何を歌わせてもそつなく、またそれ以上に女性的な色気のある雰囲気を出せる歌の上手い彼女だが、時として見せる声のことで、今日は少し発声のことを指摘してみた。
まず高音域になると、喉の上がった浅いブレスが気になる。
それでも上手く対処しているが、やはり声が細くなりやや喉っぽい声になることがある。

見ていて一番思うのは、ブレス。
ブレスが胸になっている傾向が強いことと、そのために喉の開きと支えが足りない状態になっていること。

喉の開きは、敢えて喉を下げるという意識を持つ必要はない。
ただ、ブレスだけは少し深く、また開く場所を低く、あるいは背中から腰を意識すると良い。

それから、2点G以上の音域に入ったら、深いブレスの分だけ、軟口蓋を上げる意識を持つこと。
深くブレスすれば、喉が開いて下がるから上に引っ張るバランスを持たないと、声帯が良く振動しない。

このブレスと喉の準備がもう少し整うと、同じ労力でもっと声量がつくのではないだろうか。
後、特に高音域のブレスは高くなるから、顎が上がったり前に出ないような姿勢を意識することも良いのではないだろうか。

今日は新しいドボルジャークのルサルカからアリエッタを持ってきた。
以前、発表会に出しただけあり、音楽が良く決まっていて、洗練された歌唱である。
印象としては、中低音域のPPの表現で声を落とすことをやりすぎないで、常に響きをきちっと意識すること。
強い高音はもう少ししっかりと前に出す声になって欲しいことくらいだろうか。

フォーレの「蝶と花」は、テンポを決めた。
3番はAnimato、かなり早くして良いとおもう。
この曲の最高音、2点Gはどの部位も綺麗に決めて欲しい。
それにしても、実にこの曲、19世紀のロマンスの雰囲気が良く出せている。
彼女の声、歌は実に女性的で優雅である。

「月の光」は、本当に青白い月明かりを思わせる声になっている。
テンポを指示通り(四分音符78)にすると、意外なほど早い感じだが、音楽が良く流れて、乾いた空虚でありながら
月夜のシュールなイメージが良く出る。
彼女の声ならではだろう。