楽譜通りに歌うことのいう意味は、音符に表面的に表されてテンポ感を前面に出すのか?
言葉の持つ抑揚をリズムに表面化するか?
このナタリー・ドゥセイが歌うプーランクの「花」の演奏は、後者の典型だと思います。
楽譜を決して無視しているわけではなく、四分音符の淡々とした連なりを、静かにIn tempoで聴かせる「静けさ」の音楽的抽象性に留めないで、
歌う者が言葉に託す感情の揺らぎを、四分音符が持つ緩さを利用して、見事に表現した好例だと思いました。

https://youtu.be/brr2GQJbUnw

良く言われることですが、器楽的に、楽譜通りに、きちっと歌うことによって、作曲家の思惟が正しく伝わるのである・・・云々。
これは、一見正しいと思いますが、演奏者は現実に目前に存在する血の通った人間なわけです。
その人間が、歌っている。その人が前面に出てくることで、作品がより活きる場合があるでしょう。

この楽譜通りに演奏することと、奏者が表現する個性とのバランスは、良く考えるべきこと、と思います。