声楽家の資質は、良い声と語感の2つで決まると思います。
良い声は発声の訓練で手に入りますが、語感はなかなか難しい。

語感を持つ基本は、日本語の文章をどう感じてどう読むか?と言う能力です。これは、かなり小さい頃からの習慣とか教育とかが関係するのでしょう。
この点において、日本の主に音大を中心とする声楽家養成の教育は、偏りがあると感じています。

いきなりイタリアバロックのアリアですか?という感じ。
日本語の歌をきちっと歌えることが前提条件でやっているなら判りますが、終いに日本語で歌うと発声に悪い、とまで言い切ってしまうのはいかがなものでしょうか?

発声に悪いと言う前に、発声をきっちり教えられれば、何語であろうとも、言語の違いによって良い悪いは言えません。

それでも、欧米の一流歌手のレプリカを作る、と言うことが目的であるなら、その点では成功かもしれませんが。
残念ながらレプリカと言う面では、外見が違いすぎるでしょう。

これからはレプリカではなく、日本人にはこのような声楽家がいるぞ、と胸を張って言えるような、日本語を素晴らしく歌える歌手をもっと養成していくべきでしょう。

昨今流行の、英語教育の低年齢化の問題でも良く言われることですが、英語がぺらぺら上手くなる前に、話せるだけの内容を持った人間に育つためには、日本語をきっちり教育していかないといけないということ。

国際化というのは、そういうことではないでしょうか?
ローカルの大切さがないところに、真のグローバルは育たないという観点からも、日本語歌唱をもっと大事にしていきたいと考えています。