2001年3月レッスンノート

レッスンノート目次
3月1日 | 3月3日 | 3月4日 | 3月12日 | 3月14日 | 3月15日 | 3月18日 | 3月19日 | 3月21日 |
3月24日 | 3月25日 | 3月26日 | 3月28日 | 3月29日 | 3月31日
3月31日

3月も終わりましたね…
ゆうこさん。発声練習で少しお腹を意識するように声を出す練習。彼女の場合は時間がかかったけどこちらの言っていることの意味が、身体で分かるようになってきたようだ。低い方の声の出し始めは、あまりポジションを深く取らなくても良いけど、上に行くに従って少しずつお腹の方に意識が行くようにすること。必然的に、喉が開くような口の開き方になる。もう一つは、胸の開き方。ブレスを入れた時に胸を高く開き、声を出す事によってその胸が落ちないようにすること。そのためにも、下腹部の支えが必要ということ。集中力がある時は、大分出来るようになった。
曲は、さくら横丁。花でも見よ〜…の所の半音階の下降は音が取れるようになった。途中でブレスが足りないためにやるブレスは、中途半端にしないで、思い切りちゃんとやっちゃうこと!そうして自分の表現にしてしまうのも、テクニックだ!半音階のヴォカリーズの最後の音G♭は音が合っているから自信を持って次の再現部のモティーフの音に入って欲しい。ベッリーニの2曲も暗譜がもう少しだ。歌はきれいに歌えているし、発声でやったことがもう少し反映すれば言う事はないと思う。
有節歌曲は、1番と2番の歌詞を取り違えやすいので、きちんと歌詞をノートの書き移して、歌いながら歌詞が書けるまでしっかり暗譜をすること。それにしても、心底から明るい性格は、歌うためにあるようなもの。大事にしてください。

たにさん。
発声から、大分声が出るようになってきた。ただ、少し力みがある。途中で発声をアからウに変えて、喉が詰まらないようにしてみた。ウの母音にすると、意外と喉が開くものだ。アの母音は日本語だとかなり口先で調音するために、喉を詰めてしまいがち。今日は初めて中音部、b〜cくらいの音が滑らかに流れるようになった。彼女のチェンジは2段階あって、1点f〜g、そして2点dくらいから上。
一般的な意味での地声は、1点f〜gから下の辺りだけど、彼女は低い地声の領域の喉の開きが良いのだ。そのために、地声に聞こえない特色がある。どうして、2点dくらいでまたチェンジするのだろうか!?と思ってしまう。逆に言えば、完全な初心者の場合地声で2点dまでを聞ける声で出すのは至難の技なんだけど、意外にすんなりと出てしまう。今日は、発声で2点Esまで良い声が出るようになった。この領域をもう少し上まで伸ばせると、歌になった時にもっと楽だと思う。歌っている時に彼女の側に立つと良く分かるが、声を出す瞬間に相当な力を使っている。最初は力の使い具合が分からないから仕方がないが、腰の力のタメ、腹筋を維持する力で、声を出す瞬間の力の掛け具合をコントロールできるようになれば、本物だと思う。発声練習は、成果が現れてきたので嬉しかった。
曲は、プーランクの「あたりくじ」から「おねむ」身体の使い方が慣れていないので、歌い出しはコントロールが聞いていないかった。フレーズ毎に教えるとすぐに出来るので、これはアーティキュレーションの使い方と、呼吸、腹筋などのバランスを本人が練習で、つかめばすぐに解決するレベルだろう。
この曲は、次回に終了試験!フォーレの「優しき歌」から「後光が射す聖母様」を課題に…

ゆかさん。体験レッスン。中学時代に、レッスンを少しやったという。また合唱をやっていたそうだ。
早速、発声をする。声は本当に使っていない…という感じ。技術職で毎日夜遅くまでコンピューターに向かう日々で声が死んでいるよう。どこと言って破綻はないのだけど、声に活力が乏しかった。地声は弱く、特に大きなチェンジはない。何もしなくても2点Asまでは何とか出る。発声練習を丹念に時間をかけてやると、大分滑らかになり、最後には胸に軽く響くまでになった。まず、基本的なゆっくりとしたブレス。胸にもお腹にも気持ち良くゆっくりとブレスを入れて、しっかりと吐き出す事を心がけてほしい。呼気の力が声の力につながっていく。よく見ると、お腹は意外と自然に使えていた。むしろ胸の開き、膨らみが足りないようだったが、本人は特に腹式を意識しているのではないようだった。普段からゆっくりとしかし、たっぷりとした深呼吸だけは、心がけた方が良いと思う。これなら、どこでも出来ると思う。姿勢は、身体は細いけど意外と下半身はしっかりしているようだ。身体がぐらぐらしないし、全体に落ち着いているので、後は本人が発声の意味やこつをつかむと上達は早いと思う。今後はイタリア歌曲集をやることにする。イタリア語は読めないというので、読んでもらうと意 外と読める。イタリア語は、ローマ字読みだし開口母音が多いので、歌の初心者にはうってつけだ。ここに来てもらって、歌を学びながら身体の中の真の活力を取り戻してもらえれば、こちらも本望だ!


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3月29日

あきこさん。発声練習を始めると、声の出だしが不安定だった。ブレスを深く意識し、へその上辺りに口が上に向いて付いていて、そこから声が出るようなイメージで声を出す事。ちょっと意識しただけで声が変る事が分かるはずだ。どの人にもしつこく言うけど、胸声が声のオリジナルである。
日本の学校音楽の世界では、しばしば地声は悪いと教えるが、これは地声の出し方が悪いのであって地声そのものが悪いのではない。この事が大きな誤解になっていると思う。地声でも、深いポジションでお腹から楽に出せる声が、声楽の基本である。男性は、テナーでもHiC(2点C)くらいになって声がひっくり返るくらいだけど、女性は1オクターブ高いから当然、ソプラノの音域の半分近くは地声の領域と重なるわけだ。これ以上になると、どうしても苦しいから声がひっくり返る。後に書くあやこさんもそうだけど、この裏声になっても、息を深く取る事を忘れずに、そして息をしっかり流し(出す)そこに声を乗せるように。あるいは、地声の声帯の鳴り方を、この声の中に混ぜるように。
彼女は、チェンジしてからの声がある程度訓練されている。息が流れるのだ。ただ、その場合でもポジションはもっと深く意識して欲しい。それだけで、声に芯が出来る。
曲はStar vicinoの復習から。比較的高い声で始るフレーズでも、必ずお腹から出す事を忘れないように。フレーズの最初の声出しのポジションが定まれば、フレーズの終わりの低い声にきちんと戻れる感覚をつかんで欲しい。ヴォカリーズの部分は、ブレスポイントをきちんと定めて処理する事。ブレスを無理しない事。新しい曲、Vergin tutto amorもやる。今日は言葉をつけずに、ラララで音取り。音取りの時から、必ず声のポジションをつかむことを忘れずに。フレーズは最初から低い音域で始れば、比較的地声に戻りやすいが、高い方から降りると戻りにくい。Il pianto suoi ti nuova...が地声を出しにくいのは、その前のブレスがきちんと、深いポイントをつかめていないからだ。ブレスは慣れるまではくれぐれも慎重に、大事にやってほしい。声のポジションを決める大事な要素だ。

あやこさん。しばらくだったけど、前回教えた低い地声の出し方は忘れていなかった。ただ、1点Fくらいまでは楽に地声が出せるのだけど、実はまだ本当の深いポジションで出せていない。今、彼女が到達しているのは、楽に出せる地声の領域で、声帯を合わせて鳴らす事を意識的に出来るようになったということ。ここに来た時には、そこまでも行ってなかった。きょうは更にそこから声の深いポジションを息で取る事、そしてそこから声を出す事を中心にレッスンした。もう一点は、腹筋の使い方などが分かっていないのでその辺りも教える。声を出す時に、どうしても喉で声を当ててしまうのだが腹直筋といってへその下の部分を引っ込めるように声を出す事を徹底して欲しい。平たく言えば、お腹が動かなければ、声が出ない…くらいに思って欲しい。発声練習は、下降で声が鳴らなくなるくらい低いところまで出すと息がスカスカすると思う。、その感覚でまず声のポジションをつかみ、その場所で声を上に上げていく事。地声で段々と上げていくと、喉が詰まって苦しいが、それは声の出し始めの位置が上ずってくるので、苦しくなるのだ。出し始めの音が1点F〜Gくらいになっても、声のポジショ ンは深い低いところを常に意識するように。また、苦しい音域になったら、あごも良く開いて喉を開けるように意識する事。その事で喉が上がるのを防ぐ事が出来る。
歌は、ヘンデルのOmbra mai fu.最初のO〜と伸ばすシ♭の音から、喉が詰まってしまう。声の出し始めをもっと深く意識すること。何度もしつこく言うようだが、まずブレスをする時にお腹の深いところを意識し、その場所から声を出すように。そして、腹直筋をしっかり使い、シ♭のロングトーンを伸ばす事。楽譜は全音の中声用を使っているが、この曲の場合、2点Cまでは苦しくても頑張って地声で出す事を課題してほしい。そして、裏声にチェンジしてからも、しっかりと腹筋を使って息を流す事と、胸に響かす事を忘れないようにして欲しい。
今の訓練は、相当身体を使う事を要求する。そして、苦しい部分もあるだろう。でも、最初が肝心!
くれぐれも、飽きないで嫌にならずに、レッスンを続けて欲しい。ここを通り抜ければ必ず楽に、声が出せるようになるからだ。身体はあるし、声はかなり出るようになると思う。最後にフランスの古いシャンソンを課題に上げる。


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3月28日

ゆみさん、という方。他のレッスンを受けているのだが、自分のやっている事が良いのか悪いのかがわからない…自分はへたくそだ!という、メールをいただいた。きょう、初めてレッスンをして見て、なるほど独りで悩んで練習していると、悪い癖が出るものだ…という印象を持った。(失礼!)
ただ、癖は早い内に直せば治る。考え過ぎは禁物。音楽というのはとても奥深いものだけど、中でも演奏家として自分がやった声楽、これを趣味の範囲で上手になろうと考えるには、何が大事か?それは、やるべき事をきちんとやる、という仕事の基本と同じだ。声はちゃんと出ているか?音程はどうか?リズムはどうか?マイクを使わないで部屋の空気を振動させるように声を出す事、そして正しい音程とリズムで音楽を奏でる事。個性とか、演奏家としての華みたいなものは、もっとずっとずっと巧くなってから考えれば良い事。
きょう、教えた事は呼吸と声のアタック、歌に入って母音の扱い方。フレーズの扱い方…といったところかな…。呼吸は、腹式だけではなく胸式も含めてとにかく肺に「気持ち良く」空気が満たされるようにすること。腰から肋骨の下にかけて斜めに昇る筋肉(僧帽筋)がきれいに伸びるように、胸も広げて息を入れること。
声作りは、まず胸声から。顔の部分や口を使う共鳴の探求はその後。
姿勢は、首から上ををぐらぐらさせない。全体の姿勢は、とても良かった。腹式もある程度出来ていたようだ。声自体は、出す時に腹直筋を使うように。そして、出してから音程を取る時にもこの腹直筋を使って横隔膜を広げるように使う事。低い方の声のアタックは、腰を意識して。中音部1点bくらいまでは胸に声を軽く当てるように出す事。音程が上がるにつれて喉が詰まるから口を開けて喉の開きを促すように。口を使って声を調節するのが、声を暗くし、前に声を出せなくする原因。
本人によれば、喉を使ってはいけないので…というコメントがあったけど、声帯は充分に使ってあげないといけない。俗に言う「喉声」というのは、身体を使わずに喉、あるいは首周辺の筋肉を支えて苦しそうに声を張り上げる様をいうのです。身体全体を微妙にコントロールして声帯を充分に使って声を出し歌う事が、大事です。
歌は、O cessate di piagarmi.歌い出すとすべての母音が暗いし、声が当たっていない。まず、全体に口を自然に開くこと、そして声を前に出すように、吐くように意識する事。フレーズの基本は、上昇で声を出すこと。下降では、音程が落ちないように声を支える事。アエの母音はもっと開いて、ウはウオ〜と二重母音にならないように。ウそしてイは下唇の方に響きを持って行くように。
レッスンが終わる頃には、随分「普通」の声に戻り、ピアノ伴奏をしていても充分に「聞こえる声」に戻っていたと思う。難しい事は、これからレッスンしていく内に何度も説明すると思う。そしてそのことが自然に分かるようになってきたら、上達した証拠だ!


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3月26日

さわださん。発声練習では、ポジションのことを教える。深みのある声のポジションは教えたらすぐに出来た。彼女は、中学時代から少しずつでも歌をやってきているので、声を出すために身体を使うという感覚がすでに育っている。ただ、使い方と声をどうやって研ぎあわせて行くかという面でサジェスチョンが必要なのだろう。
曲は、ヴェルディのオテロから「アヴェマリア」レシタティヴォはまだまだ練習が必要だが、今日はアリアを中心にやる。この曲は全体にP とかDolceと書いてある部分が多いのだが、声の響きを小さくしては駄目だ。エネルギーの無い、か細い声になってしまっては台無しである。まず軽い調子でもきちんと響く声を作る事。Gesuで始る、Esの音は、上の声で良いが、浅くならないように。Pregaのところで、gaがFになるけど、Preで出した響きから更につま弾きを強くして出すように。声が途切れて出してしまってはLegatoにはならない。全体に言えるが、細心の注意を払ってLegatoに声を扱う事、それは言葉のアーティキュレーションをはっきりさせることではなく、響きの統一性に注意を払う事だ。母音によって響きの質が変ったりしては駄目。彼女は言葉に慣れていないし、慣れるのに物すごく時間がかかるタイプなので、歌わなくても良いからイタリア語を何度も素読することを心がけて欲しい。
発表会で、Giannni schicchiのOh miobbabbino caroを歌いたいらしいので、許可する。笑
聞いてみたけど、まあまあ問題はなさそう。のっけから、声の深さをやったせいか、今度は出だしの
Oh mio babbino caroがやたらと暗い。(笑)オの母音が続くせいもあるが、もう少し声の処理を口の前でやるようにすること。Mi piace belloのAsが出る、loは心持ち早めに出すと良い。くれぐれも出し過ぎないように。細目にしかし、深く声を当てる事。最後のページの前にある、Mi struggoからDioまでのくだりは、口を開けないで処理すると良い。当てるところは、下唇で導いて、声帯の下のくぼみあたりに息と共に軽く当てるように。この曲の最高音のAsはあまり激しくなく、上品に響かせて欲しい。


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3月25日

きょうは3人だった。
みむらさん。発声をやりだすとすごく軽い声だった。調子がもう一つのようだと思った。ここでは何度も発声のことを書いているが、誰でも発声練習はごくシンプルなことしかやらない。発声練習は色々な意味があるが、まずは声帯や身体の筋肉を歌う状態に持って行くための準備運動。それから、楽器で言えば調弦にあたること。声の場合は、声質を整える意味がある。みむらさんの発声を聞いていると、特徴は喉に無駄な力が入っていない。これは良い事だ。ただ、彼女の場合は、そのためにお腹に力を入れているところがある。そのため、音程に関係のある息の調節がついてないんじゃないか?と思う。お腹に力をためないで、腰に支点を持っていく事。そして、おへそあたりの腹直筋をしなやかに使って息を送れるようになってほしい。そうすれば、クレッシェンド、デクレッシェンド、フレージングが自在に操れると思う。曲は、イタリア古典のO del mio dolce ardor.やはり、最初から声のポジションが高い。声というのは、息が上に昇って出ていくというイメージが基本である。しかし、息の出所、声の出所は声帯ではなく、もっと下を意識してほしい。みぞおちとか、おへそとか腰である。これをポジションという。俗に言う、腹から声を出すというのはこのことだ。このポジションは音域によっても変る。高い音域になると今度は腹ではなくて、顔を意識したりする。自分の声と相談しながら、この声のポジションに充分注意して声を出してほしい。

ゆうこさん。彼女も典型的なお腹に力を入れて声を出すタイプだ。せっかく息が入っても声を出した瞬間に全部下に落ちてしまう。彼女は、良い声のキャラクターがあるし、あまり理屈が好きではないので難しいことを言ってこなかったが、やはり基本は大事である。このためにブレスが足りなくなるという意味で損をしている。それと、2点F以上になってからの声のポジションが変るので、もう少しあごを開くこと。喉が詰まってしまう。しかし、よくよく考えると彼女は相当身体を使って声を出しているはずだ。胸声で2点F近くまでぐいぐいと出してしまう。うまいのは声の当て所を感覚的に捉えていて、微妙に共鳴点を変えて声を上に伸ばしていく事が出来る。こういう作業は教えて出来るものではない。本人の感覚が大きいのだ。そして、何よりの美点は音程が素晴らしく良い事だ。時々、間違ったソプラノさんが良く言うのは、音程は上ずるのは良い!ということ。上ずっても下ずっても駄目である。(笑)
歌はベッリーニのVaga lunaと、Vanne o roza.この二曲は合格!イタリア的な声の暖かみを持って、きれいに歌っている。発表会が楽しみである。そして、中田喜直の「さくら横丁」。これまた、彼女のキャラを生かす艶のある曲だ。後半の1オクターブ飛んで半音階でまた降りるところが譜読みが出来ていない。もう少しなので頑張って欲しい。

たにさん。
久しぶりにレッスン。発声練習から頑張って出している。今日も発声に相当時間をかけたが、やはり声のチェンジは2 個所。ただ、下の1個所は(1点aからhくらい)あまり気にせずに、2点Fくらいを目処にしてみると良いだろう。そして、上にチェンジしても、腰を支点にしてしっかりと息を送って欲しい。
この出し方でも、身体を使ってしっかり出していけば、だんだんと下の声が付いて強い声になっていけるはずだと思う。それから、声の出し始めのポジションに気をつけること。不用意に声を出すと高いポジションになって、声帯が上に引っ張られてしまう。きょうはやらなかったが、舌も舌根の方に引っ張られていないだろうか?以前に舌先を硬口蓋の方に引っ張って発声をやると、結果が良かった気がする。舌というのは、やっかいで人によって長かったり厚ぼったかったりと様々だ。問題は舌根が声帯の上を狭くしてしまうこと。それと、舌根の骨が声帯をコントロールする骨と連携しているので、声帯の調節をするのに、役に立つ事がある。声を出す時に、舌にも注意を促すのはそういう意味だ。
曲は、リディア。上向音形の基本的なフレージングは、音が高くなるにつれ、声というか息を強く出す事がこつ。この推進力は、服直筋。お腹を中に入れていくように。ただし、腰を支点にして支えるように。大分うまく滑らかに歌い込めるようになった。本人は…パワフルなリディアだ!と思っていたらしいが、聞いている方からすれば普通である。とにかく、マイクを使わずに声の響きで部屋の空気を振動させるのは、なまなかなことでは行かないのである。最後にプーランクの「あたりくじ」から「おねむ」
これも最初の1点Gの声のポジションを大事に。なるべく頑張って下の声で上まで引っ張り上げるように。喉が苦しかったらあごを開いて充分に喉をあけるように。そして、音が低い音域まで下がったら元の低い声にきちんと戻れるような、声の基本ポジションを確立する事。でも、大分良かったですよ!
もうちょっとだから頑張って。


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3月24

きょうは、新しい方。さつきさん。日々忙しい仕事の中で、窒息しそうになり新しい刺激を求めていらしゃったようだ。そのせいか、とても嬉しそう。何か緊張の中にも、喜びを持ってやるという心が感じられてこちらもありがたい。何も経験がないとのことで、ゆっくりとした呼吸から始める。吸気は、比較的無理なく出来るが、呼気の時に息がまとまらない。これは、歯の間から音を出しながらやるのだが、その際に、上の歯にあてて呼気の音が高くなるように集中すると良い。発声は、下降5度で始める。意外にも口がほとんど開かないで声を出す。しかし、それなりに喉は締まらずに開いている。喉にもあまり無理な力が入らずに素直な声質だ。腹筋の使い方、呼気の出し方の基本を教える。そして、口の開き方。あごに無理な力を入れずに、少しずつ開くようにする。頭を上げて、後ろに倒しあごの力を抜いて、だら〜んとさせて口を開く。それくらいの開け方で、声を出すようにすること。それを中心として、発声をする。今度は声のアタックの際に軽く胸に当てるようにして見る。それまで、Fくらいから下の声が鳴らなかったのが良くなるようになる。高い音域は、2点Aまで出た。ちょっと した訓練で2点bまではすぐに出るようになるだろう。時間がなかったので、発声だけで終わった。今後はイタリア歌曲集を学ぶことにした。まずは、Caro mio ben.身体つきは骨がしっかりして、首の座りも良く、声が出易いタイプだと思う。今後は少しずつでもレッスンして良い声になるようにしてあげたいものだ。

もう一人はやはり新しい方で、わださん。
コーラスをやっていて、すでに歌い方の基本が出来ている。コーラスではアルトパートとのことで、発声をやると、明らかにアルトらしい声の出し方をしているが、体つきからしても、ソプラノかせいぜいメゾソプラノという感じだ。あまり無理に低さにこだわらずに、基本を身につけてほしい。
とはいっても、自己流でやってきたにしては、基礎が良く出来ている。声量もそこそこある。高校生から合唱を続けていたことが大きいのだろう。なんでも早く始めることは、ある意味では良いことだ。
さて、発声練習で聞く限りでは、中音から低音域では、口をややとがらして、共鳴を作っているが、それが原因でやや声が暗い。声質を作るのはむずかしいもので、口先で作ってしまうと身体の使い方を忘れてしまうので、気をつけるべきだ。発声では、腰を広げるように、そして胸に軽く声を当てるようにすることを教える。後、ブレスをしてから声が出るまでに時間がかかる癖がある。発声練習の際にも少し早めのタイミングを上手に取りながらやるのも、良い方法になると思う。それから、立ち方がやや前傾姿勢。重心を感じることが出来て良いのだが、腰が使いにくいところが欠点である。これらの基本は、彼女なりに長年かけて作ったものなので、無理にすぐ直すことはないと思う。御自身が必要に迫られて、直していくなら直していけば良いと思う。
基本的に、発声練習では破綻がないので、曲を与えて、歌の中から問題点を見つけ直していく方法を取りたい。曲は、グルックのオルフェのアリアを与える。メゾ、アルト向けのアリアだ。


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3月21日

きょうは、仕事が休みだった。自分の伴奏合わせをして、一人新しい方がレッスンに来た。
りりさん。背が高く、細い方だけど、訓練すると結構声が出そうな体型だ。
早速声を聞く。取りあえず下降形の5度で発声をやる。低い方は地声はまったく使わずに、高い方まで楽に出るタイプ。ただ、口の奥や喉に力が入り、意外と中音部で声が暗く、声量が出ない。
色々やってみると、まず呼吸の仕方が間違っている。腹を固くして、そこによりかかって声を出していること。そして、声のアタックを喉でしていること。姿勢が悪くやや猫背であること。
歌う時も、頭で音楽のリズムを作ろうとしてゆらゆらとする。また、手を使ってフレージングをしている。
手を使うことは一概に悪いことではないが、その場合、どちらかといえば、胸を広げるために使ってほしい。呼吸も、浅い。タイミングの取り方が早すぎるのだ。基本はまず、ゆったりとした呼吸を心がけてほしい。声を出す前に、静かに呼吸をしてみてほしい。ゆっくりと4つ数えて吸気、そして同じ数だけ呼気…というように。そして、その両者がゆったりとしたタイミングで行えるように呼吸訓練をして落ち着いてほしい。そして、歌う時の呼気は、必ず下腹部を中に入れるように、ということは、この部分が固くなってしまっていると、使えなくなってしまうということ。そのためには、もう少し上の横隔膜あたりに息を入れることと、自然な胸郭の呼吸も心がけてほしい。
最後に、カロミオベンを聞く。顔を見るととても表情豊か…というか、とても苦しそうな辛そうな表情に見える。歌を歌うということに対する、特別なイメージがあるのだろうか。ぼくには完全には分からないが何かもう少し客観的な、冷静な態度がまず必要であると思う。もし、声を出そうとするあまりに気持ちを込めようとしているなら、そうではなくて、もっと身体の使い方に神経を集中することが大事だ。
声楽は、演奏であり、お客様に音楽をわかってもらう仕事だ。我々が音楽の情緒に埋没せず、音楽を分からせるための自分の身体の状態を保つこと。冷静さと、情熱のバランス良い使い方が大切だ。
彼女はとても博識で、趣味もある。声も訓練すればずっと良い声になる。元声は良いものを持っている方だ。しっかりと基礎を学んでほしいし、教えたいと思う。



3月19日

さわださん。彼女は、ブレスが元々長い。ただ、気になっていたのは姿勢があまり良くないことと、上半身がまだ固いことだ。胸が広く使えない。姿勢を直してみるが、直しても今度はその姿勢が固くなってしまう。それは、多分下半身がしっかりできていないからだろう。特に腰の支えがしっかりできていないと、上半身を楽に使えない。腰骨から前腹の上、みぞ落ちにかけて軽く、しかし、しっかりと張るように。ちょうど腰骨のところでぜんまいを巻くような感じで意識すること。
曲は、オテロのデズデモーナのアリア「アヴェマリア」
まだ言葉が身に付かない。元声が良いので、意外と気にならなかったのだが、改めて観察すればやはり喉で歌っている部分が多分にある。声自体が比較的太いし落ち着いているので、気にならなかったのだ。音程がやや低めになる傾向や、自然なビブラートがつかないのは、喉で歌ってしまっていることが原因だろう。これも、腰をしっかりさせて、喉の力を抜くようにすること。
最後にもう一曲、サンサーンスのダリラのアリアMon coeur s'ouvre a ta voix
メゾの曲だけど、ご本人のたっての希望。フランス語を読むのが大変だぞ!笑


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3月18日
きょうは、誕生日なので手短に…笑
みむらさん。とても良くなった。最初調子が悪く、色々姿勢から口の使い方などやったのだがつかみ掛けても高い声域になると、声が鳴らなくなってしまう。
姿勢だが、どうしても腹、上腹部に力点を置いてしまう。むしろ、腰に力点をかけるように気をつけることと、胸を開くように。
ヘンデルのLascia ch'io pianga.のレシタティーヴォの声の出し方で、自分がやってみせたら一発で良くなった。ここは、低い声域だし、完全に胸声区なので、これをきちんと確立してほしかった。
声のチェンジとは関係なく、胸声区では、胸の高さとあごの関係を感じて胸から真っ直ぐにアーティキュレーションする感じで声を出してほしい。全曲このやりかたで、うまく行った。慣れるまでは少し疲れるが、この方法を手中にしてほしい。

ゆうこさん、彼女の場合は、元来が胸声がしっかりあり、珍しいタイプだ。それに足してうまく鼻腔への響きが入るので、中音部は音程感も鳴り方もとても良いのだ。
ただ、2点Fくらいから頭声をもう少し覚えて楽に出せる方法を身に付けると良いだろう。自分でもそれなりに口を閉じて、頭声にしようとしている。この場合、母音によっては、喉がつまるので、口を逆に開けることで喉を開くようにしてほしい。ウの母音やイの母音などだ。
ベッリーニの2曲はほぼ暗譜出来ている。音楽も安定して大分良いです。イタリアらしい暖かな音楽がいとも簡単に出来るのが、彼女の美点です。後はさくら横丁の半音階の下降形を練習しておいて下さい。難しい音程だけど、うまく行くとゆうこさんらしさ、が出てとてもきれいです。

あいそさん。
彼女もみむらさんと同じく胸声の出し方を覚えること。今日は、発声を長くやり、イタリア古典の歌2曲をやった。発声で気づいたのは、声をチェンジしてから胸の声がなくなり、鼻に響かそうとするくせがあること。 これは悪い癖だ。声はチェンジしても胸声の声域(2点Gくらいまで)はしっかりと胸を開き胸から前に向かって声を飛ばすように心がけてください。
ただ、今日のレッスンですぐにコツをつかんだようで、Star vicinoは一回でとてもうまくまとまった。
声もかなりしっかりと鳴るようになった。上達が早いとこちらもやりがいがある。
彼女も合唱の基礎があるので、その分楽でしょう。新しい曲としてVergin tutto amor.を与えた。
この曲で、がんがん歌うことを覚えてほしい。


今日は、いずれも教えたことがすぐに反映されてとても良かった。教えていてもこういう調子だとこちらもやりがいがある。

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3月15日

からしまくん。心境著しい彼は、声がどんどん出て来ている。ただ、細かい所で難はまだまだある。
声のアタックで、音程の取り方が下からずり上げて取る癖がある。特に下降のフレーズの時。
この場合は、アタックの前に口を開けて軟口蓋を高くする準備をして、そこに声をアタックすること。
声帯自体は、良く鳴らすことが出来るようになっている。後は、共鳴がやや浅いのでもう少しふくよかな胸声になるように。特に低い声の時、息を適度に混ぜること。
発声練習では、この事に留意してほしい。後は、慣れだけどもう少し声量に留意すると、ふくよかな響きが自身で良く分かるようになると思う。初心者は、最初から声を出し過ぎてしまう。本当に声が出ない内はしっかり出すことも必要だけど、ある程度鳴らし方が分かるようになったら、声をアタックする際に心持ち、柔らか目に、余裕を持って声を出すことを心がけてほしい。このほんの少しの余裕が耳を良くして良い声、良い響きを作っていくことに役立つから。
曲は、フォーレの「ゆりかご」一番いけないなと思ったのは、自分も昔そうだったのだが、レガートが出来ない内からアーティキュレーションにこだわってしまうこと。言葉を出そうとするあまりに特に細かい音符が雑になりがち。この曲は8分の12だが、八分音符の扱いがぞんざいになる。どういうことか?というと、Le long du quai les grand vaisseaux..と最初のフレーズで、du,les,vaiがはまっている八分音符の響きが短すぎる。それは、その後の言葉の子音、特に二重子音の扱いを素早くさせるために端折ってしまうのだ。
初心者は、言葉の処理の前にレガートで旋律を歌うことに、まず留意してほしい。同質的な声の音色や旋律線の滑らかさが処理できるようになることを、優先させてほしい。これは基礎だ。それがある程度出来るようになってから、言葉の処理の仕方を学んでほしい。もう一つは、闇雲に子音を出さないこと。子音は言葉の語感を表現する大事な要素である。例えば、Grand=大きなという言葉を使う際に、Grの二重子音を素早く、しっかり出す表現と、わざとゆっくりと、あまり出さずに表現するのとでは、言葉の語感が変ってくるからだ。何でも良いから子音を出すというのは、言葉の意味を知らないでやるとお笑いになってしまうよ!最後に「月の光」をやる。これは、一言で言えば、ヴェルレーヌ流の口説き文句だ。こいつを深刻に重々しく歌うと、少々おかしい。(笑)
もっと、明るく、軽やかに歌ってほしい。それこそがフランス的な表現である。最初のフレーズの…Votre ame est un paysage choisi que vont charmant masques et bergamasques...では、太字になっているアの明るい母音の響きに特に留意してほしい。絶対にこのアが暗くなってほしくない。最初の2ページは、軽やかに、そして3ページ目のet leur chanson se mele au clair de luneのところは、かなりクレッシェンドしてほしい。そうすることによって、次のOh calme clair de luneとの対比その前との対比がついて、音楽が立体的になる。この曲は、親しみやすい面もあるけど、何よりある時代に確立したフランス的な音楽、歌曲の最高の表現がつまっている。何よりも、明るく軽やかに歌ってほしい。


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3月14日

はじめてのしんどうさんという方、男性で合唱団でテナーを歌っている。音程が低い…といわれるのがお悩みだそうだ。
発声をやって声を聞く。身体も立派な体格だし、喋り声が高めで良く響くなと思ったが、案に違わず良い持ち声だ。ぼくよりは余程良い。笑
中音から始めて低い声に行くが、バリトンにもテナーにもなれる声だ。羨ましい。ちゃんと、1点Hくらいから声をチェンジしている。口をあまり開けずにそのまま高い声に行くと2点Fくらいから声が後ろに引っ込み出し、喉が詰まって音程がきちんと高さを保てなくなってくる。無理な発声はしていないが、首のあたりで、かなり力を入れている感じだ。
発声もそこそこに、サンプルのために合唱団でやったことのある、ヴェルディの曲の1フレーズを歌ってもらう。ちょうど、難しい音域のところだ。良く観察すると、舌が奥に引っ込みがちであること、もう少しアペルト(開いた)な発声をすること。具体的にはあごを開いて、喉の開きを促してやる。同時に軟口蓋を高くすること。軟口蓋の使い方は、まず口を開けた状態で鼻音を出す、そしてその状態で鼻音をやめる、即ち軟口蓋を開いてやるのだ。こうして、軟口蓋を意識すること、そして、その軟口蓋を自分の意識で高くすることを覚えること。
腹を触わってみると、やはり吸気の際に腹筋をやや乱暴に使って、胸郭が開いていない。彼のやや重目の声質は、この呼吸法にもあるだろう。吸気の際、また発声の際にも胸郭を自然に楽に開くことが出来るように。
全体として、声の出し過ぎ。どんなにフォルテの表現のフレーズであっても、まずメッザボーチェで声のコントロールを確立し、声の共鳴ポイントを確立すること。その上で共鳴部に息を当てるようにしてダイナミックをつけなければ、いけない。エイヤ式に声を出しては絶対にいけない。
ただ、それほど問題が多いわけではなくむしろ良い持ち声の持ち主だから基礎訓練を続ければとても良い歌手になれると思う。頑張ってほしい。


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3月12日

一週間ぶりのレッスン。さわださん。
発声練習は軽くする。エの母音で始める。チェンジのあたりの声は鳴りにくいので、喉の開き加減を注意すること。そして、声を前に当てるように。全体に彼女は声が引っ込みがちなので舌を引っ込ませないように注意することと、母音を前に当てるように注意すること。
無理すれば3点Cまで出るが、無理をしないで2点Hまでにした。彼女は日本人離れした声の可能性があるので、高音にこだわらないで中音域をしっかり充実させたい。
前に渡してあった曲では高音域のメッザヴォーチェが大事なので、その練習、ミミミで2点Dくらいから2点Aくらいまでを弱音で練習。F以上になると、例の喉が締まるので、あごを開いて声帯が上がらないように工夫すること。例え狭母音のイなどでも、母音の形よりも声質に留意すること。

前回渡したオテロのアヴェマリアを譜読みしてくれていた。この曲は全編がメッザヴォーチェで貫かれていて難しいけれど、声の使い方に良く工夫があった。彼女はF以上の声になると少し喉が狭くなるので喉を少し下げ開くように注意することが大切だ。特にイの母音になると、注意。
レシタティーヴォは、全て下の声で。声が浅くならないように発音すること。なるべく口の形、テニオハが出過ぎないようにアルティキュラシオンすることも、それらしさを出すには効果的だ。日本人はどうしてもこの、レシタティーヴォでテニオハが出過ぎてカッコ悪い。
Gesuと行くアリアの歌いだしでは、ブレスが続かないので、Suの前で軽くカンニングブレスしても良いだろう。
最初にしては、とても良く歌えていた。楽しみだ。後、彼女のご希望でサンサーンスの「サムソンとダリラ」のアリアを与える。

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3月4日

みむらさん。ほぼ一ヶ月ぶり。風邪と、スケジュールが合わなかったためだ。しかし、しばらく発声をやって、喉を暖めるうちに大分調子が戻ってきた。姿勢を見ていると、胸の開きが足りない…というかほとんど胸を使っていないことに気づく。良く、腹式呼吸…というけど、腹式だけを使うのではなく、胸郭を使った呼吸も大事である。その両方がバランス良く使えないと、本当の良い声は出てこない。胸郭の呼吸だけだと、横隔膜が使えないので、声のコントロールが利かない面もあり、腹式呼吸が大切である、と喧伝されるのだ。
息を入れる際に、胸も気持ち良く開くように。そして、歌っている時にもフレーズの終わりにかけて胸を開くように使うと、良い。バレーの基本ポジションの時にやるように腕を上げて胸の開きを促すように左右に動かしても良いかもしれない。
曲は、ヘンデルのLascia ch'io pianga.レシタティーヴォから。レシタティーヴォは、前半テンポを早めに設定し、Signorからゆっくりと、Espressivoで。このとおりやれば、それなりに表現できる。けれども意味を考えて、意味から出る言葉のさばきかたと音楽上のテンポが合致するように、自分で組み立てられるようになってほしい。随分良くなった。ダイナミックも表現できるようになった。
そして、Oh del mio dolce ardor.出だしの"Oh"を、もう少し細くあてて。フォルテの表現、声が良くなった。その調子で!3ページ目から4ページにかけて、sospiro〜から再現部にかけては、間でブレスを取っても良いから、聞こえないブレスを心がけて。言葉の最後の母音の形の口のまま息を出しきり、そのまま息を静かに入れて続ける。曲の最後は、一小節間、伸ばし続けるように。これも随分巧くなった。楽しみだ。

ゆうこさん。彼女も久しぶり。最初声が出なかったが、地声で低い声まで降ろして、そのまま上げていくと喉が暖まって、調子が出る。彼女は地声が強いし、身体がしっかりしているので、声には心配がない。むしろ、息の保ち方が課題である。息をすぐに使い過ぎてしまうのだ。姿勢、胸の開き、そして下腹部の支えを大事に。下腹部がゆるむと、息も落ちてしまう。あと、高い声になると途端に声が弱くなってしまう。今日は、身体の重心のかけ方を教える。片足立ちで、片足に重心を載せることで重心を意識すること。そして、高い声の際に、特にその重心が下方向に行くように意識することを教える。ベッリーニのVanne o roza fortunata.これもほぼ問題なく歌えている。Tuのウの母音の高い声の時に、喉が上がってしまう。あごが上がらないように、あごをしっかり引いて、そして重心を下に考えるように。Vaga luna che inargentiこれは、素晴らしかった。彼女の音楽性は、ピアノとのやり取りが出来ることである。ピアノでこう歌ってほしいな…とやると、敏感に応えてくれる。これは、とても大事なことである。彼女は実家でサロンコンサートをやるので、そのためもあり、日本歌曲の課題を上げた。
中田喜直さんの、「桜横丁」これは、楽しみだ!!ちょっと、歌謡曲っぽい艶やかなこの曲は、伴奏部が明らかにフォーレの影響を受けている。中田先生らしい秀作だ。こういう曲は、アカデミックな声楽家の声よりも、素朴で真っ直ぐな彼女のような声で歌う方が味が出るはずだ。

今日がレッスン初日のあきこさん。
ほとんどを、発声練習に費やす。姿勢、首、あご、胸の開き…などなど。脊椎の上に首が乗ってその上に頭が乗っかるように、背骨から後頭部にかけて真っ直ぐになるように姿勢を保ってほしい。必然的にあごが前に出ないように。この姿勢を実感するためには、壁にかかと、腰、背中、後頭部、をぺったりとつけて立ってみること。
彼女の癖は、最初からあごを開き、固めてしまうことだ。このためにあごが固く、声帯のあたりの筋肉も固まってしまう。この場合、息を吸う際には口を開かずに、鼻で吸うこと。そして、腹部が声のアタックのために動く際に一緒に口を開くようにして、ア〜と声を出すことが良いと思う。いきおい、腹を使わないと声が出せなくなるからだ。このやり方は、初心者なら誰でも有効だからやってほしい。
このように、声の出初めはとても大事である。腹から声が出るように、くれぐれも喉で声をアタックしないように、最初は意識してほしい。
アマリッリを歌う。やはり、胸が開かないので、腕を使って胸の開きを誘導するように、歌ってみる。
これもかなり有効な方法だ。声が広々と広がるように出る。息の流れる歌が歌えるのだ。
あと、彼女は子音が良く出るのだが、その子音が少し耳障りな感じがある。子音を出そうとする余りに、口やあごが固くなっている。子音というものは言葉の要素なのであって、言葉のニュアンスと乖離した子音の出し方は間違っている。子音さえ出せば良いというものではない。まして、英語やドイツ語の子音の扱い方と、イタリア語やフランス語などのラテン語族の子音の出し方には違いがある。Tの子音などは英語のように強い息が混じる出し方は絶対にしない。
このあたりの言葉の扱いは、合唱団などに多いが非常に間違ったやりかたが流布していると思う。
初心者は、子音よりもまず母音の違いによる声質の違いに留意してほしい。


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3月3日

あやこさん。呼吸の使い方から。長く吸ってゆっくり吐く練習。その際に息の音が分かるように歯を閉じて息の音を出す。自分の耳に呼吸を実感してもらって感覚を研ぎ澄ませる。こういうのをバイオフィードバックと言うんだそうだ。後、フッフッフ…と腹直筋を使って息を細かく出す。ティッシュを口の前に持ってひらひらさせる。これを30秒続ける。結構きついものだ。
発声練習。最初の呼吸練習の応用で、下降5度で声を出す。なるべく低いところまで行って、完全な地声を出すこと。次はその地声で、出せるまで高く出す。
今回あらためて彼女の声を聞いて、歌声の出し方の基礎をかなりやる必要があることを実感する。
話し声はとてもしっかりしているのだが、歌声になると途端に痩せた小さな声になる。歌声の前に話声をもっと意識してもらう。「私は(名前)で〜す」をしっかり言う練習。声の強さはしっかりさせた上で声のトーンを高くするのだ。そして、これを音程に載せてやる。可笑しいらしくて練習にならない。そんな風にして大笑いすると、とても腹筋を使ったしっかりした声が出るものだ。ぼくも可笑しかったけど、芝居の練習でも良くやるのだ。歌も芝居も、ある行為を舞台に乗って人に理解させる行為だ。声の使い方も、自分がわかるのではなくて、人に分からせることを主眼にして発声しなければならないということ。歌も同じこと。自分が楽しむのだけど、それは聞く人がいることを意識してやる、ということ。だから歌詞の扱いも、自分が理解して発声するのではなくて、聞いてる人が分かるような、テンポ感と音程、テンションを持つこと。歌のテクニックも、そのためのものであって、テクニックそのものが目的ではない。
声帯をしっかり保持して鳴らす練習。あごを意識的に首に押し付けるように引いて、声を喉の下の窪みの部分にあてるように出すこと。エの母音かイの母音が良い。2点C以上の声はチェンジしないと無理だが、腹筋はしっかり使うこと、あごも開けて口をきちんと開いて声を出すこと。
こんな風にして、ヘンデルのOmbra mai fuを練習してみる。大分声が出るようになった。発声練習を始めた頃に比べて一目瞭然に声が良く鳴るようになる。普段、いかに声を使っていないか…と思った。
相当身体を使って疲れるかもしれないけど、最初の内は楽をしないで頑張って欲しい。それから、声の使い方に敏感になってほしい。こうなると、どうなる?ああやると、こうなる?って具合に。笑


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3月1日

たにさん…彼女の場合も、たいがいの初心者に共通する「声の原形」を作ることから始めなければならない。ぼく自身は、ネットで素人の皆さんを教え出しているけど、実は未だかつてこの声の原形からかっちりと作り上げて、あるレベルまで到達している人はいない。特に彼女は音楽を理解する感性を本来的に持っているので、声の使い方、声でプレイする感性と肉体を何とか身に付けて欲しい。
ただ、ぼく自身が焦っても仕方ないんだよね。笑
じっくりやらなければいけないのは、分かっているのだけど、なんだか時間が惜しい…

発声練習をやっている内に、2点ミでしっかり出させると、かなり強く良く響く声になってきている。この出し方で最低2点ラまでは出して欲しい。もう少しで出そうだけど、あと一歩だ!!
発声練習は、なんどか同じパッセージを繰り返す内に声帯が慣れてくるようだ。これは、立って歌うことをある程度続けると、身体がその感覚に慣れてくるのだと思う。
一小節の声の使い方だけでも、相当時間を取って、ゆっくりと錬磨して欲しい。ピアノから離れて、立って軽い発声練習をすること、譜面を見ずに真っ直ぐ前を見て良い姿勢を保って声を出すこと、などなど、とにかく気持ち良く立てること、立った状態で腹筋を使うにはどう立てば良いか?どこに力のポイントを置くか?このことに慣れて欲しい。

たとえば、電車に乗って立っている時、つねに胸の位置や腰の張り具合、首が真っ直ぐに脊椎の上にあるか?などを確認すること。きれいに立つように心がけること。そんなことも練習になりますよ。
声を出さなくても口を軽く開き、息を少し吸ってみる。その時、声帯のあたりにどんな感覚が出来るかを観察したり、さらに、軽く息をハハハと出してみる。その時に腹筋を使ってみる。などなど…。

さて、きょうはリディアだけで終わる。ぼくが声を出すと、自然に真似をするせいか良い結果が出る。
一番良かったのは、第一節の後半、Laisse tes baiser tes baiser de colombe..そして終わりのChanter sur ta levre en fleur sur ta levre en fleruの部分。
美しい胸声が響くようになってきている。
後は最高域の部分の喉の開き、腹筋、これがもう一歩。頑張って欲しい。
声帯は比較的大きいから、少し訓練するととても良い楽器になる可能性がある。
もう少しなんだけど、後は彼女自身の声楽への理解と積極性が自然に育つことを待ちたい。



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