2002年4月前半レッスンノート

レッスンノート目次
4月3日 | 4月4日 | 4月5日 | 4月6日 | 4月7日 | 4月9日 | 4月10日 | 4月11日 | 4月12日 | 4月13日 | 4月14日
4月14日

にしさん。しばらく間が空いてどうか?と思ったが、最初の発声ではまるでバリトンのような立派な声を出していた。中低音だけなら、これでも良いかと思わせるくらい太いしかも、軟口蓋も上がった良い声が出ていた。試しに低音まで降りたが、バリトンは充分出来るくらいの声質だ。G〜1点Gの2オクターブが使えればバリトンは充分出来るから、これでも良いのだが、本人はテノールになりたいらしい。テノールは華があるからね。さて、チェンジしてからの声を作らなければならないので、軽く1点Cくらいから上の響きを模索した。ヤイヤイという言い方であごをあまり開けすぎずに頭部の共鳴を大切にする発声をしばらくやった。これだけなら母音も単純で一見問題はないのだが、そこからが彼の難しいところだ。以前にやったイタリア古典歌曲集のTu lo saiはどうか?と思ってやったのだが、これでやはりドツボにはまる!とにかく高音域はウやイなどの狭母音になると、どうにもならない。結局声帯の根本的な使い方を基礎から変えていかなければ、出来ないことを思い知らされる。喉が上がろうとするのを無理に抑え込もうとして余計に力が入り、どうにもならなくなる。まずは、喉が上がることはそのままにして、声帯の合わせを繊細に軽く合わせること、そして、その合わせ方に集中して音程をきれいに乗せる。1点C〜1点Eまでだけでも、本当に難しいものだ。1時間のレッスンのほとんどを、この声帯を細くきれいに合わせることに費やした。本人はやりかたが分かったはずだ。そこから息を流していくこと。うまく行ってるときは、声帯に隙間が出来て、息が流れるのが分かるはずだが、うまくいかないと、喉がつまり声帯が分厚く合うので、息が流れないで、音程もフラットになる。その違いが分かれば、後は大丈夫だと思う。レッスン終了直前に、どうにかその状態で歌えるまでになったようだ。
次回まで一ヶ月はあるだろうが、何とか忘れないで、同じ状態から更に先に進めるようになってほしい。
とにかく、繊細にていねいに今日やった合わせ方を練習して出来るようになってほしい。

あめくさん。今日は、こちらがバタバタしてしまった。レッスンに集中できなくて申し訳なかった。。。発声はいつも通りきれいに出来ているが、欲を言えばもう少し響きが上に当たってほしい。かといって、喉が上がってほしくないという、難しいところ。喉の開き下がりはそのままに、もう少し上顎部、上唇、頬などの筋肉が使えれば、もっと軟口蓋も上がって明るい前に出る響きになるのだが。大分良くなっているのだが、下あごもまだ微妙に前に出しているように見える。そのために舌根に力が入って響きが暗くこもる傾向がないではない。下あごは出来れば、下げるというよりは後ろに引くように使えるのがベスト。そのことで、喉は下がるが軟口蓋が自然に上がるのだ。明るい響きになる。このことは、特に低音になるほど、有効だと思う。それと、息をもう少ししっかり送ること。最近はやってないが、もう一度息を頭部の共鳴点に向かって送る練習をしてみたい。息を送ること、それに付随して共鳴点を意識すること、そのために下あごの使い方、上顎の使い方などを柔軟に出来るようになることがこれからの課題だろう。もっと簡単に言えば、締めるべき時は締め開けるべき時は開けることの 意味が分かれば、柔軟になる。下あごをパクパクさせると、響きが落ちてしまうのだが、かといって、開けないと中高音で響きがしっかりでないこともある。
ただ、これらの柔軟な使い方はフレーズの音楽を発音と絡めてどう処理するか?ということが大きい。経験していく中で培っていくしかないのだが、、、今日やった、グルックの「オルフェ」のアリアは、基本的にアルト向きでやや音域が低いが、オペラのアリアは、旋律をいかに響かせるか?ということが最大限に問われてくるので、尚のこと、上記のテクニックが問われてくる。もっとも基礎的なことは、上向形のフレーズでは上に行くほど息を出していき、響きを強くするように、要するにクレッシェンドをかけること。これは、楽譜には書いてないが基本的なことだから、覚えておいてほしい。それと、強拍を響かせることを少し強調すること、あるいは、細かい音符、この曲の場合八分音符の響きをないがしろにしないこと、などなどがある。声の調子を崩してはいけないが、音楽の形(旋律の形)を少し「強調」することを頭に入れておくと良いだろう。

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4月13日

にったさん。最初に発声練習。中音部の始まりでは声の出し始めにポジション定まらないこと、当て方がやや雑で声がバンと喉で当たってしまう感じがある。それと、音程が変ると声が途切れてしまうというか、音質が変ってしまう傾向がある。声の当たりを柔らかく、音程が移行する際に響く場所を変えずに滑らかに移行することを注意した。下から上がっていくと、2点Dくらいから声が頭声にチェンジしていくので、逆に高い方までの昇って降りると、頭声がかなり低い方まで残るために、その方が滑らかになる。それで思いついたのだけどなるべく低い方でも頭声のポジションを大切にして柔らかく声をアタックして、息で響きをつけるように声を出していく方法が良いのではないか、、と思った。そうやって発声をやると、とても滑らかで、高音までとてもきれいに出る。彼女のチェンジしてからの高音は特筆物で素晴らしいと思う。ただ、発声の時の姿勢を見ていると、ブレスで胸が上がること、声を出す際に微妙にあごを前に出すことが気になった。中低音で声のアタックに迷いが出るのは、首が動いてしまうことやブレスを胸で行ってしまうことにあるのではないかなと思った。ただ、こういう根 本的なことは、人にもよるけど、少しずつ少しずつ直していく方が良いのではないかとも思う。迷ってしまうと、逆に袋小路に迷い込んで、良いものも悪くなってしまうこともあるからだ。何事も良い面と悪い面がある。彼女は良い面があるのだが、それは、ある意味で悪い面でもある。良い面を良くしていくか、悪い面を直して良くしていくか?で、練習方法が違ってくるのだ。ぼくは、良い面を良くしていく方が彼女には良いのではないか?と最初に彼女の声を聞いたときから直感的に思っていた。彼女なりに迷いがあるのだろうが、迷わずに良い面を良いと思って歌っていくのが、歌にとっては一番良い方法ではないか?と思うのだ。そうやって、経験を積んでいくと発声のメカニズムが段々と分かってくる。分かってきたら自分で欠点を補う方法も見つけられるだろう。
今日のレッスンを通してやはり、そういう結論に達した。こちらも、おのれの信ずる耳にしたがって教えていきたいと思う。

みこしばさん。社会人の男性。某音楽スタジオでピアノと声楽を趣味で習っているとのこと。ちょっとしゃがれっぽい声が気になったが、まずは声を聞いてみた。聞いてみると、まず、ぼ〜っとした生気のない息漏れの多い声がとても気になった。喉には確かに力が入ってないのだが、音程がきちっと出てこない。声帯の鳴りも悪い。低い声も出ないし、高い声は喉がすぐに上がってしまう。息の流れはあるのだが、まとまっていなく、したがって、響きになっていない。話を聞くと、声楽の先生に習って3年という。これまた、驚きだった。発声は確かに大切だけども、根本は歌うエネルギーから出てくるものだ。発声の息の流れとか、喉を使うなとかそういう面だけを捉えていくと、生気のない息だけを吐いている機械のようになってしまうのではないか?とすら思ってしまう。少々失礼は承知だが、喉も使わなければならないという見本のようであった。ただ、彼の場合声を出す際に喉が上がってしまい、詰まる傾向にある。まずこれを直していかないと、後々が大変だろう。どうするか?と思ったが、とにかく、開かない口を開けてもらって、少し声を目の辺りにまとめるようにして出してもらうと、意 外とすぐに響きが出るようにはなった。その調子で昇って行って、1点Fまでは軽く上がっていけた。低い方は、どうも声が鳴らないし、喉の開きがとても悪い。逆に言えば、テノールの系統で勉強して行く方が彼には良いのではないかな、と思った。コンコーネ19番というので、歌ってもらうが、これも難しすぎる。イタリア歌曲集の3巻からの曲も確かに低声用だが、難しすぎるし逆に低すぎるのではないかな、、、、彼には、高音を勉強させた方が早道だと思う。レッスンに来てもらうことになったが、その辺りの見極めが早くに必要だろう。歌うために勉強するのだから、発声ばかりやっていても駄目なのだ。発声と歌は対で勉強すべき!というのが、ぼくの持論。

なかがわさん。発声練習はとても良くなってきた。声質も落ち着いて、滑らか、中高音部も頭部の共鳴がついてきて輝きが出てきた。スムーズ。きれい。低音はそれほど鳴らないが、後で思わぬところから彼女は低音がもっと出せる、という感触を得た。実は、前から時々感じていたのは、一音だけをロングトーンで伸ばしていて、息が切れて苦しくなる最後の方に鳴ると、急に声が鳴ってくることである。多分息が苦しいと、喉を開く開こうとして喉が下がるのだと思う。また、今日は、歌の中で姿勢を改めて強制してみた。あごをしっかりと引くのだ。以前もやったことがあったが、今日はとても効果があったと思う、。これは、中音部だけに限らず高音もとても良く響く。あごを良く引いた姿勢を取ることによって、中低音部の声も前に当たるようになる。そのためにも、発音ではアやエなどの母音は下あごをパクパクと動かさないようにすることも、コツだろう。
Handelの"Lascia ch'io pianga"も、最初のレシタティーボでは、エの母音に苦労していた。エになると、喉が上がってしまうのだ。オの母音だと良い響き、喉の開き具合になる。オの母音からエに変えてみて、エの母音を調節してみてほしい。アとエは中音、低音は要注意!下あごを下げれば喉は開くが、今度は声帯も開いてしまいスカスカになる。下あごを開かないと、今度は喉が上がってしまい、ぺらぺらの声になる。この場合、下あごを下げるのではなく、あごをしっかりと引くことで、自然に喉が下がるという方法に気づいてほしい。首の後ろや、根元の筋肉を相当使うが、それでも、その声は良い声になる。頑張ってこの姿勢に慣れてほしいと思う。次回は、今日気づいた低音の鳴らしを良くやってみたい。また、姿勢も気を付けて、更に良い声目指してやりたい。とても良い声になる可能性を感じさせたレッスンだった。

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4月12日

さかもとさん。今日は一時間発声だけをやった。彼女はゴスペルサークルで歌っているけど、今度は演劇サークルに入ったらしい、いずれも腹から声が出ないために、喉が痛くなるとのこと。今日はそんなわけでみっちりと声を見たけど、彼女の難しさは地声をたくさん使わなければならないことだ。地声さえ使わないでチェンジして良いのならもっと楽なのだ。それにしても、彼女は喉が上がって締めてしまう典型的な喉をしている。声を出そうと思っただけで(準備しただけで)喉がぐぐっと上に上がっている。これを治すために、手を使ってイメトレに励んだ。最初声を出すときに手の位置をお腹辺りに上げておいて、発声で上に行くほど手を下にぐぐっと力を軽く入れて下げていく。これだけでも、ポジションが上がらないで声が出せる。それから、基本的に姿勢が悪い。首が前に出てあごが前に出てしまう。特に声を出す際にかなりあごが前に出てしまうのだ。これは、声を出そうとしたときに喉頭がすごく上に上がってしまうからだ。あくびの口の形や、お腹に口が付いていて、そこから出す感じとか、オクターブ下の声を出してから、同じポジションで声を出す、などなど色々やってみたけど、ま あまあ何とかなるけど、喉が上がること、横隔膜と声がつながらない根本から直すのは至難の技だ。お腹だけど、最初に教えたお腹を入れることを一生懸命やるのだけど、そのことと喉の状態とがまったくリンクしていない。お腹を使うのは横隔膜の痙攣を促す意味があるのだけど、横隔膜の動きと喉の動きがリンク出来ないから、結果喉声になってしまうのだ。今日はやらなかったけど、次回は横隔膜を使って息を吐く練習から、始めないと根本的な解決にはならないと思う。もう少しまとめてレッスンできれば根本的に解決できると思うのだけど、そうも行かないところが難しいところ。一つは俗に言う腹式呼吸の問題がある。声を出そうとすると胸で息を吸ってしまい力が入って上ずること。ただ、腹式呼吸も教え方が難しい。吸うことへの集中から入るよりも、息を吐くことへの集中から入るのが良いと思う。次回はその辺りから徹底的にやってみようと思う。

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4月11日

みくりやさん。発声では、頭声の練習に費やした。最初下から上がっていったら、今度は喉が上がってしまい喉声になってしまい響きが出てこないのだ。中低音部の良い響きの追求は後回しにして、頭声から降りる練習だけで終わりにした。それよりも、このところ発声をやると、迷ってしまい声が出なくなることが多い。発声では多くのことを言ってないはずなのだが、以前にくらべて、発声のことを取り上げることが多いレッスンになっているのも事実。以前の彼女のレッスンはとにかく歌うことに徹したのだが、限界があったのも事実。せめてブレスが伸びれば、、とか、響きだけで歌う楽しさを覚えてほしい、、と思ってこのところ技術的なディテールを中心にしたのが良くない結果を招いたのだろうか?ともあれ、声を出すことそのものは一切迷わないでほしいものだ。それは、息を吐くことと同義で迷う理由はない。例えば、口をおちょぼ口にして、、といって発声を始めたら結果がどうあれ、声は出(ちゃって)ほしいのだ。反射神経と同じと思って良い。ただし、声を出すときにはお腹から出してほしい。息を吐くことを忘れないで。そんな視点で曲を練習した。フォーレの「リディア」である 。一通り歌ってみるが、音程も悪くないし発音も悪くない。問題は、声を出すときに特に低音部では、声を「鳴らす」だけで、息と響きが伴わない声になってしまう。音符を喉で追ってしまう感じ。
例えば、最初のモティーフ。Lydia sur tes roses joues...Lydia..だけ取っても、ファソ、、と続くイの母音が喉で当たるだけで息の流れが感じられない。リ・・ディ・・ア・・のアに向かって息を持っていってほしい。このような作業の積み重ねで曲全体を作り上げてほしい。これは、大変なことだけど、やらなければならないと思う。次回も同じことをやってみよう。分かってしまえば後は簡単だから。

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4月10日

いとうさん。発声では、口を開けずに喉にも一切力を入れずに、とにかく声を頭部に当てる練習から始めた。最初は不安定だったが、安定して来てから、今度は唇にやや力を入れて、ということは、やや突き出すようにしてオの母音でやってみた。本人との確認を怠らずに、どういう響きか?を確認しながら進めた。最初の力を抜いた声は、頭部に響きが集まるが、いかにせん薄っぺらい声になるが、唇に力を入れると、喉が開いた響きがついてくる。このやりかたから、少しずつ口を開いても、下の響きが出過ぎずに息が止まらずに頭部の響きと胸の響きが程よく交わる声の響きを練習した。次に、口を開かないで声を前に当てる練習をする。ヤイヤイという半母音を用いる。これは、声が鼻梁に当たり易い目に響く安定したしっかりしたこえがでる。ただ、最初はこれも薄っぺらい。そこで、あごをしっかりと引いて喉頭が低い位置に安定した姿勢を取ってやってみる。太さが適度についた、立派なバスバリトンらしい良い声が出た。ほとんど言うことはない。良い声の持主である。ただ、Gより下の本当の低音はこのままでは、出なくなる。この音域になったら、少し口を開いて、喉を開き、声帯をゆるめ るように、ちょうど弦を緩めて低音を鳴らすような感じにしないと、本当の低音が響かない。
さて、彼の場合、発音によってあごが下がったり、力が入ってしまい、響きが頭部に行かずに下に落ちてしまう傾向にある。そのため、響きが低く棒のようになりがちなのだ。常に頭部に、あるいは鼻梁あたりの前に響きのポイントを持って喉に落ちないように声を出すことを心がけてほしい。
最初にやった、唇を使いながら口を開く方法の場合は、ソットヴォーチェあるいはメッゾピアノくらいの響きとして有効である。声は、この場合前にきっちり響くのではなく、後ろに引く感じの柔らかい声である。この場合も頭部への響きの集中が大切である。いずれにしても、声を出すことと息を送ることが同義であるように息と声のエネルギーが上に上にと行くことを忘れないでほしい。後は、コンコーネを練習した。彼はイの母音が高音で喉が上がってしまう。これは、声を出す瞬間に喉が上がってしまうのだ。練習と慣れが必要である。少しずつ慣れるしかないだろう。分かるとビ〜ンとしっかりしたこえがでるようになる。さほど時間はかからないだろう。ドレミファの階名唱法で練習したが、この際発音、特に外国語の発音と響きの関係を徹底的に練習した。口の横の筋肉がゆるまないように、常に縦に緊張した感じを少し保つこと、それから、アやエなどの広い母音の場合、下あごを使わないで、上唇をややあげることで、軟口蓋の空間を作って広い母音の響きを作る方法を覚えてほしい。下あごを下げてしまうことで息が前に出てしまい、響きが落ちてしまうのだ。鼻腔に響きを持っていくため には、口を余計に開かないことがこの場合有効である。
彼はとてもマジメで熱心である。良い結果がもたらされるよう願っている。

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4月9日

さたけさん。発声を始めて、少し力みが感じられたけど、ともかく聴いてみた。声も出るし、響きもある。明るく良い声になったと思う。レガートが足りないので少し教えた。下降形の発声で、最初の音から二番目の音に移る際に、声に段差が出来てしまう。息を共鳴ポイントに送って、なるべく段差が出来ないように響きで音程差をなめらかにすべるように出してほしい。上向形は、ドミソでやったが、これも5度の音程差がある。低い方から昇る際には、最初の低い声のポジションで上まで押してしまうと、上の音程が悪くなり、太く声が出てしまいがちだ。5度上の音程を見据えて声をアタックしてほしい。ということは、最初の声のアタックは軽く柔らかく入ること。そして、2番目、3度上の響きで息を強くして勢いで3番目、5度上の音程に昇る感じが良い。いずれも、喉に力が入らないように。声のアタックは下降形でも上向形でも、軽くそっと入るのがコツだし、定石だ。最初の声で押してしまうと、息が回せなくなってしまう。
彼女の力みは、彼女に限らずだけど、あごを下げて力が入ってしまうことにある。下あごはあまり力を入れずに軽く落す程度が良い。喉のポイントは、唇をやや突き出すことで、良いポイントに収まる。これは、大事なことだ。口回りの緊張がないと、これまた喉のポイントが定まらず、声帯がきちんとしない傾向にある。
最近みんなに教えている、オの母音はこういう意味で声の基本的なポジショニングに恰好の母音だと思う。下あごに力を入れ過ぎず、唇を適度に使う。そして、声が直接外に出ないために、自然に頭部に響きが行って、共鳴が出易いのだ。この練習の時はくれぐれも、力んで声を出し過ぎないことが大事。ともかく「響かす」ことに集中してほしい。
前回は、ポジションが高いから、お腹や腰から声を出すようにといったせいか、力んでいるのかもしれない。これは、声の出し始めの事で、声の響きの位置のことではないことを要注意。声を出す際にまずどこに集中するか?ということだと思ってほしい。どうして、お腹や腰なのか?というと、結局ブレスをして、横隔膜が声を出すための準備に入るために、横隔膜に適度な緊張状態を与えるためには、必然的にお腹、腰に神経が集中すると思ってほしいのだ。声が出てから後のことは、頭部への集中である。声が出る直前、出る刹那のことが、お腹であり、腰なのだ。
曲は、faureのLe secret...狭い母音は狭すぎる。もう少し口を開いた方がきれいだ。リズムだけど、どうも遅くなる傾向にある。少し早めのテンポで基礎練習をした方が良いだろう。遅い曲は、早めに、早い曲は遅めに練習するのが、定石だ。ただし、メトロノームなどできっちりとした正確な刻みは忘れないように。
Pの部分の柔らかいお腹の使い方と、Fのしっかりとした重量のある声の使い方の使い分けを出来るようにしてほしい。最後に、Chanson d'amourをやった。音程がナチュラルになるところを間違えないように。それから、こちらは、狭い母音が広すぎる。歌曲は多少高い音程でも、発音は正確にやったほうが、ニュアンスが出ると思う。狭い母音であれば、狭いなりに響かせれば良いのであって、声量を気にすることはあまりないのだ。
お腹が大きくなってきたかたら、あまり無理をしないで、むしろそのために、もっと楽に声を出すことを心がけてみても良いかもしれないね。

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4月7日

今日は一日レッスン。全部で5名だった。久しぶりに大勢を教えたが、自分が落ち着いて出来たので満足感がある。一人一人ていねいに問題点を見つけ、冷静に対処できた。何より、そうしてみなが良い声で歌ってくれるようになるのが、何より嬉しいのだ。これが教えている冥利というものだ。

なかがわさん。発声練習をていねいに始めたが、なかなか落ち着いて来た。声が上ずらないように、息を落ち着かせてていねいに出しているのが分かった。ブレス、そして声を出すときの感覚。声質の結果がすごく良くなくてもこの辺の落着きや間合いが良いだけで声は音楽的になるもの。お腹、ようするに横隔膜が落ち着いて柔らかくなって、そこから静かに声が出るだけでも良いのだ。口はまだ横開きになりがちだから、その辺りに気を付けてほしい。声の出初めは、いつも言うように、お腹からを忘れないように。オの母音で共鳴も出すように練習した。高くなってきたら、喉を落すようにあごを少し落すこと、同時に軟口蓋を上げるようにすること。この辺りはどんな母音でも同じ事だ。
ヘンデルのLascia ch'io pianga..から。これも一通り歌ってみた。きれいに、破綻なく歌えている。細かいところ、広い母音の声質がまだ浅くなるところを気を付けて。歌の場合は、発音で下あごがぱくぱく動いてしまうことで響きが落ちてしまう傾向にある。下あごを使わないで発音できる練習がもっともっと必要だ。割り箸あるいは鉛筆を持ってきて、練習できるよう。これは、練習あるのみ、慣れないと身に付かない。
モーツアルトのデスピーナのアリアもきれいに歌えるが、これも全体に力が入って響きが下に落ちる傾向にある。リズム感も良いし、音程も悪くない。後は声質を整えることに集中してほしい。

きのしたさん。今日は初めてで体験レッスンだった。大学で讃美歌のサークルに入っているとのこと。発声を始めてみると、なかなか良く喉が開いて、落ち着いた声を出していた。ただ「あくび」のポジションをうるさく言われているせいか、声質は喉が開いているけど、中低音で少し太すぎる傾向にある、と感じた。あるいは響きがやや低いというか、声が前に出てこない傾向に合った。発声をしていても、口をいつも開けたままブレスして歌う繰り返しで、やや喉からあごに無駄な力が入っているように見えた。
喉の開きは充分に意識されているので、これからは、あまりあごを下げ過ぎずに、楽な喉のポジションを心がけた方が良いと思う。おちょぼ口程度にして、オの母音で発声をする。そこからアの母音を導き出していくときれいに響く中音の声が出た。後は高音に行く際にあごをうまく降ろして息の柱を太く地から強く出していくようにしていけば、結構良い高音が出ていた。曲は、メサイアの合唱、ソプラノパート。フレーズの歌いまわしが分からないので、一番息を回すところで息が足りなくなってしまう。基本は、昇るフレーズでしっかりと息を回していくことを覚えてほしい。後、ボカリーズで細かい音符の歌い回しだけど、強拍できちっと響かせて弱拍は軽く響きの中で処理するようにすれば、細かい音符も楽に軽く回せるようになると思う。
まだ、大学一年だけしか練習してないけど、歌が大好きで声がそろそろ出来かけている状態。良い練習をしてきちっと歌えるようになってほしい。それだけの価値はあると思う。

あめくさん。発声練習は、中低音は前よりも軽くなって、響きがよくなってきている。喉の無駄な力も抜けて来ている。全体にきれいだけど、顔の上半分への響きがもう一つ足りない感じ。高音を特に練習したけど今度は顔の上半分、頬を上げたり、こめかみを開いたり、ということは目を見開くように、鼻の下を少し上げるように、、などの筋肉を使って、響きを上に顔に当てていくような工夫もしてほしいと思った。あまり無理はしなくて良いが、良くなってきた響きにもっと華やかさ、明るさをつけるようになってほしいのだ。
それと、2点G以上の高音は、下あごを開くよりも今書いた顔の上の筋肉も総動員して、響きをとにかく上に当てるようにしないと、輝かしい高音が出てこないからだ。ただ、喉の開きも維持されてないとしっかりしない。その辺りの兼ね合いが難しいから少しずつやっていこう。高音は一遍に良くならないが少しずつでも伸ばして上質な声を求めてほしい。曲は、モーツアルトのフィガロからVoi che s'apete...これはとても良くなった。高音も無理がないし、中低音もバランス良く出ている。とても良くなった。後は、中音部の声質の明るさと高音の息の回しをもっとしっかり出来ると更に素晴らしい。出すべき所はもっと息を回して、細く当てるところとの差が出ることでもっともっと音楽的になるからだ。グルックのオルフェのアリアは、音域が低くまた違う音楽の世界だ。これも発声の問題で、こちらの方がむしろモーツアルトより難しい。難しいが、このような低音域を声量がなくても、美しく明るい声で処理出来るようになったら本当のプロだ。声を押さないで響きに集中して、響きを落さないようにかつ喉を開いて、ふくよかな明るい中低音を目指してほしい。次回はこちらを重点的にやってみよう。

へんみさん。発声を始めたら、ちょっと喉に力が入って、びりびりとする声帯の響きになってしまっている。オの母音でやっても、中低音は声帯の合わさりが強すぎる。原因は前に教えたお腹を使い過ぎて、声の出し始めの息が強すぎることと、顔、あごが前に出ていること、声を出す瞬間に、これまた顔が前に出てしまうからだ。意外と落ち着いているようで声を出すと慌ててしまうようなところがある。落ち着くこと。声に、響きに集中して静かな心で楽に声を出すことを心がけてほしい。静かな心になるには、ブレスが静かに深く行われなければならない。まずは声の出し始めをお腹に持っていくことを忘れずに。両手をお腹にかざして、いつも声をそこから出し始めるようにしてほしい。そして、息と共に脳天に向かって声は立ち昇って行くイメージ。最初に覚えてほしいことは、口を縦に、おちょぼ口くらいの横幅で声に響きを付けるようにすること。息を吐く練習をして、息は口から前に吐かずに脳天めがけて送るような感じが良い。声はその息に乗せて上に持っていく、、、というイメージで。全体に声を力んで出す傾向にある。声は出すのではなく響かす、という感じを忘れないで。笛などでも 、力いっぱい吹くと、ビ〜〜と汚い音が出るだろう。そっと、しかし適当な力加減で出すときれいな音がすると思う。それと同じで、声もそっと適度なお腹の力加減で響かすこと。響きは顔の前鼻の幅くらいで細く縦に響きが伸びるイメージが大切だ。今日は練習していて、そういう所まで行けたと思う。曲は、Sebben crudele...まず、言葉の子音で響きが途切れないようにすること。Se-bbenのハイフンのところからBの子音を強く言うために次ぎのEの母音との間でと切れてしまう。随所にこういうところがあるから、気を付けて。フレーズで上向形の時は息をしっかり上に持っていくこと。アクセルを踏んであげることだ。後は、口の使い方、横開きにならないように、いつも口の両端に緊張感を持つこと。唇を使うことなどなどである。少し間が開いてしまうので忘れなければ良いのだが。いつも時間内で良い線まで行くので残念だが、、、

よしおかさん。オの母音で低音1点ミから静かに発声を始める。2点ドくらいから高くなるから下あごを下げて喉を開くように。息は上にしっかり上げる。これらの基礎はいつもいつも忘れずに。しばらく上がり下がりして調子が出てきたので、オの母音からアの母音を作って響きを確認する。前回同様ずいぶんと響くようになった。本当にきれいな響きである。本人も分かってきたらしく、面白いくらいに共鳴している。ただ、アやオの母音は良いのだが、イやエが苦手である。苦手な母音は得意な母音から作っていけば良いのである。端的に言えばイはあまり口を閉めないで、エもあまり鋭角にならずに、これらの母音は特に彼女の場合、喉を絞める原因になる。彼女の声は気を付けないとすぐに喉が締まって、喉声を作ってしまう。喉声は禁物である。しかし、とにもかくにも、喉声ではない響いている声を本人が出せるようになったことは大きい。この感覚さえしっかり持てば恐いものなしである。どういう口をするか?息はどうするか?どこで響きを感じるか?こういうことを具体的に身体感覚でつかんで、忘れないようにしてほしい。
曲は、Star vicinoを再びやった。この曲でも高音のイやエに問題がある。いや、高音に限らずイとエは気を付けてほしい。くれぐれも、この母音ではドスン!と声を当てないように、喉を良く開いて柔らかく処理をしてほしいものだ。後は、意外と低音にドスンと降りる際に、喉声になってしまう。息と合わせた響きの中で音程を上がり降りすることであり、その辺り決して乱暴にならずにすることが大切。今日の声の響きは素晴らしいから忘れないで次回も再現してほしい。同じ曲で何度も何度もやって、響きの大切さを覚えて行こう。そうすれば他の曲でも応用が効くと思う。そこまでは、時間がかかるが、かかっただけの価値がきっと分かるだろう。、


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4月6日

にったさん。久しぶりで3ヶ月ぶりだった。相変わらず良い声を聞かせてくれたが、今日は少しきちっと練習をしてみた。良く良く聞けば、声がきちんと響きを伴っていない。実にシンプルに声を出しているのだが、声自体がスリムで軽いので嫌な感じがしないのだ。声質は違うがみくりやさんと似たタイプなのだろうと思った。人間の五感生理というのは、言葉では言い表しにくいものだけど、逆に実にはっきりしたものである。
彼女の声はテクニックはないのだが、それなりに出来てしまう良い声がある。ただ、声が直接声帯から出ていて共鳴がもう一つついていない。そして、どこかに力が入って、声が安定していない。息の流れが自然出はない感じなのだ。どこか緊張している。。。それで、みなにやっているように、口をおちょぼ口でオの母音でやってみた。ところが、その前に声の出初めがせわしない。これでは、響きに耳が行かないだろうし、息の流れにも敏感になれないだろうと思った。呼吸、特に吸気で胸で吸ってしまう。いわゆるお腹が楽に使えずに、息も浅いのだろう。そのために、声のポジションが高く、音程も上ずってしまう。もしかしたらソプラノの先生のせいで高く当てるだけを意識しているのかな?声の出初めは低く意識した方が体の力が抜けてどっしりするので声には良いと思う。要するに身体の部分で低い場所に声のエネルギーの源を感じて、声を出すこと。
みぞおちに口がついているように、あるいは胸のあたりに楽に響かすように。これは、胸声とは別の問題である。それから、逆に吸気に意識を持たせずに呼気をしっかり意識することも良いだろう。息を吐く練習をしてみた。息を口から前に吐くのではなく、頭に向かって、真っ直ぐ上に向かうように。そのことで軟口蓋も自然に上がるだろう。そうやって、声帯が落ち着いた状態で、息で声を上に持ち上げる。彼女にはこんなイメージで基礎から声作りをしてほしいと思った。実際、うまく行くと今の華のある声に、落着きが出て、艶やかでクオリティの高い声質がもたらされる、そんな予兆を感じさせる声が出ていた。
曲は、サティの"Je te veux"これは、逆に下あごがぱくぱくし過ぎて、響きが上に集まらない状態。最初はあごを押さえて、上に集める。そして、フレーズで高いところから更に昇っていくような所では、アクセルを踏んで車をぐっと前に加速するように、お腹を使って息をを高く昇らせることが大事だ。言葉の子音で響きのレガートも切れないように、子音の扱い方に気を付けること。それから、フランス語の特に狭い母音が狭すぎる。特に低音部の声は、もう少し口を縦に開けて、良い響きを見つけてほしい。De Le Voex,などなどあいまい母音も狭すぎないように。良い声だからマメに練習してほしい。すぐに良くなるだろうから。。

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4月5日

よしおかあゆみさん。軽く声馴らしの後、声の共鳴を練習した。オの母音で上がり下がりしてみる。以前に比べ息の流れがスムーズだし、微妙な声のかすれや震えがなくなった。どこが良くなったのだろう?声のポジションを少し低く楽に意識しているからだろうか…ただ、気づいたのは、彼女は少し首の座りが悪いようで、あごがやや前に出る傾向にある。特に声を出す瞬間にほんのわずかあごが前に出る傾向がある。高い声になるほどその傾向がある。これは、誰でもその傾向がある。あごを動かしてしまうと喉頭が上がるのだ。出す瞬間に高い!と判断して喉頭が上がるのだろう。顔やあごを動かさずに判断する前に声が出てしまうのが高音!と思って出す方が良い。高い位置に向かって息を瞬時に送るように。声のポジションとは別の問題。送る場所は低い位置だからだ。送る経過点に喉頭(声帯)があり、瞬時にそこを通り過ぎ。頭より高いところに息の到達点がある…という感じが良い。そして、口。彼女もまた、口の両脇の筋肉が緩く、口が横開きになってしまう。鼻腔、あるいはおでこに共鳴点を持っていく感じにするためには、息の柱、声の響きが細く真上に行くイメージを得るために、口を 決して横に開かないでほしい。
要するに顔の真ん中、鼻の幅で声を集める感じだと思えば分かるかな。。
高い方まで練習したが、2点Fくらいから喉が上がり易くなるから、下あごをしなやかに降ろすようにして出すと声がしっかり出る。2点Aくらいから、もっと頬を上げて響きを上に持っていくようにすると、もっと高音に輝きが出てくると思う。それにしても、大分高音が楽にしっかり出るようになった。
曲は、Tu lo sai...きれいに、まとまりのある歌が歌えるようになった。出だしのウの母音はまだ少し声のポジションが高い感じ。これは、喉頭の位置が声を出す瞬間に高くなっているということ。首の姿勢や顔を動かさないことなどと、声を出す瞬間、出し始めの声の場所を低くこと、そして、声を当てる息の瞬時の強さ加減などで、まだまだ良いポイントが見つかるはずだ。ここでうまく行けば、後は全部うまく行くと思う。それくらい高音の声のポジション、出し具合とは大事なもの。もっともっと良い声を、、と貪欲に感じて練習してほしいと思う。それだけの価値があるのだから、、最後に「ガンジス河」をやってみた。息が苦しそうだけど、見ているとあごがパクパクして息漏れが多すぎるのだろう。響きをもっと一点に集め、その響きの上で発音して歌うことが大切だ。そのためのあごの使い方などなど、次回に詳しくやりたい、

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4月4日

みくりやさん。発声でいつものあくびの状態で声を作るのが難しいので、オの口で母音を発声する練習をした。高音域のブレスの支えもあったので、2点Cくらいからウオエイアの母音を同音で良い響きで出す練習をしてみた。頬の筋肉を緩めないように、特にエの母音が緩み易い。この練習では、響きも良いし、逆に良い響きが出ればブレスも持つ感じだった。中音域は良い響きが出るのだが、高音にチェンジ(2点Eから上くらい)してからが喉が詰まって難しい。多分喉が上がってしまうのだろうと思い、あごを下げるのを止めてみる。彼女はあごを下げると、喉頭の部分にもかなり力が入ってしまうようだ。高音は息の勢いとエネルギーを高く持っていく意識が必要だ。喉は絶対に意識しない法が良い。声を出す瞬間に高い!と意識すると力が入って喉が上がってしまう。また、声の方向も前に意識するより脳天あるいは後頭部に抜くよう意識してみる。例えば、麺をすするように口から息を吸い込むように声を後ろに息の勢いですっと持っていく感じ。特にウとかイなど声帯が合う狭い母音は喉が上がり易いので、このやり方は有効だと思うが、どうだったろうか。。まだ、おずおずとしてしまい勝ちなの で、もう一つ音程が低かったり喉っぽかったりしてしまうようだ。
歌は、フォーレの"Pie jesu"をやってみた。声質にこだわって、少しずつ母音唱法で声質を作ってみたが、それよりも相変わらずブレスが厳しい。それでも以前よりは大分良いが、声のこととブレスの支えのことが混乱してしまうようだった。なので、とにもかくにもお腹の支えをきっちり持ってもらう方向で練習した。最後にはどうにかこうにか、支えて歌えるようにはなった。声質と声の支えはそれぞれ補完し合うところもあると思うが、まずは、腹筋でしっかり支えることに集中してほしいと思う。支えることで息のコントロールが付くしリズム感もこのことでしっかりしてくるからだ。とにかく、今はブレスがコントロール出来るくらいの、お腹の支えを最大限に大事にしてやってほしい。健闘を祈りたい!

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4月3日

4月初めてのレッスンノートは、さぶりさんから。
彼も良く通って来ていると思う。マイペースなようでいて、実はなかなか考えているようである。声のことはいろいろ言ったけど、彼が一番やり易い、声の調子が良いポイントをつかんでほしいものだ。難しく小理屈を言うよりも、歌の中での声、ニュアンスを探していくのが良いのかなと思った。実際に歌をやってみると何度も書いていることだけど、良く鳴る声だ。だが、固い響きだと思う。例えば低音、C以下の声になると、音程は出ているが、体に響いていない声になってしまう。原因としてブレスが高い感じがするのと、ややお腹の支えがきつすぎるために、フレーズの終わりで微妙なビブラートがつく。これは良いとしても、低音の響きがきつい感じといえば良いだろうか。もっと柔らかく楽に身体に響かせられると思う。例えば彼は下あごを使わない癖があるが、喉を開かないあまりに、下あごが使えない、と言っている。確かに上顎への響きは大切だが、それだけだと、低音はあまりに貧相な響きになってしまう。胸に響かせるべきだ。そのためには、下あごをうまく使って、喉を楽に開き、胸に響く低音を出してほしいと思う。胸に楽に響けば自然に倍音も上がってくるから、合唱のベースと しては良いポジションの声が出ると思う。和音の根音になることが多いベースの音質はとても大事だ。まず大事なことは声量よりも、声質だと思う。

ちばはらさん。発声を始めるとやはり、最初はポジションが高いと思う。安定しない。低音から始めるのだから響きを高く高くばかり考えずに、まずは喉もお腹も楽にして、落ち着いた響きを出してほしいと思う。しかし、全体に随分力は抜けてきた。下降形の場合は、高音になっても喉を頼らず比較的良い声になっている。ただ、上向形になると、力が入ってしまう。特に1点D以上になると、喉で声を押してしまう。これは絶対に禁物だ。声の方向を変えてほしい。頭頂部あるいは、後頭部に抜くように声を変えていく感じ。喉鳴りさせないようにくれぐれも気をつけてほしい。下から初めても、ある音域になったら喉の調子を見て声を変えていかないと高音は音程が出なくなるし、喉声になる。これは、もう何度も言っていることだから、後は本人の心構えだけだろう。言えばすぐ出来るのだから、いつもいつも注意するしかないだろう。
曲を歌わせて思ったのは、言葉のニュアンスを生かせば喉ももっと楽になるだろうということ。どの音符も一様にべったり歌い過ぎる。それに、全体に声が出過ぎていると思う。ここでも喉に力を入れて、下向きに声を出す傾向が随所に見られた。特に5線の上の方、1点C以上の声は、なるべくなるべく、上顎に響かせるように常に意識してほしい。そして、声を出し過ぎないこと、言葉のニュアンスを大事にすること。歌っている時に自分が歌っている歌詞が感じられているだろうか?何を歌っているのか?いつも分かるように歌を歌うこと、声を使うことである。それだけでも、声は楽に響く。言葉を大事にしてほしい。

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