ルーテル市ヶ谷センターホール

2月25日土曜日は、アトリエムジカCの発表会でした。

24名の方が歌いました。
皆さん、それぞれの力で精いっぱい歌ってくれたと思います。
誰一人として、がっかりさせられることなく、音楽を楽しませてくれる演奏をしてくれました。

終わって2日経って、改めて書いてみたいことが3点あります。
自分の演奏でも思い、生徒たちの演奏でも長年気づきながら、なぜそうなるのか?が判明出来ていなかったことが明確になったので、
文章にしておこうと思いました。

さて、一点目は、あがり症のことです。
上がり症とは、緊張して上手く演奏出来なくなってしまうことです。

あがり症の方の歌声の具体的な症状は、緊張のあまり身体が硬くなり、息を自由に吐き出せない状態になり、また、息と声(喉)との関係も上手く成立していないため、結果的に喉を詰めた発声になってしまうのでしょう。
声の響きが出てこないことと、喉が硬くなり、音程感が明快にならなくなります。

まず何といっても、響きをもっと出せるようになる点が当面の課題であると考えました。
練習方法は、母音のIを利用することに尽きると思います。
どうもAの母音は、良くないように思います。
したがって、ハミングも口を開けたハミングより、開けないハミングのほうが良さそうです。

二点目は歌声の違い。

これは何を意味するか?というと、発声ブログにも書きましたが、ふつうの歌声と声楽の声の響きの違い、ということ。
今回のホールのように、残響がある程度あればマイクで歌うことに慣れている方でも、マイクなしで歌うことは成立するだろうということです。

ただ、それだけで満足してしまうと、何のための「声楽」なのか?ということになります。

声楽の声の響きの特徴は、一言で言えば、楽器の音のような響き、というこことです。
オーボエの密な細く鋭い響きであったり、クラリネットの大らかだが密な響き。
バイオリンの松脂飛び散る倍音の多い響きであり、チェロの太く大らかだがやはり密な響きです。

こういう楽器の響きに近い印象を持つ声こそが、声楽の歌声の秘密です。
それは、声楽のジャンルで利用されるレパートリーの音楽が、そういう歌声を基準にして書かれているかららに他なりません。

そしてここが重要ですが、声楽はヨーロッパで生まれて成熟した古典的な音楽の中の歌の作品で必要とされるものです。
したがって、楽器というのはまさにヨーロッパの古典的な音楽で使用される楽器のイメージに限りなく近いということ。

発声法は、正に、この楽器のような声作りのために奉仕していると言っても過言ではないのです。

今回の生徒たちの声を聴いていると、かなり未熟な段階の方でも、この声質の萌芽が感じられる人と、かなり長くやっていても、萌芽のきっかけがつかめていない方もいます。

これは、発声法的にみると、頭声と胸声のバランスということに収れんされると思います。
特に頭声は、難しいだけに、会得は必須になると思います。

最期に、歌と伴奏との関係です。

この問題は、特に歌声が成熟した段階の人こそ、大きな要素だと考えました。

歌声は、前述の通り、楽器のように意外なほど良く響きます。
一方ピアノは、前述の意味での音圧は高いですが、意外と倍音は丸いのです。

結論として、良く響く歌声の人に対してピアノの響きが足りないと感じることがありました。
これは、単に歌声とピアノの音量バランスだけに留まらず、歌声の響の捕捉になるかならないか?という効果も大きいのです。
ちょっとしたピアノの打鍵の強さで、歌声が違ったように聞こえてくるくらい、効果があるものです。

このような効果が判るのは、声楽家よりもピアニストではないでしょうか?

伴奏家の能力として、単なる音量バランスを考えるだけではなく、むしろ声楽家の声がより良く感じられる弾き方、ということを研究する余地があるのではないか?と思います。

以上、指導者にとっても、大変有意義な会を持つことが出来ました。
ピアニストを含めて、出演してくれた皆さんには、心からの感謝を申し上げたいと思います。