レッスンをしていますと、かなり多くの方が恐らく耳コピで音楽を覚えて歌っている、と思われます。
新曲は耳コピで良いと思いますが、必ず抑えてほしいのはテンポについてです。

覚えたメロディを歌うとき、かならずその音楽のテンポに幅を持たせて練習してほしいのです。
つまり、覚えたメロディのテンポ感を、更にゆっくりにしたり速くしてみることを試してほしいのです。

なぜか?
耳で覚えただけの音楽は、その人の呼吸のありかた、ひいては肉体に刻み込まれたものとは別のものとして脳内に刷り込まれていると思われるからです。
つまり物まねです。

このことが言い過ぎとしても、特に基礎的な発声のテクニックが確立していない方が耳コピだけで歌ってしまうと、実際の演奏でピアノ伴奏とのアンサンブルにおいて、
不具合が出る可能性があります。
それでもピアノ伴奏者が、上手く合わせてくれれば体裁は整いますが、それは表面的なことであって、良い演奏には程遠いものになります。

なぜテンポが大切なのか?

それは演奏者の呼吸というものの本質が、音楽に表現されることを意味するからです。
演奏者が表面だけを真似してしまうと、往々にして呼吸が浅くなり、テンポが流れてしまいます。

この練習の仕方はいたって単純です。

手で拍節を指揮者のように振りながら歌ってみること。
つまり、4/4拍子なら、1,2,3、4と手を振りながらメロディを歌うこと。
このときに、覚えているテンポがあれば、そのテンポと共に、必ずテンポを遅くして同じように練習すること。

つまりメトロノームを使った場合、♩=90とあったら、それを60とか50とかまで、遅くして同じことをやってみるわけです。

書くと単純ですが、これが意外と難しいものです。
特に付点のリズムやシンコペーションになると、手の振りと歌がぐちゃぐちゃになって、手が歌と一緒になってしまう方が多い。

リズムの面で、このような身体的な練習が身につくことで、真のリズム感が身に着きます。
そのことが、呼吸に影響を及ぼし、安定したリズム感でフレーズを歌えるようになる身体が出来上がっていくのです。

ピアノは口で歌うわけではないですが、音楽は歌ですから、ピアニストもこのリズムに関する理論的で肉体を伴ったリズム感の練習は必須と思われます。

ピアノ場合は、片手ずつの練習方法を取って、リズムアナライズをすることが必要ではないでしょうか?
あるいは多声部の和音進行を声部ずつに区切ってリズム感を持ちつつ練習する方法や、4拍子を2拍子に、あるいは2拍子を4拍子に、という具合に、拍節を大きくとったり分割させたりという
細かい練習の仕方も、音楽を安定させるために、重要な作業だと思います。