2002年5月前半レッスンノート

レッスンノート目次
5月1日 | 5月2日 | 5月3日 | 5月6日
5月6日

にったさん。発声では、低音が出難いようだった。ちょっと声帯で声を当てる感じがあるので、声帯を大きく楽に鳴らすために胸声の練習から始めた。ただ単に、胸に楽に響かす感じ。それと、喉を開くこと。喉を開く感覚は、あくびの状態で声を出すこと。彼女は、ブレスの際に口を閉じて鼻からブレスする。これはこれで良いのだが、喉を開くことを覚えるために、ブレスの際に口を開け、あくびの状態を作ることを覚えてもらった。
この状態で最初の声は一瞬良い声が出るのだが、すぐにもとの声に戻ってしまう傾向がある。喉を開いている状態を保つこと。これは、お腹をやや広げた状態にしておくことも、関係がある。ともあれ、しばらくこの練習をしているうちに、大分喉が開いた声になってきた。同時に軟口蓋を上げること。これもあくびの状態で実感できるはずだ。声を当てる場所あるいは響かす場所は、その軟口蓋を意識すれば良い。今までの仁田さんの声と比べると、大分中に入った声かもしれない。ただ、口から直接声を出すのではなく、頭部に共鳴させてその響きが外に伝わる、と思えば良いと思う。
Handelの"Lascia ch'io pianga"をやってみた。案の定、言葉になると、声が元に戻ってしまう。色々注意しながら、大分それらしくはなったが、これは実体験を繰り返さないとなかなか身に付かないから、繰り返し繰り返しやる必要があるだろう。それと、高音だが、頭声で軽く出す癖がある。これはこれで、きれいだし、こういう声も必要だが、しっかりと太い高音も必要だ。喉を開いたまま、あるいは、高音になるほど、もっと喉を開くように、ということは、口も開いて、声を前に当てるようにすると、力強い高音になってくる。ただし、この出し方は音域に限度はあるが、ドラマティックな表現に欠かせない。一瞬の息の吐き出しが必要だから逡巡しては駄目だ。Saty"Je te veux"でも、高音はこのように出した方が良い。低音も喉を開いて、良く響かすように。元声は良いものを持ってるから、今までの癖から抜けてきちんと発声をやると、とても良くなる可能性が高い。プーランクChemin de l'amourを読んでもらうことにした。楽しみ。

あめくさん。発声は、やはり中低音を上に響かす練習に終止した。今日は、あごを下げないで特にオの母音を中心にして、軟口蓋を上げるための練習をした。口先が開けられないと、嫌でも軟口蓋が上がらなければ、声が響かせられないので、下あごを動かさない練習は良いのだ。ただ、喉がやや上がってしまうようなので、実際には喉の下がり(開き)と相談しながら、この軟口蓋の上の響きをつけていかなければならない。曲で実際に少しずつ確かめながら、中低音の明るい響きを作っていった。実際、彼女の場合、声を上に響かせる必要もあるが、響かせなければならない言葉、というのを把握することが大事だろう。最初の言葉、Che faro senza Euridice..のCheは、響かせる意識がとても大事だ。これは、旋律の出だしという意味でも大切である。それから、イの母音がもう一つ。まだやや喉っぽい。というか、上に響かせようとすると、音程が上ずるようだ。胸声と上顎への響かせ方とのバランスがもう一つなのだろう。この辺りは、じっくりやる必要がありそうだ。中音部の声は難しいが、それだけに声を使った音楽の基礎である。フレージングだが、何度も言っているように、上向形は、自然にクレッシェンドするように。下降形は、下に下がるほど、これも喉を開いていくように、ただし、響きを上顎から落さないような注意が必要。それにしても、以前に比べてとてもふくよかで良く響く声になった。ブレスも持つしフレージングも出来るようになっている。モーツアルトのVoi che s'apeteなども驚くほど良い声が出て来ているし、声量もついてきた。今やりだしていることは、大分高度になってきているが、まだまだ出来る可能性があるから、もっともっと上を目指して頑張って勉強を続けてほしい。最後にモーツアルトのケルビーノのアリア、Non so piu cosa son cosa faccioの母音歌唱とイタリア語をつけた。これも良い曲だ。楽しみ。

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5月3日

なかがわさん。発声練習は特に気になることはなかった。落ち着いた声が出ていた。ただ、低音は本当に出なくなる。見ていると、胸から首でブレスをする癖がまだまだ残っている。ただ、低音で、ひょっと鳴る声が出るが、なかなかとっかかりが見つからない。息をたやすく吐かないで、声帯に集中すると出る、、という感じなのだが。ブレスの際に声帯の下に息を一瞬貯めて出すと言う感じか。。これも焦らずに待つことなのだろう。曲は、ヘンデルのLascia ch'io pianga..レシタティーボの出だしは良いのだが、まだまだ母音による響きの違いが気になる。特にアの母音。これが前に出ない。これは、中音部の話。イの母音だと響きが縦に伸びるのだが、アになるとスカスカで奥に入ってしまう。それから、響きが顔面あるいは上顎に昇らないために、特に中音部の声の響きが落ちてしまい、音程がフラットになってしまう。これは、彼女に限らず初心者はみなそう。中音部は声が自然に合ってなるのだが、そのままだと、響きの落ちた声になってしまうのだ。歌の場合言葉があるために、増して響きが落ちる。それは、言葉の子音のために、声帯が厚ぼったく合ってしまうからだ。子音の扱いをていねいに、もっと言えばあまり子音をしっかり言い過ぎない。特に破裂音の、M,やB、Pなど、唇を使う子音に要注意。彼女にしてみると、喉を下げなければならないことと、響きを上に送らなければならないことが、多分矛盾してしまい、難しいのだということは、良く分かる。これらのことを一気に解決するためには、あごをしっかり引くことが良いと思う。あごを引くことで、喉は下がる。下あごがばくばくと動かないからだ。下あごを下げてしまうために、特にア の母音などでカスってしまい、響きが落ちてしまう。どれを取るか?で言えば、喉が下がらなくても良いから、ということは、響きがやや平板になっても良いから、響きを顔面あるいは上顎に当てることを、優先させた方が良いと思う。
発声は、難しいようだけど音楽と密接に関係あること。音楽はとても繊細だし、ていねいなもの。何事もていねいにきちんと、丹念にやっていくことを忘れないで、頑張ってほしい。

つげさん。今日はこちら初めての体験レッスン。某大合唱団に入ったのだが、発声がもう一つと言われたみたいで、やってきた。声を聞いてみると、失礼ながら少し呼気の足りない、喉の上がった響きのない声だった。口の開け方が固定的で、また開け過ぎである。そのために、口先だけが開いて、喉の奥が実は開いてない感じと言えば分かるだろうか。まずは、呼気の練習をした。息を吐く練習である。漠然と吐くのではなく、歯と閉じて音をさせて吐く。そうすることで、呼気の力を自然に呼び覚ますためだ。見れば自然にお腹、横隔膜辺りが活発に動いている。そして、呼気を前にあるいは上に向けて送るイメージを練習する。この後で、呼気を声に置き換えて声を出してみる。まだ思ったよりも声がしっかりしてこない。まずは、胸に軽く声を当てるようにして出してみる。音域は適当に、あまり高くない出し易い音域で。彼女の場合は1点Gくらい。ここから、どんどん下に降りて行く。そのまえに低い声をいきなり出してみると全然出なかったのが、胸声の胸に当てる練習から少しずつ始めて行くと、面白いように低音が鳴るようになってきた。声帯が不活発な人、痩せた声の人ほど、この練習はやっ てみるべきだと思った。こうして、今度は低音から少しずつ上がって行く。そうすると、今度は地声の状態でかなり上の方まで声を出せるようになった。このままでは、地声なので、再びチェンジした声に戻して再度挑戦。これでもまだポジションが高い。なぜ、低い声を練習するかというと、上記の理由のほかに、高い声を出す際に、喉のポジションが高くなって、喉が上がりますます声帯が不安定になって、声が詰まって出なくなってしまうことを矯正するためだ。例えば、高くて喉が上がってうまく行かないときは、1オクターブ下の声で出してみる。その状態を保って、1オクターブ上を歌ってみる。。と言う具合。こんな練習でとにかく、声のポジションを低く保つこと、息をきちんと吐くことに留意して、どうにか滑らかな声が出てきた。最後に、共鳴を教えた。口先を開かずに、オの口で発声をする。オにするのは意味がある。喉が下がること、口先を開かないことで、声の響きが頭部に行き易いこと。このやりかたで、意外と簡単に共鳴が感じられる声になった。苦労しそうで意外と苦労しない、これからの声の発達が楽しみな方だ。

わださん。彼女も、アトリエが初めてで体験レッスン。フランスに遊びに行って本場シャンソンに感激してやってきた。小学校のころも、厳しく合唱の練習をしていたらしい。大人になって再び歌の醍醐味を味わいたいという、彼女のような経歴の方は意外と多い。
発声を始めると、それほど強くないのだが地声で始った。どの辺りまで上がれるか?と思ったが、5線の真ん中のシくらいだろう。地声で練習しても良いのだが、喉があまり強くなさそうなのと、それ以上に呼吸がとても弱そうなので、ファルセットボイスの練習に切り替えた。しかし、声のことよりも、ブレス、そして息を吐く力もとても弱い。ブレスは、かなり胸が上がってしまう。お腹がまったく使えていない状態だ。背筋や腹筋も弱いようだ。運動不足だと思う。これは、なかなか大変だな、と思った。声自体は地声でもチェンジボイスでもどちらでも良いのだが、呼気が弱いと歌い続けるエネルギー自体がなかなか生まれてこないからだ。旋律は呼気のコントロールがあって、初めてきれいな旋律が描ける、と思ってほしい。そんな感じなので、上記のつげさんと同じような呼気の練習から始めて、発声に入った。チェンジすることは出来るのだが、喉が上がってしまうので、あまり高い方はやらずに中音部でともかく、声を出す練習。段々と声が出てきたので、声に響きをつけるために、口をオの形にして、少しずつ上がって行く。響きが段々と付いて来て、なかなか良い線まで行ったのだが、今度 はめまいがして、続けられない、と言う。もう少し!というところで、体力が持たないようだ。このように、呼吸が弱くそのために酸素の取り込みが弱いのだと思う。歌を歌うこともさることながら、歌を歌うことで呼吸器をひいては、身体の中を活発な状態にすることも、彼女にとってはとても意味があることだと思った。今日は、慣れないレッスンでめまいまでしてしまったので、ほどほどで切り上げた。音感や音楽的なセンスはとてもあるように見える。あるいは、理屈よりも直感的に、歌をドンドン歌っていくことで後から発声、あるいは身体の使い方が付いていくタイプ。。。とも見えた。まずは、歌を持って来てもらって、そこからレッスンしていくのが良いのだろう。声楽はスポーツ的な捉え方も出来るし、芝居的な捉え方も出来るから。また来てほしいものだと思った。

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5月2日

きのしたさん。発声では、前回の声を出していたが途中から気づいたらしく、口をやや横に開くようになった。彼女の場合は、喉を良く開いて、喉が下がるのだが、そのために中低音部がやや太く音程がぶら下がる傾向がある。悪い声ではないのだが、ソプラノにしては、声が太い感じ。まして合唱のソプラノだ。高音にチェンジした声でなるべくそのまま降りて、中音部の声を決めることを中心に練習をした。また、オの口で高音の響きを作ってみた。この場合も、彼女は割とすぐに喉が下がった太めの声を鳴らす。ウにしてみる。思ったよりも共鳴が良く出る。高い方まで良く響く。
それから、声がやや揺れる。お腹に力が入り過ぎているようだ。多分、外に向かってお腹を張り出して固定しているのらしい。お腹は、下腹部から横隔膜を押し上げるように中に入れていくように。息を吐く練習をしてから、発声練習をした。それと、声の出し始めが特に中音部の場合、不安定だ。これは、声をどう当てるか?というところが決まらないのだろう。出し始めの呼気は思い切り良く、やや強めに意識した方が良い。あるいは、イメージだけど、ボールを軽く地面にぶつけるように、最初の声を下にバウンシングさせて上に飛ばせるようなイメージ。これは、理屈で言うと、胸声と頭声のバランスを取る意味がある。弦楽器でもそうだが、弓を弦にあてて、鳴らすときはわずか力が要るのと同じ理屈だ。喉には力を入れないのだが、声帯を鳴らすためのきっかけは、ある程度の力を必要とするからだ。もう一つは、スケールを練習すると一つ一つの母音にHをつけるために、レガートが切れてしまう。もっと滑らかに音と音を移行してほしい。
曲は、17世紀のイギリスの讃美歌。きれいな曲だ。彼女の声に丁度良い。音符の読み方がまだ少々堅くてぎこちない。せっかくの声が音符で切れてしまう。それと、ちょっとした中音部の声がぼてっと厚く当たってしまうので少し音程が下がり易い。それから、発声でも気になったhが母音の前につくこと。特に細かい音符の前に付き易い。これも直るといいな。しかし、時折聞こえる高音はソプラノらしい良い響きだ。これからが楽しみだ。

よしおかさん。発声練習を始めると、最初は力のない声だったが、高音になるに従ってすっきりとした声のになっている。顔を上げて口元を見ると、前回教えた通り、あごをほとんど使わないで、ということは下げないで声を出していた。彼女の場合、このやり方は成功だと思う。声のチェンジ、、例えば1点シくらいだと、ちょっと響きがはまらないことを注意すれば、この発声をしばらく続けるのが良いだろう。実際に曲になってもそのことは確信できた。しばらく、上がり下がりしてから、今度はヤイヤイで発声をやってみる。上顎に明快に響かせることを意識できる練習だ。ていねいにやっていくと、段々と響きが上になっていくのが分かる。彼女は意外と声を出していないようで、高音になると声を張っていたな、、と言う事がわかった。それは、曲になってからそう感じた。Star vicinoでは、やはりイやエの母音で声帯が当たってしまう。まずは、声を良く聴くと出し過ぎなのだ。多分ブレスが持たないのは、響きがブレスの適度なコントロールとリンクすればもっともっと伸びるのだろう。高音のイやエなどもこれで、大分喉っぽさが取れてきた。他の場所でも時折声が響いているのが分かる。大分良くなった。Intorno all'idol mio..は、前回からの発声が功を奏してとても良くなった。音楽としての表現が垣間見える。一番にいえることは、この曲が好きなのだろう。
どうやら、彼女の路線が決まったのでホッとしている。何より教える者のスキルがやはり、一番大切なのだ。当たり前だが。どこに問題があって、的確に目的を定めることが出来れば、もっともっと最短距離で上達できるのだ、と確信できたレッスンだった。

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5月1日

とうとう5月になった。連休も休まずに働いている。後半だけは休みをもらった。
今日は、さぶりさんから。
発声練習を始めると、相変わらず良く声が出ている、が、声のポジションを意識し、姿勢を治したようだ。ただ、声のダイナミックが大きすぎると思う。なぜ、発声練習ではでかい声ではなく、柔らかい声を必要とするか?それは、耳を良くそばだてて、音楽の世界に入っていく準備でもある。が〜っと声を出してしまうことはある意味では自然なことではあるけども、そろそろ良い意味で抑制ということも、学んでほしいと思う。
高い声の安定、使える声ということで発声をやった。1点Dくらいの声が前に出ないで、奥に入ってしまうということで、イの母音を前にしっかり当ててから、エそしてアに変える練習をした。そこそこ良く前に出るようになった、と思ったけど、そして、前よりもイの母音がきれいになった、と思うけど、実は鼻腔への響かせ方がまだうまくない、と思う。そうすれば、もっと声帯も「きれいに」鳴ると思う。まだ、声帯の鳴り方が厚ぼったい感じがある。音程は悪くない。もっと密な鳴り方といえば良いだろうか。。。
小林先生の合唱曲を見た。彼曰く、MpやPなどの音量域の声のことを尋ねられた。彼は、音量の大小をややボリュームで絞るように、ただ小さくしてしまう傾向がある。ダイナミックスは、音量ということもあるが、ニュアンスと捉えるべきだろう。同じPでも幅がある。言葉と音楽を捉えて、どういう声を出すか?を、感覚で捉えて対処出来るようになってほしい。ここで、最初に言った、発声練習時の声の扱い方が問題になってくる。良い声のポジションで、声を軽く出せれば、ニュアンスは自在になる。音楽は気合いも大事だけど、クールな頭も必要である。cool head and walm heart...で、歌ってほしいと思う。

ちばはらさん。
悪い癖がなかなか直らずに苦労している。フラットで喉っぽい高音、震える声。これが、彼が今抱える問題である。一番長くレッスンに来ているのだが、一番苦労している。こちらも手を焼いている。こちらの不徳の致すところ、、と言いたいが、本人の歌、音楽に対するコペルニクス的発想の転換が必要と思って、踏ん張ってほしいところでもある。
端的に言って、高音は鳴らそうという意識があり過ぎる。これを止めること。息で高く当てるに止める。声を出す瞬間に喉をぐーっと下げてしまうのが、良くない。喉に任せてしまうことだ。喉を下げるのが悪いのではないのだが、彼の場合は声を出すことが喉を下げることにつながっているために、テノールとしての声帯の細い使い方が出来なくなってしまうのだ。喉が下がれば、普通は喉が開くのだが、彼の場合は、声帯を合わせてしまう筋肉が働いてしまうために、高音が出なくなってしまう。そのために、まずは喉を下げないこと、何もしないことを覚えてほしい。声帯の繊細な状態が復活できた時点で、喉を開くために喉を下げることを使うようにすれば良いと思う。今は、とにかく喉を下げないでファルセットに限りなく近い息で出す高音を心がけること。何度も言うが、要するに声を出し過ぎないことだ。これらのことを実現するために、あごを降ろさないで、発声、発音することを練習してほしい。頬を上げること。これで、軟口蓋を上げることが出来る。
後は、実際の歌の中で気を付けることとして、子音を強く当てないこと。子音を強く当てることで、声帯がビッと合ってしまい、喉っぽくなる。いわゆるポップス調の地声っぽくなるのだ。これらのために、声の出し始めには相当気を使ってほしい。不用意に出さないこと。声を出す部分を頭部に意識して、呼気圧で声のアタックを軟口蓋で始めるように。今日も何とかうまく出来たいたから、練習でも再現できるといいな。


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