TK

バッハのカンタータ72番から合わせの練習だった。
結局テンポの調整で、最終的には4分音符で80くらいは行っただろうか。
Moderdatoの感覚で、軽快な3拍子が良さそうである。
声は非常に調子が良く、歌の問題で指示したことは、長いシンコペーションのフレーズのブレスを少なくしたことくらい。
こういうフレーズはなるべくブレスがないほうが綺麗だから。
そして、コーダだけはテンポをゆったり目に指示した。
後はピアニストさんの馴れ、特に細かい16分音符の歌い具合で、全体を軽快にかつ細部のタッチ丁寧に作りこんでもらいたい。
ペダルはあるべきだが、濁るときたないしバッハの伴奏はつくづく難しいと思う。

Qui la voceは、まずピアニストさんには、出だしのAndantinoをよく歌ってもらいたい。
それでこの部分のテンポが決まるだろう。
そして、伴奏合わせで目に付いた楽譜支持のSotto voce そしてRitと言うパターン場所があるが、
ここの楽譜指示を正確に守ろう。それだけで、声の表現になるように書かれているから。

後半の細かい半音階のメリスマはとても粒が揃って綺麗に歌えている。
カデンツの3点Esは、安定して出せている。やや引っ込んだ薄い響きだが、今は安定して出せればそれで良いと思う。
初回から欲を出さないこと、である。
こういう最後の高音は、まずは100回やって100回失敗しない安定を望みたい。
その上で、響きを付けていけば良い。もちろん、100回も本番をしないから、次回はトライしましょう、という意味である。

デュエットの合わせは、ACさんの低音発声に終始した。
やはりどうしても響きが落ちて散ってしまうため、二人の声のアンサンブルが今ひとつ決まらないのであった。
6度のハモリが恐らく1オクターブ半くらいに感じられてしまうくらいに、響きに差が出てしまった。

やったこととしては、ACさんにソプラノパートを歌ってもらってから、アルトを歌うということが今日の特徴。
この曲は、出だしがソプラノが先に出て、アルトが入る形なので丁度良い。
そうやってアルトに移行すると、低音でも高い集まった響きが出せることに気づくであろう。

いきなり低音から歌ってもこの響きが出せるようになってもらいたい。
そのために、母音をイにして当った響きを作っておいて、そこからエ、そしてアを移行させて、アでも集まった高い響きを目指す。
そのためには、この発声に慣れるまでは、下顎を降ろさない発声をしなければならない。
そのことで、上顎に当った響きが作れるかどうか?ということに細心の注意を払って欲しい。

AC

ドビュッシー、ボードレールの歌曲から3曲。
「噴水」「静思」「恋人たちの詩」
一見「噴水」のアンサンブルが難しいか?と思えたが、歌手さんは良く勉強していたし、ピアニストさんも力量があったので
細かい部分のテンポ指示だけで、すんなりと行けそうな感触ではあった。
全体にメリハリを良く付けること、進行するところと、停滞する所の違いをよく感じて、それを判るように表現することである。
後は、なるべく歌手さんは正確にリズムを把握することも大切。
出だしはそれほど遅くなく、Andantinoは大切だろう。

声の扱いは、デュエットの影響なのか?やや喉が高いポイントに終始していた。
本当は、喉は高くなくて良いのである。
低音の響きを高く、というのは、喉の高さのことではなく、声を持って行く場所を高く、ということ。
したがって、喉が逆に上がらないように、顎を締めることと、声帯を良く開くために軟口蓋を良く上げることなのである。
顎をよく引いておけば、軟口蓋を上げても、喉は上がらないから。

「静思」は、彼女らしいゆったりした雰囲気、間合い、そして広大な大きさが良く出せていた。
初回にも関わらず、ピアニストと微妙なアンサンブルが感じられていて、私が口を出す隙を感じさせない何か?を感じた。

1箇所、Stesso tempoの扱い。その前の4拍子と同じテンポの意味だと思うが、Espressivoとあるので、少し動きがあっても良いだろう。
次の節への移り変わり、Etと入るので、二重線の間合いは、歌手と合わせるように。
Etの後はブレスを入れて、次の長いComme un long linceul trainantは一息が望ましい。

「恋人たちの死」は、ピアノをつけてもらって、改めてフランスらしい美しい曲であることを再認識した。
フランス語が比較的に饒舌な歌詞なので、歌詞の読み、朗読はやり過ぎるくらいやっておいて損はないだろう。
特にUsant a l’envi leurs chaleurs derniere,nos deux coeurs seront deux vastes flambeauxの箇所。
リズム、読み共に練習を充分しておいて欲しい。
un soir fait de rose et de bleu mystiqueからの美しい詩とイメージ、歌は明るく。
そして、最後の節、un poco pis mosso指示のある箇所からコーダまで、息を付かせぬ情熱を感じて歌って欲しい。