声楽というのは、クラシック音楽ジャンルでの歌唱についてを表すジャンルの謂です。
クラシックですから欧州各国の作品が多く、当然歌詞は外国語になります。

私自身はフランス語の歌唱を自身のレパートリーとして長年やってきましたが、正直に白状しますとネイティヴ並みに喋れるわけではなく、当然ネイティヴ並みの意訳で歌えるわけではありません。
しかし、いくつかのレパートリーを長年歌い継いできましたから、フランス語に対する語感の一部は育ったという自負はあります。

語感というのは、言葉の音とその意味をつなぐ、音の形を言います。
たとえば、Je t’aimeというとき。カタカナで大雑把に表記すれば、ジュテーィムです。

ジュというときの子音の出し方に工夫が要ります。
テーィムというときのE母音の発音の仕方に癖が必要です。

形而上的な精神論ではなく、その発音する音形に対する配慮でニュアンスというものは生まれるのです。
ネイティヴ並みの会話能力がなくても、長年の経験と訓練で育つと思います。
・・・と思いますが、そういうことに配慮がない人がいくらやっても、それは育ちません。

まして、プロを称してフランス語の歌を歌っていながら初歩的な発音ミスをやらかしているようでは語感も何も育つはずもありません。

アマチュアで歌っている方は良いと思います。
歌うこと自体を楽しめれば良いからです。
しかし、もしプロを自称するなら、外国語の歌を歌うときに「私フランス語で歌えます」というレベルではプロとは呼べないでしょう。

語感を明快に出来るだけの意思と勉強をしてください。
最初からできなくても良いです。
外国語の歌を歌おうというのなら、その国の言葉に敬意を以て真剣にその言葉を学んでほしい。

そうやって考えれば、そうそう何か国語も使って歌えるはずがないのです。
ただ、世の中にはセンスのある方もいます。
そういう方は、驚くほど器用に語感のある外国語の扱いで上手い唄を歌えるのです。

ただ、私がスタジオで出会った方々に、そういうセンスのある方は一人もいませんでした・・・。

一つの外国語だけでも、語感が身につくのには充分な経験が要ります。
そしてその経験を担保するのは、その国の言葉に対する飽くなく探求心、好奇心ではないでしょうか?
いくら声楽で発声が云々とはいっても、外国語の歌を歌うのに語学に興味がないでプロの看板を掲げるわけには行かないでしょう。

私の意見は、声楽家が歌うのに外国語は1つで十分です。

むしろ日本語の歌をもっと歌ってほしい。
そのことによって、言葉というものと音楽の結びつきがいかなものか?が判るはずです。
日本語で語感のことが分からないのに、外国語の語感がわかるはずがないです。