フォーレ、あさやけの冒頭

この和音の連続は、Fを主音にすると、トニカ→ドミナントという単純に弛緩→緊張という和音が表現する感覚から微妙にタッチが変るはず。
緊張=強め、弛緩=弱めというタッチの違いになるはず。
もし、そうならない(意識出来ない)とすると前回指摘したように譜面の見方、読み込みの問題だろう。

フォーレはちゃんと弱拍にトニカを置いている。
にもかかわらず、弱拍を強く弾いて出すから歌いにくくなる。

歌いにくくなるという意味は、冒頭の歌詞Desを唐突に歌ってしまうのである。
これも弱拍であるし、それ以前としてこのフレーズでDesを強く出すのはおかしい。

問題は、このような音色の変化とリズム変化の絡み合いを、理論ではなく感覚で捉えられるか否か?
理論を身につけないとわからないのだとすると、勉強してきた過程で、素朴に歌を歌ったり合唱でハモる経験の多少が関係あるような気がする。

フォーレのあけぼの2ページ目の楽譜

2ページ目、最初の節が終わって、中間部に入ると、伴奏形が16分音符のアルペジオに変る。
ここは、テンポの変化はないが、音型が変わることに意味がある。
人間の素直な感覚のまま弾くと、実はこの16分音符がゆっくりになる。
なぜか?というと、16分音符に変わるのは3拍子の2拍目の弱拍で始まっているのに、伴奏形が変わったためによっこいしょ!とばかりに強拍で弾き初めてしまうからである。

ここは、感覚的にはそれまでの四分音符の連続和音のテンポ感より少し早く転がるようにアルペジョを弾くべきなのである。