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フォーレの「夕べ」を持ってきた。
譜読みは良く出来ているが、ところどころ、フランス語の発音の訂正。
特に母音のUは、ほとんどOになっている点を注意。
下あごを下ろしてまで深くする必要はない。

後舌母音とも呼ばれる通り、舌根が自然に落ちる母音だから、彼のように鼻腔の響きが出来ている人は意識してやる必要はない。
むしろ、気を付けなくてはいけないことは、後舌母音であるにもかかわらず、それを、前に響かせ過ぎて、語感を損なう発声をしてしまうことである。

通りが悪い響きだからといって、必要以上に鼻腔の響きを強調して、響きが浅くなるくらいなら、むしろ、後ろに入って暗い母音のイメージになる方が、歌曲の場合は語感が強調されて良いくらいだと思う。

全体的には良く歌えているが、もう少し響きの厚みを研究できると良いと思った。
そのためには、子音発音を利用して、母音の響きに厚みを加えることを研究してほしい。
特にLの子音は、きちっと出すことで響きが変わるだろう。
VやZなども大事。

子音を正確にしっかり発音出来ることで、舌の支えがしっかりして、結果的に喉頭の保持がしっかりして、声帯の張り、振動もしっかりする、ということである。

詩の内容や音楽の表情から、声色みたいな面でのイメージや工夫という発想もあるにはあったが、
自分の経験からも、これは口先の発声になって良くないな、と一瞬思ったので止めにした。

こういうフランスの恋歌は、下手するとただのナンパ師に成り下がりかねない、と思ったからである。

「良い声は七難隠す」と言われたことがあるが、若いうちに、良い声を徹底して探求すべきだろう。
声色やイメージで歌うのは、自然に歌えるようになる年を経てからでよいと思う。