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ドビュッシーについて・・・

ドビュッシーの作品の特徴は、極論ですけどワーグナーの影響なしには考えられないと思います。ワーグナーの「パルジファル」を初めて聞いた時に、ドビュッシーの音楽の謎の部分が少しわかったような気がしました。すくなくとも歌劇「ペレアスとメリザンド」は「パルジファル」の影響なしには考えられないと思います。「トリスタンとイゾルデ」も同じでしょう。
ドビュッシーの交響曲「牧神の午後への前奏曲」は同様に「トリスタンとイゾルデ」の冒頭のテーマがなくては、生まれ得なかったと思います。
それにしても、同じ音楽的語法を用いながらまったく違う世界を作り出したドビュッシーはやはり天才といわざるを得ません。ゲルマンの民話の世界に対してギリシャ神話の世界を音楽で描いた訳です。
ところでフランス音楽の特徴です。ここで言うフランス音楽とは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家達の語法の特徴についてです。有り体に言えばそれまでドイツの作曲家達が用いていた音階、今でも我々にはおなじみの、ドレミファ・・これの使い方注目したのです。
音階にはドレミファ意外にも日本の音楽で使われるドレミソラ・・とか沖縄のドミファソシド・・・などなど世界中には色々な音階があることは知られていると思います。実はドレミファソラシド・・という音階はヨーロッパに浸透した音階の中でも比較的新しいもので、人為的に作られたものなのです。細かい話は次回に譲りますがフランスの作曲家達は、あえてこれから脱却して古い時代のヨーロッパ、それも教会音楽に使われていたグレゴリオ旋法に目を向け、そのことによって新しい語法を産出したのです。まさにルネッサンス(再生産)だったのですね・・・
ドビュッシーに限らず、グレゴリオ旋法への嗜好はフランス音楽の特徴でした。控えめに残っていたこの嗜好を,、あらためて復活させ更にエスニックブームを取り入れて、ペンタトニク(5音音階)や、エジプトの音階など欧州以外の音楽の修飾を非常にうまく取り入れました。
ただ、彼が単なるブームに便乗した音楽家、時代的な作曲家にとどまらず天才の名を勝ち得た理由は、これらの材料を使って、しなやかな音楽語法のありかたをアカデミズムの中に持ち込んだ事にあるでしょう。もっと言えば、それらはあくまで語法であり、本当の目的は、ドビュッシーの目指していた詩的な世界の完成のためにそれらの材料を使って、まったくドビュッシーそのものを作り上げた事にあるでしょう。その後に続くドビュッシー的な作家達がどれも成功しなかった事を見れば、そのことの意味が良く分かると思います。…続く