高崎シティギャラリー天井

高崎シティギャラリーホール

今日はパスカル・ロジェのリサイタルが、高崎のシティギャラリーというホールで開催されると聞き、一度は本物を聴いてみたく、はるばる高崎まで新幹線に乗って行ってきました。
結果は素晴らしいもので、行ってよかった。

ピアノはベーゼンドルファーのフルコンサートでしたが、シティギャラリーは1階が275席、二階席が49席で、コンパクトですが、実はピアノ独奏にはちょうど良い大きさと思いました。
昨年末に聴いた藤井さんのピアノリサイタルで使われた朝日ホールは大きすぎると思ったくらいです。

パスカル・ロジェ氏。
弱音ペダルはほとんど踏み放しでしたが、微妙に調節しながら和音やアルペジョの音色の変化を付けています。たとえば低音に降りるような下降形のアルペジョの際になどソフトを上手く使いますし、普通のペダルもかなり細かく使っていました。ところが、ソフトを使っていても、特有のくぐもった感じの響きが全くしないのです。

上手の席だったので手指は見えませんでしたが、腕がほとんど上がっていないので、最近風に基本的には手指を上げない奏法だと思います。よほど鋭いアタックをする時以外は手が上がりません。
写真で見るよりはるかに大柄の方で、180cmmはありそうです。
やはりピアニストとしては、身体が大きいことはアドヴァンテージであるなと感じました。

それにしても、サティのジムノペディなどが、涙が出るほど美しい演奏でした。右手を良く歌いながら左手の和音の伴奏は弱音でとても抑制が効いていました。
驚きなのは、前半のプログラム、すべて全く間合いを取らずに一気に弾きまくること。ドイツロマン派オーケストラのしつこいカデンツを笑い飛ばすような「ひからびた胎児」3曲目「柄眼類の胎児」が終わっても、間合いも入れずにラヴェルの「ソナチネ」に実に見事に入ります。

プーランクの「ナゼルの夜会」もユーモアあふれる演奏で退屈せずにプログラム前半を終わりました。

ドビュッシーは無機質な印象で、そのためもあり眠気を誘いましたが、彼の驚くべき弱音奏法によるアルファー波のせいだと思います。
それと、ピアノ固有の特質かホールのせいか?フォルテの音質が倍音が強く、やや倍音の濁りが気になる感がありました。
もう少し弱くても良かった気もします。

それにしても、このドビュッシーもまったく間合いを開けずに一気に弾きとおした集中力の忍耐力、体力の素晴らしさには感服しました。
やはり世界的なピアニストの名に恥じない出来だったと思います。
アンコールは2曲。ドビュッシー「月の光」サティ「あなたが欲しい」この辺りの選曲もバランスが良く、全体の印象を更に高めた感があります。

ピアニストはそれぞれレパートリーと奏法による音楽のスタイルの違いがありますが、それなりに説得力が強くあることで一家を成すのだということをつくづく思いながら帰路につきました。