YC

軽い発声練習、上向5度スケール、下降形5度スケール、上向3度5度。
いずれも軽く発声練習をした。

曲は中田喜直の「さくら横丁」
譜読みが不完全ではあったが、とても良い声で歌ってくれて、彼女の声の成長を感じた。

テンポの設定は楽譜通りに。このテンポだと、彼女の場合ブレスに余裕が出て、「桜が咲くと~花ばかり~さくら横丁」と一息で繋がる。
声の良さ、フレージングの気持ちよさを優先である。

後半は、「その後どう・・しばらくね~っと言った・って始まらないと」の休符が入る間(ま)を尊重して。
難しいのが半音階のメリスマで降りるところである。
これは、誰でもそうだが、半音階を良く練習することと、最後の中低音の声の響きを落とさないように注意すること、である。
ここは実は桜の花びらがはらはらと散り落ちる様子を表現している、と思うので、とても綺麗なところなのである。
何より、難しいと義務的に思う前に、美しい表現だから、これを手に入れたい、と思って練習出来れば理想である。

そして、團伊久磨の「花の街」
こちらは基本的にキーが低いが、対応可能な声であった。
全体にキーが低いため、喉を掘ってしまい、声がくぐもってしまう。
それで、声の出だしのポジションをオクターブ高くイメージして出てもらうように練習。
声の通りは良くなると思う。
ただ、半音はキーを上げた方が良さそうではある。

磯部 俶の「遙かな友に」
こちらはAndante espressivo
このテンポが難しいが、想像するよりゆったりと歌うほうが良さそうである。
子守唄のスタイルで、ドイツ歌曲風で品が良い。
そして、特に最後の「おや~すみたのしく~」がPの表現であることに注意。
自然に歌っていると、クレッシェンドしてフォルテを出してしまうからである。

最後に「オランピアのシャンソン」を練習した。
冒頭の8分音符と休符で機械的に歌い進むメロディーは、あまり切り過ぎない方が良いと思う。
切り過ぎると、何を言っているのか判らないのと、メロディラインも丁寧に出せないきらいがある。

後半のメリスマはおおむね綺麗に粒がそろって出せている。
彼女は元来が、高音のメリスマが苦手だったが、ようやく慣れて細かい動きが出せるようになってきた。

高音の続くところや、最高音は、まだ歌いこみが少ないため、パワーが出せない。
ただ、歌いこめばかなり強力なオランピアになりそうで、楽しみである。

AY

発声練習は、Iで主に練習をした。
彼女は元々がそういう傾向だったか?Iにしては、かなり口先の開いた発声であった。

口を開けることで、下顎が下がり自然に喉が上がらないような発声ということはある。
ただ、それは、一時的、特に声のアタック時に自然に喉を開いて深いポイントで出だす時に、母音の種類によっては開けるだろうが
恒常的には開けて対処しない方が良いだろう。

Iという母音は、口先を開けないで中奥を開くのに適している母音なのである。
そして口先を開けないで練習することで、奥を開くのにも適しているからである。
また、喉だけではなく鼻腔を通すのにも、AやOなどに比べると適している。

発声は、いろいろなことをやると、あれやこれやにどうも目が行き過ぎて、集中できないという点もあるのは、こちらも反省。
何か一つに絞って、徹底する方法が彼女の場合は良いのだろうかと思った。

喉が上がらない、というのは、むしろ喉が一定である、という意味に理解してもらいたい。
喉の位置は、音域や人によってもそのポイントが違うので、絶対的に深くなければいけない、のではなく
要するに高音でアペルトになって、叫び声にならないように対処するために覚えることである、と理解してくれても良い。

したがって、顎を引くばかりではなく、ブレスと声を出だす場所の方が大切だと思う。
それが出来ていなければ、いくら顎を引いても、ほとんど意味を為さないから。

それから、あまり神経質にならないことが、発声にも大切である。

「薬屋の歌」全体にロマンティックな雰囲気を良く出して、良い声で歌えている。

それでも気になるポイントは、声のポジションを整え、ブレスを確認して、必要な所にはブレスを追加したり、という具合にすることで、
とにかく、喉の良いポイントで歌えるように、何度か練習を重ねた。
これは、問題はあまりないので心配はない。

次に、ドン・ジョヴァンニからエルヴィラのアリアを。
レシタティーヴォからだが、譜読みが不完全なので、まずはリズム読みを徹底した。
イタリア語の読みで、リズム読みをした。
細かいので、8分音符を1拍として読むのが判り易いだろう。

これが出来たら、今度はイタリア語の抑揚、アクセントを大きく付けると良いだろう。

アリアは、最初の通しでは喉が上がってしまい、高音が心配だったが、とにかく通せたのが良かった。
調子の良し悪しは、誰でもいつでも起こり得ることなので、調子悪くてもあきらめないで、難しいところを瞬時に対処して行く、瞬発力、機転というものを養うことも大切である。
ただ、歌詞の失敗で止まるとか、いう場合は、やり直すべきだろう。
声の調子はやり直しても、うまく行かないケースが多いからである。
もちろん調子の良さの高低にもよるが。

トピックは、高音へのフレーズは最高音の一個手前の声の響きに注意を。
高音で喉が上がってしまう場合は、大体が一個手前の声で駄目になっているケースが多いからである。
ちょっとした裏技だが、覚えておくだけでかなり上手く行く。