レッスンノート

きょうはレッスンがキャンセルで久しぶりにゆっくりした夕食 そのまえにもゆっくり出来た。。 ゆっくりしてみると、窓から入ってくる夏の世界の情報の豊かさに 改めて目を奪われる(耳も)ことに気がついた。 風が吹けばもちろん葉擦れの音がざわざわするし、今ごろは南風で 電車が多摩川の鉄橋を渡る微かな音。 それにくわえて、今は夏の虫が鳴き出している。 風に乗って、いや風の音で更に共鳴を帯びた、草ひばりの 鳴き声は、実に優雅だ。 夏の夕空は長くて、きれいな青から段々と暗くなり、一時蒼白くなる。 何かどうも今は風が強く吹いていることと、お盆休みで空気が きれいなのだろう、そのせいかどうか知らないが、蒼白い 消滅寸前の真昼の燃え滓のような、王女様の憂鬱な気持ちのような その色は例えようもない。 虫の声は子供の頃から大好きだ。 草ひばりは、昔から裏庭にある潅木の上でフィリリリリと朝まで 鳴いていたものだ。 男の子の癖に朝が弱くて、歯磨きするのに立っていられなくて 古い家の二階に昇る階段の一番下に腰掛けて、歯磨きをしながら 草ひばりの鳴き声を聞いたことを、夏のこの時期になるたび 思い出すのだ。 子供の頃は、親父が好きだったいわゆる西洋音楽、、バッハとか、モーツアルトとか を聞いても、それと、虫の声を愛でた脳みその部分が、まるで違うので 違和感を感じたのを覚えている。 西洋音楽よりも、虫の声の方がぼくにはずっと優雅で美しくて繊細な ものに感じられた。 少し大人になってから、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を 聞いたときに、初めて、あの夏の虫の声を聞く感動と、同種の感動を、 西洋音楽に感じたものだった。 あれから、もう30年以上も立っているけど、その感想は今でも 変らない。




戻る