2001年4月レッスンノート前半

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4月14

あやこさん。発声を高い方から始める。出し始めは身体から声が出ないけど、しばらくやると出てくるようになる。高いチェンジした声は、本当にか細くて身体から声が出ないんだけど、しばらくあれやこれややっていると、どうにか声が身体とリンクした声になる。結局チェンジしても喉の開きが悪くてしめているんだと思う。だけど、地声で喉の開きを訓練するのは、彼女の場合は至難の技だ。問題は高い声域で、喉を開いて喉の奥から声を出す感覚をどうやって身につけてもらうか?これが当面の問題だと思う。地声の出し方もわからなかったのが、大分できるようになったのだけど、その使い方で高い声に持っていくことができない。身体は良い体格をしていて、胸も広く筋肉もあるのだけど、ブレスをしたときに喉を下げる方法が見つからない。チェンジした声でも、喉を下げることができれば、喉も開いて深いポジションを取ったしっかりした声になるのだけど…身体の各部の使い方はできるのだけど、それらを声を出すときに一つの方法にまとめるまでが、行かないのだ。
例えば、体の使い方に神経をまわさなくても、オペラ歌手の歌い方は、声はどんな声が出るのか?ということを頭でイメージして、取りあえずその真似をしてみる…みたいなイメージトレーニングも大事だと思う。理屈だけで、身体を反応させるのは難しいのだ。物まねの人はしばしば歌がうまいのは、その辺りの神経に関係があるような気がする。頭でイメージしたものを即座に身体に反応させる運動神経みたいなものだ。彼女にはそこまで要求しなくても、もう少しCDでも良いからクラシックの歌を聴いてもらうことも有効かもしれない。
今後しばらくは、地声を使わずにチェンジヴォイスで身体の使い方を覚えてもらうことに、方向転換してみる。曲を変えて、Amarilliにする。これだと、ほとんど上の声でできるからだ。自分で練習するときはくれぐれもブレスを気を付けること。腹筋を使うことを忘れないように。

はるこさん。今日もウの母音で始めて少しずつ声帯を合わせて行く。彼女は、チェンジした声が極端に声帯が合わずに息漏れが多いのだ。シューシュー言うくらいだ。しばらく狭い母音で練習をしているうちにイの母音だと、非常にうまく行くことが判明。それは、ティッシュを口の前にかざして発声をやると他の母音だと、ティッシュがピラピラと動いてしまうのだけど、イの母音だとピタっとして動かない。
息漏れが一番少ないのだ。イの母音は声帯が合いやすいので当たり前だけど、彼女の場合はあまりにもうまく行き過ぎた。ここから、どうやってその声の出し方を他の母音に移していくかが課題か。
後、声の出し始めに息の漏れが物すごく多いこと。これも、彼女の普段の習慣から来ているのかもしれない。それは、カラオケが好きで特に外国のポップスが好きなのだ。英語がほとんど母国語並みに喋れる彼女は強い地声とアーティキュレーションを生かして、バンバンと歌える。ただ、それは物すごい強い呼気圧を口から発して声を出すやり方だ。この癖がどうしても抜けないから、声をチェンジすると、逆に口から息が抜けてしまって声が出なくなるのだ。声を共鳴させるという感覚がほとんど無い歌い方なのだ。声を口から出すのではなく、頭部の違う場所に当てて歌う歌い方を覚えて欲しい。それは息をコントロールすることでもある。今日は少しイの母音でそれがわかったみたいだけど、多分彼女の中では歌うときの感覚の中で相当な発想の転換をしないと、難しいのだと思う。
どうも、声帯も少しポリープがあるのではないかな…調べてもらったら良いのだけど。

りりこさん。彼女なりに随分練習をして来ていて、声帯をすごく楽にして共鳴を探す歌い方を身につけてきたようだった。ただ、横隔膜を使う筋肉がまだ少し足りない。ブレスもゆっくりとすれば、大分身体の筋肉は良い状態になるようだ。ゆっくりと発声練習をやっていくと、2点Gまでパーンとした良い声が
出るようになってきた。今日は時間が無くて下降形の発声しかしてないけど、最初の音を出すときに軽く側腹を張って声を当てるように意識すること。ズルズル〜とアタックをしないで、弦を軽くつま弾く感覚で声帯をパ〜ンと鳴らす感覚をまず身につけて欲しい。弦をつま弾くときは指を使ってスナップを利かせて鳴った瞬間に手を放す。すると弦は自由にビ〜ンと響く。同じように声帯をつま弾く力は横隔膜の軽い動きだ。要するに下腹部の動きか、側腹あるいは、腰の筋肉のちょっとした動きだ。
まず、これを徹底的に覚えて欲しい。そして、一度声が出たらその横隔膜の開きを抜かないで維持して欲しい。ちょうどお腹の中が開いた感じになるはずだ。下降音形の場合は、音が下がってもその開きを維持して、声帯は自由にして開いた状態で声帯に任せて鳴らせば良いのだ。腹がしぼんでしまうと声帯だけで、鳴らそうとせざるを得ないので喉で歌うことになる。勢い低い声は鳴らしにくくなるし響きが悪くなる。声帯の力の抜け方はとても良くなっているので、今日の発声練習で出来た感覚は次回まで忘れないようにしてほしい。後は、声を出すときに首が前に出る癖がまだ直っていない。これも気を付けて欲しい。声を出すときこそ、頭は胴体の上にしっかりと乗っていることを実感して欲しい。立った時に腰から後頭部の線がなるべく真っ直ぐになるように立つには、壁などに後頭部、首、背中、腰、足のひざ、かかとが軽くつくように立ってみると、その感覚が良く分かると思う。
曲は、イタリア歌曲のO cessate di piagarmiを持ってきた。彼女は中音から低音にかけてとても雰囲気のある良い声を持っている。発声練習で見せた声の出し方を生かして欲しい。歌になるとそれが崩れてしまう。腹の使い方が身につくまでは、音楽のリズム通りに早くブレスをしても、体の反応がついていかないので、しばらくはゆっくりと自分の身体の準備ができるようなブレスを心がけること。
良い感じになってきているので、なんとかこの調子を維持して進歩して欲しい。


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4月13日

きょうは、珍しく昨年暮れに来た、ちばさんが来た。新しくルネサンスのアンサンブルをやっている。彼はテナーパートだけど、前に来たときに印象は喉にすごく力を込めて歌っていたと思う。前はイタリア歌曲集のNinaを歌ったけど、今日は何と!ヴィクトリアのモテットを持ってきた。
早速発声をやる。以前の声が印象にあったので、喉の力を取るべく練習した。口を閉じたハミングをやった後、口を開くハミングをやる。喉に力が入るのはもちろん身体の使い方が出来ていないからだけど、一つは母音の歌唱法にある。どんなに外国語の歌詞を歌っても、慣れない方はその外国語にカナを振る。結局日本語のアイウエオの母音で歌ってしまうから、発声そのものが日本的になってしまう。ということは、声帯を狭くして口先で声を鳴らしてしまうことになる。それでも、喉に力が入らなければ良いけど、逆にクラシックの発声だ!と思って喉を無理矢理下げようとするから、話はどんどん難しくなってくる。ハミングで、喉が楽な状態を良く理解して、そして母音に移って欲しい。ただし、母音のアイウエオはなるべく使わないで、フーとか、あいまいなウーなどを使ってみる。この際に気を付けることは口をなるべく開かないこと。喉に力が入るのは、首が前に出ていることも原因。首を真っ直ぐにして、あごを引くように。喉に力を入れないためには、首の張りをしっかりさせることも良い。
腹筋をちぇっくすると、やはり息を下腹部に入れて、硬くして歌っている。これではブレスが持たないだろう。それに、高い声になればなるほど、息が到達しないから音程も悪くなるし、そのために喉に力を入れて声帯を鳴らそうとする…という悪循環の見本みたいになる。
復習だけど、くれぐれも息を下腹部に入れて、声を出すときにそこを押し下げないようにしてほしい。
2点F以上の声域は、しばらくファルセットを練習すると良いだろう。ただ、この場合はほんの少し喉を下げる意識を持ってほしい。てカウンターテナーのように、クレッシェンド、デクレッシェンドを息のコントロールでできるからだ。最初から地声で作らずに、高い声はこのファルセットを試して欲しい。そしてこの声を作ってから、腹のコントロールで地声に戻すような感じで声を作ってみる。それにしても決して無理はしないこと。腹の使い方は、癖だからなかなか直すのは難しいけど、常に注意してほしい。


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4月12

今日はなんだか一生懸命になったら疲れました…短めに…

さわださん。ウの母音で、低い音程から発声練習。彼女は声を簡単に出す癖があり、低いと特に浅い発声になりやすい。腰の使い方を教える。腰と、腹の前部の使い方は連動している。腹を中に入れると腰広がるように、意識して使って欲しい。彼女は、言うとすぐに理解して出来るのだが、そのことと、体の使い方がもう一つ結びつかないところがある。落ち着いてやってほしい。
曲は、オテロの「アヴェマリア」レシタティーヴォの声の使い方がまだ、未完成だ。1点ミの♭で同じ音をアーティキュレーションするので、母音によって響きが変ってしまう。口の大きさを変えずに、かつ口をあまり開かずに、唇で発音すること、そして、声の基本は胸に軽く響かせること。この曲全体に言えるが特に開口母音の場合、彼女は口を下に開いて、胸声を出そうとするが、これだと、胴間声になってしまう。身体、腰に意識を持つこと。ブレスは深く、そして、口をあまり開かずに、口の前でアーティキュレーションするように。響きは深く、かつ明るい声になる。高い声最後のAveのAsの音はピャ〜っと出さないように!笑。少しVの子音を利用して、声を中に封じ込める感じで。
O mio babbinoも上に書いたことと同じ、アーティキュレーションは口をパカパカさせずに、唇でやるようにブレスは深く響きは明るくを心がけて下さい。この曲も高音は、ピャ〜っとしないように。笑
暗譜はかなり出来ていたので、安心した。発表会は期待してます。

りりこさん。発声はやはり、ウの母音で低い方から始める。彼女も、声が簡単に出てしまう。音程を無視して高く当てるだけを意識するので、身体から声が離れてしまう。ソプラノ初心者が陥り易いパターンになっている。姿勢の矯正と、呼吸の基本。そして、喉の筋肉を使わないような練習。歌っている首を良く観察すると、首が前に出ている。そして、喉を無意識に押し下げて硬くしている。お尻の肛門から声帯が一本の真っ直ぐの管でつながっているように意識して欲しい。あごはやや引いて。中音部から低音部にかけて、喉を無理に下げて声を出そうとしている。喉の筋肉の硬さを取るためには母音などよりも鼻音にして、口を閉じて歯もかみ締めて声を出す練習をやると良いだろう。その際にも深い呼吸と腰や腹をきちっと使うことは言うまでもないことだ。彼女は、横隔膜を広げる筋肉は使えているのだけど呼吸を入れるときに、まだ腹の下の方に息を入れる癖がある。腹の下は、しぼまるようにして、横隔膜から胸郭が広がるようにブレス。少し地声の練習をすると、かなり地声が出る。地声を出さなくても良いけど、地声を出すときに胸を使う感覚を、チェンジした声の時にも使えると、中音か ら低音にかけて声量が出てくると思う。曲は、フォーレの夢の後に。少しずつゆっくりとチェックする。まず、言葉を付けないで、ラララで発声チェック。彼女は響きが低いと思ってしまう大きな誤解があることが判明!ブレスを深く、そして音程を取る時に、思っているよりももっと身体の中の方から音程を取るように。脳天から上で音程をとってしまうような感じがあるので、それだけは注意して欲しい。ウの母音はもっと口をすぼめて、ウの母音は舌根が前に出ているから、意外と喉は開いているのです。声を当てる場所を首の方か脳天を意識すれば、口を開かなくても充分響いたウの母音が出る。
今日は、音程もしっかりしてきてやっと音楽的なフォーレが聞けた。彼女はメゾにもソプラノにもなれるけどそれは、発声の声の当て方の基礎を変えることで、選択できる。後は彼女の美意識で選んで欲しい。個人的には、歌曲を音楽的に歌い込めるメゾ的な発声を身につけるのが素敵だと思うけど…


あやこさん。
仕事の帰りに良く来てくれました。疲れているけど、発声をしっかりやる。今日は地声をやらずに、チェンジした声を徹底的にやった。チェンジすると、体と声帯が使えずに声が抜けてしまう。何度も何度も発声をチェックしているうちに、チェンジヴォイスの声も鳴るようになってきた。舌を出して、片足立ちで体を後ろに倒して、地声をしっかり出す訓練をした後に、声が鳴るようになってきた。胸の筋肉が少し弱いのかもしれない。チェンジヴォイスで声を当てるためには、胸から喉頭にかけての筋肉を使って声帯がしっかり合うように意識しないと、声が出てこない。レッスン後半になり、やっと声が少し当たるようになった。珍しくコンコーネを使って発声のチェックをする。2番。1点ソからラで始る音だけど地声ではなくチェンジヴォイスで練習をやる。ソの音で何度も何度もロングトーンでやると、なぜか息が出切る最後の方で、声が当たった感じになるのはなぜか?どうも息が苦しくなってくるとようやく腰か腹を使うのだろう。声のアタックの時にそれが出来ると良いのだが。ソ〜ラ〜という2音のフレーズで、声で音程を取らずに腰で音程を取ること。これが基本。曲は、Ombra mai fu。やはり、声を出すときに、腹をやや膨らまして、硬くしているようだった。ブレスでは下腹部がしぼまるように、そして、横隔膜周辺と胸郭が広がるようすること。最初のシ♭を地声でやると、喉が締まってしまうのが、きょうはうまく行った。ぼくが腹の使い方を実践してみせた直後だ。このように、一音をポーんと出す場合は、腰を意識するよりも、下腹部、腹直筋を中パーンと入れて、声を出すことが喉を楽にするのだ。このことが、もう少し良く分かるとかなりうまくなるんだけど。しばらくレッスンが出来ないので残念だけど、お腹の使い方、音程の取り方と腰の関係、チェンジヴォイスの声の当て方を覚えていて欲しいな。



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4月11日

ゆみさん。今日が2回目だが、結果からいうと、とても良くなっていた。特に歌になったときに、緊張が取れると、驚くほど声量がついていることに気づいた。2週間の間隔なので、発声にしても歌にしてもやり始めには以前の悪い癖が残っていたのだが、注意するとすぐ治った。とても熱心な方で、良く練習をしているようだ。環境があるから、一概に練習しなければ駄目だ、ということも言えないけど、しないよりはしている方が良い。ただ、悪い癖がつかないように、レッスンごとに確実に理解できたことや覚えていることだけにしぼって、シンプルに練習をして欲しい。身体の各部、特に喉周辺や胸首そしてあごなどに痛みや硬さを感じるのは、良くないだろう。足がつかれたり腰が少々痛くなる分には悪いことはない。
ただ、体が少し硬いようだ。特に腰周辺の筋肉。屈伸や前屈などを無理の無い範囲でゆっくりとやって見て欲しい。それから、寝たときに、足の膝を立てて、腰の筋肉を楽にすることを実感して見て欲しい。歌う姿勢の時には、腰の筋肉は張り過ぎず、楽になっていることが、大事だ。
今日は、ウの母音で低いところ1点ミ辺りから、下降で発声を始めた。最初に気づくのは声の出し始めが安定しないこと。声の出し始めの不安定は声を出す場所を意識することがないからだ。声楽は声を楽器のように扱うことだから、どんな方法でも良いのだが、声の出し方にイメージを常に持つことが大切だ。それは、自分の身体に対する感覚を研ぎ澄ませること。息はどう入っているか?どこに声を当てるか?そして、声が出始めてから声はどう響いているか?身体のどこに響いているのか?それらを自分自身でわかっていなければならない。レッスンの時に、ぼくがしつこく、どうでしたか?と聞くのはそういう感覚を常に持って欲しいから。
ブレスだが、やはりお腹だけで吸おうとしている。お腹だけではなく、胸郭も楽に広げて、胸も広く使って息を軽く入れて欲しい。特に発声練習の時はブレスのタイミングと声を出すタイミングに十分注意して欲しい。そのことで声を出すための身体の準備が整っていくのだから。発声練習は要するに、準備体操みたいなところがある。発声のテクニックを付ける意味もあるが、準備の意味が大きい。ここで落ち着いたしかし、深い呼吸を取れるようになること。そして、声帯や声を出す器官がが暖まることを準備する。決して声を張り叫んだりしないこと!
声を出すときには、基本的には下腹部を中に入れるように意識して欲しい。逆に下腹部が動かないのに声が出るのは、喉だけで声を出していると思っても良いだろう。
ただ、これもやり過ぎないように!笑
ゆみさん自身が家で練習したときに、声を出すときの横隔膜を広げる腹筋を使っていると、終いに身体がガチガチになるのは、筋肉の使い過ぎ。上半身が硬くなってしまっていたのだろう。何事もほどほどが大事である、という見本みたいなこと。たとえば、ブレスにしても、一度呼吸で開いた体を維持したまま、一曲歌い切ってしまうと、体全体が硬くなってしまい、かえって逆効果になる。どこかで、一度緊張している筋肉を、弛緩状態に戻してやる必要がある。例えば、間奏の部分。あるいは、長いブレス間隔のあるところなどだ。筋肉は、弛緩がないと、今度はどんどん硬くなってしまうから、くれぐれも使い過ぎに注意して欲しいと思う。やり過ぎると、大事な筋肉を傷めてしまう。
イタリア歌曲集から、Sebben crudeleを持ってきた。ピアノ伴奏無しで、4小節ずつじっくりと教える。
部分で良い声が出るところから、他の母音や音程の違いの声質を矯正していく。今の曲は2点Fくらいまでの音域なので、声のポジションを替えて高い声を出さないように、高い声に昇るときには、逆に地面にぶつけるような感覚で、声を出して見ること。取りあえず、現状では合格点を出せるまでに練習してるし、レッスンを良く理解してくれた。良い声を予感させる響きも出ている。とても楽しみだ。
今後は、下の声で地声も少し練習すると良いだろう。
ふっくらとした、シックな声質のメゾを目指して欲しい。

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4月8日

みむらさん。今日は伴奏合わせだった。5月13日の発表会も近づき、いよいよ本番体勢だ!
軽く発声をやる。彼女はとても慎重なのか、本当に喉に力が入らないようにしているのは感心なんだけど、そのためにあまりにも声帯の支えが弱過ぎる感じだ。もう少し顔が真っ直ぐになると良いんだけどな…そして、腰の支え。腹部前部で支えているのが気になる。伴奏合わせに入る。一曲目のTu mancavi tormentarmiは久しぶりもあったけど、まあまあの出来だった。ただ、出だしのモティーフがもう少し太目のしっかりした声になると良いな。それでレガートに歌ってほしい。あまり、アーティキュレーションが目立ち過ぎないように。中間部、Moderatoの部分はもう少し早く。Ritする場所ははっきりと、かつ短めに。そして再現部のピアノはテーマが再現されることを充分に分かるように、弾いてほしい。歌もそうだし、ピアノもそうだけど、舞台芸術と言うのは、聴衆が分かることが第一。聴衆がわからなければ、意味がない。もっと低次元のレベルでいえばプレイヤーがエンジョイしている事も大事だけど、自分がわかってるだけでは駄目だ。O del mio dolce ardorはとても良かった。ピアノは、右手の16部音符の処理をくれぐれも大事に。こういう細かいパッサージュでリズム感を付けないでほしい。大きな旋律でリズムを構築する事。大きな左手のベース旋律を、この右手の細かい16音符が修飾しているという感じ。3曲目の、
Lascia ch'io piangaはこれも歌は良く出来ていたが、テンポの遅さのためにブレスが少し苦しい感じが目立つ。特にPのダイナミックの時のブレスには細心の注意をはらってほしい。
レシタティーヴォはとても良くなっていた。最後のMI piangereの声は太すぎて音程がフラットにならないように声は軽くしておいた方が良いでしょう。ピアノは良かった。

たにさん。
発声練習は、いつも通り。下降5度で1点Gで始めて、下がり。また上がる。地声の領域はかなり広がったし安定感も増している。ただ、かなり喉の筋肉を使っている事がわかった。首の前部、喉頭から下の胸にかけての筋肉が、まるでラッパを吹く時のように脹らんでしまっている。無意識の内に声を喉周辺で作ってしまっているのだろう。原点に戻って、腰、そして腹筋を意識してほしい。これは息を吸う事と関係があって、息を吸う時にその息がちゃんと、胃のあたりにまで到達しているか?そういう感じをきちんと持ってから、声を出す…という一連の行為をゆっくりともう一度確認してほしい。そして声を出す時に口の開け方に充分に注意する事。口がパカーンと簡単に開いてしまうと、すぐに声は喉の筋肉を使ってしまうようになる。きょうは時間がなくてそこまで出来なかった。次回もう一度その辺りをやり直したい。
マラルメの3つの歌曲の1番「ため息」をやる。結論から言うと、声を喉で作ってしまう悪い癖を直す方法が、この曲を歌う事で見えた感じ。低声域の口の開け方が固定的になっていて、喉から口のあたりで低い共鳴のあるような声の出し方を作ってしまう。そのために、声帯に力が入って、音程が1オクターブ上がっただけで喉がつかえてしまうのだ。きょうやってみたのは、もっと口の開け方と声帯周辺の力を抜いて、声自体は浅くても、とにかく喉の力の抜けた状態を作る。その上で、腹筋、腰でフレージングを考えて行く…というもの。このやり方だと、声のチェンジをほとんど意識する必要が無いと思う。
まだ、完全ではないので声が浅くてポップスみたいで嫌かもしれないけど、基本はこっちの方が良いと思う。なぜなら、喉に力が入らないからだ。とにかく、喉の力を抜く事。腹筋を鍛える事。息をしっかりと送ってやること。特にFIdele un blanc jets d'eau の高い音のロングトーンは息をしっかり流してほしい。最後のEt creuse un froid sillon のfroidの音はGです。ピアノが同じ所でFisを叩くから引きずられないように!最後のRayonは驚くほどきれいに低い声が響いていた。その声が高い音を出すためのコツをつかむきっかけになるんだけどな・・・・

たむらさん。
きょうは、たにさんが伴奏でボサノヴァをやる。A・C・JobimのAgua de beberとCorcovadoの2曲だ。
伴奏合わせと構成に時間を取られて声のことまでまわらなかった。ポイントは二つ。結局マイクを使わないで音楽を作る事。そのためには何をやるべきかを考える事だ。Corcovadoは、声の使い方、ブレス、アーティキュレーション、共にまだ不十分だけど、何とか基本線は見えている。この曲は、伴奏の形をシンプルにして、声だけで充分に勝負してほしい。長いブレス、そして、滑らかな旋律線の描き方を研究してほしい。相当な集中力が必要とされるだろう。Jobimが作った言葉の美しさから紡ぎ上げた彼の音楽というものを、客が充分に理解できるようにプレイしてほしい!
Agua de beberこれは、まずキーが高い。なんとかかんとか・・・というライン。発声練習ではなんなく出しているのに、歌になって歌詞が入ると、喉がつまってどうにもならない。といいながら、何とか、かんとか歌いまわす力量はあるんだな。キーが高いせいもあるけど、首が前に出て、姿勢が猫背になってしまっている。スキャットは恥ずかしがらずに、しっかりと歌ってほしい。この部分で曲全体のリズム感が構築されるように。全体にアーティキュレーションを使ってリズム感を出してほしい。とても滑らかに歌えているけど、この曲では滑らかさよりもリズム感を言葉に乗せてほしい。
どちらの曲にもいえるけど、もっともっと言葉を出して良いと思う。それは、言葉の意味もある。もう少し言葉の意味を捉えてから、言葉の歌いまわしを考えて声に乗せられるようになれば、良いと思う。
Jobimの曲は、ボサノヴァと世間では言われているけど、そんな括り方だけで終わりにしてしまうには惜しい内容がある。表面的には分かり易くて、あああの曲ね!という良く言えば大衆性、悪く言えば俗っぽさだけで、捉えられてしまうのが惜しい。本当は、緻密な構成力、ラテン的に削ぎ落とした美学があるのに…

ゆかさん
今日は2回目だけど、発声をゆっくりとやって声慣らしをする。まだまだ声の出し方がわからないので息の基本と身体の使い方から始める。ブレスは大分良い。胸をもう少し高く広く感じて息を吸えるように。そして、その状態を支えて、下腹部を使って息を出す事。胸をしぼませていきを出さないように気を付けて。下腹部を使って息を送る事と、腰の部分を後ろに出すようにすることの二通りのやり方を思い出してほしい。腰の使い方は、ある意味では腰から肩甲骨にかけての背中を広げてやるような感じにもつながる。発声をやっていて感じたのは、腹筋の使い方が声を出す事につなげるのが難しい事。重いものを持つ時に腹筋をどう使うか?を思い出してほしい。あるいは、笑う時に腹筋はどういう風に動くかを感じて見てほしい。それから、息をきちんと入れること。この事は勘違いしやすいんだけど、息をたくさん入れるという事ではなく、息を入れた時に腹筋に緊張感を持たせる事だ。要するに声を出すという準備をすることになる。普段喋る時でも、きちんと息をして準備をして声を出す事を試してほしい。それだけで、結構声が出る事に気づくはずだ。
発声をやっていて気づいたが、彼女の場合は口をもう少し開く事を心がけると良いということ。声の出し始めはそうでもないけど、声が出たら、心持ち口を開けて腹筋で息を流してみる事。これだけで声が随分と違ってくる。今日、彼女は早速楽譜を買って来てくれた。こういう心構えがうれしい。Caro mio benを歌ってみる。ラララで声の確立をする。最初のミ♭の声も腹筋を忘れないように。口も心持ち開け気味にしてほしい。声の出し始めというのは大事だ。うまく声が出たら後は、その声を流していけば良いのだ。色々やってみて、最初のページのSenza di teのラ♭ーミ♭の音程の上がりを腰、背中を意識してやったら、良く理解してくれた、このやりかたで、フレージングが出来ると、第一段階の理解度といえるだろう。声に関しては素人だけど、理解度はとても良い方だ。結局、彼女も言っていたが歌になることによって、声を出す意味づけが出来るのだ。これは、とても大事である。発声を機械のように考えて、発声さえ出来れば、良い歌が歌えると思ってしまうことは、歌手にとってとても危険である。次回までに言葉をつけてくる。言葉が付くとまた難関があるけど、きっとうまくクリア出来るだろう。今後が楽しみだ。


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4月7日

ゆうこさん。きょうは、伴奏者に来てもらい伴奏合わせに専念した。きょうは伴奏のレッスンノート。
ベッリーニのVaga lunaとVanne o rozaの2曲の伴奏は、イタリアの古典的な歌いまわしを充分に感じて、ピアノ伴奏をしてほしい。ブレスを吸うタイミング、ブレスを吸わせる奏法、歌唱部がロングトーン時の伴奏処理、フレーズの後処理や基本的なリズム感、全てを取っても伴奏者には基礎の基礎が十分に要求される作品だ。ピアニストはこの手の曲を退屈と感じるようだけど、そう感じているうちはまだまだ本当の音楽性が身に付いてないという証拠。ドビュッシーもラヴェルもフォーレも何もかもこの手のシンプルな古典的な歌の音楽が根本にある。その逆は有り得ないです。
どうして、歌手がブレスをしようとしているのに、さっさと先に行こうとするのだろう?歌手の歌が聞こえていないのだろうか??? ピアニストは楽譜を見て弾いていても、全身で歌手の息遣いを感じて弾いてほしい。
さくら横丁。この3拍子の曲も、強固なリズム感が要求される。左手と右手のアルペジオの交錯のつなぎめがリズムとして絶対に!!途切れないように繋げてほしい。こういう所にリズム感のセンスの差が出てくる。小節毎に番号が振られていて、1番から2番そして3番…というように先に進んでいく推進力を感じてほしい。
歌は、集中力さえ出れば良い歌が歌える状態だけど、きょうは初めての伴奏合わせで緊張と普段と違う音楽に慣れなかったようだ。彼女は、大胆なようで、繊細だ。恐がらないで、積極的に大胆に歌い込んでほしい。

たにむらさん。
今日も発声が中心。とにかくウの母音を中心にして、息漏れがないように、そして、声を当てる場所が低くなるような、練習をした。呼吸だけど、やはり、お腹をべこ〜んと思い切り前に膨らませて歌う。これでは息のコントロールが出来ない。いつも言うように、へそから息を入れて横隔膜あたりから上の胸郭が気持ち良く開くようにしてほしい。必然的に下腹部は、きりっと引き締まるはずだ。これが良い状態。フフフ…のスタッカートでやる。少し早めにやって、ブレスを考えないでやる練習。喉が開いて胸郭から横隔膜が開いていれば、息は口から自然に流れ込む。胃から口の外の空気が同じ空気になっている感じをつかんでほしい。そうすれば、息を意識していれる必要を感じなくなると思う。
それと、声を出す時に、腰を真っ直ぐにして反らさないように。硬い板の上に寝た時、腰が床にぺたんと付くように腰を真っ直ぐにしてほしい。そこで、歌う事。そこでフレーズが出来るように。うまく行くと、腰をちょうつがいにして尾てい骨が前にくるっと動く感じ。たとえば、尻尾が付いていると仮定して、その尻尾を股の間から前に出して、その尻尾をきゅっと引っ張ってやる感じ。彼女は腰を反らし過ぎている。まだまだ、声の出し過ぎというか、出っ放しの感じ。もう少し呼吸がコントロール出来て、声の出し加減をコントロール出来ると、声のポジションも定まってくるだろう。ウで声のポジションが定まるようにして、その母音からアの母音に変らないようにする練習。ウの母音は、あごに声を当てるようにすると巧く行く。例えば、指をあごに押し付けてやってみると、安定する。実際にすごく音質が変った。
曲は、アマリッリ。今日も最初の10小節だけを、徹底的にやった。まだまだ、歌になると声の出だしが定まらない。基本の発声を気長にやっていく事にする。


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4月5日

りりこさん。呼吸の基礎から始める。ゆっくりとした吸気。さて、実は今までうまい言葉が見つからなかったのだけど、吸気というのは、歌うための準備であり、息自体をたくさん吸うという事を意味していない。息をたくさん吸う事が、歌う事の準備ではないし、仮に息という実体の無いものを口からたくさん吸い込もうとすると、必ず胸に力が入り、歌を歌うとブレスが足りなくなる…という状態に陥る。これが今のりりこさんの状態だと思う。初心者の歌手はこのことを充分理解できるようになってほしい。腰からみぞおちにかけて斜めに走る筋肉がきれいに伸び、気持ち良い横隔膜の緊張感と胸郭が開くように。落ち着いてやる事が大事である。神経が高ぶっていたり、息せき切って走った後などは禁物だ。イメージとしては、むしろ口から息が入るというよりも、へそから空気が入って、上半身に向けて身体が息で満たされるような感じ。最終的には、体全体、そして脳みそまでが気持ちの良い状態になる。いわば、充足感が感じられるはずだ。そのために、わざと、吸気音をさせること。歯の隙間から音をさせる。そのことにより、息という実態が見えた気になる。実は息自体がたくさん入っ ていなくても、身体が歌う状態に自然に持って行かれるのだ。
そして、呼気。呼気自体も、息の吐き方を通して、歌うことを学ぶ。呼気のコントロールに託して歌声のコントロールに結び付けるという感じ。開いた横隔膜と胸郭ををしぼめて歌わないよう。下腹部の腹直筋を使って呼気を呼び覚ます。または、腰を少し前に出して、腰骨が少し前に出るような感じで背筋が下に引っ張られる感じ。いずれも、この時も歯の音を使って、イメージトレーニングする事は有効だ。スーと長く、またはスススと短く、間を置いて。
発声は、下降と上向。彼女の場合、まず音程よりも、声が出ている事に快感を感じてしまい、音の感覚が無くなってしまう事が問題だ。声の支えを身体の中のある場所などにおいて、そこから音が出てくる…ということを感じて欲しい。何か、いきなり脳天から声が飛び出してしまうような状態は避けて欲しい。高く意識する事は大事だけど、それは出発点が高いのではなく。むしろ声の出発点は低くしてそこから高いところに昇っていくような感じの方が良いだろう。上から降りる下降5度の時は、むしろ、声の出発点を低めにすること。そして上向音形の時は、高いところから出発して、段々低く感じるようにするのが良いだろう。いずれも、音の出発点がどこか?ということも関係がある。例えば、低い音から始める場合と、高い音から始める場合は、その声の出発点の場所もある程度は変る。それは、自分の声の調子と相談して考える事。
しかし、中音部の声は、やや喉に力が入っている感じもあるが、魅力的だ。欧米のメゾ系のたっぷりと濃い味の声質が出ている。やや、暗いんだけど、巧く行くと良いメゾになれるな。発声練習を続けると、なかなか巧い声の可能性が出ていた。高い声は、やや浅くなるが、明るさのある声が出る。
曲は、フォーレの夢の後にを持ってきた。のっけから、音程が上ずるので、声の出所を確立する。
狭い母音、ウなどでは、口を開け過ぎて、音が前に飛び出す事を防いで欲しい。あごにパ〜ンと軽く当てるように。とにかく、声が前に簡単にピャ〜〜ッと出る事は今は、良くないですよ!音のコントロール音程には細心の注意を払って欲しい。後は、アーティキュレーションは音を付けないで、言葉をリズム割りで読む練習をきちんとして欲しい。
とにかく、今は基礎がとても大事。根気良く基礎を学んでほしい。そのことが、今後長く歌を楽しむことにつなげて行く大事な要素になる。


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4月2日

さわださん。体調があまり良くないということで、発声練習もそこそこに歌へ。発声練習はウの母音でポジションを整える。ウから声質を変えないようにアにする練習。彼女はしばしば、声のポジションが浅くなってしまう。あるいは、深すぎて暗くなってしまう。良いポジションは自分で探さなければならない。もちろん、それを探してやる事、注意するのが声楽教師のつとめだが…
曲は、オテロからアヴェ・マリヤ。まず、レシタティーヴォが1点ミの♭と低く、声のポジションの関係もあり音程が取り難い。気をつけないと浅くてフラットな声か、品の無い地声になってしまう。良い声のポジションを探す。口はあまり開かずに、上顎から上に響かす事。同時に、こういう音程こそが腹直筋を使って支えることが大事だ。1ページに渡って同じ1点ミ♭でアーティキュレーションしているから、なおの事音程が目立つのだ。Ave maria piena di graziaは一つで、Benedetto il fruttoのfruのところは少し重く。そして、o benedettaのoは感嘆詞でしょう。その感情を声にして。このような、同じ音程によるレシタティーヴォは、音を付けないで言葉のアーティキュレーションを完璧にしてから、声に乗せて練習する事。ということは、言葉を覚えてからやるくらい。Gesuから一息で出来ないなら、ウを伸ばして口をそのままで息で音を切り、そのままブレスの音をさせずに腹でブレス。そして、そのまま次の歌のPregaに入ること。ウの口のまま、狭い口で後に続くDolceの旋律を細心の注意でレガートに処理して。Prega perのperのpの破裂音を気を付けないと、音がぶち切れてしまう!次の2点Fに飛ぶPregaのgaの処理は素早く!それがコツ。次のページPrega per chi sotto l'oltraggio piega..の件はこの曲の唯一の激情をしっかり出して、一気にla ,malvagia sorteに持っていって。della morte nostraのnostraのoの母音の時に、クレッシェンドして声を腹に響かすように。
なんて、具合ですぐ一時間経った。素晴らしい曲だ。暗譜で歌う事を約束。


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4月1日

レッスンノートは続けて9ヶ月になった。おかげさまで色々な人の声を聞き、指導させてもらえたことが幸せだった。巧いとか下手とか、良い声とか悪いとかいうよりも、ほとんど誰もが、それなりに良い声を出す素材を持っていること。それは、呼吸から来ている事。教える身であるけども教えられる事が実に多かった。
よしみさん。体験レッスン。歌はまったく初めて!カラオケもほとんどしないし、合唱をやっているわけでもない。なぜ?と思うまでもなく、レッスンという体験自体が多分新鮮だったのだろう。
早速声を聞く。確かに、声が出ない。地声から上に出る音域では音程が出なかった。少しずつゆっくりと丹念に上に上げていき、チェンジした痩せた声ながらも音程が出て、2点Esくらいまで出るようになった。実は、最初にブレスを教えたのだが、実に忠実に守ってやってくれた。また、意外と声帯周辺や首が硬くなっていない。これは、声を出そうと言う無理な気持ちがないからだ。1時間発声練習をやって、とにもかくにも1オクターブ半の音程が出せた。そして、呼吸も覚えたし、それなりに腹筋を使って声を出せるようになった。後は、本人のもっと歌を歌いたいという気持ちだろう。

はるこさん。
不運な事に、体験レッスンに来てから中々スケジュールが合わずに1ヶ月経ってしまった。覚えているのは、ハスキーな声で、地声領域では驚異的な強い声だった。チェンジすると、シューシューというくらいの呼気の漏れがあったことを覚えている。実際、これからどう指導していくか?難しさを感じていたのだけど、今日は驚くべき発見というか、良い声が出て、彼女の持ち声の良さを再確認した。
癖として、要するに呼気コントロールがまったく出来ていないということ。出しっぱなしなのだ。
腹筋を使って、口先からの呼気でティッシューを軽くフッフッフッフ…と動かす練習をやってみる。
一回の息が出過ぎることと、出るのに時間がかかること。腹筋の微妙な使い方を覚えて欲しい。
しかし、その場でも大分出来るようになった。その後、ウの母音で発声練習。これだと、呼気の漏れが少なく、また呼吸も深く、声の出し始めも比較的深く感じられるようだ。そして、高い方でウから少し口を開いて、アに近い声を出すようにしてみる。どうもチェンジしてからの彼女は、アやエなどの開口母音になると、口を平たくしてしまう。声を感じる場所が全然違っているのだ。
ウから少し開いてアにしてみると、驚くほどまとまった響きの素晴らしい声が出た。
曲は、アマリッリ。時間をかけて、とにかく口を開かないで出た良い声、そして深いポジションを感じて1小節をじっくりと研究する。ブレスにまだ時間がかかるので、最初の1フレーズの途中のブレスの後の声で、声のポジションが取れずに、鳴らなくなってしまう。色々やって、どうにか8小節進む。どうやら彼女は腹筋が弱いのだろう。吸気の維持と、呼気のコントロール。このための腹筋。これだ一番の課題だろうと思う。口先の使い方などは、ちょっと工夫すると、素晴らしく良い声が出るので、これからの指導が大変楽しみである。

たむらさん。彼女も1ヶ月ぶり。発声練習を始めると随分声が出ている。地声からチェンジした上の声に行くところもうまく処理している。何度かやっているうちに、彼女の癖を思い出してきた。声は良く喉が開いているのだが、響きがやや暗いこと、心持ちフラットな響き。もう少し声を前に当てられるようになると響きも明るくなる。ヤイヤイヤイとかマメミメマなどで口を開かずに、前に声を当てる練習。彼女のようなやや奥に引っ込みがちな声の場合は、少しはすっぱな、平たい声でも前に当たった声を作ってみる。彼女は自身の声の感覚があるので、声のポジションよりも、顔の響き、当て方を覚えると、更に声が明るくなるだろう。曲は、A・C・Jobimの曲から、Chega de saudadeなどをやってみる。
前にも書いたが、こういう売っている楽譜は、よく見ると実にいい加減な編集が多いものだ。ポルトガル語の譜割りがまったくいい加減で譜面通り歌うと、まったく歌えなくなる。キーも実にいい加減だ。
Agua de beberが飛んでもなくキーが高いと思うと、Chega de saudadeでは、とてつもなく低かったり。
発表会にはどうするか?取りあえず歌詞を覚えてもらって、譜面を使わずに練習するしかない。
ピアノ伴奏をどうしたものか・・・?


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