代々木リブロホールで試演会

 

 

 

 

 

3月24日に続いて、今回も同じリブロホールで試演会を行いました。参加者は、ほとんどが長年レッスンに通って来られる方々が中心となりました。
その意味では試演会というよりも本気モードの発表会という趣きになりました。

今回、いわく言い難い経験をしました。
単なる主観に過ぎないのかもしれませんが、未熟な人の演奏にいたく感動することがありました。
音楽というもの、演奏というもの、あるいはアマチュアとかプロとかという違いは何なのか?

一つ言えることは、恐らく、安定して聞ける演奏がイコールそのまま良い演奏、とは絶対的には言い難い面もあることです。
安定した演奏は素晴らしいことだが、どうも安定志向の中に音楽とかポエムを生み出すオーラとは別の要素が生じてしまう面があるのではないか?

この辺り、今回に限らずある種のプロの演奏にしばしば感じてきたことです。
自分もそうなっているかもしれません。

不安定な要素を抱えながらも確実に一曲を通すことから出てくる、その人のオーラや感受性というものも、演奏の大きな要素ではないでしょうか?
このための大きな要素は、やはり言葉(歌詞)の扱いにあるのではないか?
歌詞があるからこそ、メロディが生まれ、歌う者にとって音楽を演奏する意味が生じるわけです。

ただ、本物のオペラではそのような不安定要素は一切意味を成さないでしょう。
アリアを実際のオペラの舞台で歌うことと、歌曲をサロンで歌うこととの間には、かなりな距離があるのではないでしょうか?

ともあれ、みなさんの演奏の貴重さには、心からの敬意と感謝の意を表します。 下記、今回の出演者それぞれが書いた感想をまとめてあります。
なお、各人に私が書いている感想と評価は各人内の評価であり、他者との比較評価ではないことを改めてご理解ください。
注:(なお、今回は演奏の動画をyoutubeに掲載しておりません。今回の出演者で動画を見たい方はDVDなどで配布しますので、ご連絡ください。)

出演者(イニシャルによるリンク)SNT HT TH TNA  ST OM SA HA  NA  EK

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SNT

努力賞です。これまで声量がないのをいかに声量をかさ上げするか?という課題でしたが、その意味では成功した演奏だったと思います。
まだ洗練されない未熟さは残りますが、まずは最低限の声量を以て歌うというレベルに頑張って到達したと思います。
このことにまずは慣れて行ってください。
あとピアノ伴奏は、これももう少し練習の余地がありそうです。伴奏音楽次第でも、歌手の力量が倍加する可能性があるからです。
この点も、またアンサンブルという意味においても、今後の方針をよく考えておいてください。

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HT


全体的に頑張って歌っているのが良く分かりましたが、頑張り過ぎたのか?あるいはホールの響きがつかみきれなかったのか?
声の響きが力みのせいで、もう一つ伸びない声になってしまいました。
リハーサルも時間がないので仕方ないとは思いますが、声を響かせる発声の技術は、再考の余地がありそうです。
その意味では、選曲も難易度が高かったです。
フランス語の発音と発声という点に的を絞ると、今後の選曲も再考の余地はあるでしょう。
発声面においては、力で押さないで響きを共鳴させることを覚えて行くと良いでしょう。
今後を期待します。

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TH

直前に風邪をひいてしまい、咳が出そうになる中、よく頑張って歌い通しました。努力賞だと思います。
しかしながら、実際の歌声は本人が思っているよりも良いものでした。
ホールと相性が良かったのか、良く響いてきれいに歌えていました。
この点を差し引いて、あえて伝えられることは、彼女の持てる声の中で、PやPPの声をどうやって表現するか?という技術面です。
これまでは中低音のもぐりがちな声を前に、高く出す方向を勉強してきました。これは結果が出せています。
今後は良く響く声を、いかに抑制したり出したりというメリハリをつけることを勉強して行ってください。
そのことで表現力が倍加するでしょう。

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TNA

ドビュッシーの出だしは喉が高くか細い声でどうなるか?と心配しましたが、持ち前の集中力の良さで乗り切り、
一気にミカエラのアリアで好結果を出せたと思います。
厳密な意味での、教えた発声はまだ定着していませんが、現状の喉で良くあれだけの高音を安定して出せたと感心しました。
息の安定というのか、本番時の呼吸の静かさ、安定が良いのだと思います。
後は喉の使い方、身体の重心の置き方を覚えて行けば、一気に声量は上がるでしょう。

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ST

彼女も声量が出ないタイプでしたが、この1年ほどの練習の結果、練習時はほぼ問題ない声量で歌えるようになりました。
今回の本番は、その試金石の意味がありましたが、合格だと思います。
まだ緊張する傾向が大きいのですが、それを差し引いても成長の跡が大きかったです。
今後は、ソプラノとしての声のキャラクターをよりレッジェロな軽い方向に行くと良いのかな?という感想を持ちました。そのための発声をまた新たに始めたいと考えました。

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OM

彼女も成長の跡が大きく、イタリアオペラのアリアを実に堂々と歌いきったと思います。
特に中音域~中高音がとても良く響く声になりました。
惜しいのは、より高音域の5点A~bくらいでしょうか。響きが薄くなる傾向が残っています。
これが、彼女の高音発声の課題でしょう。
更に高音に上がると良いのですが、この5点A~h辺りがコロラトゥーラをキャラクターにする人にとってのソプラクートへの換声点なのだと思います。
ここをもう少し響きを増すように出来ると、より発声上のクオリティが高まると思いました。

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SA

ピアノ伴奏との音楽のアンサンブルという意味で、この作品の美点が非常に良く出せた好演奏だったと思いました。聴きなれないデュポンという作曲家の作品ですが、詩情あふれる作品の美点が良く感じられました。
声は、教えたことを良く実現していました。その点でも努力賞として評価したいです。
更にもっと喉を開ける発声を覚えていただきたいです。その点で今後にさらに期待したいと思います。

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HA

2曲とも歌いなれた作品だったせいもありますが、彼女らしい演劇性に溢れた演奏に終始しました。
安定して、表現力に富んだもので、プロも顔負けの演奏という印象です。
このところ、発声を教えてきたせいもありますが、特にIl bacioでは、声が良く出ていましたが、やや胸っぽい
感じが強くなりました。
下顎で頑張らず、もう少し鼻腔の発声を覚えられると、歌うことも楽だし音程感の良いクリアな響きになると思います。

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NA

声量と演奏の安定度において、言うべきこともない良い出来だったと思います。
声として惜しいと思ったのは、アリアでは5点G♯の声が奥に引っ込む傾向の点。
もう少し前に出る明るい響きが得られると良いですね。
フォーレの歌曲は発音の間違いが散見されことが惜しいです。
発音上、間違えやすい癖みたいなものがあるようなので、ご自身で注意されてください。
どちらの曲もフランス語なのですが、レッスンで教えたように、歌い過ぎずに語ることをもう少し出せると
演奏としてのクオリティが高まると思います。

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EK

彼女の演奏は感心しました。
とにかく、モーツアルトのアレルヤは速いテンポにも関わらず、16分音符の粒が滑らないできれいに出せた事。
そして一番評価したいのは、声が浅く子供っぽくなる点が、レッスン出教えた通り、あるいはそれ以上に出来ていたことです。ホールの響きの癖もその点で彼女に味方したようにも思いました。
この声の方向を失わずに、さらに磨きをかけて行ってください。

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