多くの声楽愛好家の皆さんに人気のあるヘンデルのPinagero la sorte mia
しっとりとしたテーマ、威勢の良い中間部、対比の妙で美しいアリアです。

教えていて気になるのが、イタリア語の発音。
良く読めているけれども、発声が気になる所を直します。
直すと、すぐに治るけれど、ちょっと経つとすぐに元に戻ってしまう。

これはなぜだろう?と考えたわけです。
で、理由は簡単なのです。
日本人の言語発音のままだから、です。
A=ア I=イなのです。

アルファベットのAIUEO=日本語のアイウエオと無意識に思っている方が多くないでしょうか?
実は全然関係ないといっても良いでしょう。
特に声楽における歌詞発音では、この日本語の母音発音の意識が、良い声の障害になることが多いです。

ぼや~っとしたどの形もあらわさない響き、それはそれぞれの音域に応じた美しい響きを出すだけのもの。
と考えてください。
発声の核は、このようなどの母音にも属さない響きの核を作り出す意識が重要なことになります。
ハミングから母音に変換する練習法は、この点を追求します。

しかし、そのままでは歌詞の発音がよくわかりません。
どのような要素が歌詞の母音を表現するのか?

もちろん子音は大事です。子音は舌と唇が主に働くわけです。
また、喉で出来た響きを外に出さないで口奥に閉じ込めるような発音の仕方や、逆に口をラッパのようにして声を出す方法などで声の外見が変わります。
喉奥を開いた声やカバーされた声、というのはイタリア語でApertot,copertoと言いますね。

言い換えれば、母音(歌詞発音)は喉で作るのではないということ。
ところが、日本語の言語発音は、かなりな部分を喉自体で母音にするような使い方をしています。
歌声と話し声は、この点において大きな違いがあることを、よく理解して練習に励んでください。