レッスンノート

やしまさん 発声は、m〜で始める。彼特有のやりかただ。 首をごきごきと柔軟を始め、しばらくして発声を始めた。 今日で体験レッスンを入れて3回目だが、彼の声の性質が 段々とつかめてきた。 テノールは高音域をファルセットでも無く、実声で伸ばすのは 大変だ。色々と試行錯誤していく内に、見つけたのだろう。 イタリア語で言うChiusoで、口先を丸く、狭くして声を小さく コンパクトに当て、比較的前に声を当てる感じ。 比較的うまく声のチェンジが行き届いているのだが、まだやや喉が苦しい。 チェンジ後の1点Fis〜G辺りがどうも音程が下がり気味というか 喉が詰まり気味である。 本人が気づいているなら良いのだが、喉の苦しさを開くことで 多少声を逃がすような感じも持って良いのではないかと思う。 実際に試してみたのは、声を当てる場所を意識してみる。 後頭部、前頂部、どちらでも良い、当てる場所を意識する事で 音程感も明快になるし、喉も自然に開く傾向にあると思う。 概ね声は高音のチェンジ部分、1点F〜Gくらいまでは前に当てても 良いけど、それより高くなってくると、そのままでは苦しいと思う。 苦しい状態から今度はその当てる部分を後ろへと変えていくと スムーズに抜ける感じがあると思う。 そうやって、声の状態に敏感になって、調節をしてほしい。 ドイツ語でアンザッツ、フランス語でアタック、 イタリア語でメッサディヴォーチェなんて言って、 要するに声を集める場所、意識を持つ事が 自然に喉の状態を決める、という方法がある。 これらの方法と口の使い方、唇などが顔面のあるイメージ。 プラスしてお腹の使い方が息の流し方、飛ばし方と関係が出てくる。 お腹が声の推進力だとすれば、顔面のイメージの持ち方が 弦に弓を擦る際の感覚の拠り所、といえば良いだろうか。 したがってフレーズの作り方は、お腹の繊細な意識を持たないと きれいな芸術的なフレーズは出来ない。 要するに息を使いまわす感覚がないと、フレーズの妙は 出てこない。 声質はこれとは別に、喉そのもの、あるいはそれをコントロールする 顔面、頭部の様々な感じ方によって左右される。 以上の点をこれから徐々にやっていきたい。 今日は、シューベルトのAn die musikとGanymed2曲。 Ganymedの最後の高音が苦しくて、声がスカスカになってしまう。 伴奏を弾かないで歌ってもらうと、徐々に徐々に音程が上ずってくる。 この傾向が、高音が出難くなること、苦しくなることと関係がある と思う。 これは、声のポジション。具体的には常に喉の位置が一定になった 状態で声が出せているか? つまり、ブレス時に声を出す状態が一定になっているか? 高いフレーズを歌い終わった後のブレスでどうか? 低音のフレーズが終わってからはどうか? 長いフレーズの後で、お腹が固くなっていないか? こういったお腹の状態にも気を配る。 そうやって、体の使い方に敏感になって意識していく事で 声のテクニックが備わってくる。 考えないで気楽にしていた方が声は良いこともある。 しかし、うまく行かないと今度は対処のしようが無い。 テクニックとは、おそらく調子が悪い時にこそ、 意味が出てくるのかもしれない。




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