音といって調音をなるべく口先でするように。それからとても大事なのは、サシスセソのシとスィの違い。
例えば、CIel(空)これをシエル…と発音しては絶対に駄目。スィエルです。そしてエの母音を大きく
スィエ〜ルと出すようにすると空…の語感が出る。それから、ザジズゼゾのジとズィの違いも間違えないように。Les yeuxのリエゾンの所は、ズィ。ジとならないように。
歌は、良い声が出ている。花粉症と風邪のために、完全ではないようだけど、喉が痛くなければ声を出した方が気管支が活発になって、かえって調子が出ると思う。夢の後にでは3連符の扱いに気を付けてほしい。ちあきさんは、音大時代にソプラノだったようだけど、結構低い声まできれいに出ているしメゾと言っても悪くない声だ。とても品のある良い声なので、フォーレはピッタリだと思う。次回は月の光を勉強して欲しい。

ゆうこさん。

体調を悪くしていたようで、いつもの元気が少し無かった感じ。
地声がしっかりしていて、そのまま高い声まできれいに出るのだけど、そろそろ響きを高く効率良く使うことを覚えて欲しい。ブレスが足りないのもそのことで解決すると思う。ブレスをしたときに鼻の奥から軟口蓋の辺りに空気の層が出来るような感じになると良い。そこで声を軽く響かせば良いのだ。
これは、ブレスで入れた息をその辺りに貯める感じだ。慣れればブレスをしなくても、その感じがつかめるようになる。こういう状態を上が開くという言い方をする。上顎から上に響かす感じにしてほしい。そのためには、口の開きを最小限にすること。下あごがパカパカすると響きが下に落ちてしまう。これは軟口蓋が下がってしまうことでもある。ウやイの母音は苦手みたいだけど、喉は楽にして、そしてあごを引いて声帯を動かないようにし、軟口蓋から鼻にかけて響きを抜くようにすれば、響きのポイントが見つかると思う。ベッリーニの二曲は何とかなるけど、さくら横丁は、この響きを付けないと結構歌うのが苦しいと思う。最初の「さくらが咲くと」のくは高い。咲くとのさの響きがはまっていれば次のくはうまくはまるものだ。3ページ目の会い見るの時のとき。4度の跳躍できのミ♭が低くならないように。

たむらさん。

たむらさんは、とにかく身体を使って声を出すということだけでも集中して欲しい。上半身をしっかり良く伸ばすように。声がチェンジする所でも、我慢してお腹から声を出すように。彼女の場合は声帯が薄いので地声のままでしっかり出しても自然に柔らかい声になっていくからちょうど良いくらいだろう。
Corcovadoでは、最初のAの部分では声を床に落してゆっくりと塗りたくるように響かすこと。そうすると胸声がきれいに響く。落ち着いた歌い出しに相応しい声になる。前も書いたけど、e eu chi e la tristeとオクターブ上がる所は、充分に歌い込んで。終わりのmeu amorの所、meu a...um cantinho violaoとすぐ入ること。あるいは。umを出すタイミングをピアノと良くサンサンブルして合せること。
繰り返しに入ってからは、それまでと違ってもっと言葉を切るようにしてリズム感を出して欲しい。そして、最後のe eu chi e la tristeに入って突然最初のゆっくりのテンポで思い切りエスプレッシーヴォに戻って。最後の che felicidadeで充分にritardandoして終わる。
Agua de beberはこれも最大限声を使ってほしい。お腹から声を出す事。meu coracaoのmeuの高い声はきれいに出す必要はない。気合いでしっかり出せれば声が割れても何しても別に構わない、くらいに考えて出して欲しい。

たにさん。

発声練習をすると、しばらくは声が慣れない。チェンジする声とひっくり返る声がまぜこぜになってしまう。特に2点C〜Dくらい。声を出している感じはやはり、喉の所で引っかかっている感じだ。喉がもう少し広くあるいは太くなって、そこを腹から送った息がまっすぐ上に昇る感じがつかめると、声のひっかかりがなくなる感じ。声を送る方向を脳天めがけると良いと思う。どうしても前に出したがるのだろう。アマチュアのコーラスなどでも、良く勘違いする人は、喉を鳴らすと声が出ている感じがしていると思っていることだ。声を鳴らそうとするのではなくて、息を上に向けて送ってやれば、声は後から自然について来る、あるいは出てくる…という感じがつかめると良い。そういう意識を持てば、喉も楽になる。ただし、喉を楽にするあまりに喉がふにゃふにゃになってしまうのも行き過ぎだ。これはブレスをしたときに腹筋を広げれば自然に少し声帯が下に下がる感じを維持できれば良い。
と、なんだかんだやっていると、2点Fまですっきりと声が出るようになった。この感じを忘れないで。
曲は、ラヴェルのRonsard a son ameから。これは発声で出来た事をそのままやれば良い。くれぐれも声を鳴らそうとするのではなく、息を送ってやること。特に音程が3度〜4度と高く飛ぶ場合は、それを意識して欲しい。力で押すのではなく、送る息で感じること。
Soupirは大分出来てきた。最初の3ページは、きっちりとIn tempoを守って。4ページ目の頭Ver l'azurのVerはやや長めに響かしてから、その勢いで低いattendriまで一息で流れるように。そして次のd'octobre pale et purのpale のAは響きが下がらないようにして、purまで行くこと。qui mire au grand bassainも一息で遅くららずに。Sa languere infinieの最後のイはしっかり次の小節頭まで伸ばすこと。次の最後のページ。頭のet creuse un froid sillonのアーティキュレーションは口を動かさないで鼻腔に響かすように、しっかり出す事。次のse trainerのerは息をしっかり送って充分に低い声を響かして。


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4月19日

りりこさん。発声を始めるとやはり基礎がどうも定まっていないことを感じる。というのは本人はとても発声に興味を持っているのだが、やや情報に左右されていて、ぼくにとっては当然の段階を飛び越えて何か響きというもののイメージに一足飛びに飛んで声を出してしまっている…という印象なのだ。
本人もそれを自覚しているのだが、実際に声を出すと、悪いくせにすぐ戻ってしまう。昨日のあきこさんもそうだけど、まず基本的な声帯の鳴らし方(使い方)の段階で、癖がある。少しくぐもった声になりがち。中音部のイを発音すると鼻腔に響かそうとするのだが、声のアタックが低くてこもった母音になる。声が前に当たらないのだ。また、声の当て方がいつもふわ〜っとしているために音程が定まらない。これは、ブレスと腹筋の使い方がちゃんとしていないことに原因がある。響き云々の前に基礎的な声帯を鳴らすときの状態みたいなところから、始めたいのだ。ところがそのための発声練習を始めると、やにわに「これで声が飛ぶんですか?」という唐突な質問。これも驚きだ。良く声楽家は声を飛ばすという言い方をするけど、声を飛ばす前に飛ばすべき声がきちんと出来ていなければ、それは意味が無い。極端な言い方をすれば、飛ばすべき美しい声を作ってから飛ばすべきだろう。これは言葉のイメージだけど、ここに大きな問題がある。イメージが先行して、実践の段階で10歩先の練習をやろうとしているのだ。今後の方針をしっかりしないと、とてつもないことになるだろう。ぼく自身も 彼女の声に関して少しソプラノかメゾかというところで迷いがあったけど、今回はつくづく自分の教えたいことに専念するべきだ、と悟ることにになった。夢の後にを歌い出すとこれまた音程が上ずる。これも響きのイメージの先行によるものだろう。もう一回もう一度振り出しに戻って勉強を。


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4月18日

あきこさん。2週間ぶり。低い音域のウの母音で発声を始めるが、声が落ち力が入って胴間声になっている。声が鼻腔の方に軽く抜けていかない。イでやっても同じ。最後にアの母音でやると、今度は喉が楽になって、大分良い声にはなる。この間、観察をすると口の使い方にとても癖がある。まずブレスをするときに口を開けてブレスをする。その開け方が下あごに力が入った開け方だ。例えばウやイの母音でも微妙に下あごに力が入っている。そこで、まず地声を直す。喉やあごの力を抜いて平べったい声を意識して出してもらう。ミャーでもニャーでも良い。こうすると、驚くほど声が上に抜ける。初心者の方である程度声楽をやった方、あるいは合唱団などに入って活動をしている方は、クラシックの発声をするということで、口先だけである種のイメージの声を出してしまうのだ。口をとにかく縦に開いて日本人的な声にならないような声、とでもいうのだろうか…。これが習慣になって、くぐもった暗い音程の悪い声を出す原因となる。
さて、この方法で低い地声を矯正してから、チェンジした声を出す。この時も口の開け方には充分注意をする。あごは、軽く後ろに引くようにすること。くれぐれも下あごを前に出すようにしないこと。これだけで声は明るくなるし、響きが頭部や鼻腔に当たりやすくなる。もう少し上に行くと彼女も1点Aくらいからチェンジして今度は2点Eくらいからもう一段声がチェンジする。今度は、この2点Eからのチェンジを何とか2点Gまでは頑張ってもらう。腰でしっかり支えて出す。これは割とすんなりとうまく行く。これが出来ると強い声が出るようになる。ただし喉で出すのではなく腰で支えて響きは頭部、特に鼻腔に当てる感じだ。かなり、うまく行ったけど、まだ喉に力が入っている。
曲は、Vergin tutto amor。これも中音用で前回やったのだが、今回改めて聞くと、上に上げたように低音部の地声領域の声が、どうにもならない。音はフラットだし声も暗い。先ほどの発声で高音がかなり支えられるので思い切って高声用でやってみる。少し高音が苦しいが、支えとブレスがうまく行けば行けそうだった。歌っている所を観察してみると、やはりオの母音で特に口の使い方が悪い。どうも下あごを前に出す感じだ。そのために、軟口蓋が下がり、音程が低く響きも低くなる。どうやら彼女は合唱でアルトパートをしているために、口先で声質を作っていたのだと思う。低い声質に聞こえる声の出し方だ。これは良くない。ぼくが教えたいのは、パートがなんであるか、というよりもその人が持っている声を無理なく、かつ最大限に生かした声の出し方、使い方だ。まずそのことを覚えてもらってそこから、声域のことを選択していって欲しいと思う。


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4月16日

さわださん。今日は伴奏合わせをした。発声をやると、いつものようにエンジンのかかるのが遅かったのだけど、やはり、エンジンだけではなくて、声を出す際に気を付けることをいつでも、どんな時でも気を付ける姿勢を大事にして欲しい。響きを出すポイント、まずブレスの際に声帯周囲の開きを感じること、いわば発声の用意をすること。彼女のポイントは口を開き過ぎて、響きが浅くなること、そして響きが薄くなってしまうことだ。元来の肺活量が多いので、あまりからだの準備をしなくても、それなりに歌が歌えてしまうところが、逆に進歩を遅くしていたのだと思う。もっといえば、おれが甘かったんだな!笑
それは、ともかく発声練習でイの母音で声を響かすことそれも口からではなくて鼻から目にかけて響かす感じ。この際に口は丸く、唇を少し突き出すようにして欲しい。そして、イエアと母音を広げる。響きが大分良くなってきた所で、やや高い音域まで上げて低い地声領域まで、声をチェンジさせずに出す練習。チェンジしていても、芯に響きが付いてきたので地声に変えずに低い声まで出す練習にした。以前にくらべて、チェンジボイスの低音域でも、大分響きがついてきたのだ。
伴奏合わせは、オテロのアヴェマリアから。最初のレシタティーヴォがどうにもならないので、こちらが指揮を振ってあげる。要はもっと早く喋れば良いのだ。音を声を出すことだけに気を取られるからおかしなことになる。うまく行く。声の調子は大分良いので、後は言葉の語感と音楽がもう少し一致して欲しい。ただ、芝居的なアタックの仕方はあまり薦めたくないので、技術的に。やはりアーティキュレーションの際に口をパカパカとさせすぎだ。これが効を奏して、飛躍的に良くなった。響が集まってかつ、適度な音の太さも出て実に日本人離れした声になってきた。この曲の最後のAsの音aveのエの母音も口を開かずに、頭声を狙って欲しい。まだ、完全ではないがコツはつかみつつある。もう少し喉が楽になって、頭声の共鳴を感じる部分が見つかれば完璧に出来ると思う。ジャンニスキッキのo mio babbinoもこの声で最高音を出して欲しい。この曲の出だしはもう少し明るく、そしてテンポは軽やかに。イタリア歌曲集Lasciar d'amartiとPiacer d'amorは、最高の出来でした。思わず拍手!発表会が楽しみになってきた。


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4月15日

からしまくん。時間がなかったので、発声はやらずに、曲から。今日は伴奏合わせだった。彼は遠いし音大編入のための勉強もあり、レッスンになかなかこられないのだ。
フォーレの「ゆりかご」から。声を聞いておや、と思ったのは、中音部の声がずいぶんと鼻腔に共鳴するようになったことだ。低い声も適度に鳴るようになって、全体に音楽的な発声のこつをつかんだようだね。勉強の成果が現れて来て良かった。彼は、元来が楽器をやっていたので、耳はあるんだね。そこがぼくとの違い。ぼくは、楽器を何もやっていなかった。いきなり、声楽だったので、随分と苦労をしたものだった。
さて、「ゆりかご」では、全体にきれいに歌えているが、もう少し大きな音楽を目指して欲しい。ブレスを入れないで、1フレーズを歌いきろうとする気持ちは良いけど、そのために、音楽がややもすれば小さなイメージを受けてしまう。高い2点Esの音で、Curieuxのeuxの母音が開き過ぎだと思う。もう少し閉めて、鼻腔の方に声を流してやれば、共鳴が得られると思う。tentent les horizonsの次でブレスをして良いから、Leurentの2点Fはしっかりと、クレシェンド出来るくらいの余裕があった方が良いと思う、最後のBerceauxのbの音は、あまり落さないで、共鳴点に響かせるようにした方がきれいだと思う。月の光。これも全体に音楽が小さい。ピアノ伴奏もあるけど、この曲はもう少しゆったりとしたメヌエットで感じて欲しい。特に男のバリトンの声だ。そうしないと、声の響きがゆったりと広がっていかないのだ。 バリトンにはバリトンのふくよかな、落ち着きのある響きと言う美点がある。この曲ではその美点が充分に生かされるよう演奏して欲しい。そして、優雅なメヌエットの3拍子を忘れずに。
この場合。かっちりとした3拍子でなくてはならない。バロック風な典雅な味わいの曲だから。
アーンの「我が詩に翼ありせば」この曲も、きれいに歌えているが、やはり軽い。もう少し重みと味わいが欲しい。「月の光」と同様の理由でだ。声楽家と言うのは、自分の声域の特徴を良く理解してつかんでそれを、表現の大事な要素として認識することが大事である。
テンポは早すぎずに。そして、フレーズを歌い込むときに、推進力で先に進み過ぎずに、むしろIn tempoでかっちりと前半を歌うこと。ブレスがきつかったら、ブレスしても良い。後半のPlus lentからは明快にゆっくりとすること。最後のComme l'amourのCommeとl'amourの間は、ブレスしても良いから聞こえないブレスを工夫すること。そして、最後のウの主音をしっかりとしかし静かに伸ばして欲しい。

たにさん。今日も、発声で声の難しいポジションを探すことから始める。チェンジした声でも高い方で声が不安定になる癖がある。その状態がぼく自身には正確にわからないので、Q&A式にやっていかざるを得ない。色々とやるが、結局、ブレスの準備が悪いこと、横隔膜の開きとその維持が悪いこと、喉の開きが悪いことが関係ある。一点にまとめると、やはりブレスとその準備、そして腹筋を維持する筋力がやや弱いことだろう。これは、たくさん息を吸うことでもないし、大きな声を出すことでもない。ぼくの持論は、その人なりの持てる筋力で良いからやるべき事をきちんとやる、ということ。はい、声を出して…といったときに、ブレスして身体の準備をするための運動神経の「速さ」の方が問題だと思う。筋力よりも、その反応の速さを確実にしてほしい。これは時間を早くという意味ではなく、ブレスの際に必要なことを忘れずに、必ずして欲しいということだ。横隔膜は開いたか?腹部はアタックの準備が出来ているか?喉は開いているか?
慣れるまでは、時間がかかっても良いから、このことを必ず確認して声を出して欲しい。何度もやっているうちにそれが反射神経になってくる。
さて、今日出来た最大の美点は、喉を開いて声を出すことが出来た事だ。それも高い声域でだ!
口先を開くのではなく、喉を開くこと。例えば、声帯が縦に附いていて、その下の方を鳴らす感覚。
この感覚が身に附けば、実は口はそれほど開かなくても、喉の奥が開くのが分かるようになる。
ラヴェルの「マラルメの3つの歌」1曲目の「ため息」をやる。曲の練習でも、フレーズの細かい単位で自身の声を良く聞いて、良い響きが出来るように、じっくりと練習して欲しい。音域によって声のポジションが微妙に違うので、それも良く理解して欲しい。発音では、ナザール(鼻母音)が全て「ン」が入ってしまい、レガートが途切れてしまうことに注意。最初のページのOh calme soeurの4度の跳躍。これは発声練習でつかんだコツを忘れないで欲しい。跳躍したレの音を、前にバン!と当てて出すのではなく、声帯の深いポジションで軽く当てる感覚。この場合、声帯で発音した音声の方向は前ではなくて真上に飛ばす感じ。飛ばすときの腹筋の開きも必要になる。この曲は全体に音域は低いが、結構な腹筋を要求する曲だ。すでに、今日教えたことでほとんどうまく行けるようになったと思う。どうか一つずつのことをゆっくりで良いから確実にクリアして進んで欲しい。

たむらさん。発声練習を久しぶりにやるが、腹筋が弱い。ブレスも弱い。しなやかさにかけていると思う。しばらく、レッスンをやっていなかったので仕方ないが発声練習は大事だ。Jobimの「おいしい水」から始める。最初に出てくる、この曲の売りとも言えるスキャットが力が無い。本人がやりたくないと言っているだけあって、テンションが低い。詩の解釈とかよりも、マイク無しの声で、この曲が持っているリズム感を最大限生かした演奏をして欲しい。そのためには、相当なテンションを準備しなければならない。ちょっと触わったらはじけるくらいの、体の準備をして欲しい。変な例えだけど、気持ちとしては怒っていて、ちょっと何か言っただけで、何さ!と罵声を飛ばされるくらいの、跳ね返った気分で演奏に望んで欲しい。そうすれば、お客さんは、この曲が良く分かると思う。
それから、大事なことはリズム。1フレーズを息を出しきって、その反動でブレスをするリズム感を養って欲しい。それよりも、まず基本的な2拍子を数えて譜読みを確実にしてほしい。
もう一曲、Corcovado。こちらは、大分きれいに歌えてた。前半のレシタティーヴォ風に歌うところは、もっと声を聞かせてほしい。ということは、もっと言葉のアーティキュレーションを生かして、母音の美しさを大胆に出して欲しい。例えば、最初の Un catinho violaoのチとか、ラの所を引っ張って伸ばして声を良く聞かせるのだ。次のmuita calmaなどのアの母音もそうだ。そして、この曲の唯一のサビの部分、声がオクターブ高くなるe eu chi e la triste のところは、もっと心に響かせて歌って欲しい。
でも、大分見えてきたから、もう少し!

ゆかさん。発声を始めてから、体つきを見ていると、やはりブレスの際の身体、特に上半身全体の伸びが足りない。胸も広く使うように。ブレスの練習をすることがあったら、必ず手を広げて、胸の広さも実感するようにして欲しい。そして、横隔膜の開き。腹筋の使い方を忘れないように。でも、彼女の美点と言うのは意外と声を出すことに慎重であることだ。コツコツとじっくりと声を錬磨していく方が、結局は良く伸びると思う。歌を聴いていると、それぞれの性格と言うのが良く分かる。さて、しばらくやって喉を暖めると、声が乗ってきたので、今度は2点Cくらいからイの母音で声を出す練習。口を丸くしてあごに声を当てる感じ。または、唇に緊張感を持って、下唇に声を流す感じ。意外とすぐにコツをつかんで身体に響く声が出るようになったので、今度は、イからエ、そしてアの母音に声を変えていく練習。同じ音程でやる。これが、すんなりとうまくいって、アの母音が密度のある響きになった。こうなると、しめたもので、アの母音で発声をやると、これまたうまく行った。彼女の場合は、この口の使い方にコツがある。唇のわずかな緊張感も大事だ。要するに、どの母音も同じ音質で鳴る ようにするために、一番声帯が合い易いイの母音で作って、それを開口母音のアに持っていくわけ。このやり方が出来ただけで随分と響く良い声になる。曲は、Caro mio ben。最初のCaは腹筋を開いて、しっかりと出して。全体にうまく出来てきたけどエの母音が浅い響きになる。エの母音を縦に開いて、と言うと、今度は下あごが前に出てしまう。これは、ありがちだ。あごの下を押さえてやると、これがまたすんなりとうまく響いた。下あごの使い方だけど、くれぐれも前に出さないように!むしろ後ろに軽く引くように使うのがコツだ。そして、唇を少し緊張させてやること。これらの注意で、相当に密度のある声になったと思う。2ページ目頭の2点Fの音、Cessaのエの母音も開かないで、唇を突き出して、響きを鼻の上の方に通してやる感じでやってみること。ある種の共鳴が見つかると思う。その場所は、必ずしもぼくが言う通りでなかったら、御自身でその音が抜ける場所あるいは、響く場所を見つけて欲しい。
最後に、声のポジションを大事に。高い所から音が下がったときには、今はその感覚を下の声のポジションを感じて戻すように。例えば、前半のSenza de te languisce il corのlanの声は下の声にしっかりと戻ると良いな。しかし、理解力があって知性と運動神経のバランスがなかなか良いと思う。元来、歌が好きな方ので、どんどん新しい曲を読んでその中から発声のコツをつかめば良いと思う。
最後だけど、これはゆかさんに限らず、立って歌の練習をすると、足が疲れて硬直してくる。こうなると、上半身も硬直してくる。疲れたら足の屈伸などをして、柔らかくして欲しい。


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