前回は、呼吸そのものにスポットを当てました。
前回の内容をかいつまんで書けば・・・

1、息を不要に吸わないこと。
2、吐くことに集中することを書いたと思います。

この吐くことは、実際は声を出す行為になるわけです。

この発声時の出し方によって、息を大量に使うか使わないか?が左右されます。

恐らく初心者の多くの方が誤解されているのは、お腹を意識的にへこますことが声を出す行為とリンクする、と思っていることです。
これが、特に声の出し初めで大量に呼気を消費してしまう大きな原因なのです。

したがって、初心者の方は、フレーズの頭で息を大半消費して、あとは肺に残った息だけで歌うために、次のブレスで苦しくて、胸で深呼吸してしまう、という
悪循環に陥るわけです。

これは、100%の間違いとは言えないですが、実際はお腹の自発的な動きで発声するのではありません。
自意識としては、お腹を動かしません。
しかし、実際は息がなくなっていくと、しぼんで行こうとしますが、これを腹筋と背筋でしぼまないように支えた状態で歌う、ということです。
(それでも、最終的には息が足りなくなると、自然にへこみます)

そして、声を出せば、その出し方に依拠して息は吐かれて行くわけです。
このとき、下腹部再下端からへそ辺りにかけて、歌声に応じてお腹は自然にへこんでいきます。
しかし、このことが、逆に胃の辺りから側腹にかけてを膨らませることにつながる感覚も生み出します。

多くの声楽家の方が、お腹入れるのか出すのか?と言ってるのはこのことでしょう。
人によって、その出し入れの部位の違いへの意識のあり方が違うのだと思います。

しかし、どちらにも共通しているのは、発声のためにお腹を意識的にへこませるのではなく、支えている感覚はある、ということです。

考えてもみてください!
静かにブレスをする名人たちを見ていて、あれだけの声の響きやフレーズの長さをお腹をベコベコと押し入れて歌っていると思いますか?
息を相当に抑制するコントロールをしなければ、フレーズを、あるいは1曲を歌いきれないことは、経験上判ると思います。

以上のことを、完全には解説し切れないのですが、わかりやすく図解してみました。
ここでは人間の解剖図を使わず、水道の蛇口からホースを通って水として出す、というたとえにして書いて見ました。

声楽呼吸理屈のたとえ