昨年に続いて、今年もムジカCで選抜した4名によるジョイントコンサートを、12月1日日曜日アコスタジオで行いました。 日曜日の夜でしたが、会場はほぼ満席(50名)となりました。
全体の印象は「サロンコンサートらしい声楽コンサート」でしょうか。
各人が、良い意味で喉自慢大会におちいらず、歌詞を丁寧に歌って落ち着いたコンサートの印象が残りました。

ところで、ムジカCでアマチュアの皆さんを指導して発表会を聞く度に「アマチュアの良さとは何か?」を考えさせられます。
今回思ったことは、技術的に発展途上であるがゆえに慢心がないこと(慢心している暇がない!)ではないか?と思いました。
未熟であるし、それを自覚しているがゆえに、心が無垢なのだ、と。

今回動画を編集しながら皆さんの本番の時の声を思い出していましたが、録音とライブの声は決定的に違うと感じたことがありました。
それは、声を張らないで歌う場合に多くあるのですが、その声から感じられる臨場感のようなものです。
録音は音を良く拾います。そして大きな音は抑制するように自動コントロールが働くため、全体に均一な声量と声質になり、臨場感が消失してしまうのです。

一方、やはり基礎的な発声の大切さも痛感することがありました。
そして歌詞の暗譜が発声にも影響を与えるのだ、ということも気付かされました。
暗譜がしっかりしていなければ、自信を持って歌えないからです。
ステージ上のパフォーマンスと云う意味では、暗譜をすることは大切だと考えていますが、忙しかったり練習スペースが持てない場合は、
暗譜にこだわらないで本番に向かうことも一つの視野に入れたほうが良いかもしれません。

こういった、さまざまな作業を通して、一つの演奏が成立していくわけです。
本番は、それらの総合的な作業が一気に開花するわけで、そこにその人の全人格が現れます。
これほど怖く、また面白いパフォーマンスはありません。
来年も、また違ったメンバーあるいは組み合わせで4人の会を行いたいと思っています。
また、出来たら2名とか1名のリサイタルも、いずれは出来るようになりたいと考えています。
生徒の皆さん、あるいは聴衆の方々も、これからも弛まぬ精進、そしてご声援を頂ければと思います。

 

各人の演奏の感想

OM  IA  GH

 

 

 

前半

後半

 

 

 

 

 

 

OM
oniki4名中、彼女がもっとも経験が少ないのですが、普段の向上心と積極性に並々ならないものが感じられて、出演を決めました。4年前、最初の発表会はこのホールで歌ったのですが、その時と比べると隔世の感があります。
今回どれだけ出来るか?という、こちらの期待もありましたが、良く頑張った!と思います。
日本歌曲は、いずれも曲の持つ詩情が良く表現されていました。難しい平城山を安定して歌えましたし、特に林光の作品は、作品が本来持つ詩情が良く出せていました。
ドビュッシーの歌曲は、歌い出して何か表情に不安が感じられました。そのせいなのか?歌詞の間違いと飛ばしがありました。本番の回数を重ねると良くあること、指導者としてはあまり気にならなかったです。(ドビュッシーだけ録画は何度も繰り返されますので、私の一存でカットしました。ご了承ください)
アリアは、モーツアルトは、レシタティーヴォの部分はとても良かったのですが、アリアに入ってから何か不安感が顔を覗かせたのでしょうか?声のポジションがどんどん高くなってしまい、結果的に声量と声質に影響のある発声上の支えが減じて行きました。
発声は、単に方法論だけではなく、たとえば暗譜が不完全だったりすることも発声上の集中力に大きな影響がありますので、暗譜の重要性ということを改めて良く認識してください。
ムゼッタのワルツは、積極的に歌えたので、声も安定しましたね。振りを付けるのも良いことだと思います。これからも積極的にやってください。
まだ前途洋々な身上ですから、これからも基礎を徹底して身に着けるべく地道に努力されてください。
おめでとうございました。
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IAIA
iwasaki今回はロマン派歌曲の選曲で、衣装と合わせてフランスのサロンコンサートらしい瀟洒な雰囲気が横溢でした。
彼女の演奏の美点は、フランス語の発音に相応しい、柔らかくて明るい声質と、文学や服装、絵画などの豊富な知識と教養が貢献している、と思っています。
それでいて、とても謙虚にむしろシャイなくらいな感性であることも、良さにつながっているのです。
やはり演奏家というものは、狭い専門性だけではない人格的なもの、総合性が大きな意味を持つのだ、と彼女を見ていると思います。
技術的な穴をあまり感じないのですが、強いて挙げれば、無理のない高音発声ですが、もう少し張った声を出しても良いのでは?と思うところがありました。
喉の強い弱いという個別性もあるのかもしれませんが、その面でもう少し挑戦されていけば、表現の幅が更に広がると思います。
それから、ステージングは自由で良いのですが、例えば、真っすぐに動かないで歌う、という見せ方も一つのステージ上の表現になるのだ、ということ。
これは実は声にも大きな影響がありますので、これからトライしてみてください。
おめでとうございました。
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GH
gotou「冬の旅」と日本歌曲のプログラムは、どちらかといえば地味な印象を与えますが、その分を歌詞をよく読みこんで、着実にじっくりと歌ってくれました。
それが演奏によく反映され、お客様の心をしっかりつかんだのではないでしょうか?
いぶし銀の美しさ、抑制された美というようなものを、演奏を聴きながら感じていました。
これは、長年歌い続けてきた経験、そして人生経験というもの含めた総合的な人格だけが表現できるものでしょう。
これは本当に素晴らしいことだと思うのです。
発声の課題は、中高音の発声で弱声を使おうとすると、喉のポジションが上ずってしまうこと。
喉のポジションはいつも同じ状態を保っておいて、頭声を多くして弱声にするか、胸声成分を多くして声を張るか?ということです。
高音へのチェンジはかなり上手く出来るようになったと思います。
味わいと深みのある演奏が出来るようになって来たと思います。これからの活動が楽しみです。
おめでとうございました。
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