信時潔の「夢」
言うべきことは、母音の扱い。
発声に関わることだけど、日本語として明快な母音の響きを考えたい。
音楽的にも対比的に使われている「かなしさや」と「さびしさや」の持つアの母音の明るさ。
意味とは矛盾する明るさを母音の響きに与えることで、逆説的に意味を強く表現するのである。
中低音域を、ややもすれば口を縦にした響きになりやすいので、この点だけ注意を。

山田耕筰の「燕」は、テンポが少し遅かったので、速めてもらった。
その方が、フレーズが活きるために、文脈の勢いが出て、歌詞が理解され易い。
後は、ピアノと歌との音量バランス。
そして「とめあぐみたる」の意味を込めて歌うこと。

フォーレAu bord de l’eauは、淡々とした演奏で、逆に素晴らしかった。
ピアノも、余計なことをせずに、テンポがきちんとした正攻法の演奏。
歌も、決して声に溺れず、あるがまま、という感じが、この歌詞の内容を良く伝える結果になっている。

「ネル」は、ピアノのタッチとうねるようなダイナミックの起伏が素晴らしいのだが、
歌が就いて行かれず、少しテンポを遅めた。
また、声のポジションが高くて、それが線を細くしすぎることと、所々音程を上ずらせる原因ともなるので、ポジションが高すぎないように、注意してほしい。
これだけ押さえておけば、大丈夫だと思う。